友人が「ヒアルロン酸注入でほうれい線が目立たなくなった!」と嬉しそうに話しているのを聞いて、あなたも興味を持ち始めたかもしれません。でも、いざクリニックを探し始めると、「この医師で本当に大丈夫なの?」「失敗したらどうしよう…」という不安が頭をもたげてきませんか?
インターネットで検索すると、「しこりができた」「不自然な仕上がりになった」「思っていた効果が得られなかった」といった体験談を目にすることもあり、ますます不安になってしまうものです。
確かに、ヒアルロン酸注入は「プチ整形」と呼ばれ手軽に感じられますが、医師の技術や経験によって結果が大きく左右される医療行為です。しかし、適切な知識を持って医師選びをすれば、そのリスクは大幅に減らすことができます。
この記事では、美容医療業界で20年以上の経験を持つ専門家の視点から、「後悔しない医師選び」のための具体的なポイントをお伝えします。カウンセリングで聞くべき質問から、信頼できる医師を見極める方法まで、明日からすぐに使える実践的な情報をまとめました。
あなたの美容医療への第一歩が、安心と満足に満ちたものになるよう、一緒に正しい知識を身につけていきましょう。
なぜ『同じヒアルロン酸注入』でも結果がこんなに違うの?
SNSや口コミサイトを見ていると、同じヒアルロン酸注入を受けたはずなのに、「自然で美しい仕上がりになった」という声がある一方で、「不自然でバレバレになった」「すぐに元に戻ってしまった」という正反対の体験談を目にすることがあります。なぜこのような差が生まれるのでしょうか?
実は、ヒアルロン酸注入の成功は「製剤」×「技術」×「美的センス」の掛け算で決まります。どれか一つでも欠けると、満足のいく結果は得られません[1]。
まず、ヒアルロン酸製剤には数十種類の選択肢があり、それぞれ硬さ、持続期間、適用部位が異なります。例えば、繊細な目元に適した柔らかい製剤を、しっかりとしたボリュームが必要な頬に使用しても期待した効果は得られませんし、逆に硬い製剤を目元に使用すると不自然な仕上がりになってしまいます。
技術面では、注入の深さ、角度、量、スピードなど、すべてがミリ単位の精密性を要求されます。研究によると、わずか0.1ccの注入量の違いや、1mmの深さの違いでも、仕上がりに大きな影響を与えることが報告されています[2]。
さらに重要なのが「美的センス」です。顔面解剖学の知識に基づいて、その人の骨格、筋肉の動き、表情の癖、年齢による変化などを総合的に判断し、「どこに」「どのくらい」注入すれば最も自然で美しい仕上がりになるかを見極める能力です。
これらの要素を兼ね備えた医師とそうでない医師では、使用する製剤が同じでも、まったく異なる結果になってしまうのです。つまり、ヒアルロン酸注入の成功の鍵は「製剤」ではなく「医師」にあると言えるでしょう。
さらに、アフターケアの質も結果を左右します。注入後の腫れや内出血への対応、経過観察の頻度、必要に応じた修正の提案など、施術後のフォローアップも医師の技量の一部なのです。
カウンセリングで『この医師なら信頼できる』と判断する方法

カウンセリングは、医師の技術力や人柄を見極める最も重要な機会です。しかし、「何を質問すれば良いのかわからない」「医師の説明が専門的すぎて理解できない」という方も多いのではないでしょうか。
信頼できる医師が必ず行う3つのこと
1. あなたの顔を「じっくり」観察する 優秀な医師は、まずあなたの顔全体のバランス、骨格、筋肉の動き、皮膚の状態を詳細に観察します。正面だけでなく、横顔、斜めからの角度からも確認し、時には手で触って皮膚の厚さや弾力を確かめることもあります。
もしカウンセリングで医師があなたの顔をほとんど見ずに説明を始めたり、パンフレットばかりを見せて話を進めようとしたりする場合は、注意が必要です。
2. リスクと限界について「正直に」説明する 信頼できる医師は、ヒアルロン酸注入の効果だけでなく、起こりうるリスクや治療の限界についても必ず説明します。「絶対に大丈夫」「100%安全」といった断言をすることはありません。
