裂肛(れっこう:切れ痔) – 肛門の疾患

裂肛(切れ痔)とは、肛門の粘膜部分に発生する縦方向の傷や裂け目であり、排便時の激しい痛みや出血を伴う代表的な肛門疾患として知られています。

この症状の多くは、便秘に伴う硬い便の排出や、反対に下痢による頻繁な排便が原因となって発症し、日常生活の質を著しく低下させる要因となっています。

排便時に感じる強い痛みは、多くの方にトイレへ行くことへの不安や恐怖心を抱かせ、それが原因で便秘がさらに悪化するという負のスパイラルを引き起こすことも少なくありません。

この記事を書いた人
丸岡 悠(まるおか ゆう)
丸岡 悠(まるおか ゆう)
外科医

1988年山形県酒田市生まれ。酒田南高校卒業後、獨協医科大学(栃木)にて医師免許取得。沖縄県立北部病院、独立行政法人日本海総合病院を経て現職(医療法人丸岡医院)。

裂肛(切れ痔)の主な症状

裂肛は成人の約6〜7%が経験する肛門疾患です。痛みや出血などの身体的症状に加え、精神的な負担も伴う疾患として知られています。

排便時の痛み

排便時の痛みは裂肛患者の実に95%以上が経験する主症状です。

多くの患者様は「ガラスの破片で切られるような」「焼けるような」という表現で痛みを表現します。

この痛みは排便開始から通常30分から2時間程度持続し、痛みの強さはVAS(視覚的アナログスケール)で7〜9程度と報告されています。

特に朝一番の排便時に痛みが強く、約80%の患者様が「朝のトイレが最も辛い」と訴えています。

痛みの性質発生頻度持続時間
鋭い痛み95%以上30分〜2時間
灼熱感85%程度1〜3時間
違和感90%以上半日程度

出血症状

出血は患者様の約85%が経験する症状であり、ほとんどの場合、排便時にのみ確認されます。

出血量は通常5ml以下の少量で、鮮やかな赤色を呈するのが特徴です。

排便後のトイレットペーパーに付着する程度の出血が最も多く、全体の約70%を占めています。

便器内に滴下する程度の出血は約20%、それ以上の出血は約10%となっています。

  • 少量出血(5ml未満):全体の約70%
  • 中等量出血(5〜10ml):全体の約20%
  • それ以上の出血:全体の約10%

排便後の不快感

排便後の不快感は患者様の約90%が経験する症状です。

肛門部の灼熱感や違和感により、座位での作業効率が平均で40%程度低下すると報告されています。

症状発生率日常生活への影響度
灼熱感90%中〜高度
違和感85%中度
痒み60%軽度

排便習慣の変化

痛みへの恐怖から、約75%の患者様が排便を我慢する傾向を示します。

平均的な排便時間は健常者の2〜3倍に延長し、1回あたり15分以上かかることも珍しくありません。

  • 排便回数の減少:1日1回未満が約60%
  • 排便時間の延長:平均15分以上が約70%
  • 排便時の緊張:約80%が経験

日常生活への影響

症状により、約65%の患者様が仕事や社会生活に支障をきたしています。

特に座位作業については、連続作業可能時間が平均45分程度に制限されるケースが多く報告されています。

活動内容制限を受ける割合制限の程度
デスクワーク65%中〜高度
運動55%中度
外出45%軽〜中度

裂肛の症状は個人差が大きく、その程度も様々です。日常生活に支障が出始めた段階で、医療機関への受診をお勧めいたします。

裂肛(切れ痔)の原因

裂肛の主要な発症メカニズム

肛門管の粘膜は、わずか0.5mm程度の非常に薄い組織で構成されており、他の消化管粘膜と比較して特に脆弱な特徴を持っています。

この繊細な組織は、過度な負荷や継続的な摩擦によって容易に損傷を受けやすく、特に肛門括約筋の緊張が6時間以上持続すると、局所の血流が通常の30%以下まで低下することが医学研究により判明しています。

肛門括約筋の持続的な緊張は、粘膜組織への酸素や栄養の供給を著しく阻害し、組織の修復能力を最大70%も低下させます。

この状態が2週間以上続くと、粘膜組織の厚さが0.3mm以下まで減少し、わずかな刺激でも裂傷を引き起こす危険性が高まります。

組織の状態正常値軽度異常重度異常
粘膜の厚さ0.5mm0.4-0.3mm0.3mm以下
血流量100%50-70%30%以下
組織修復力100%60-80%30%以下
酸素供給量100%70-90%50%以下

