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副鼻腔炎の症状と治療|耳鼻咽喉

みなさんこんにちは。「先生、鼻が詰まってずっと治らないんですけど、これって副鼻腔炎ですか?」と聞かれることが、本当に多くなりました。特にこの季節は花粉も飛んでいますし、風邪のあとに「なんか違う鼻づまり」が続いている方が続々といらっしゃいます。

本記事は教育的情報提供を目的としたものであり、個別の診断・治療を行うものではありません。気になる症状がある方は、必ずかかりつけ医や耳鼻咽喉科専門医にご相談ください。

この記事を書いた人
丸岡 悠(まるおか ゆう)
丸岡 悠(まるおか ゆう)
外科医

1988年山形県酒田市生まれ。酒田南高校卒業後、獨協医科大学(栃木)にて医師免許取得。沖縄県立北部病院、独立行政法人日本海総合病院を経て現職(医療法人丸岡医院)。

副鼻腔炎とは:定義と概要

そもそも「副鼻腔」って何か、改めて整理させてください。顔の骨の中には空洞があって、それが「副鼻腔」です。全部で4つのペアがあります。①目と目の間にある「篩骨洞」、②額の奥の「前頭洞」、③鼻の奥の深いところにある「蝶形骨洞」、④頬の奥の「上顎洞」です。この空洞は薄い粘膜と繊毛で覆われていて、分泌された粘液が絶えず鼻腔へと流れ出ています。

ところがウイルスや細菌の感染、アレルギーなどが引き金になって粘膜が腫れると、この「排泄口」がふさがれます。そうすると副鼻腔の中に粘液や膿がたまって、あの「顔が重い感じ」「鼻づまり」「後鼻漏(喉に鼻水が流れ落ちる)」といった症状が出てくるわけです。これが副鼻腔炎です。「蓄膿症」という言葉の方が馴染み深い方も多いと思いますが、蓄膿症は副鼻腔炎の中でも特に膿がたまった状態を指す古い呼び方で、医学的にはほぼ同じ意味で使われています。

副鼻腔炎は大きく「急性副鼻腔炎」と「慢性副鼻腔炎」に分けられます。急性は発症から4週間以内のもので、ほとんどが風邪などのウイルス感染に続いて起こります。慢性は12週間以上症状が続くものを指していて、こちらは治療が長引くケースが多いのです。2020年に改訂されたEPOS(欧州副鼻腔炎・鼻茸のポジションペーパー)というガイドラインでも、この12週間という定義が国際的な基準として明確化されました[1]。

疫学データと日本の現状

副鼻腔炎がどれほど一般的な病気かというと、アメリカでは年間約3,100万人が罹患すると言われています。日本でも慢性副鼻腔炎の有病率は成人の約15〜17%という報告があります。つまり10人に1〜2人はこの病気を抱えているわけです。

でも僕が最近、診療の中でとても気になっているのは「好酸球性副鼻腔炎」の増加です。これは日本で2015年に指定難病(第306号)に認定されたタイプの慢性副鼻腔炎で、従来の副鼻腔炎とは全く違う性質を持っています。日本では独自のJESREC(日本鼻科学会研究班)スタディが行われて、診断基準が作成されています[5]。血中好酸球の割合、CT上での篩骨洞優位の影、両側性病変、鼻茸の有無を組み合わせたスコアで診断するのです。僕が外来で「これは専門の耳鼻科に紹介しなければ」と感じるケースの多くは、このタイプが疑われる場合です。

急性副鼻腔炎については、風邪をひいた方の約0.5〜2%が細菌性副鼻腔炎に移行するとされています。逆に言えば、風邪の後の「顔の痛み」「鼻水の色の変化」は副鼻腔炎のサインかもしれないのです。年齢層で見ると子供に多い印象がありますが、実際は成人でも非常に多く、特に花粉症やハウスダストアレルギーを持っている方はリスクが上がります。

症状と臨床所見

急性副鼻腔炎の典型的な症状から話しましょう。まず黄色や緑がかった「膿性の鼻水」が出てきます。普通の透明な鼻水から色がついてくるのは「細菌が増えているサイン」と思っていただいていいです。そして「顔の痛み・重さ・圧迫感」が出ます。特に頬の奥、額の奥、目の奥あたりに感じる鈍い痛みが特徴的で、前に頭を傾けたり、階段を下りたりするときに痛みが増す方も多いのです。これに「鼻づまり」「嗅覚の低下」「発熱(38度前後)」「全身の倦怠感」も伴います。症状が出てから7〜10日以上続いて、しかも悪化している場合は要注意です。