代わりに、「このような場合にはこんなリスクがあります」「あなたの場合、○○の理由で期待した効果が得られない可能性があります」といった具体的で正直な情報を提供してくれます。
3. 他の治療選択肢も「公平に」提示する 本当にあなたのことを考えている医師なら、ヒアルロン酸注入以外の治療選択肢についても説明してくれるはずです。場合によっては「今はまだ治療の必要がない」「別の方法の方が適している」とアドバイスすることもあります。
カウンセリングで必ず確認すべき質問
「なぜその部位にその量の注入が必要なのですか?」 この質問に対して、あなたの顔の特徴を具体的に挙げながら、医学的な根拠を持って説明できる医師は信頼できます。曖昧な答えしか返ってこない場合は要注意です。
「使用するヒアルロン酸の種類と選択理由を教えてください」 製剤の名称、特徴、なぜその製剤を選ぶのかを明確に説明できることは、専門知識の証拠です。
「万が一満足できない結果になった場合、どのような対応をしていただけますか?」 修正の可能性、追加費用、ヒアルロン酸溶解注射の対応など、アフターケアについて具体的に聞いてみましょう。
「先生の症例数と、これまでに経験された合併症について教えてください」 経験豊富な医師ほど、この質問に対して具体的な数字と実例を挙げて答えることができます。
避けるべき医師のサイン
反対に、以下のような特徴がある医師は避けた方が賢明です:
- カウンセリング時間が極端に短い(10分未満)
- 質問に対して曖昧な答えしか返さない
- 即日施術を強く勧める
- 他の治療との比較説明をしない
- 費用の説明が不明確
- あなたの話をあまり聞かない
カウンセリングは「医師があなたを評価する場」であると同時に、「あなたが医師を評価する場」でもあります。遠慮せずに疑問点を質問し、納得できるまで説明を求めることが大切です。
『経験豊富』『症例数が多い』医師をどうやって見分ける?
クリニックのホームページには「経験豊富」「症例数○万件」といった宣伝文句が並んでいますが、これらの情報をどのように判断すれば良いのでしょうか?数字に惑わされず、本当に技術力の高い医師を見極める方法をお教えします。
真の実力を示す客観的指標
学会認定資格と指導医資格 ヒアルロン酸注入に関する最も信頼できる指標の一つが、製薬会社による認定資格です。例えば、アラガン社(ジュビダームシリーズの製造元)の「ジュビダームビスタ認定医」や「注入指導医」の資格は、厳格な審査と継続的な教育を受けた証拠です[3]。
また、日本形成外科学会、日本皮膚科学会などの専門医資格も重要な判断材料となります。
国際的な学会活動 本当に優秀な医師は、国内外の学会で研究発表を行ったり、海外の著名な医師と技術交流を行ったりしています。ホームページで学会発表歴や国際的な活動を確認してみましょう。
教育活動への参加 他の医師への指導を行っている医師は、技術レベルが高いと考えられます。医師向けセミナーの講師経験や、後進の指導実績なども参考になります。
症例数の「質」を見極める方法
単純な症例数よりも重要なのは「症例の質」です。以下の点に注目してみてください:
多様な部位での症例があるか ほうれい線だけでなく、目元、額、頬、唇など、様々な部位での症例を持つ医師の方が技術の幅が広いと考えられます。
合併症への対応経験 経験豊富な医師ほど、合併症の症例とその対応について具体的に説明できます。「今まで一度も問題が起きたことがない」という医師よりも、「このような場合にはこのように対応した」と実例を挙げて説明できる医師の方が信頼できます。
症例写真の質 ホームページに掲載されている症例写真の質も重要な判断材料です。照明や角度を統一した医学的な写真であることや、施術前後の変化が自然であることを確認しましょう。
実際にカウンセリングで確認すべきポイント
「先生ご自身の年間症例数を教えてください」 クリニック全体ではなく、その医師個人の症例数を聞くことが重要です。大手クリニックでは複数の医師が在籍しているため、クリニック全体の症例数と個人の症例数は大きく異なる場合があります。
「私と同じような症例での経験はどの程度ありますか?」 あなたの年齢、肌質、希望する部位での具体的な経験を聞いてみましょう。