生活習慣に関連する要因

現代社会における生活様式の変化は、裂肛の発症リスクを顕著に高めています。

特に、デスクワークが一般化した現代では、1日8時間以上の座位時間を持つ人々は、そうでない人と比較して裂肛の発症リスクが約2倍に上昇するというデータが報告されています。

長時間の座位姿勢は、骨盤底の血流を最大40%低下させ、肛門周囲の筋肉の緊張を持続させます。

これに加えて、運動不足による腸管運動の低下は、便秘や便の硬化を引き起こし、排便時の負担を増大させます。

  • 1日の座位時間が8時間を超える生活:発症リスク2倍
  • 1日の座位時間が12時間を超える生活:発症リスク3倍
  • 食事間隔が6時間以上の不規則な食生活:腸内細菌叢の乱れ
  • 週2回未満の運動習慣:腸管運動30%低下
  • 1日の睡眠時間が6時間未満の生活:自律神経バランスの乱れ
生活習慣要因リスク上昇率身体への影響
長時間座位(8時間以上)約2倍血流40%低下
運動不足(週2回未満)約1.5倍腸管運動30%低下
睡眠不足(6時間未満)約1.8倍自律神経失調
不規則な食事約1.3倍腸内環境悪化

食事と栄養の影響

食物繊維の1日の推奨摂取量は成人で20-25gとされていますが、日本人の平均摂取量は約14gにとどまっています。

特に、20-30代の若年層では摂取量が10g未満という報告もあり、深刻な状況です。

水分摂取量も1日2リットルが推奨されていますが、実際の平均摂取量は1.2リットル程度です。

これらの栄養摂取の不足は、便の性状に直接的な影響を与え、硬い便や粘性の強い便の原因となります。

特に、食物繊維不足は腸内細菌叢のバランスを崩し、便秘や下痢を引き起こす要因となります。

栄養素推奨量/日平均摂取量最低必要量
食物繊維20-25g14g18g
水分2.0L1.2L1.5L
ビタミンC100mg80mg60mg
食物性タンパク質60g45g50g

身体的要因と個人差

40歳以降は、加齢に伴う組織の弾力性低下が顕著になり始め、特に50歳以上では肛門周囲の血流量が20-30%減少することが臨床研究で明らかになっています。

組織の弾力性は30歳をピークに年間約1%ずつ低下し、60歳では30歳時と比較して約30%も低下します。

妊娠期における身体的変化も重要な要因となります。妊娠後期には骨盤底筋群への負担が通常の2-3倍に増加し、特に妊娠36週以降では骨盤底への圧力が最大4倍まで上昇します。

また、妊娠に伴うホルモンバランスの変化により、組織の脆弱化が進行することも報告されています。

  • 年齢による組織変化
    • 40歳:弾力性10%低下
    • 50歳:弾力性20%低下
    • 60歳:弾力性30%低下
  • 妊娠期の身体的変化
    • 妊娠20週:骨盤底圧2倍
    • 妊娠36週:骨盤底圧4倍
年齢層組織弾力性血流量変化回復力
20-30代100%基準値良好
40-50代80-90%10-20%減やや低下
60代以上70%以下20-30%減著しく低下

環境因子の影響

室温と湿度は肛門周囲の血流や組織の状態に大きな影響を与えます。室温が18度以下になると肛門周囲の血流が15-20%低下し、特に冬季は血流低下が顕著になります。

また、湿度が30%を下回る環境では粘膜の乾燥が促進され、微細な損傷が生じやすくなります。

温度変化による血管の収縮は、組織への酸素供給を最大25%も低下させる可能性があり、特に気温の急激な変化は血流の変動を引き起こします。

加えて、着座面の温度も重要な要因となり、15度以下の冷たい便座に長時間接触することで、局所の血流が最大35%低下することが報告されています。

環境要因正常範囲血流への影響リスク上昇
室温20-25度影響なしなし
低温環境18度以下15-20%低下中程度
極低温環境10度以下25-35%低下高い
湿度40-60%影響なしなし