ではなぜ慢性副鼻腔炎は様相が変わるのか?慢性になると急性ほどの激しい痛みは薄れて、代わりに「後鼻漏(こうびろう)」が前面に出てきます。喉の奥に鼻水がたれてくる感覚、朝起きたときの喉の不快感、慢性的な咳、なんとなく鼻が詰まっている感じ。これらが何ヶ月も続くのです。嗅覚障害も慢性化するほど改善が難しくなります。「においが全くわからなくなった」という方が来院されたとき、特に好酸球性副鼻腔炎を疑うことがあります。このタイプでは両側に鼻茸(鼻ポリープ)ができやすく、嗅覚障害が特に強いのが特徴です。

ちなみに慢性副鼻腔炎による後鼻漏は「慢性の咳の原因」としてとても重要で、「もう何ヶ月も咳が続く」という患者さんを診るとき、副鼻腔炎が背景にないか確認するのは内科医としての重要な視点なのです。

原因とリスク要因

副鼻腔炎の原因はひとつではなくて、ウイルス、細菌、アレルギー、真菌、解剖学的な問題などいろんな要素が絡み合っています。急性副鼻腔炎の最大の原因はウイルス感染、つまり風邪です。ライノウイルス、インフルエンザウイルス、RSウイルスなどが上気道に感染すると、副鼻腔の粘膜も腫れて排泄口がふさがります。そのまま数日で治る方が多いのですが、約2%では二次的に細菌が増殖して細菌性副鼻腔炎になります。原因菌として多いのが肺炎球菌やインフルエンザ菌、モラクセラ菌などです。

慢性副鼻腔炎のリスク要因について整理すると、①アレルギー性鼻炎を持っている方は副鼻腔の粘膜も慢性的に腫れやすく、排泄障害が起きやすいのです。②鼻中隔弯曲症(鼻の仕切りが曲がっている)や鼻茸といった解剖学的な異常があると鼻腔内の空気の流れが乱れて炎症が長引きます。③タバコの煙は副鼻腔の繊毛運動を障害します。喫煙習慣がある方の慢性副鼻腔炎は治療が難しいというのが僕の実感です。④気管支喘息との合併も多く、「鼻と気管支は一つの気道」という概念で捉えることが大切なのです。⑤免疫力の低下も影響します。糖尿病や免疫抑制剤を使用している方は要注意です。

それから「歯性上顎洞炎」というのもあります。上の奥歯の根っこが上顎洞に近いために、歯の感染が副鼻腔炎を引き起こすケースがあります。片側だけの副鼻腔炎で歯の痛みを伴う場合は、歯科にも相談する必要があるのです。内科で「副鼻腔炎」と診断された方が、実は歯が原因だったというケースを何度か経験しています。

診断と検査の流れ

副鼻腔炎の診断は、まず問診と視診から始まります。「鼻水の色は?」「いつからどんな症状が?」「熱は出ているか?」「以前に副鼻腔炎と診断されたことはあるか?」といった情報が非常に大切です。そして耳鼻科では「鼻腔内視鏡検査」が行われます。細いカメラを鼻の穴から入れて、粘膜の腫れ具合、鼻水の性状、鼻茸の有無などを直接確認します。患者さんに「鼻にカメラ入れるんですか?」と驚かれることもありますが(笑)、一般的には短時間で終わります。

「画像検査」も重要です。X線(レントゲン)では副鼻腔内の粘膜肥厚や液体貯留を大まかに確認できますが、詳細な評価には限界があります。より正確に見るにはCT(コンピューター断層撮影)が有効で、どの副鼻腔がどの程度炎症を起こしているかを三次元的に把握できます。慢性副鼻腔炎が疑われる場合や手術を検討する場合には必須の検査になります。EPOS 2020でも、適切なCT評価が慢性副鼻腔炎の診断・治療方針決定に不可欠と強調されています[1]。