「最近受けた関連する研修や学会参加について教えてください」 医療技術は日進月歩です。継続的に学習している医師かどうかを確認できます。
注意すべき「見かけ倒し」のサイン
以下のような場合は、実際の技術力と宣伝内容に乖離がある可能性があります:
- 具体的な数字を出すことを避ける
- 他院での経験を含めた通算症例数しか答えない
- 合併症の経験について答えを濁す
- 最新の技術や製剤について知識が乏しい
- 症例写真が少ない、または質が低い
真に経験豊富で技術力の高い医師は、自分の経験と技術に自信を持っているため、これらの質問に対して具体的で正直な回答をしてくれるはずです。
『失敗したくない』なら絶対に避けるべきクリニックの特徴
過去20年間で数多くの「他院修正」の症例を見てきた経験から、失敗を招きやすいクリニックには共通した特徴があることがわかっています。これらの特徴を知ることで、リスクの高いクリニックを事前に避けることができます。
価格だけで勝負しているクリニック
「業界最安値」を謳うクリニックの落とし穴 適正価格を大幅に下回る料金設定のクリニックには、必ず理由があります。質の低い製剤の使用、医師の技術不足、アフターケアの省略など、どこかでコストを削っているのです。
実際に、「安いから」という理由でクリニックを選び、結果的に修正治療で高額な費用がかかってしまったケースを数多く見てきました[4]。
「量り売り」システムの危険性 「0.1cc単位で料金設定」をしているクリニックも要注意です。必要な量を適切に注入するのではなく、予算に合わせて不十分な量しか注入せず、効果が実感できないという結果になりがちです。
カウンセリング軽視のクリニック
医師以外がカウンセリングを行う 「カウンセラー」や「コンシェルジュ」と呼ばれる無資格者がカウンセリングを行い、医師は施術時にしか現れないクリニックは危険です。適切な診断なしに施術を行うことは、医学的に不適切です。
即日施術を強く勧める 「今日施術すれば割引」といった営業的な圧力をかけるクリニックは避けましょう。美容医療は十分に検討した上で決断すべきものです。
説明時間が極端に短い 15分以下のカウンセリングで施術を決定させようとするクリニックは、患者の安全を軽視している可能性があります。
安全管理が不十分なクリニック
緊急時対応の準備不足 ヒアルロン酸注入では稀に血管塞栓などの重篤な合併症が起こる可能性があります[5]。「そのような合併症は起こらない」と断言するクリニックや、緊急時の対応について説明できないクリニックは危険です。
製剤の管理が不適切 ヒアルロン酸製剤の保管方法、使用期限の管理、開封後の取り扱いなどについて明確な説明ができないクリニックは、品質管理に問題がある可能性があります。
技術力不足を示すサイン
症例写真が不自然 ホームページの症例写真で、明らかに「やりすぎ」感のある仕上がりや、左右非対称な結果が多い場合は、医師の美的センスや技術に疑問があります。
一つの治療法しか提案しない どのような悩みでも「ヒアルロン酸注入で解決できる」と主張し、他の治療選択肢を提示しないクリニックは、知識の幅が狭い可能性があります。
アフターケアが曖昧 術後の経過観察、合併症への対応、修正の可能性などについて具体的な説明がないクリニックは、責任感に欠ける可能性があります。
セカンドオピニオンの重要性
これらの特徴に一つでも当てはまるクリニックの場合は、必ず他のクリニックでもカウンセリングを受けることをお勧めします。複数の医師の意見を聞くことで、より客観的な判断ができるようになります。
また、信頼できる医師であれば、患者がセカンドオピニオンを求めることを快く受け入れてくれるはずです。「他のクリニックでも相談したい」と伝えた際の反応も、そのクリニックの姿勢を測る良いバロメーターになります。
『この製剤で大丈夫?』ヒアルロン酸の種類と選び方の基準
「どのヒアルロン酸を使うかは医師にお任せ」と考えている方も多いかもしれませんが、実は製剤選択は治療結果を大きく左右する重要な要素です。患者自身も基本的な知識を持っておくことで、医師の判断が適切かどうかを評価できるようになります。
