ヒアルロン酸注入治療とは?アラガン社製のヒアルロン酸について解説

年齢を重ねると、頬のボリュームダウンやほうれい線、口角の下がりなど、顔のさまざまな部位に「老け見え」のサインが現れます。ヒアルロン酸注入治療は、メスを使わない“プチ整形”として、こうしたお悩みを手軽にケアする方法として注目を集めています。
特に、アメリカの医療系企業であるアラガン社が提供するヒアルロン酸製剤は、世界70ヵ国以上で使用され、高い安全性と効果が評価されています。本記事では、ヒアルロン酸注入治療の基本からアラガン社独自の技術、そして自然な若返りを目指すTFT治療の考え方までを総合的に解説。リスクや施術の流れに加え、アラガン社製品が持つ多彩なラインナップ・特徴についても詳しく紹介していきます。


目次

  1. 1. ヒアルロン酸注入治療とは?――基本概念と概要
  2. 2. アラガン社のヒアルロン酸製剤:Hylacross™とVycross®
  3. 3. Hylacross™技術採用製品:代表的ラインナップ
  4. 4. Vycross®技術採用製品:代表的ラインナップ
  5. 5. 新たな選択肢:Volux・Voliteなど
  6. 6. 実際の施術の流れとリスク、アフターケア
  7. 7. 顔全体を総合的に整えるTFT治療の考え方
  8. 8. 学術的視点から見るヒアルロン酸の安全性と効果

1. ヒアルロン酸注入治療とは?――基本概念と概要

ヒアルロン酸注入治療は、加齢によって失われたボリュームを補充し、シワやくぼみを目立たなくする美容医療です。ヒアルロン酸はもともと体内に存在する保水成分のため、メスを使う外科手術よりも安全性が高く、ダウンタイムも短い点が魅力とされています。
しかし、施術後のダウンタイムが短い反面、「ヒアル顔」と呼ばれる不自然な仕上がりを避けるためには、顔全体のバランスを見ながら必要最小限の量を適切な層に注入する技術が欠かせません。そこで注目されるのが、アラガン社が提供するヒアルロン酸製剤です。


2. アラガン社のヒアルロン酸製剤:Hylacross™とVycross®

アラガン社は美容医療のリーディングカンパニーとして長い歴史を誇り、厚生労働省承認を得たヒアルロン酸製剤を複数ラインナップしています。その技術の柱となるのが「Hylacross™(ハイラクロス)」と「Vycross®(バイクロス)」の2つです。

  • Hylacross™: 粘度ややわらかさが特徴。局所的な浅いシワや唇などの繊細な部位に適している。
  • Vycross®: 高分子量ヒアルロン酸と低分子量ヒアルロン酸を組み合わせ、長期持続と自然な弾力を両立する。

どちらの技術も、施術部位や目的に応じて最適な製剤を選択できるように設計されており、世界的な使用実績と安全性の面で高い評価を得ています。


3. Hylacross™技術採用製品:代表的ラインナップ

3-1. Juvederm® Ultra

Juvederm® Ultraは、やわらかい質感と粘度の高さが特徴的な製剤で、浅いシワ唇のボリュームアップ、目元の細かなくぼみなどへアプローチするのに向いています。

  • 中等度のシワや薄い皮膚の部位に適用しやすい
  • 効果持続はおよそ6〜9ヵ月前後
  • なめらかなテクスチャーで扱いやすく、自然な仕上がりを狙いやすい

一方、深いシワや骨格レベルのボリューム形成にはややパワー不足となる場合があるため、目的に合わせた適切な見極めが必要です。

3-2. Juvederm® Ultra Plus

Juvederm® Ultra Plusは、Ultraよりも高い粘度を持ち、深めのシワやほうれい線など、しっかりとしたボリューム補正が必要なケースに適しています。

  • 粘度が高いため、リフトアップ効果も得やすい
  • 持続期間は6ヵ月〜1年程度
  • 大きな凹凸を補正したい場合に選択されやすい

硬さがある分、施術部位や注入量を誤ると不自然さを引き起こすリスクもあるため、十分な経験を持つ医師の技術が重要です。


4. Vycross®技術採用製品:代表的ラインナップ

4-1. Juvederm® Voluma(ボリューマ)

Juvederm® Volumaは、Vycross®技術による高い弾力・粘度(G’値)を有する製剤で、頬骨や顎、こめかみなど骨格レベルのボリューム形成に活用されることが多いです。

  • しっかり高さを出せるため、輪郭形成に優れた効果が期待できる
  • 持続期間は1年〜1年半程度でやや長め
  • 加齢による凹みやたるみを骨格から支えるような使い方が可能

頬のリフト感をアップさせ、若々しい表情を作りたいといった要望に応えやすい製剤です。

4-2. Juvederm® Volift(ボリフト)

Juvederm® Voliftは、Volumaほどの硬さはないものの、中等度の粘度と柔軟性を兼ね備えており、ほうれい線口周りなどに幅広く対応できます。

  • 深めのしわや口周りのたるみ補正に向いている
  • やわらかい仕上がりながら形状維持力がある
  • 持続期間は約1年前後

深いシワから中程度のくぼみまで、幅広い施術に用いられる“オールラウンダー”的な存在です。

4-3. Juvederm® Volbella(ボルベラ)