「細菌培養検査」は抗菌薬が効きにくいケースや重症の場合に行います。好酸球性副鼻腔炎が疑われる場合は、血液検査で「好酸球の数」を調べることもあります。JESRECスタディの診断スコアでは血中好酸球の割合が重要な指標になっていて[5]、これが著しく高い場合は指定難病に該当する可能性があります。

急性副鼻腔炎の治療

「とにかく抗菌薬を出してもらえれば治る」と思っている方が多いのですが、実はそんなに単純ではないのです。急性副鼻腔炎のほとんどはウイルス性なので、原則として抗菌薬は不要です。2012年にIDSA(米国感染症学会)が発表したガイドラインでも、症状の持続期間と重症度によって抗菌薬適応を厳密に判断するよう明確に示されています[3]。症状が7〜10日以内で激しい悪化がなければ、対症療法で十分なケースがほとんどなのです。

対症療法として使われるのは、鼻腔洗浄(生理食塩水での洗鼻)、点鼻ステロイド薬、解熱鎮痛薬、粘液溶解薬などです。このうち鼻腔洗浄については2016年のコクランレビューでも有効性が示されていて[4]、特に大量の高張生理食塩水を使う方法が慢性副鼻腔炎の症状改善に有効だという証拠が蓄積されています。

では抗菌薬が必要なのはいつかというと、症状が7〜10日以上続いて改善しないか悪化している場合、高熱(39度以上)・強い顔面痛・目の周りの腫れといった重症サインがある場合、免疫が低下している方の場合などです。この場合はアモキシシリンが第一選択になることが多いです[3]。薬局で売られている「市販の鼻炎薬」は症状を和らげる効果はありますが、根本的な治療にはなりません。特に「血管収縮薬」を含む点鼻薬を3〜5日以上連続使用すると「薬剤性鼻炎」を引き起こして、かえって鼻詰まりが悪化することがあります。

慢性副鼻腔炎の治療

慢性副鼻腔炎の治療はより複雑です。日本で長年行われてきた「マクロライド少量長期投与療法」があります。これはクラリスロマイシンという抗菌薬を通常の半量で2〜3か月間使い続ける方法で、抗菌効果よりも抗炎症・粘液調整効果を狙っています。副鼻腔の粘膜環境を改善するという発想で、もともと日本が世界に先駆けて確立した治療法なのです。この治療のメカニズムについては近年のレビューでも詳しく解説されています[6]。ネブライザー療法(薬液の吸入)やスプレー式点鼻ステロイドも組み合わせて行います。

そして内科的な治療で改善しない場合は「内視鏡下副鼻腔手術(FESS)」が選択されます。鼻の穴から内視鏡を入れて副鼻腔の炎症した粘膜や鼻茸を取り除き、副鼻腔の「排泄口」を大きく開放します。昔の「口の上を切って膿を出す」手術と違って切開跡が顔に残らず、術後の生活の質は大きく改善します。手術後の成功率は比較的高くて、7〜8割の患者さんで症状の顕著な改善が報告されています[1]。ただし術後も定期的な外来でのケアが必要です。

治療費については、急性副鼻腔炎で耳鼻科に通院して薬をもらう場合は3割負担で1回の受診が1,500〜3,000円程度、これに薬代が加わります。内視鏡下副鼻腔手術(FESS)は健康保険が適用されて、両側の手術の場合は入院費込みで自己負担が3割で10〜20万円程度が目安です。高額療養費制度を利用すると所得に応じて上限が設けられるので、事前に「限度額適用認定証」を取得しておくことをお勧めします。

好酸球性副鼻腔炎という難病

好酸球性副鼻腔炎は、従来の慢性副鼻腔炎とは別物と考えた方がいい疾患です。2型炎症(IL-4、IL-13、IL-5などのサイトカインが主役の炎症)が引き起こす病態で、マクロライド療法が効きにくく、手術後の再発率も高いのが特徴です。アスピリンなどの非ステロイド性抗炎症薬に過敏な方(アスピリン不耐性)や気管支喘息を合併している方に多く見られます。

