施設と在宅、二つのケアマネジャーの役割とは?

介護保険制度において、ケアマネジャーは重要な役割を担っています。

ケアマネジャーは、要介護者やその家族の状況を把握し、適切なケアプランを作成することで、利用者の生活の質を高めることを目指します。

しかし、ケアマネジャーの役割は、在宅と施設では異なる部分があります。

本記事では、在宅ケアマネジャーと施設ケアマネジャーの役割の違いや、それぞれの仕事内容、他職種との連携などについて詳しく解説していきます。

これからケアマネジャーを目指す方や、介護サービスを利用予定の方にとって、役立つ情報が得られるはずです。

この記事を書いた人
丸岡 悠(まるおか ゆう)
丸岡 悠(まるおか ゆう)
外科医

1988年山形県酒田市生まれ。酒田南高校卒業後、獨協医科大学(栃木)にて医師免許取得。沖縄県立北部病院、独立行政法人日本海総合病院を経て現職(医療法人丸岡医院)。

在宅ケアマネジャーの役割とその重要性

在宅ケアマネジャーは、要介護者やその家族に寄り添い、適切なケアプランを作成することで、利用者の生活の質の向上と自立した生活の支援において重要な役割を担っています。

在宅ケアマネジャーは、要介護者の心身の状況や生活環境、家族の介護力などを総合的に評価し、利用者に最適なサービスを提案・調整することが求められます。

要介護者のニーズ把握とアセスメント

在宅ケアマネジャーは、要介護者やその家族との面談を通じて、心身の状況や生活環境、介護に対する希望などを詳細に把握することが重要です。

アセスメント項目内容
身体機能ADLやIADLの評価、疾患の状況など
生活環境住環境、家族構成、経済状況など

得られた情報をもとに、課題分析を行い、ケアプランの基礎を作成します。

ケアプランの作成と支援内容の設定

在宅ケアマネジャーは、アセスメントの結果を踏まえ、利用者の自立支援に向けたケアプランを作成します。

ケアプランには、以下のような内容が含まれます。

  • 利用者の目標設定
  • 必要なサービスの種類と頻度
  • サービス担当者との連携方法
  • モニタリング方法とタイミング

利用者や家族の意向を尊重しつつ、専門的な視点からサービス内容を設定することが求められます。

多職種連携の調整と情報共有

在宅ケアマネジャーは、ケアプランに基づいて様々な職種との連携を調整し、チームケアを実現することが重要な役割の一つです。

連携する職種主な役割
訪問看護師医療面での支援、健康管理
訪問介護員生活支援、身体介護
主治医医学的な助言、治療方針の決定

多職種間での情報共有を円滑に行い、利用者の状況変化に応じて柔軟にサービス内容を調整することが求められます。

介護保険制度の理解と適切な運用

在宅ケアマネジャーは、介護保険制度の仕組みを十分に理解し、利用者が必要なサービスを適切に利用できるようサポートすることが不可欠です。

制度の改正情報などを常にアップデートし、利用者や家族に分かりやすく説明することも重要な役割の一つといえます。

在宅ケアマネジャーは、利用者の生活の質の向上と自立支援において中心的な役割を担っており、要介護者やその家族に寄り添い、多職種と連携しながら、適切なケアプランの作成とサービス調整を行うことが求められています。

在宅での生活を支えるために、在宅ケアマネジャーの果たす役割は非常に重要であり、専門性の高い仕事であるといえるでしょう。

在宅ケアマネと施設ケアマネの違い

在宅ケアマネと施設ケアマネは、いずれもケアマネジャーという職種ではありますが、働く環境や役割、求められるスキルなどにおいて大きな違いがあります。

在宅ケアマネは利用者の生活の場に直接関わり、多職種と連携しながら個別性の高いケアプランを作成することが求められる一方、施設ケアマネは施設内でのチームケアにおいて中心的な役割を担い、施設サービスの質の向上に尽力します。