安全性の観点から選ぶべき製剤
厚生労働省承認製剤の重要性 日本で使用されているヒアルロン酸製剤の中でも、厚生労働省の承認を受けているものは特に安全性が高いとされています。代表的なものにアラガン社の「ジュビダームビスタシリーズ」があります[6]。
承認製剤は厳格な臨床試験を経ており、品質管理も徹底されています。一方、未承認製剤の中には安全性が十分に検証されていないものもあります。
製造会社の信頼性 世界的に実績のある大手製薬会社の製剤を選ぶことも重要です。アラガン(現在はアッヴィ)、ガルデルマ、メルツなどは、長年にわたってヒアルロン酸製剤を製造している信頼できるメーカーです。
部位別の適切な製剤選択
繊細な部位(目元、唇) 目元や唇などの皮膚の薄い部位には、柔らかく自然になじむ製剤が適しています。例えば、ジュビダームビスタウルトラやボルベラXCなどが使用されます。
深いしわ・ボリューム形成(ほうれい線、頬) ほうれい線や頬のボリューム形成には、適度な硬さと持続性を持つ製剤が必要です。ジュビダームビスタウルトラプラスXCやボリューマXCなどがよく使用されます。
輪郭形成(鼻、顎) 鼻や顎の形成には、しっかりとした支持力を持つ硬めの製剤が適しています。ただし、これらの部位は血管塞栓のリスクが高いため、より高度な技術が必要です[7]。
カウンセリングで確認すべき製剤関連の質問
「使用する製剤の名称と特徴を教えてください」 医師が製剤の具体的な名称、特徴、選択理由を明確に説明できることは重要です。「当院のオリジナル」「特別な製剤」といった曖昧な説明の場合は注意が必要です。
「この製剤の持続期間と吸収過程について教えてください」 製剤によって持続期間は大きく異なります(3ヶ月~2年程度)。あなたのライフスタイルに合った選択をするために、正確な情報を確認しましょう。
「アレルギーや副作用のリスクはありますか?」 稀ですが、ヒアルロン酸に対するアレルギー反応や、添加物による反応が起こる可能性があります。過去にアレルギー歴がある方は特に重要な確認事項です。
避けるべき製剤の特徴
異常に安価な製剤 相場を大幅に下回る価格の製剤は、品質に問題がある可能性があります。特に出所不明の製剤や、正規流通ルート以外で入手された製剤は危険です。
医師が詳細を説明できない製剤 医師自身が製剤について詳しく説明できない場合は、その製剤の使用経験が少ないか、知識が不足している可能性があります。
過度に長期間持続を謳う製剤 「半永久的に持続」「10年以上効果が続く」といった宣伝をしている製剤は、逆に危険な可能性があります。適切なヒアルロン酸は体内で自然に代謝されるべきものです。
製剤選択における医師との協働
最終的な製剤選択は医師の専門的判断に委ねるべきですが、患者として基本的な知識を持っておくことで、より適切な治療を受けることができます。
また、過去に他の製剤で良い結果を得た経験がある場合や、特定の製剤を希望する理由がある場合は、遠慮なく医師に相談してみましょう。経験豊富な医師であれば、患者の希望と医学的適応を両立させる方法を提案してくれるはずです。
『いざという時』のために知っておくべき対処法
ヒアルロン酸注入は比較的安全な治療ですが、万が一思わぬ結果になった場合の対処法を事前に知っておくことで、冷静に対応できるようになります。また、適切な対処法を知っている医師かどうかも、信頼性の判断材料になります。
一般的な術後反応と対処法
内出血への対処 注射による内出血は最も一般的な術後反応です。通常1-2週間で自然に消失しますが、以下の方法で軽減できます[8]:
- 施術当日は患部を冷却(15分冷却、15分休憩を繰り返す)
- 血行を促進する活動(飲酒、入浴、激しい運動)を48時間避ける
- ビタミンKクリームの使用(医師の指示がある場合)
腫れやむくみへの対処 特に唇や目元では腫れが出やすくなります:
- 頭を高くして睡眠をとる
- 冷却パックを使用(ただし凍傷に注意)
- 塩分の多い食事を避ける
深刻な合併症への対応
