尖圭(せんけい)コンジローマ – 感染症

尖圭(せんけい)コンジローマ(condyloma acuminatum)とは、ヒトパピローマウイルス(HPV)が原因となる性感染症です。

外陰部や肛門周囲に特徴的なイボ状の腫瘤が現れ、性行為を通じて感染するリスクが高いため、予防と早期発見が非常に大切になります。

感染から症状が出るまでの期間は個人差があり、数週間から数か月かかる場合もあります。

この記事を書いた人
丸岡 悠(まるおか ゆう)
丸岡 悠(まるおか ゆう)
外科医

1988年山形県酒田市生まれ。酒田南高校卒業後、獨協医科大学(栃木)にて医師免許取得。沖縄県立北部病院、独立行政法人日本海総合病院を経て現職(医療法人丸岡医院)。

尖圭(せんけい)コンジローマの主な症状

尖圭コンジローマの主な症状は、外性器や肛門周囲に現れる疣贅(いぼ)状の隆起性病変です。

尖圭コンジローマの特徴的な症状

尖圭コンジローマで最も目立つ症状は、皮膚や粘膜に出現する疣贅(いぼ)状の隆起性病変です。

形状はカリフラワーやニワトリのとさかに似ていると表現されることがあります。

病変は単独で発生することもありますが、多くの例では複数の病変が集まって群生。時間とともに拡大したり数が増加したりする傾向があります。

症状の出現部位と特徴

部位特徴
男性亀頭、包皮、陰茎、陰嚢
女性外陰部、腟口、小陰唇、大陰唇
共通肛門周囲、会陰部、鼠径部

尖圭コンジローマの症状は、男性では亀頭、包皮、陰茎、陰嚢、女性の場合は外陰部、腟口、小陰唇、大陰唇などが好発部位です。

また、性別に関係なく肛門周囲、会陰部、鼠径部にも症状が現れることがあります。

これらの部位に発生する病変は、通常痛みを伴わないことが多いものの、摩擦や刺激により出血したり、二次感染を起こしたりする可能性も。

症状の進行と変化

尖圭コンジローマの症状は、感染から発症までの潜伏期間が1〜8か月と幅広いです。

初期段階では小さな丘疹として現れることが多く、この時点では気づかれずに経過することもありますが、時間の経過とともに病変は徐々に拡大し、数も増加していく傾向があります。