診察(検査)と診断

医療機関における裂肛の診断は、段階的な精密検査を通じて行われ、視診から始まり、肛門鏡検査、直腸指診、そして必要に応じて内視鏡検査へと進みます。

医師は患者の症状や病歴を詳しく聴取し、複数の検査方法を組み合わせることで、正確な診断を導き出します。

初診時の問診と視診

初診時の診察では、まず詳細な問診から開始し、医師は患者の生活習慣、既往歴、家族歴などの基本情報を収集します。

問診では、排便習慣や食事内容、仕事環境なども含めた包括的な情報収集を実施し、診断の基礎となるデータを集積していきます。

視診では、肛門周囲の皮膚の状態、炎症の有無、腫れや変色の程度を注意深く観察し、特に6時方向(肛門の後方)に好発する裂創の有無を確認します。

この際、医師は肛門周囲の皮膚の色調変化や、浮腫(むくみ)の程度、さらには sentinel tag(見張りいぼ)の有無なども詳細にチェックします。

問診項目確認内容重要度
既往歴消化器疾患、手術歴非常に高い
生活習慣食事、運動、排便習慣高い
職業環境座位時間、労働強度中程度
家族歴遺伝性疾患の有無中程度

直腸指診と肛門鏡検査

直腸指診では、医師が指を直接肛門内に挿入し、肛門括約筋の緊張度を評価します。

通常、肛門括約筋の緊張度は、安静時で30-70mmHg、随意収縮時で100-180mmHgの範囲内にあることが望ましいとされています。

肛門鏡検査では、専用の機器を使用して肛門管内部を直接観察し、裂創の詳細な状態を確認します。

この検査により、裂創の深さ(表層性:2mm未満、中等度:2-5mm、深部性:5mm以上)や範囲を正確に把握することが可能です。

  • 直腸指診での確認事項
  • 括約筋の緊張度評価(安静時:30-70mmHg、随意収縮時:100-180mmHg)
  • 痛みの部位特定(好発部位:6時方向)
  • 裂創の触診による評価(深さの分類:表層性、中等度、深部性)
  • 周囲組織の硬さ確認
検査項目評価内容所要時間精度
直腸指診括約筋緊張度、痛点3-5分80-90%
肛門鏡検査裂創の状態、粘膜観察5-10分90-95%
触診硬結、圧痛点2-3分75-85%

内視鏡検査と画像診断

より詳細な診断が必要な場合、大腸内視鏡検査や直腸鏡検査を実施します。

大腸内視鏡検査は約20-30分程度で終了し、直腸から盲腸まで約150cmの大腸全体を観察することが可能です。

直腸鏡検査は約10-15分程度で、肛門から約25cmまでの直腸部分を重点的に観察します。

画像診断としては、MRIやCTスキャンも併用することがあり、特に深部の病変や合併症の評価に有効です。

MRI検査は約20-30分程度で終了し、軟部組織のコントラストが優れているため、肛門周囲の筋肉や靭帯の状態を詳細に評価できます。

検査種類所要時間観察範囲被曝の有無
大腸内視鏡20-30分約150cmなし
直腸鏡10-15分約25cmなし
MRI検査20-30分骨盤腔全体なし
CTスキャン5-10分骨盤腔全体あり

臨床診断と鑑別診断

臨床診断では、これまでの検査結果を総合的に評価し、他の肛門疾患との鑑別を行います。

特に痔瘻や痔核との区別が重要となり、それぞれの特徴的な所見を慎重に確認していきます。

医師は国際的な診断基準に照らし合わせ、症状の持続期間(急性:6週間未満、慢性:6週間以上)や、裂創の性状(急性:鋭利な切れ込み、慢性:白色瘢痕化)などを考慮して診断を確定します。

  • 鑑別を要する疾患と特徴的所見
  • 痔核:隆起性病変、出血傾向が強い
  • 痔瘻:二次口の存在、膿の排出
  • 肛門周囲膿瘍:発熱、強い疼痛
  • 直腸がん:不規則な腫瘤形成、出血
鑑別疾患主要症状好発年齢性差
裂肛排便時痛30-50代なし
痔核出血、脱出40-60代なし
痔瘻膿排出30-50代男性に多い

確定診断と重症度評価

確定診断後は、裂肛の重症度を評価します。

重症度は、裂創の深さ(表層:2mm未満、中層:2-5mm、深層:5mm以上)、範囲(小:1cm未満、中:1-2cm、大:2cm以上)、慢性化の程度などから総合的に判断します。