働く環境の違い

在宅ケアマネと施設ケアマネの大きな違いの一つは、働く環境です。

在宅ケアマネ施設ケアマネ
利用者の自宅を訪問介護保険施設内で勤務
移動が多く、訪問スケジュールの調整が必要施設内での業務が中心

在宅ケアマネは、利用者の生活の場に直接関わることから、訪問スケジュールの調整や移動時間の管理など、効率的な時間配分が求められます。

ケアプラン作成における違い

在宅ケアマネと施設ケアマネでは、ケアプラン作成の際に考慮すべき点にも違いがあります。

在宅ケアマネは、利用者の生活環境や家族の介護力、社会資源の活用など、個別性の高いケアプランを作成することが重要です。

一方、施設ケアマネは、施設内でのサービス提供が中心となるため、施設の人員体制や設備、他の入所者との関係性なども考慮したケアプランを作成する必要があります。

多職種連携の在り方の違い

在宅ケアマネと施設ケアマネでは、多職種連携の在り方にも違いがみられます。

在宅ケアマネは、医療職や介護職など様々な職種と連携し、利用者の生活を支えるためのチームケアを調整することが求められます。

在宅ケアマネが連携する主な職種
訪問看護師
訪問介護員
主治医
薬剤師

施設ケアマネは、施設内の介護職員や看護師、リハビリ職など、施設内の多職種とのチームワークを重視し、情報共有や連携を密に行うことが重要です。

求められるスキルや知識の違い

在宅ケアマネと施設ケアマネでは、求められるスキルや知識にも一定の違いがあります。

在宅ケアマネは、地域の社会資源や制度に関する知識、コミュニケーション力、調整力などが特に重要視されます。

一方、施設ケアマネは、施設サービスの質の向上につながるマネジメント能力や、施設内の他職種とのチームビルディング力が求められます。

在宅ケアマネと施設ケアマネは、ケアマネジャーという同じ職種でありながら、働く環境や役割、求められるスキルなどにおいて大きな違いがあります。

それぞれの特性を理解し、利用者や入所者の状況に合わせて適切なケアマネジメントを行うことが、両者に共通して求められる重要な役割であるといえます。

在宅ケアマネの日常業務とクライアントサポート

在宅ケアマネの日常業務は、利用者の生活の質の向上と自立支援を目的として、アセスメントからケアプランの作成、サービス提供の調整、モニタリングまで、一連のケアマネジメントプロセスを遂行することです。

また、利用者やその家族に寄り添い、日常生活上の課題解決に向けた相談支援を行うことも重要な役割の一つです。

利用者宅への訪問とアセスメント

在宅ケアマネの業務の中心は、利用者宅への訪問です。

訪問の目的内容
アセスメント利用者の心身の状況や生活環境の把握
モニタリングサービス提供状況の確認と評価

訪問時には、利用者や家族との面談を通じて、ニーズや課題を明確化し、ケアプラン作成に必要な情報を収集します。

ケアプランの作成と説明

在宅ケアマネは、アセスメントで得られた情報をもとに、利用者に適したケアプランを作成します。

ケアプランには、以下のような内容が含まれます。

  • 利用者の目標
  • 必要なサービスの種類と頻度
  • サービス提供時の留意点
  • モニタリング方法

作成したケアプランは、利用者や家族に分かりやすく説明し、同意を得ることが求められます。

サービス提供の調整とモニタリング

在宅ケアマネは、ケアプランに基づいて、サービス事業者との連絡調整を行い、円滑なサービス提供を実現します。

調整する主なサービス
訪問介護
訪問看護
通所介護(デイサービス)
福祉用具貸与

サービス提供開始後は、定期的なモニタリングを実施し、利用者の状況変化に応じてケアプランの見直しを行います。

日常生活上の相談支援

在宅ケアマネは、利用者やその家族からの相談に応じ、日常生活上の課題解決に向けたサポートを行います。

例えば、以下のような相談内容が挙げられます。

  • 介護保険制度の利用方法
  • 介護負担の軽減策
  • 住宅改修や福祉用具の選定
  • 認知症への対応方法

利用者や家族の不安や悩みに寄り添い、適切な助言や情報提供を行うことが重要です。

在宅ケアマネの日常業務は、利用者の生活を支えるために、アセスメントからケアプランの作成、サービス提供の調整、モニタリングまでの一連のプロセスを遂行するとともに、日常生活上の相談支援を行うことです。

