南米出血熱(South American hemorrhagic fever)とは、南米大陸のげっ歯類が保有するウイルスによって引き起こされる感染症です。
発熱や出血、臓器不全などの重症症状を引き起こす可能性があり、致死率も高いことが知られています。
南米出血熱の発生は、アルゼンチン北部やボリビア東部などの限られた地域です。
南米出血熱の種類(病型)
南米出血熱は、南米の特定の地域で発生するウイルス性出血熱の総称であり、アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、ベネズエラなどで報告されています。
ジュニン出血熱(アルゼンチン出血熱)
ジュニン出血熱は、アルゼンチンの湿地帯で発生する疾患で、この病型の原因となるウイルスは、ジュニンウイルスと呼ばれています。
病型 | 発生国 |
ジュニン出血熱 | アルゼンチン |
マチュポ出血熱 | ボリビア |
マチュポ出血熱(ボリビア出血熱)
マチュポ出血熱は、ボリビアの特定の地域で確認されている疾患で、マチュポウイルスが原因となって発症します。
サビア出血熱(ブラジル出血熱)
サビア出血熱は、ブラジルの一部の地域で報告されている疾患です。
原因ウイルスとしてサビアウイルスが同定されています。
- ガラナイト出血熱(ベネズエラ出血熱)
- サビア出血熱(ブラジル出血熱)
- マチュポ出血熱(ボリビア出血熱)
- ジュニン出血熱(アルゼンチン出血熱)
病型 | 原因ウイルス |
ジュニン出血熱 | ジュニンウイルス |
マチュポ出血熱 | マチュポウイルス |
サビア出血熱 | サビアウイルス |
ガラナイト出血熱 | ガラナイトウイルス |
ガラナイト出血熱(ベネズエラ出血熱)
ガラナイト出血熱は、ベネズエラの限られた地域で発生が確認されている疾患で、ガラナイトウイルスが原因となって引き起こされます。
これらの病型は、それぞれ固有の原因ウイルスによって起こりますが、いずれもげっ歯類が自然宿主です。
ヒトへの感染は、げっ歯類との直接的な接触や、ウイルスに汚染された物質との接触によって起こります。
南米出血熱の主な症状
南米出血熱にかかると、ほとんどの人が発熱やさまざまな出血症状、ショック症状を示し、 重症化すると、命にかかわることがあるので注意が必要です。
主な症状
南米出血熱の代表的な症状
症状 | 概要 |
発熱 | 38度以上の高熱が数日間続きます |
出血 | 皮膚の下の出血、歯ぐきからの出血、血便など |
ウイルスに感染してから2日から21日間の潜伏期間を経て、突然高熱が出て発症し、40度近くの高熱が数日間続き、頭痛や筋肉痛、関節痛といった全身の症状が現れます。
出血症状
出血症状はこの病気の特徴で、重症になると命にかかわることがあります。
- 皮膚の下の出血
- 歯ぐきからの出血
- 血便
- 吐血
重症度 | 予後 |
軽症 | 自然に治る可能性があります |
重症 | 亡くなる確率が50%以上です |
ショック症状
重症になると、出血によって体内の血液量が減ることでショック症状が起こり、血圧が下がったり、脈拍が速くなったり、意識がもうろうとしたりします。
さらに、多臓器不全を引き起こす危険性も。
早期発見の大切さ
南米出血熱は、早期に治療を始めることが予後の改善にとって大切です。 感染が疑われたときは、すぐに病院を受診して専門医の診察を受ける必要があります。
南米出血熱の原因・感染経路
南米出血熱は、アレナウイルス科に分類されるウイルスの感染によって発症する感染症で、主な感染経路は、げっ歯類との接触を通じた感染の拡大です。
南米出血熱の原因ウイルス
南米出血熱の原因ウイルスは、アレナウイルス科に属するウイルスの1つです。
アレナウイルス科には、ラッサウイルスやリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスなども含まれます。
ウイルス名 | 属する科 |
南米出血熱ウイルス | アレナウイルス科 |
ラッサウイルス | アレナウイルス科 |
南米出血熱の原因ウイルスは、げっ歯類を自然宿主とし、げっ歯類の体内で増殖し、ウイルスに感染したげっ歯類の排泄物などを介して、ヒトへの感染が拡大します。
南米出血熱ウイルスの自然宿主
南米出血熱ウイルスの自然宿主となるげっ歯類
- ドブネズミ属
- ハツカネズミ属
- オリゾミス属
これらのげっ歯類は、南米大陸の広範囲に生息しており、ウイルスの流行地域と重なっており、げっ歯類が生息する環境下では、ウイルスに曝露されるリスクが高くなります。
南米出血熱の主な感染経路
南米出血熱の主な感染経路
感染経路 | 概要 |
げっ歯類との直接接触 | げっ歯類を触れたり、噛まれたりすることで感染 |
げっ歯類の排泄物との接触 | げっ歯類の尿や糞に含まれるウイルスが体内に侵入 |
汚染された環境での曝露 | げっ歯類の排泄物で汚染された場所でのウイルス曝露 |
げっ歯類との直接的な接触だけでなく、げっ歯類の排泄物を介した間接的な接触によっても感染が成立し、汚染された環境では、ウイルスが一定期間生存するため、感染リスクが高まります。
診察(検査)と診断
