動悸(どうき) – 循環器の疾患

動悸(Palpitation)とは、普段は気づかないはずの心臓の動きを、異常に強く感じてしまう状態のことです。

私たちの体内では、心臓が絶え間なく拍動していますが、通常はその鼓動を意識することはありません。

しかし、動悸(どうき)に襲われると、胸の中で心臓が激しく暴れているような感覚や、鼓動が耳に響くほどの強さを感じます。

動悸の背景には、不整脈や心臓病が隠れている可能性もありますが、日々のストレスや強い不安感、貧血、甲状腺機能が過剰に亢進した状態など、心臓以外の要因で起こることも少なくありません。

この記事を書いた人
丸岡 悠(まるおか ゆう)
丸岡 悠(まるおか ゆう)
外科医

1988年山形県酒田市生まれ。酒田南高校卒業後、獨協医科大学(栃木)にて医師免許取得。沖縄県立北部病院、独立行政法人日本海総合病院を経て現職(医療法人丸岡医院)。

動悸の主な症状

動悸は、心臓が普段以上に速く、強く、あるいは不規則に拍動していると感じる状態を指します。

  • 心臓が胸から飛び出しそうな感覚
  • 心臓が喉まで上がってくるような感じ
  • 胸がドキドキする感覚
  • 心臓が激しく打ち付けるような感覚

動悸は安静にしていても起こる場合があり、時には前触れ無く、突然始まることもあります。

動悸に伴う身体症状

動悸は単独で発生するだけではなく、他の身体症状と同時に現れる場合があります。

動悸と並行して出現する可能性のある症状

症状詳細
息切れ呼吸が荒くなったり、息苦しさを感じたりする
めまいふらつきや立ちくらみといった感覚に襲われる
冷や汗暑い時にかく汗とは異なり、緊張したり不安になったりした時に出る汗
胸の不快感胸に圧迫感や痛みといった違和感が出る

このような症状が動悸と共に現れたときは、より深刻な状態を表している可能性があるため、医療機関を受診するようにしてください。

動悸の発症パターン

ご自身の症状の発症パターンを把握し、医療機関を受診する際に伝えるようにしてください。

  1. 突発的な発症:前触れもなく急に始まる
  2. 徐々に増強:最初は軽微な症状から始まり、次第に強くなっていく
  3. 周期的な発生:特定の時間帯や状況下で繰り返し起こる
  4. 持続時間の変動:数秒で収まるケースもあれば、数時間続くこともある

動悸の程度を判断する指標

指標軽度重度
頻度月に1〜2回程度毎日または頻繁に発生
持続時間数分以内で収まる数時間以上続く
随伴症状ほとんど見られない息切れや胸痛を伴う
日常生活への影響わずかである著しく支障をきたす

動悸は多くの場合、一時的なものであり、深刻な問題を表すものではありません。

ただし、頻繁に動悸が起こる場合や、他に症状を伴う場合には、医師の診断を受けることを推奨します。

動悸の原因

心臓や血管の問題から日々の生活習慣、心の状態まで、動悸を引き起こす原因は幅広くあります。

心臓や血管の異常が引き起こす動悸

心臓の構造や機能に異常があると、心拍が乱れたり速くなったりして、動悸として現れます。

心臓や血管の異常動悸との関わり
不整脈心臓のリズムが乱れて動悸を感じる
心臓弁膜症血液の流れが悪くなり心臓に負担がかかる
心筋症心臓の筋肉が弱くなって十分に収縮できない

以前50歳代の方が突然の動悸を訴えて病院に来られ、詳しい検査をしたところ心房細動という不整脈が見つかりました。

動悸の症状を決して軽視せず、気になる症状がある場合は医療機関を受診し、検査を受けましょう。

日々の生活習慣や環境が動悸に与える影響

  • コーヒーやお茶を飲みすぎる
  • たばこを吸う
  • 十分な睡眠をとっていない
  • ストレスがたまっている
  • 激しい運動をしすぎる

このような生活習慣や環境があると、心拍数が上がったり、不安定になったりする場合があります。

特に、コーヒーに含まれるカフェインや、たばこに含まれるニコチンは、体を興奮させて心臓の動きを速めることが知られています。

ホルモンの乱れが引き起こす動悸

ホルモンの異常は体の中の様々な働きや自律神経に影響を与え、結果として動悸を感じやすくなります。

ホルモンの異常動悸への影響
甲状腺機能亢進症体の代謝が活発になり心拍数が増える
褐色細胞腫(副腎にできる特殊な腫瘍)アドレナリンなどのホルモンが出すぎる
更年期障害女性ホルモンの減少で自律神経が不安定になる