そしてこの疾患に対して近年、画期的な治療薬が登場しました。「デュピルマブ(デュピクセント)」という生物学的製剤です。IL-4とIL-13の受容体をブロックする注射薬で、2019年に発表された第3相試験(SINUS-24およびSINUS-52試験)では、重症の慢性副鼻腔炎患者さんにおいて鼻茸のサイズ縮小、CT上の副鼻腔陰影の改善、症状スコアの有意な改善が示されました[2]。日本でも2020年に慢性副鼻腔炎に対して保険適用となっています。

ただし費用が高く、月額で数十万円になることもあります。好酸球性副鼻腔炎は指定難病(第306号)なので、医療費助成制度の対象になっています。診断が確定して申請が通れば、医療費の自己負担が月額2,500〜30,000円(所得区分による)に抑えられます。デュピルマブを使う場合は特にこの難病申請の手続きを早めに進めることが重要なのです。

正直に言うと、好酸球性副鼻腔炎の診断と治療は専門性が高くて、内科医である僕が「これだ」と確定診断できるものではありません。JESRECスコア[5]を参考にしながら、疑わしい場合は耳鼻咽喉科専門医に紹介するというのが僕のスタンスです。

予後と経過の実際

「副鼻腔炎って、ちゃんと治りますか?」と聞かれたとき、僕は「急性なら9割以上が治ります。でも慢性になると話が変わります」とお答えするようにしています。

急性副鼻腔炎の予後は基本的に良好で、適切な治療を行えば大多数は2〜4週間で改善します。ただ「治った気がして薬を途中でやめてしまう」方がとても多いのです。これが再燃や薬剤耐性菌をつくる原因になるので、処方された期間はきちんと飲み切ってほしいと思います。

慢性副鼻腔炎の予後は患者さんによってばらつきがあります。マクロライド療法が著効する方は2〜3か月で大きく改善しますが、アレルギーが強い方や解剖学的な問題がある方は内科的治療だけでは不十分なことも多いのです。好酸球性副鼻腔炎は再発率が高く、手術後も鼻茸が再び生えてくることが多いのが現状です。ただ、デュピルマブの登場で「薬でコントロールしながら生活の質を保つ」という選択肢が生まれたことは大きな進歩だと感じています。

僕自身、副鼻腔炎の経過を長期で診ていると「再発の繰り返しに疲れて治療から離れてしまう方」が一定数いることが気になっています。でもここで治療を諦めてしまうと、嗅覚障害が固定してしまうリスクがあります。「においがわからなくなった」という方が数年後に来院されたとき、「もっと早く来てほしかった」と感じることがあるのです。

治療に伴うリスクと副作用

副鼻腔炎の治療は一般的に安全なものが多いのですが、使う薬や治療法によって注意すべき点があります。抗菌薬については下痢や腹痛、アレルギー反応(じんましん、ひどい場合はアナフィラキシー)が代表的な副作用です。ペニシリン系のアモキシシリンはペニシリンアレルギーのある方には使えません。マクロライド系のクラリスロマイシンは肝機能障害がまれに出ることがあり、他の薬との相互作用にも注意が必要です。

点鼻ステロイドについては、全身への吸収が少ないので比較的安全ですが、長期使用で鼻出血が増えることがあります。正しい使い方(鼻腔の側壁に向けて噴霧する)を守れば問題ないケースがほとんどです。

手術(FESS)のリスクとしては、出血、感染、副鼻腔周囲の構造物への損傷(眼窩や頭蓋底が近いため)が挙げられます。経験豊富な術者が行えばこれらのリスクは非常に低いのですが、技術依存の部分があることは事実です。術後は鼻腔内の痂皮(かさぶた)除去のための通院が数週間から数か月必要になります。デュピルマブ(デュピクセント)の場合は注射部位の反応、結膜炎、好酸球増加症がみられることがありますが、重篤な副作用の頻度は比較的低く、効果との兼ね合いで多くの患者さんが恩恵を受けています[2]。

日常生活のセルフケア

副鼻腔炎の管理で僕がいつも強調しているのは「自分でできるケアを毎日続けることの大切さ」です。薬だけに頼るのではなく、日常生活の中での「環境調整」が症状を大きく左右するのです。