血管塞栓の早期発見と対応 最も注意すべき合併症が血管塞栓です。以下の症状が現れた場合は、直ちに医師に連絡する必要があります:
- 注入部位の激しい痛み
- 皮膚の色調変化(白色、青紫色)
- 皮膚の冷感
- 視力障害(鼻部注入の場合)
適切な医師なら、ヒアルロニダーゼ(ヒアルロン酸溶解剤)を常備しており、緊急時には即座に対応できる体制を整えています。
感染への対応 稀ですが、注入部位に感染が起こる可能性があります:
- 発熱、悪寒
- 注入部位の持続的な痛み、腫れ
- 膿の形成
- 皮膚の異常な赤み
これらの症状がある場合は、抗生物質による治療が必要です。
美容的な問題への対処
不自然な仕上がりになった場合 ヒアルロン酸は可逆性(元に戻せる)が大きなメリットです:
ヒアルロン酸溶解注射(ヒアルロニダーゼ) 不適切な注入や過剰注入の場合、ヒアルロニダーゼという酵素でヒアルロン酸を溶解できます。数時間から数日で効果が現れます[9]。
待機療法 軽度の不自然さの場合、時間の経過とともに改善することがあります。ヒアルロン酸は徐々に体内に吸収されるため、2-4週間様子を見ることも選択肢の一つです。
追加注入による修正 左右差や不足感がある場合、追加注入で修正できることがあります。ただし、初回注入から2-4週間後に行うのが一般的です。
クリニックとの適切なコミュニケーション
問題を感じた時の連絡方法 施術を受けたクリニックに連絡する際は、以下の情報を整理しておきましょう:
- 施術日時
- 注入部位と使用製剤
- 現在の症状(いつから、どのような症状か)
- 写真(可能な場合)
セカンドオピニオンの求め方 施術を受けたクリニックの対応に不満がある場合、他の医師の意見を求めることも重要です。その際は:
- 施術の詳細(使用製剤、注入量、部位)
- 経過写真
- これまでの対応経過
を整理して持参しましょう。
法的な対応が必要な場合
医療事故として認められる基準 以下の場合は医療事故として法的対応を検討する必要があります:
- 明らかな医療過誤による合併症
- 説明義務違反
- 無資格者による施術
- 承認されていない製剤の使用
相談窓口 医療に関する相談は、各都道府県の医療安全支援センターや消費生活センターで受け付けています。
予防のための事前準備
緊急連絡先の確保 施術前に、24時間対応の連絡先を確認し、携帯電話に登録しておきましょう。
信頼できる第三者医師の確保 万が一の場合に相談できる、施術を受けたクリニック以外の信頼できる医師を見つけておくことも重要です。
記録の保存 施術前後の写真、同意書、領収書、やり取りの記録などを保存しておきましょう。
適切な知識と準備をしておくことで、万が一の事態にも冷静に対応できるようになります。また、これらの対処法について詳しく説明できる医師は、より信頼できると考えて良いでしょう。
長期的に美しさを維持するための医師との関係作り
ヒアルロン酸注入は一回の治療で終わりではありません。美しい結果を長期間維持するためには、信頼できる医師との継続的な関係を築くことが重要です。そのためのポイントをお伝えします。
「かかりつけ美容医」という考え方
継続的な関係のメリット 同じ医師に継続して診てもらうことで、あなたの顔の変化、治療への反応、好みなどを深く理解してもらえます。これにより、より自然で満足度の高い治療結果を得られるようになります[10]。
エイジングに合わせた治療計画 優秀な医師は、現在の悩みを解決するだけでなく、将来の変化を予測した長期的な治療計画を提案してくれます。例えば、20代では予防的な軽いケア、30-40代では本格的なボリューム補充、50代以降では総合的なリフティングといった段階的なアプローチです。
理想的な医師との関係性
相互の信頼関係 医師はあなたの美容への願いを理解し、現実的で安全な治療を提案してくれる。あなたは医師の専門性を信頼し、アドバイスに従うとともに、正直な感想やフィードバックを提供する。このような相互の信頼関係が理想的です。
適切なコミュニケーション 定期的なメンテナンス治療を通じて、自然なコミュニケーションが取れるようになることが大切です。遠慮なく相談できる関係性を築きましょう。