心の状態が動悸を引き起こすことも

パニック障害や不安が強い状態が続く病気などの心の問題は、動悸を伴うことがあります。

心の状態動悸との関係
不安障害緊張しすぎて心拍数が増える
うつ病自律神経の働きが乱れる
ストレス体が興奮状態になる

その他の原因

その他の要因動悸との関連
貧血酸素を運ぶ能力が低下し心臓に負担がかかる
発熱体の代謝が上がり心拍数が増加する
低血糖体がストレス状態となり心拍数が上昇する

また、一部の薬の副作用として、動悸が起こる場合もあります。

診察(検査)と診断

動悸の診断では、症状をお聞きし体の状態を調べ、必要な検査があれば行っていきます。

問診

動悸の診察では、動悸がどのように感じるか、どのくらい続くか、どのくらいの頻度で起こるか、何かのきっかけで起こるかなどを聞いていきます。

また、他に気になる症状がないか、過去に病気をしたことがあるか、家族に似たような症状の人がいないかなども確認します。

聞き取る内容
動悸の感じ方リズムが乱れる、強く打つ
続く時間数十秒間、数時間
起こる頻度毎日、週に2〜3回
きっかけ運動した後、緊張したとき

体の状態をチェック

体温や血圧、脈拍などを測り、全身の様子を見ます。また、聴診器を使って心臓の音を聞き、不規則な拍動や異常な音がしないかを確認します。

診察のポイント

  • 脈がどのように打っているか(リズム、強さ、速さ)
  • 首の血管が膨らんでいないか
  • 手足がむくんでいないか
  • 呼吸の音に異常はないか

診断・検査

症状や体の状態から、どのような病気の可能性があるかを判断します。

考えられる病気主な症状や特徴
不整脈脈が不規則、動悸が急に始まり急に終わる
心不全息切れ、むくみ、首の血管が膨らむ
貧血疲れやすい、顔色が悪い、めまいがする
甲状腺機能亢進症汗をかきやすい、体重が減る、首の辺りが膨らむ

診断の見立てができたら、それを確かめるための検査を選びます。よく行われる検査には、心電図、血液検査、胸のレントゲン撮影などがあります。

必要に応じて、24時間心電図を記録する検査、心臓の超音波検査、運動しながら心電図を取る検査なども検討します。

ただし、動悸の原因がすぐには分からないケースもあります。そのような時は、患者さんに症状が出たときの記録をつけてもらったり、小さな心電計を持ち歩いてもらったりして、長い期間の観察をします。

動悸の治療法と処方薬、治療期間

動悸の治療方法は、原因や程度によって変わります。

生活習慣の見直しや薬による治療で、多くの場合症状を和らげることができます。

生活習慣の見直し

コーヒーやお酒を控えめにすると、動悸の起こる回数や強さを減らせる場合があります。

十分な睡眠をとる、体に合った運動を行うなども、心臓のリズムを整えるために役立ちます。

薬による治療の種類

薬の種類主な働き
β遮断薬心臓の拍動を遅くし、動悸を抑える
抗不整脈薬乱れた心拍を整える
カルシウム拮抗薬血管を広げ、心臓への負担を減らす
抗甲状腺薬甲状腺機能亢進症による動悸を抑える

処方するお薬は、体の状態や、他の病気の有無を考慮して選びます。

治療にかかる期間

多くの場合、数週間から数か月の治療で症状が良くなりますが、長い期間にわたって管理が必要な場合もあります。

一般的な治療期間の目安

原因予想される治療期間
ストレスによるもの数週間~数か月
甲状腺機能亢進症数か月~1年くらい
長く続く不整脈長期的な管理が必要
貧血によるもの貧血の改善に合わせて数か月程度

治療中の注意点

  • 規則正しい生活リズムを保つ
  • バランスの良い食事と体に合った運動を心がける
  • ストレスとうまく付き合う方法を身につける
  • 処方された薬を医師の指示通りに飲む

動悸の治療における副作用やリスク

動悸の治療に伴う主な副作用とリスクについて解説します。

薬物療法の副作用

薬剤群主な副作用注意すべき患者
β遮断薬徐脈、低血圧、疲労感高齢者、心機能低下患者
抗不整脈薬催不整脈作用、消化器症状不整脈既往歴のある患者

β遮断薬や抗不整脈薬といった心臓に作用する薬は、過度の徐脈や低血圧を招くリスクがあります。

ご高齢の方や心機能が低下している患者さんにおいては、副作用に対して特に注意します。

その他の治療のリスク

非薬物療法主なリスク発生頻度
カテーテルアブレーション出血、感染、血栓形成1-3%
電気的除細動皮膚熱傷、一過性の不整脈1% 未満

治療費について

治療費についての留意点

実際の治療費(医療費)が以下説明より高額になるケースが多々ございます。以下記載内容について当院では一切の責任を負いかねます事を予めご了承下さい。

動悸の治療費は保険適用となるため、患者さんの自己負担は3割程度になります。

動悸の治療費の概要

項目費用(概算)
心電図検査1,500円〜3,000円
血液検査3,000円〜8,000円
胸部レントゲン2,000円〜4,000円

原因別の治療費

ストレスや生活習慣が原因の場合と比べて、心疾患が原因の場合は治療費が高額になります。

  • ストレス性の動悸…カウンセリングや薬物療法で対応(5,000円〜20,000円程度)
  • 不整脈による動悸…抗不整脈薬や電気的除細動療法など(10,000円〜100,000円以上)
  • 甲状腺機能亢進症…内分泌検査や薬物療法(15,000円〜50,000円程度)
  • 心臓弁膜症…エコー検査や手術療法(100,000円〜数百万円)

高度な検査・治療の費用

重症度や複雑性によっては、より高度な検査や治療が必要です。

検査・治療費用(概算)
ホルター心電図15,000円〜25,000円
心臓カテーテル検査150,000円〜300,000円
ペースメーカー植込み200万円〜300万円

以上

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