「鼻腔洗浄(鼻うがい)」は非常に効果的なセルフケアです。コクランレビューの知見でも、大量の高張生理食塩水を使う鼻腔洗浄が慢性副鼻腔炎の症状改善に有効と示されています[4]。市販のネティポットや鼻うがいキットを使うと手軽です。水温は体温に近い37度前後が理想で、必ず精製水か一度沸騰させた水を使ってください。水道水をそのまま使うと感染リスクがあります。始めは少し違和感があるかもしれませんが(笑)、慣れると爽快感があります。

「室内環境の湿度管理」も大切です。副鼻腔の粘膜は乾燥に弱く、乾燥するとますます炎症が悪化します。室内の湿度は40〜60%を目安に保てるとよいです。加湿器を使う場合は定期的なクリーニングを忘れずに。カビが繁殖するとかえって有害なのです。

アレルギーがある方はアレルゲンの管理が重要です。花粉症の方は花粉の多い時期のマスク着用や外出後のうがい・洗顔を徹底してください。ハウスダスト・ダニが原因の方は寝具の洗濯を週1回以上、排気効率の良い掃除機での掃除が基本です。「タバコを吸っている方」には特に強くお伝えしたいのですが、喫煙は副鼻腔炎を悪化させる最も強力なリスク要因のひとつです。禁煙することで副鼻腔炎の改善速度は明らかに変わります。

飛行機に乗るときの「気圧変動」も意外な落とし穴です。副鼻腔炎の症状が強い時期に飛行機に乗ると、着陸時の急激な気圧変化で副鼻腔に強い痛みが出ることがあります(航空性副鼻腔炎)。症状が強い時期の長時間フライトは避けるに越したことはありません。

専門医の選び方と医療費

副鼻腔炎は耳鼻咽喉科の領域になります。特に慢性化している場合や、好酸球性副鼻腔炎が疑われる場合、手術を検討している場合は「耳鼻咽喉科専門医」を受診することをお勧めします。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の専門医制度があって、学会のホームページから地域の専門医を検索できます。副鼻腔炎の治療では「内視鏡下手術の経験数」も重要な指標で、特に慢性副鼻腔炎で手術を検討している場合は年間何件くらい副鼻腔手術を行っているか確認することをお勧めします。

好酸球性副鼻腔炎が疑われる場合は、難病の診断・申請に慣れた「難病指定医」の資格を持つ医師に診てもらうことが大切です。難病申請の手続きは初めてだと複雑に感じることもありますが、適切な医師のもとではスムーズに進められます。

そして、これは僕の個人的な考えですが、副鼻腔炎の治療は「長期戦」になることが多いだけに「話しやすさ」と「通いやすさ」が実は一番大事だと感じています。処置や検査の内容をきちんと説明してくれるか、症状が変化したときにすぐ相談できる環境があるか。治療が難渋したときは専門性の高い施設への紹介を遠慮せずに求めてください。セカンドオピニオンも有効な選択肢です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 副鼻腔炎と蓄膿症は同じ病気ですか?

A1. ほぼ同じ意味で使われています。「蓄膿症」は副鼻腔に膿がたまった状態を指す通俗的な表現で、医学用語としては「副鼻腔炎」が正式な呼び方です。特に慢性化したものを「慢性副鼻腔炎(蓄膿症)」と呼ぶことが多いです。

Q2. 風邪が治っても鼻水の色が黄緑のままです。受診すべきですか?

A2. 受診をお勧めします。風邪から10日以上経っても黄緑色の鼻水が続く場合、細菌性の副鼻腔炎に移行している可能性があります。顔の痛みや発熱が伴う場合は特に早めに耳鼻科を受診してください。

Q3. 市販の鼻炎薬で副鼻腔炎は治りますか?

A3. 症状を和らげる効果はありますが、根治治療にはなりません。特に「血管収縮薬」を含む点鼻薬は連続使用が3〜5日を超えると「薬剤性鼻炎」を引き起こして、かえって鼻詰まりが悪化することがあります。長期の使用は避けて、改善しない場合は医師に相談してください。

Q4. 副鼻腔炎は子供にも多いですか?

A4. 子供は副鼻腔が完全に発達していないことや、集団生活でウイルスに頻繁にさらされることから副鼻腔炎になりやすいです。小児では鼻腔ポリープは少なく、適切な治療で改善するケースが多いです。鼻水が長引く・鼻詰まりが続く場合は小児科や耳鼻科に相談してください。

Q5. 手術は怖いのですが、しなければ治りませんか?