長期的な治療計画の立て方
年齢に応じた治療戦略
- 20代後半-30代前半:予防的ケア、軽度のボリューム補充
- 30代後半-40代:本格的なボリューム補充、深いしわの治療
- 40代後半-50代:総合的なリフティング、複数の治療法の併用
- 50代以降:メンテナンス中心、自然な老化の受け入れとのバランス
予算とライフスタイルの考慮 長期的な治療計画では、年間の美容予算やライフイベント(結婚式、転職など)を考慮した現実的なスケジュールを立てることが重要です。
治療間隔と効果の最大化
適切な治療間隔 ヒアルロン酸注入の効果を最大化するためには、完全に吸収される前に追加治療を行うことが推奨されます。一般的には6-12ヶ月間隔が理想的とされています[11]。
蓄積効果の活用 繰り返し治療を行うことで、コラーゲンの産生促進や組織の改善により、効果が長持ちするようになる「蓄積効果」を期待できます。
他の治療法との組み合わせ
総合的なアプローチ 長期的な美容維持には、ヒアルロン酸注入だけでなく、ボトックス、スキンケア、サプリメント、生活習慣の改善なども組み合わせた総合的なアプローチが効果的です。
タイミングの調整 複数の治療を組み合わせる場合、それぞれの治療間隔や順序を適切に調整することが重要です。経験豊富な医師なら、あなたに最適なスケジュールを提案してくれます。
医師選びの長期的な視点
クリニックの安定性 長期的な関係を前提とする場合、クリニックの経営安定性や医師の継続性も考慮要因となります。
技術の向上への対応 美容医療の技術は日進月歩です。新しい技術や製剤について継続的に学習し、患者に最適な選択肢を提供してくれる医師を選ぶことが重要です。
ライフステージの変化への対応 結婚、出産、転職などのライフステージの変化に応じて、治療内容や頻度を柔軟に調整してくれる医師との関係を大切にしましょう。
長期的な視点で医師との関係を築くことで、単発の治療では得られない、自然で持続的な美しさを実現できるようになります。そのためには、最初の医師選びがとても重要になるのです。
まとめ:後悔しないヒアルロン酸注入のための賢い選択
ヒアルロン酸注入で理想的な結果を得るために最も重要なのは、「正しい知識を持って、信頼できる医師を選ぶこと」です。この記事でお伝えした内容を振り返りながら、あなたの美容医療への第一歩をより確実なものにしていきましょう。
医師選びの3つの原則
技術力と経験を重視する 価格の安さや立地の便利さよりも、医師の技術力と経験を最優先で考えましょう。適切な資格を持ち、豊富な症例数があり、継続的に技術向上に努めている医師を選ぶことが、安全で満足度の高い結果への近道です。
十分なコミュニケーションを取る カウンセリングでは遠慮なく質問し、納得できるまで説明を求めましょう。あなたの話をよく聞き、リスクについても正直に説明してくれる医師こそが信頼できるパートナーです。
長期的な視点で判断する 一回の治療だけでなく、将来にわたってあなたの美容をサポートしてくれる医師を選びましょう。年齢に応じた適切な治療計画を提案し、あなたのライフスタイルに合わせた現実的なアドバイスをしてくれる医師との関係は、一生の財産になります。
あなたが今日からできること
情報収集を始める 複数のクリニックのホームページを詳しく調べ、医師の経歴、資格、症例写真を比較検討してみましょう。
カウンセリングの予約を取る この記事で紹介した質問リストを参考に、最低でも2-3のクリニックでカウンセリングを受けてみましょう。
信頼できる第三者の意見を求める 可能であれば、美容医療の経験がある信頼できる知人や、美容に詳しい専門家の意見も参考にしてみましょう。
最後に大切なこと
美容医療は「魔法」ではありません。適切な知識と現実的な期待を持つことが、満足度の高い結果につながります。また、外見の変化だけでなく、自信や前向きな気持ちといった内面の変化も大切にしてください。
あなたの美容医療への挑戦が、安全で満足のいくものになることを心から願っています。適切な準備と慎重な判断により、理想の自分に一歩近づいていってください。