南米出血熱の診察と診断では、臨床症状と検査結果を総合的に評価することが大切です。
臨床診断では、患者さんの症状や身体所見、渡航歴などの情報を基に判断することになります。
臨床症状と身体所見
南米出血熱の初期症状は非特異的であり、発熱、頭痛、筋肉痛、倦怠感などがみられます。
症状 | 頻度 |
発熱 | 90% |
頭痛 | 80% |
筋肉痛 | 70% |
倦怠感 | 60% |
出血症状は病気の進行とともに現れ、重症例では以下のような症状がみられることがあります。
- 皮下出血
- 歯肉出血
- 消化管出血
- 腎出血
検査所見
確定診断に用いられる検査
検査法 | 検体 |
ウイルス分離 | 血液、尿 |
RT-PCR法 | 血液 |
抗体検査(IgM、IgG) | 血清 |
鑑別診断
南米出血熱との鑑別を要する疾患は、他のウイルス性出血熱(エボラ出血熱、ラッサ熱など)、マラリア、デング熱などです。
南米出血熱の治療法と処方薬、治療期間
南米出血熱の治療は、ウイルスに対する薬の投与と症状に対する治療が中心になります。
この病気では、早期の診断と速やかな治療開始が予後に大きく影響するため、できるだけ早く治療を始めることが大切です。
抗ウイルス薬
南米出血熱の治療に用いられる主な抗ウイルス薬
薬剤名 | 投与方法 |
リバビリン | 静脈内投与または経口投与 |
ファビピラビル | 経口投与 |
これらの薬は、ウイルスの増殖を抑えることで症状の改善につなげます。
対症療法
対症療法では、以下のような処置が行われます。
治療期間
南米出血熱の治療期間は、患者の症状や病状の進行度によって異なります。
病状 | 治療期間 |
軽症例 | 1〜2週間 |
重症例 | 2〜4週間 |
入院治療が必要になることもありますが、多くの患者さんは対症療法と抗ウイルス薬の投与で症状が良くなり、治癒します。
予後と再発可能性および予防
南米出血熱の治療では、予後の改善と再発の防止が大切です。
予後の改善に向けた取り組み
治療方針 | 予後への影響 |
早期の診断と治療開始 | 予後の大幅な改善 |
集中治療の実施 | 重症例の生存率向上 |
早期診断と速やかな治療開始が、予後改善の鍵となり、重症患者については、集中治療室でのケアが必要です。
再発防止のための対策
再発防止には、いくつかの効果的な対策があります。
- ウイルスの排除を確実に行う
- 免疫力の回復を促す
- 定期的な経過観察を行う
さらに、完治した後も、一定の期間は慎重にフォローアップを継続することが大切です。
フォローアップ期間 | 再発リスク |
完治後1年以内 | 比較的高い |
完治後1年以降 | 徐々に低下 |
予防方法の確立
感染予防のために重要な点
- ワクチンの開発と接種の推進
- 媒介動物の駆除と回避
- 感染リスクの高い地域での注意喚起
南米出血熱の治療における副作用やリスク
南米出血熱の治療では、抗ウイルス薬や支持療法が用いられますが、副作用やリスクが伴うことがあります。
抗ウイルス薬の副作用
抗ウイルス薬は、ウイルスの増殖を抑制し、症状を軽減するために使用されますが、吐き気、嘔吐、下痢、頭痛、発疹などの副作用を引き起こす可能性があります。
薬剤名 | 主な副作用 |
リバビリン | 貧血、白血球減少 |
ファビピラビル | 高尿酸血症、肝機能障害 |
支持療法のリスク
支持療法は、患者の症状を管理し、合併症を予防するために行われます。
療法 | 主なリスク |
輸液 | 電解質異常、浮腫 |
鎮痛剤 | 呼吸抑制、意識障害 |
免疫抑制状態による感染症リスク
南米出血熱患者は、ウイルス感染による免疫抑制状態にあるため、二次的な細菌感染や真菌感染のリスクが高くなり、これらの感染症は、治療をさらに複雑にし、回復を遅らせることがあります。
長期的な合併症のリスク
南米出血熱の治療後、一部の患者さんでは難聴、視力障害、神経学的後遺症などの合併症が発生するリスクがあります。
治療に伴う副作用やリスクを最小限に抑えるためには、医療従事者による慎重な治療アプローチが必要です。
治療費について
実際の治療費(医療費)が以下説明より高額になるケースが多々ございます。以下記載内容について当院では一切の責任を負いかねます事を予めご了承下さい。
治療費の内訳
南米出血熱の治療費は、主に入院費、検査費、投薬費、などで構成されていて、さらに、症状が重くなると集中治療室での管理が必要となり、治療費が高額になります。
項目 | 費用(目安) |
入院費 | 1日あたり5万円~10万円 |
検査費 | 10万円~30万円 |
公的医療保険の適用
南米出血熱は、公的医療保険が適用されます。
高額療養費制度
医療費が高額になった場合、高額療養費制度により自己負担額が一定の上限額に抑えられます。
所得区分 | 自己負担上限額(月額) |
一般 | 8万円~25万2千円 |
低所得者 | 3万5千円~14万円 |
治療費の目安
南米出血熱の治療費は、軽症で早期に回復した場合、数十万円程度で済む場合もありますが、重症化して長期入院が必要になると、数百万円から1千万円以上になることもあります。
以上
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