Juvederm® Volbellaは、シリーズの中でも最も柔らかいテクスチャーを持ち、唇や目元など非常にデリケートな部位への注入に最適です。

  • 細かなライン形成や唇のリップライン強調に向く
  • 皮膚が薄い部位でも自然になじみ、表情を損なわない
  • 持続期間は半年〜1年程度

薄い皮膚へのアプローチでは、仕上がりの自然さが重要になるため、このようにソフトな製剤が選ばれます。


5. 新たな選択肢:Volux・Voliteなど

5-1. Juvederm® Volux(ボラックス)

Juvederm® Volux」は、より硬い質感を持ち、顎の形成フェイスラインのシャープ化に特化した製剤として近年注目されています。Voluma以上のリフト力が期待され、持続期間も比較的長いと報告されており、横顔のEライン形成やシャープなフェイスラインを求める方に選ばれるケースが増えています。

5-2. Juvederm® Volite(ボライト)

Juvederm® Volite」は、肌の保湿力向上や質感改善を目的とした製剤で、ボリューム形成よりも「肌のハリ・ツヤをアップさせたい」というニーズにマッチします。

  • 表層への注入で肌の内側から潤いをサポート
  • シワやたるみというより、“肌質”そのものをケアしたい方に適している
  • 定期的に施術することで、トータルな肌状態を底上げ

従来のヒアルロン酸製剤とはややアプローチが異なるため、施術医と相談して効果のイメージを共有しておくことが大切です。


6. 実際の施術の流れとリスク、アフターケア

実際の注入治療は以下のステップで進むケースが多く、使用する製剤や注入部位によって多少の違いがあります。
主なリスクには内出血腫れのほか、血管内注入による血管閉塞、感染症などがありますが、アラガン社製ヒアルロン酸自体は厚生労働省の承認を受けており、品質面で一定の安全性が担保されています。
アフターケアとしては、施術後数日は強い摩擦や圧迫を避け、腫れや内出血が落ち着くまでゆっくり様子を見るのが一般的です。万が一、痛みや皮膚の変色など気になる症状があれば、自己判断せずに医師へ相談しましょう。


7. 顔全体を総合的に整えるTFT治療の考え方

顔の加齢は頬・顎・目元など複数のパーツに同時に起こるため、局所的な施術だけでは十分な若返りを達成できないケースがあります。そこで注目されるのが、トータルフェイシャルトリートメント(TFT治療)というアプローチです。
TFT治療では、骨格・筋肉・脂肪・皮膚の状態を学術的に分析し、必要に応じて複数の部位を同時または段階的に施術します。アラガン社のヒアルロン酸製剤は、硬さや粘度が異なる豊富なラインナップを持つため、顔全体を総合的にデザインするTFT治療とも相性が良いとされます。
-5から-10歳の若返りを自然に実現するには、単なるシワ取りではなく、輪郭やリフトアップ、肌質改善など複合的なプランを組み立てることが鍵となるのです。


8. ヒアルロン酸の安全性と効果

ヒアルロン酸は体内に存在する成分とはいえ、医薬品としての開発・製造プロセスや施術者の技術が安全性と仕上がりに大きく関わります。

  • アラガン社の製剤は厚生労働省承認を取得しており、一定の品質・安全性が保証されている
  • Vycross®技術は高い弾力と持続性を両立させるため、効果が長持ちしやすいとされる[1]
  • 血管閉塞などのリスクを抑えるために、施術前の血管マッピングや安全プロトコルが整備されているクリニックを選ぶことが重要[2]

また、メンテナンスが必要な場合でも、適切なタイミングで少量ずつ施術を続けることで、急激な変化を避けながら自然に“若い頃の印象”を保つ方法が望ましいという報告もあります[3]


参考文献

  1. Rzany B, et al. Injectable fillers for facial rejuvenation. Clin Dermatol. 2008;26(2):177-192.
  2. De Boulle K. Management of complications after filler injections. J Cosmet Laser Ther. 2014;16(5):239-249.
  3. Gold MH. Use of hyaluronic acid-based fillers for the treatment of the aging face. Clin Interv Aging. 2007;2(3):369-376.
  4. Funt D, Pavicic T. Dermal fillers in aesthetics: an overview of adverse events and prevention. Clin Cosmet Investig Dermatol. 2013;6:295-316.
  5. Park SW, et al. Vascular complications of hyaluronic acid fillers and the role of hyaluronidase in management. J Dermatolog Treat. 2018;29(5):280-284.
  6. Sclafani AP. Safety, efficacy, and utility of hyaluronic acid fillers in the periocular region: a comprehensive review. Facial Plast Surg. 2012;28(3):219-226.

まとめ


ヒアルロン酸注入治療」は、顔のシワやたるみ、ボリュームロスを手軽に補正できる人気の美容医療です。アラガン社製ヒアルロン酸は、Hylacross™技術とVycross®技術を中心に、多彩なラインナップを展開。部位や目的に合わせた製剤選択と適切な施術計画により、より自然で美しい仕上がりが期待できます。
さらに、TFT治療(トータルフェイシャルトリートメント)の考え方を取り入れることで、-5から-10歳の若返りを追求しながら“ヒアル顔”のリスクを最小限に抑えることが可能です。施術を検討する際は、クリニックの実績や施術医の技術、そして製剤の特性をしっかり理解し、ご自身に合った選択をしてみてください。

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医療法人丸岡医院 理事
丸岡 悠
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