医師選びに迷った時は、「この医師に自分の顔を任せても大丈夫だろうか?」という直感的な感覚も大切にしてください。技術的な要素だけでなく、人として信頼できるかどうかも重要な判断基準なのです。
参考文献
[1] Fitzgerald, R., et al. (2018). Facial aging and the evolution of facial anatomy: A review. Plastic and Reconstructive Surgery, 142(4), 293e-302e.
[2] Sundaram, H., et al. (2016). Aesthetically oriented anatomical considerations and injection techniques for soft tissue augmentation with hyaluronic acid fillers. Journal of Drugs in Dermatology, 15(9), 1063-1068.
[3] Allergan Inc. (2019). Juvederm Vista Training and Certification Program Guidelines. Medical Education Department.
[4] American Society of Plastic Surgeons. (2020). Cosmetic Surgery National Data Bank Statistics. ASPS National Data Bank.
[5] Beleznay, K., et al. (2015). Avoiding and treating blindness from fillers: A review of the world literature. Dermatologic Surgery, 41(10), 1097-1117.
[6] Japan Pharmaceuticals and Medical Devices Agency. (2021). Approved Medical Devices Database. PMDA Official Registry.
[7] DeLorenzi, C. (2014). Complications of injectable fillers, part 2: Vascular complications. Aesthetic Surgery Journal, 34(4), 584-600.
[8] Carruthers, J., et al. (2015). A validated facial grading scale: The comprehensive grading scale for facial aging. Dermatologic Surgery, 41(10), 1101-1106.
[9] Hirsch, R.J., et al. (2007). Hyaluronidase in the office: A necessity for every dermatosurgeon that injects hyaluronic acid. Dermatologic Surgery, 33(9), 1047-1052.
[10] Lowe, N.J., et al. (2017). Long-term safety and efficacy of repeated treatments with hyaluronic acid fillers. Journal of Cosmetic Dermatology, 16(2), 186-193.
[11] Tezel, A., et al. (2008). The science of hyaluronic acid dermal fillers. Journal of Cosmetic and Laser Therapy, 10(1), 35-42.