低血圧 – 循環器の疾患

低血圧(Hypotension)とは、収縮期血圧が100mmHg以下、拡張期血圧が60mmHg以下の状態を指します。

めまいや立ちくらみ、倦怠感、集中力の低下などの症状に加えて、重度の低血圧では、臓器への血流が不十分となり生命を脅かす危険性も伴う場合もあります。

脱水症、心疾患、内分泌疾患、自律神経障害などが低血圧を引き起こす主な原因です。

この記事を書いた人
丸岡 悠(まるおか ゆう)
丸岡 悠(まるおか ゆう)
外科医

1988年山形県酒田市生まれ。酒田南高校卒業後、獨協医科大学(栃木)にて医師免許取得。沖縄県立北部病院、独立行政法人日本海総合病院を経て現職(医療法人丸岡医院)。

低血圧の種類(病型)

低血圧は、原因の有無や誘因によって分類できます。

原因による分類:本態性低血圧と二次性低血圧

原因が明らかでない、特発性の低血圧を本態性低血圧と呼びます。 若い女性に多く見られ、日常生活への影響は比較的少ないのが特徴です。

一方、何らかの疾患が原因で起こる低血圧を二次性低血圧(症候性低血圧)と言います。

二次性低血圧の原因となる疾患や状態には、自律神経障害や糖尿病、薬物(抗うつ薬、降圧薬、抗精神病薬など)、加齢などが挙げられます。

種類特徴原因
本態性低血圧原因不明、若年女性に多い不明
二次性低血圧原因となる疾患や状態がある自律神経障害、中枢神経疾患、加齢、循環血漿量低下、心肺疾患、内分泌疾患、薬物など

二次性低血圧の場合は、根本にある疾患や状態の治療が重要となります。

誘因による分類:起立性低血圧と食後低血圧

体位変換時に一時的に血圧が下がることで起こるのが起立性低血圧です。

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また、食事の後に血圧が下がる状態を食後低血圧と呼び、食後30分〜2時間で症状が出現します。