A5. すべての慢性副鼻腔炎に手術が必要なわけではありません。まずは内科的治療(マクロライド療法、点鼻ステロイドなど)を2〜3か月試みて、それでも改善しない場合に手術が選択肢に上がります。現代の内視鏡下手術は昔に比べて負担が少なく、多くの方が「やってよかった」と言います。手術のメリットとリスクをしっかり主治医と話し合ってから判断してください。

Q6. 副鼻腔炎の時に飛行機に乗っても大丈夫ですか?

A6. 症状が強い急性期には避けた方が無難です。着陸時の気圧変化で副鼻腔に強い痛みが出る「航空性副鼻腔炎」が起こることがあります。どうしても乗らなければいけない場合は、搭乗前に耳鼻科で点鼻薬を処方してもらって対策してください。

Q7. 好酸球性副鼻腔炎は指定難病と聞きましたが、どんな支援が受けられますか?

A7. 2015年に指定難病(第306号)に認定されています。診断が確定して申請が通れば、医療費の自己負担が月額2,500〜30,000円(所得区分による)に抑えられます。特にデュピルマブを使う場合は薬価が高いため、難病申請をすることで大きく負担が軽減されます。主治医に申請の相談をしてください。

Q8. 副鼻腔炎が頭痛の原因になることはありますか?

A8. あります。特に急性副鼻腔炎では額や頬骨の奥、眉間あたりに鈍い痛みや圧迫感が出て、それが頭痛として感じられることがあります。ただし慢性副鼻腔炎が頭痛の主な原因になるケースは実際にはそれほど多くなく、偏頭痛や緊張型頭痛と混同されることがあります。頭痛が続く場合は副鼻腔炎だけでなく他の原因も含めて医師に相談することをお勧めします。

副鼻腔炎は「よくある病気」ではあるのですが、放置して慢性化すると生活の質が大きく下がります。僕が外来でいつも感じるのは、「もっと早く受診してくれていれば」というケースの多さです。鼻水が続く、なんか顔が重い、においがわかりにくくなった。こういった「小さなサイン」を見逃さずに、早めに専門家に相談してほしいのです。まだまだ僕自身も日々の診療の中で学び続けていますが、みなさんの「鼻の悩み」を一緒に解決していけたらと思っています。気になることがあればどうか一人で抱え込まず、気軽に受診してくださいね。一緒に向き合っていきましょう。

参考文献

[1] Fokkens WJ, et al. European Position Paper on Rhinosinusitis and Nasal Polyps 2020. Rhinology. 2020;58(Suppl S29):1-464. PMID: 32077450.

[2] Bachert C, et al. Efficacy and safety of dupilumab in patients with severe chronic rhinosinusitis with nasal polyps (LIBERTY NP SINUS-24 and LIBERTY NP SINUS-52): results from two multicentre, randomised, double-blind, placebo-controlled, parallel-group phase 3 trials. Lancet. 2019;394(10209):1638-1650. PMID: 31543428.

[3] Chow AW, et al. IDSA Clinical Practice Guideline for Acute Bacterial Rhinosinusitis in Children and Adults. Clin Infect Dis. 2012;54(8):e72-e112. PMID: 22438350.

[4] Chong LY, et al. Saline irrigation for chronic rhinosinusitis. Cochrane Database Syst Rev. 2016;4:CD011995. PMID: 27115216.

[5] Tokunaga T, et al. Novel scoring system and algorithm for classifying chronic rhinosinusitis: the JESREC Study. Allergy. 2015;70(8):995-1003. PMID: 25945591.

[6] Gotlib T, et al. The Mechanism of Action and Clinical Efficacy of Low-Dose Long-Term Macrolide Therapy in Chronic Rhinosinusitis. Int J Mol Sci. 2023;24(11):9489. PMC10253369.

丸岡悠医師

監修医師

丸岡 悠

庄内プライベートクリニック 院長 / 医療法人丸岡医院 医師

1988年山形県酒田市生まれ。酒田南高校卒業後、獨協医科大学にて医師免許を取得。沖縄県立北部病院、日本海総合病院を経て現職。庄内プライベートクリニック院長として美容医療を担当し、丸岡医院では一般診療・施設診療・訪問診療にも携わっています。