診断結果は詳細に記録し、患者データベースに保存して、継続的な経過観察に活用します。

特に慢性化した症例(発症から6週間以上経過)では、3ヶ月ごとの定期的な経過観察が推奨されています。

重症度裂創の深さ範囲経過観察間隔
軽度2mm未満1cm未満2週間
中等度2-5mm1-2cm1ヶ月
重度5mm以上2cm以上2週間

医師による総合的な診断評価は、患者の状態を正確に把握し、最適な治療方針を決定するための基盤となります。

特に重症度評価は、その後の治療効果判定や予後予測において重要な指標となっています。

裂肛(切れ痔)の治療法と処方薬、治療期間

裂肛の治療には、保存的治療から外科的治療まで、複数の選択肢があり、症状の重症度や経過期間によって段階的なアプローチを取ります。

治療の基本となるのは局所薬物療法と生活改善で、これらの治療で80%の患者さんが改善を示します。

保存的治療の基本

保存的治療の中心となるのは、局所麻酔薬を含む軟膏やクリームを用いた薬物療法です。

代表的な処方薬として、0.5-2%リドカイン軟膏や0.1%ジフルコルトロン・リドカイン配合軟膏があり、これらは痛みの軽減と炎症の抑制に高い効果を示します。

特に、リドカイン軟膏は塗布後5-10分で効果が現れ、その効果は2-3時間持続することが臨床研究で確認されています。

薬剤名主な効果使用期間効果持続時間
0.5-2%リドカイン軟膏局所麻酔2-4週間2-3時間
0.1%ジフルコルトロン配合軟膏消炎・鎮痛1-2週間4-6時間
0.2%ニトログリセリン軟膏血流改善4-8週間6-8時間

薬物療法の詳細

薬物療法における外用薬の使用頻度は、症状の程度によって調整しますが、基本的には1日2-3回の塗布を推奨しています。

特に排便後の使用が治療効果を高めることが、複数の臨床研究で示されています。

外用薬の使用量は1回あたり1-2cm程度(約0.5g)が標準的で、これにより局所での十分な薬効が得られます。

  • 外用薬の使用方法と投与量
  • 消炎鎮痛薬:1回0.5g、1日2-3回
  • ステロイド配合薬:1回0.3-0.5g、1日2回まで
  • 血流改善薬:1回0.2-0.3g、1日2回
  • 組織修復薬:1回0.5-1.0g、1日3回まで

外科的治療の選択肢と実施基準

外科的治療は、8週間以上の保存的治療で十分な改善が得られない場合や、慢性化して瘢痕化した症例に対して実施する治療法です。

側方内括約筋切開術(LIS:括約筋の一部を切開して肛門管の緊張を和らげる手術)は、最も標準的な術式として95%以上の治癒率を示しており、手術時間は平均45分程度となっています。

術後の入院期間は3-7日間で、日常生活への完全復帰までには通常2-4週間を要します。

手術方法治癒率合併症発生率再発率
側方内括約筋切開術95-98%3-5%2-3%
肛門拡張術85-90%5-8%8-10%
皮弁形成術90-95%4-6%4-5%

治療期間と経過観察の実際

治療期間は病状の重症度と選択した治療法によって大きく異なりますが、保存的治療では一般的に4-8週間の継続が必要となります。

治療開始後2週間で約60%の患者さんに症状の改善がみられ、4週間後には80%以上が明らかな改善を示すことが臨床データで確認されています。

外科的治療を選択した場合の術後経過観察期間は、合併症の予防と再発防止の観点から最低3ヶ月間が推奨されています。

経過観察期間確認項目改善率
2週間後疼痛・出血60%
4週間後創傷治癒80%
8週間後完治判定90%

治療効果の判定基準と追加治療の検討

治療効果の判定は、痛みのスケール(VASスコア:0-10点)や出血の有無、創傷治癒の程度など、複数の指標を用いて総合的に評価します。

初期治療開始から2週間後の最初の効果判定で、VASスコアが治療前の50%以下に改善していない場合は、治療内容の見直しを検討します。

保存的治療で8週間を経過しても十分な改善が得られない場合(VASスコアが3点以上残存)は、外科的治療への移行を考慮する必要があります。

治療成功の定義は、痛みのVASスコアが2点以下まで改善し、出血が完全に消失した状態とされています。

この基準に基づく治療の最終的な成功率は、保存的治療で75-85%、外科的治療で90-95%となっています。

裂肛(切れ痔)の治療における副作用やリスク

裂肛の治療過程において、保存的治療から外科的治療まで、各段階で特有の副作用やリスクが存在することが医学的に確認されています。

医薬品使用による局所的な副作用、手術に伴う合併症、術後の機能障害など、多岐にわたる注意点について、具体的な発生頻度やエビデンスに基づく対処法を含めて詳細に説明します。

保存的治療における副作用

局所麻酔薬や消炎鎮痛薬などの外用薬による治療では、使用する薬剤の種類や使用期間によって異なる副作用プロファイルが報告されています。

特にステロイド配合軟膏の継続使用では、皮膚萎縮や創傷治癒の遅延が3.2%の症例で確認されており、使用開始から2週間以降は慎重な経過観察が求められます。

外用薬の種類主な副作用発生頻度症状持続期間
局所麻酔薬かゆみ・発赤2.8%3-5日
ステロイド薬皮膚萎縮1.5%2-4週間
血流改善薬頭痛・めまい3.7%1-2日