利用者の状況に合わせて、柔軟にサポートを提供できるよう、幅広い知識と高いコミュニケーション能力が求められる専門職であるといえます。

施設におけるケアマネジャーの職務

施設ケアマネジャーは、介護保険施設において、入所者の心身の状況に応じた適切なケアプランを作成し、施設サービスが円滑に提供されるよう、多職種との連携を調整することを主な職務としています。

施設ケアマネジャーは、施設内でのチームケアにおいて中心的な役割を担い、入所者の尊厳を守りながら、その人らしい生活の実現を目指して日々奮闘しています。

入所者のアセスメントとケアプラン作成

施設ケアマネジャーの中核的な業務は、入所者の心身の状況を的確に把握し、適切なケアプランを作成することです。

アセスメント項目内容身体機能ADLやIADLの評価、疾患の状況など認知機能認知症の有無や重症度、BPSDの評価など

アセスメントで得られた情報をもとに、入所者の自立支援と尊厳の保持を目的としたケアプランを立案します。

ケアプランには、入所者の目標、提供するサービスの内容や頻度、モニタリング方法などが詳細に記載されます。

施設サービスの質の向上とマネジメント

施設ケアマネジャーは、ケアプランに基づいて提供される施設サービスの質の向上に努めることが求められます。

具体的には、以下のような取り組みが挙げられます。

  • 施設職員への指導や教育
  • サービス提供体制の見直しや改善
  • 事故防止や感染対策の徹底
  • 施設運営に関する会議の開催

施設ケアマネジャーは、サービスの質を維持・向上させるためのマネジメント能力が不可欠です。

入所者や家族への相談支援

施設ケアマネジャーは、入所者やその家族からの相談に応じ、適切な支援を行うことも重要な職務の一つです。

相談内容の例施設サービスの利用方法家族との関係性の調整退所後の生活支援

入所者や家族の不安や悩みに寄り添い、問題解決に向けた助言や情報提供を行います。

他職種との連携調整

施設ケアマネジャーは、施設内の多職種とのチームワークを重視し、情報共有や連携を密に行うことが求められます。

施設内の主な職種としては、介護職員、看護師、リハビリ職、栄養士などが挙げられ、それぞれの専門性を生かしながら、入所者の状態に合わせた最適なサービス提供が行われるよう調整します。

定期的なカンファレンスの開催や、日常的なコミュニケーションを通じて、チームとしての一体感を醸成することが重要です。

施設ケアマネジャーは、入所者の生活の質の向上と尊厳の保持を目的として、アセスメントとケアプランの作成、施設サービスの質の向上、入所者や家族への相談支援、多職種との連携調整など、幅広い職務を遂行しています。

施設内でのチームケアにおける要として、高いマネジメント能力とコミュニケーション能力が求められる専門職であるといえます。

施設ケアマネのチームとの連携

施設ケアマネジャーがチームと連携することは、利用者に質の高いケアを提供するために非常に重要です。

施設ケアマネジャーは、多職種から成るケアチームの一員として、利用者の状態や希望を適切に把握し、チームメンバーと情報を共有しながら、利用者本位のケアプランを作成する役割を担っています。