進行すると、病変が融合して大きな腫瘤を形成したり、広範囲に拡大したりすることもあるので、早期発見と対応が不可欠です。

尖圭(せんけい)コンジローマの原因・感染経路

尖圭コンジローマはヒトパピローマウイルス(HPV)に感染することで発症し、主に性的な接触によって感染が広がります。

ウイルスの特徴

HPVは非常に強い感染力を持ち、皮膚や粘膜が触れ合うだけで簡単に広がります。

このウイルスには100種類を超える型がありますが、尖圭コンジローマを引き起こすのは主に6型と11型という2つの型です。

HPV型特徴
6型低リスク型、良性腫瘍を引き起こす
11型低リスク型、良性腫瘍を引き起こす

これらの型は悪性ではない腫瘍を引き起こすことから、低リスク型と呼ばれています。

感染経路

尖圭コンジローマは主に性的な接触によって感染します。

主な経路経路

  • 腟性交
  • 肛門性交
  • 口腔性交
  • 感染部位との直接的な皮膚接触

感染者と性的な接触をしなくても、感染した部位に触れた手指を介して体の他の部分に感染が広がる可能性があります。

感染リスクを高める要因

いくつかの要因が尖圭コンジローマに感染するリスクを高めることが分かっています。

リスク要因影響
複数の性的パートナー感染機会の増加
早期の性交渉開始感染リスクの上昇
免疫機能の低下ウイルスに対する抵抗力の減少

潜伏期間と感染性

HPVに感染してから症状が現れるまでは、通常1〜8か月ほどかかります。

ただし、この期間中でもウイルスを他の人に感染させる力があるため注意が必要です。

感染者の中には、目に見える症状がなくてもウイルスを持っていて、他の人に感染させてしまう場合があります。

HPVは非常に強いウイルスで、乾燥した環境でも長い間生き続けられ、感染者が使った物を介して間接的に感染する可能性もあるので、注意が必要です。

診察(検査)と診断

尖圭コンジローマの診断は、入念な問診から始まり、視診による身体診察、そして状況に応じて追加検査を実施します。

問診の重要性

問診は診断の基礎となる極めて重要なステップです。 患者さんの性行動パターン、性感染症の履歴、症状の推移などについて詳細な情報を収集します。

特に注目する項目

  • 最近の性的パートナーの変化
  • 性行為における防護措置の実施状況
  • 症状が現れた時期とその後の変化
  • 過去の性感染症罹患歴

視診による病変の確認

尖圭コンジローマは特徴的な外見を呈するため、経験を積んだ医師であれば視診のみでも高い確率で診断が可能です。

病変は主に外陰部や肛門周囲に現れますが、女性の場合は腟内や子宮頸部にも発生する可能性があるため、内診も併せて行われます。

特徴詳細
形状乳頭状、カリフラワー状
色調ピンク色から灰白色まで
大きさ1mmから数cm程度まで様々
分布単発または多発

追加検査の選択

視診で典型的な所見が得られない場合や、確定診断が困難な状況では、いくつかの追加検査の実施が検討されます。

これらの検査は、尖圭コンジローマの原因ウイルスであるヒトパピローマウイルス(HPV)の存在を直接または間接的に確認するものです。

代表的な追加検査

検査名概要
酢酸白試験病変部に酢酸を塗布し白色変化を観察
HPV DNA検査ウイルスDNAの直接的な検出
病理組織検査病変部の一部を採取し顕微鏡で観察

鑑別診断の重要性

尖圭コンジローマの診断においては、扁平コンジローマや皮膚の良性腫瘍、前癌病変などとの、鑑別が必要です。

鑑別を要する主な疾患

  • 扁平コンジローマ(梅毒の症状の一つ)
  • 尖圭線維腫
  • ボーエン病
  • 疣贅状表皮発育異常症

尖圭(せんけい)コンジローマの治療法と処方薬、治療期間

尖圭コンジローマの治療にはいくつかの方法があり、患者さんの状態や病変がどの程度かによって最も効果的な治療法が選ばれます。

主な治療法

尖圭コンジローマを治す方法は、大きく分けて薬を使う方法と手術で治す方法があります。

治療法特徴
薬を使う方法塗り薬や注射薬を使います
手術で治す方法病変を直接取り除きます

薬を使う方法では、イミキモドクリームやポドフィロトキシン溶液といった塗り薬がよく使われます。

手術で治す方法は、病変を凍らせて取る方法、電気で焼いて取る方法、レーザーで取る方法、メスで切り取る方法などです。

処方される薬と使い方

イミキモドクリームは、体の免疫力を高めてウイルスと戦う力を強くする薬です。

使い方

  • 寝る前に病変がある部分に塗ります
  • 週に3回、最長で16週間使います
  • 朝になったら洗い流します

ポドフィロトキシン溶液は、細胞が増えるのを止めて病変が大きくなるのを防ぐ薬です。

薬の名前使う頻度最長で使う期間
イミキモドクリーム週に3回16週間
ポドフィロトキシン溶液1日2回、3日間4週間

治療にかかる時間と経過観察

尖圭コンジローマの治療にかかる時間は、病変の程度、どの治療法を選んだかによって違いますが、通常は数週間から数か月です。