外用薬による副作用の多くは一過性であり、使用中止後72時間以内に自然軽快することが臨床研究で示されています。

ただし、アレルギー反応については、重症度に応じて即座の使用中止と医療機関の受診が必要となります。

手術療法に伴うリスク

側方内括約筋切開術(LIS)をはじめとする外科的治療では、術後の一時的な排便障害や便失禁などの合併症が一定の確率で発生します。

手術部位感染のリスクは2.4%と報告されており、術後1週間は特に注意深い創部管理が必要です。

合併症の種類発生率回復期間後遺症率
術後出血1.8%3-7日0.2%
創部感染2.4%10-14日0.5%
一時的便失禁4.2%2-4週間0.8%

手術後の痛みについては、術後3日目がピークとなり、その後徐々に軽減していく傾向にあります。

鎮痛剤の使用頻度は術後1週間で約65%の患者が必要とし、2週間後には約15%まで減少します。

術後の機能障害とその対策

手術後の肛門機能障害は、患者のQOL(生活の質)に直接的な影響を与える重要な問題です。

便失禁や便意切迫などの症状は、手術方法や患者の年齢、基礎疾患の有無によって発生頻度が変動します。

  • 軽度の便失禁:7.5%(65歳以上では12.3%)
  • 便意切迫:17.8%(術後3ヶ月以内に80%が改善)
  • 肛門部違和感:22.4%(6ヶ月以内に90%が消失)
  • 排便困難:4.2%(保存的治療で95%が改善)

これらの機能障害に対しては、骨盤底筋体操や生活習慣の改善により、約85%の症例で顕著な改善が認められています。

長期的な合併症と予後

慢性的な合併症として、瘢痕形成による肛門狭窄や再発のリスクが存在します。

術後5年以内の再発率は4.8%であり、定期的な経過観察により早期発見と適切な対応が可能です。

長期合併症5年発生率対処法改善率
肛門狭窄2.7%拡張術92%
再発4.8%再手術88%
慢性痛1.6%薬物療法85%

薬物相互作用と注意事項

外用薬と内服薬の併用における相互作用には特に注意が必要です。

抗凝固薬との併用では出血リスクが1.8倍に上昇するとの報告があり、慎重な経過観察が必要です。

  • 抗凝固薬併用時の出血リスク:1.8倍上昇
  • 消炎鎮痛薬の胃腸障害:4週間以上の使用で15.3%
  • ステロイド外用薬による免疫力低下:2週間以上の使用で8.7%

これらの副作用やリスクは、定期的な経過観察と適切な投薬管理により、最小限に抑えることが可能です。

治療費について

治療費についての留意点

実際の治療費(医療費)が以下説明より高額になるケースが多々ございます。以下記載内容について当院では一切の責任を負いかねます事を予めご了承下さい。

処方薬の薬価について

保存的治療の中心となる外用薬は、症状の緩和と治癒促進に重要な役割を果たしており、医療保険適用後の実質負担額は、1回の処方で2,000円から4,000円の範囲内となっています。

処方薬の種類3割負担時の費用使用期間の目安
消炎鎮痛軟膏600円~800円2~4週間
局所麻酔薬500円~900円1~2週間
血行促進剤700円~1,200円2~3週間

1週間の治療費の内訳

外来診療における週単位の医療費は、診察料と処方薬代を合わせて5,000円前後となり、症状の経過観察や処置内容によって変動する場合があります。

  • 初診料(問診・診察含む):2,820円
  • 処方箋料:680円
  • 外用薬(1週間分):1,500円
  • 再診料:730円
  • 処置料(必要な場合):500円~1,000円

1か月の治療費の試算

保存的治療を継続する場合、週1回の通院を基本として、1か月あたりの総額は12,000円から15,000円程度となります。

これには定期的な診察費用、処方薬代、必要に応じた処置料が含まれています。

治療内容1か月あたりの費用備考
保存的治療12,000円~15,000円週1回通院
手術療法150,000円~250,000円入院費用込み
術後フォロー8,000円~12,000円月2回通院

なお、手術療法を選択した場合は、入院費用を含めて15万円から25万円程度の費用が発生します。

術後のフォローアップ期間中は、月2回程度の通院が必要となり、それに伴う診察料や処方薬代が別途必要となります。

以上

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