そのためには、チームメンバーとの円滑なコミュニケーションや、専門性を活かした役割分担が欠かせません。

ここでは、施設ケアマネジャーがチームと連携する上で重要となるポイントについて詳しく説明いたします。

多職種との情報共有

施設ケアマネジャーは、医師や看護師、介護職員など様々な専門職とコミュニケーションを取り、利用者の状態や課題について情報を共有する必要があります。

定期的なカンファレンスの開催や、日々の申し送りなどを通じて、チームメンバー間で認識を揃えることが大切です。

連携方法頻度
カンファレンス月1回
申し送り毎日

ケアプランの作成と実践

施設ケアマネジャーは、チームメンバーから得た情報を基に、利用者の状態に合わせたケアプランを作成します。

ケアプランには、利用者の課題や目標、具体的な支援内容などを盛り込む必要があります。

作成したケアプランは、チームメンバーと共有し、それぞれの専門性を活かしながら実践していくことが求められます。

チームマネジメント

施設ケアマネジャーは、チームをまとめるリーダーとしての役割も担っています。

メンバー間の意見の相違や、ケアの方向性についての議論が生じた際には、利用者の利益を最優先に考え、適切な調整を図ることが重要です。

また、メンバーのモチベーションを維持し、チームワークを向上させるための働きかけも必要でしょう。

マネジメント方法内容
調整メンバー間の意見の相違を調整する
モチベーション維持メンバーのモチベーションを高める働きかけを行う

専門性の向上

施設ケアマネジャーは、自身の専門性を高めることも重要です。

以下のような取り組みを通じて、知識やスキルを向上させることが求められます。

  • 研修会や勉強会への参加
  • 関連書籍や資料の読み込み
  • 他の専門職との意見交換

専門性を高めることで、チームメンバーからの信頼を得ると共に、利用者により質の高いケアを提供することが可能となります。

施設ケアマネジャーは、チームの一員として、多職種との連携を円滑に進めながら、利用者本位のケアを実現していく重要な役割を担っているのです。

介護ニーズの変化に対する柔軟な対応策

介護ニーズの変化に対して柔軟に対応することは、利用者の状態に合わせた適切なケアを提供する上で非常に重要です。

ケアマネジャーは、利用者の心身の状況や生活環境の変化を的確に把握し、それに応じてケアプランを適宜見直すことが求められます。

ここでは、介護ニーズの変化に対する柔軟な対応策について詳しく説明いたします。

定期的なモニタリングの実施

ケアマネジャーは、利用者の状態を定期的にモニタリングし、変化の有無を確認する必要があります。

モニタリングの頻度は、利用者の状態や状況に応じて適切に設定することが大切です。

状態モニタリング頻度
安定している月1回程度
変化が見られる週1回程度

ケアプランの柔軟な見直し

モニタリングの結果、利用者の状態に変化が見られた場合には、速やかにケアプランの見直しを行うことが重要です。

見直しに当たっては、利用者やその家族の意向を十分に汲み取り、チームメンバーとも連携しながら、適切な支援内容を検討します。

必要に応じて、サービスの種類や回数、時間帯などを柔軟に変更することも大切です。

多職種との連携強化

介護ニーズの変化に対応する上では、多職種との連携を強化することも欠かせません。

医師や看護師、リハビリ専門職など、様々な専門職との情報共有や協働を通じて、利用者の状態に合わせた最適なケアを提供することが可能となります。

連携方法内容
カンファレンス定期的に開催し、情報共有や協働を図る
訪問同行他職種と共に利用者宅を訪問し、状態を直接確認する

社会資源の活用

介護ニーズの変化に伴い、新たな社会資源の活用が必要となる場合もあります。

ケアマネジャーは、地域の社会資源に関する情報を収集し、利用者のニーズに合わせて適切に紹介・調整することが求められます。

以下のような社会資源の活用が考えられます。

  • デイサービスや訪問介護などの介護保険サービス
  • ボランティアや NPO などの非公式サービス
  • 地域の公共機関や民間企業が提供するサービス

利用者の介護ニーズは刻々と変化するものであり、それに柔軟に対応することがケアマネジャーの重要な役割の一つです。

定期的なモニタリングやケアプランの見直し、多職種連携の強化、社会資源の活用など、様々な対応策を適切に講じることで、利用者の状態に合わせた質の高いケアを提供することが可能となるのです。

以上

免責事項

当記事は、医療や介護に関する情報提供を目的としており、当院への来院を勧誘するものではございません。従って、治療や介護の判断等は、ご自身の責任において行われますようお願いいたします。

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