薬で治療する場合は、4〜16週間ぐらいかかり、手術で治す方法はすぐに効果が出ますが、何回か治療が必要なこともあります。

再発の可能性があるので、治療が終わってからも3〜6か月の間は定期的に診察を受けてください。

治療中に気をつけること

尖圭コンジローマの治療中に注意する点

  • 性行為は控えめにする
  • 治療している部分を清潔に保つ
  • 副作用が出たらすぐに医師に相談する
  • 自分で判断して治療をやめない

また、パートナーの人にも検査を受けてもらい、必要なら治療することも大切です。

予後と再発可能性および予防

尖圭コンジローマの治療後は慎重な経過観察が必要で、再発のリスクを考慮しつつ、予防策を講じることが長期的な管理において重要です。

治療後の経過と予後

尖圭コンジローマの治療後の経過は、多くの場合、治療を受けることで症状の改善が見られますが、完全な治癒までには時間を要することがあります。

治療後の経過に影響を与える要因

要因影響
免疫状態良好な免疫機能は回復を促進
生活習慣禁煙や適度な運動
ストレス過度のストレスは回復を遅らせる
治療の種類選択した治療法により回復期間が変動

再発のリスクと対策

尖圭コンジローマでは、治療後も体内にウイルスが残存している可能性があるため、一度治療を受けた患者さんでも再発する場合があります。

再発リスクを軽減するための対策

  • 定期的な医療機関での検診
  • パートナーの検査と治療
  • 免疫機能を高める生活習慣の維持
  • 安全な性行為の実践

これらの対策を継続的に実施することで、再発のリスクを最小限に抑えることができます。

予防法の重要性

尖圭コンジローマの予防法は大きく分けて、一次予防(感染の予防)と二次予防(早期発見・早期治療)があります。

予防法内容
ワクチン接種HPVワクチンの定期的な接種
安全な性行為コンドームの使用
定期検診早期発見のための定期的な医療機関受診
生活習慣改善免疫機能を高める健康的な生活

長期的な管理の必要性

尖圭コンジローマの治療後は、長期的な視点での管理が必要です。

長期的な管理において重要な点

  • 定期的な自己検査と医療機関での検診
  • パートナーとのオープンなコミュニケーション
  • 生活習慣の改善と維持
  • 新しい予防法や治療法に関する情報収集

尖圭(せんけい)コンジローマの治療における副作用やリスク

尖圭コンジローマの治療には副作用を伴うので、治療を始める前に患者さんはよく理解しておく必要があります。

薬物療法の副作用

薬物療法では、主に薬を塗った部分に副作用が出ることがあります。

  • 皮膚が赤くなる
  • かゆくなる
  • ヒリヒリする感じがする
  • 痛くなる
  • 腫れる

これらの副作用は、多くの場合軽いものから中くらいのもので、治療が終わると自然に良くなることが多いです。

外科的治療のリスク

外科的な治療方法のリスク

治療法主な危険性
冷凍療法水ぶくれができる、皮膚の色が濃くなる
電気で焼く方法傷跡ができる、感染する
レーザー治療やけどする、皮膚の色が薄くなる
切除手術出血する、感染する、傷跡ができる

全身に出る副作用

尖圭コンジローマの治療は主に患部だけを治すので、体全体に影響が出ることは比較的少ないです。

しかし、イミキモドクリームを使うと、症状が体全体に出ることがあります。

症状どのくらい起こるか
だるさまれ
頭痛まれ
筋肉痛とてもまれ
熱が出るとてもまれ

症状は通常一時的なもので、治療をやめたり、症状をやわらげる薬を使ったりすると良くなります。

長期的な危険性

尖圭コンジローマの治療には、長い目で見たリスクもあります。

何度も治療を受ける必要がある時、次のような危険性が高くなる可能性があります。

  1. 傷跡ができて体の働きに影響が出る
  2. 皮膚の色が濃くなったり薄くなったりして見た目に影響が出る
  3. 長く続く痛みや不快感がある
  4. 心の負担が積み重なる

妊娠中の治療の危険性

妊娠中の女性が尖圭コンジローマの治療を受ける時は、胎児への影響を考える必要があります。

特に、ポドフィリンやポドフィロトキシンは、妊娠中には絶対に使ってはいけません。

治療費について

治療費についての留意点

実際の治療費(医療費)が以下説明より高額になるケースが多々ございます。以下記載内容について当院では一切の責任を負いかねます事を予めご了承下さい。

初診料と再診料

初診料は通常3,000円から5,000円程度、再診料は1,000円から3,000円程度です。

検査費用

検査項目費用
HPV検査5,000円~10,000円
病理組織検査3,000円~8,000円

処置費用

処置費用は症状の程度や範囲によって異なります。

処置内容費用
薬物療法1,000円~5,000円/回
外科的切除10,000円~50,000円

入院費用

入院が必要な場合、1日あたり10,000円から30,000円程度かかります。

以上

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