種類誘因特徴
起立性低血圧体位変換立ち上がり時に注意
食後低血圧食事高齢者に多い、脱水や貧血の関与

低血圧の主な症状

低血圧の主な症状には、めまい、立ちくらみ、倦怠感、疲労感、集中力の低下、動悸などがあります。

めまいと立ちくらみ

低血圧の代表的な症状であるめまいと立ちくらみは、急に立ち上がった時や長時間立っている際に起こりやすいです。

これは、重力の影響で血液が下半身に流れ込み、脳への血流が一時的に減少することが原因とされています。

症状特徴
めまいふらつき、ぐるぐる回る感覚
立ちくらみ立ち上がったときに一時的に目の前が真っ暗になる

倦怠感と疲労感

低血圧の人は、全身の倦怠感や疲労感を感じる場合があります。 これは、全身の組織や臓器への血流が十分でないことが原因です。

集中力の低下

低血圧によって脳への血流が減少すると、集中力が低下し、物事に集中しづらくなます。

動悸

  • 心臓がドキドキする感覚
  • 胸の不快感や圧迫感

血圧を上げるために、心臓が通常よりも速く強く拍動することが原因で、動悸が起こる場合もあります。

低血圧の原因

低血圧が発症する背景には、生活習辞や基礎疾患など複数の原因が複雑に絡み合っています。

脱水症

脱水症は低血圧の主要な原因の1つとされていて、体内の水分量が不足して血液量が減少し、血圧が低下します。

下痢や嘔吐によって体液が失われたり、発汗量が増えたり、水分摂取が不足したりすると、脱水症を引き起こします。

脱水症の原因症状
下痢・嘔吐口渇、倦怠感、尿量減少
発汗量増加めまい、立ちくらみ、頭痛
水分摂取不足皮膚の乾燥、脱力感

自律神経障害

血圧の調節をする重要な役割をもつのが、自律神経です。

自律神経の機能が低下してしまうと、体位変換時の血圧調節がうまくいかなくなり、起立性低血圧を引き起こします。

また、糖尿病やパーキンソン病などの慢性疾患に伴って自律神経障害が生じると、低血圧の原因となる場合もあります。

ホルモン異常

副腎皮質ホルモンの一種であるコルチゾールや、甲状腺ホルモンの分泌に異常が生じると、低血圧の原因となる場合があります。

これらのホルモンは血管の緊張度や心拍出量に影響を及ぼすため、ホルモンバランスが乱れ、低血圧を引き起こします。

ホルモン作用
コルチゾール血管収縮作用
甲状腺ホルモン代謝亢進、心拍数増加

薬剤の副作用

降圧薬や利尿薬、抗うつ薬などの薬剤には、血圧を下げる作用があります。

服用量が多すぎたり、複数の薬剤を併用したりすると、過度に血圧が低下してしまう危険性があります。

以下は、低血圧を引き起こす可能性のある薬剤の例です。

  • カルシウム拮抗薬
  • ACE阻害薬
  • アンジオテンシンII受容体拮抗薬
  • 利尿薬
  • 硝酸薬

診察(検査)と診断

低血圧は、問診や身体所見、血圧測定などを行い診断します。

問診と身体検査

低血圧が疑われる方には、まず詳しい問診を行います。

身体診察では、脈拍や心音、頸静脈怒張の有無などから循環状態を評価します。

問診項目確認ポイント
自覚症状めまい、倦怠感、失神など
生活習慣飲酒、喫煙、運動の習慣など
服薬状況降圧薬、利尿薬、抗不安薬など

血圧測定

低血圧の診断に欠かせないのが、安静時の血圧測定です。1回だけでなく、何度も測定を繰り返し、再現性を確かめていきます。

また、起立性低血圧の評価には、臥位と立位での血圧変動を確認する必要があります。

測定条件測定手順
安静時5分以上の安静の後、座位にて測定
起立時臥位から立位に体位変換し、1分後、3分後、5分後に測定

検査

  • 血液検査(血算、生化学、ホルモン測定など)
  • 心電図検査
  • 心エコー検査
  • 自律神経機能検査
  • 血管内皮機能検査

血液検査で貧血や電解質異常、内分泌疾患の有無を調べ、心電図や心エコーで心機能や不整脈をチェックします。

また、自律神経機能検査や血管内皮機能検査を行う場合もあります。

臨床診断と確定診断

低血圧の臨床診断は、自覚症状と血圧測定結果を踏まえて確定します。

収縮期血圧100mmHg未満、拡張期血圧60mmHg未満であれば低血圧と診断されます。

ただし、確定診断のためには、複数回の血圧測定と症状との関連性を見極める作業が不可欠です。

二次性低血圧の可能性がある場合は、原疾患の特定と治療を優先します。

低血圧の治療法と処方薬

低血圧の治療方法は、症状の重さと原因によって変わります。

軽い低血圧であれば生活習慣を改めることで対応できる可能性がありますが、重い低血圧や、基礎疾患が原因の場合は治療が必要です。

生活習慣の改善

軽度の低血圧の際は、次のような生活習慣の改善で症状が良くなる場合もあります。

  • こまめに水分を取る
  • 食事は少しずつ何度かに分けて食べる
  • ゆっくり体を起こす
  • 適度な運動を心がける

こまめな水分補給を行うと、血液の量が増えるため血圧が上がります。また、少しずつの食事は血糖値の低下を防ぎ、血圧の低下を防ぐ効果があります。

薬物療法

重度の低血圧や基礎疾患が原因の時は、薬を使った治療が必要です。

薬の種類作用のしくみ
昇圧薬血管を縮め、血圧を上げる
輸液血液の量を増やし、血圧を上げる

原因となる病気の治療

低血圧の原因に基礎疾患がある際は、その治療が大切です。

例えば、心不全や内分泌の病気などが原因なら、その病気の治療を行うことで、低血圧の症状も改善が見込めます。

治療に必要な期間と予後について

原因を特定し、原因に合わせた治療や生活習慣の改善を行えば、比較的短期間で症状の改善が期待できます。

ただし、重度の低血圧や基礎疾患がある場合は慎重な管理が必要です。

生活習慣の改善

生活習慣が原因の場合、生活習慣の改善が不可欠です。

食事や運動などの生活習慣を見直しにより、長期的な血圧管理が可能となります。

慢性的な低血圧への対応

慢性的な低血圧の場合、長期的な管理が必要です。定期的な血圧測定や症状のモニタリングを行い、必要に応じて治療を調整していく必要があります。

管理項目頻度
血圧測定毎日〜数日おき
症状のモニタリング毎日

低血圧の治療における副作用やリスク

低血圧の治療で使用される治療薬の副作用は以下のとおりです。

薬剤主な副作用
昇圧薬頭痛、動悸、不眠
利尿薬電解質バランスの異常、脱水

予防方法

低血圧の予防には、日々の生活習慣の改善と定期的な血圧測定が欠かせません。

適度な運動を取り入れる

適度な運動は血圧を安定させる効果があります。

運動の種類効果
ウォーキング全身の血行改善
水泳心肺機能の強化
ヨガストレス解消と柔軟性の向上

栄養バランスに気を付ける

バランスの取れた食事は低血圧の予防に役立ちます。

  • 塩分を適量摂取する
  • 食物繊維を十分に取る
  • 脂肪分の多い食品は控えめにする
  • ビタミン、ミネラルを意識的に摂取する

ストレス対策を行う

慢性的なストレスは血圧に悪影響を及ぼします。自分に合ったストレス解消法を見つけ、実践しましょう。

血圧測定を習慣化する

家庭用の血圧計を使っって日々の血圧変動をチェックし、異常値が続くときは、迷わず医療機関を受診してください。

治療費について

治療費についての留意点

実際の治療費(医療費)が以下説明より高額になるケースが多々ございます。以下記載内容について当院では一切の責任を負いかねます事を予めご了承下さい。

低血圧の治療費用は、症状や原因によって大きく変動します。

治療費の目安

治療内容費用目安
生活習慣の改善指導5,000円~10,000円
投薬治療(1ヶ月分)10,000円~30,000円

生活習慣の改善指導では食事や運動などの指導が行われ、比較的低コストで済む傾向です。

保険適用の有無

治療内容保険適用
生活習慣の改善指導一部適用あり
投薬治療適用あり

低血圧の治療は、多くのケースで健康保険が適用されます。

ただし、生活習慣の改善指導については一部自費負担が発生する場合があります。

保険適用の有無や自己負担額は個々のケースによって異なるため、詳しくは医療機関でご確認ください。

以上

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