破綻出血(breakthrough bleeding)とは、正常な月経周期以外の時期に予期せずに起こる出血のことです。
この症状は、ホルモンバランスの乱れや子宮内膜の状態変化によって引き起こされます。
破綻出血は、無排卵状態で見られる出血で、生理不順や不正出血として認識されることもあります。
破綻出血の主な症状
破綻出血は、不規則な出血パターンを特徴とする婦人科疾患です。
不規則な出血パターン
破綻出血の最も顕著な症状は、通常の月経周期とは異なる不規則な出血です。
この出血は、予期せぬタイミングで起きることが多く、出血の量や持続時間も、通常の月経とは異なります。
出血の特徴
破綻出血時の出血には、いくつかの特徴があります。
特徴 | 詳細 |
色調 | 鮮紅色から暗褐色まで |
量 | 少量の出血から中程度の出血まで |
持続時間 | 数日から数週間と幅広い |
出血の色や量は、体調や ホルモンバランスによって変化することがあります。
随伴症状
破綻出血には、しばしば他の症状が伴います。
- 下腹部の不快感や痛み
- 軽度の吐き気
- 倦怠感
- 気分の変動
症状は、出血の有無にかかわらず現れることもあります。
症状の変化と経過
初期は軽微な症状から始まり、徐々に顕著になることもあれば、突然強い症状が現れることもあります。
症状の持続期間や頻度も個人差が大きく、数か月に一度の不定期な出血から、頻繁に繰り返す出血までいろいろなパターンがあります。
破綻出血の原因
破綻出血は、主に子宮内膜の不安定性やホルモンの変化により引き起こされます。
ホルモンバランスの乱れによる影響
破綻出血の主たる原因は、女性ホルモンのバランスが崩れることです。
エストロゲンとプロゲステロンという2つの重要な女性ホルモンのバランスが乱れると、子宮内膜の安定性が損なわれ、不規則な出血が生じます。
特に、排卵障害や黄体機能不全などの状態では、プロゲステロンの分泌が不十分となり、子宮内膜が維持されないことがあります。
このような状況下では、子宮内膜が不安定になり、わずかな刺激でも出血を引き起こすことがあるのです。
ホルモン | 主な役割 |
エストロゲン | 子宮内膜の増殖 |
プロゲステロン | 子宮内膜の安定化 |
ストレスが及ぼす影響
ストレスも、破綻出血の原因の一つです。
強いストレスにさらされると、視床下部-下垂体-卵巣系のバランスが乱れ、ホルモン分泌に影響を与えることがあります。
ストレスによって引き起こされるコルチゾールの分泌増加は、女性ホルモンの分泌パターンを変化させ、結果として子宮内膜の不安定化を招きます。
薬剤による影響
一部の薬剤も破綻出血の原因です。
ホルモン剤や抗凝固薬、抗てんかん薬などが影響を与える可能性があります。
- 経口避妊薬 服用中に、飲み忘れや併用薬の影響でホルモンレベルが変動し、破綻出血が起こることがあります。
- 抗凝固薬 血液凝固能を低下させるため、わずかな刺激でも出血しやすくなります。
薬剤の種類 | 破綻出血との関連性 |
ホルモン剤 | ホルモンバランスの変動 |
抗凝固薬 | 出血傾向の増加 |
抗てんかん薬 | ホルモン代謝への影響 |
器質的疾患による影響
子宮や卵巣などの生殖器に器質的な異常がある場合も、破綻出血の原因となることがあります。
代表的な器質的疾患
- 子宮筋腫
- 子宮内膜ポリープ
- 子宮腺筋症
- 子宮頸部・体部の悪性腫瘍
子宮筋腫や子宮内膜ポリープは、子宮内膜の表面積を増大させ、出血のリスクを高める要因となります。
また、悪性腫瘍の場合は、腫瘍組織自体が脆弱で出血しやすい特性を持つこともあり、注意が必要です。
診察(検査)と診断
破綻出血の診断は、問診、身体診察、各種検査を通じて行われます。
問診による情報収集
破綻出血の診断では、まず、患者さんから詳細な情報を聴取し、出血のパターンや関連症状を把握します。
確認するのは、出血の頻度、量、持続期間、月経周期との関連性などです。
また、既往歴、家族歴、服薬状況、ストレスレベルなども重要な情報となります。
身体診察の実施
問診に続いて、婦人科特有の診察が行われ、腹部の触診では、子宮や卵巣の腫大や圧痛の有無を確認します。
腟鏡診では、子宮頸部や腟壁の状態を視診し、異常出血の原因となる病変がないかを調べ、さらに、内診により子宮の大きさや硬さ、可動性、圧痛の有無を評価します。
診察項目 | 確認内容 |
腹部触診 | 子宮・卵巣の腫大、圧痛 |
腟鏡診 | 子宮頸部・腟壁の異常 |
内診 | 子宮の大きさ、硬さ、可動性 |
各種検査の実施
身体診察の後、必要に応じて以下のような検査が行われます。
- 経腟超音波検査
- 子宮頸部細胞診
- 子宮内膜細胞診
- 血液検査(ホルモン検査を含む)
- 子宮鏡検査
検査は、破綻出血の原因を特定し、他の疾患を除外するために重要です。
また、子宮内膜の状態を評価するために、子宮内膜細胞診や子宮鏡検査が行われることもあります。
臨床診断と鑑別診断
破綻出血の診断においては、他の出血性疾患との鑑別が重要となります。
機能性子宮出血、子宮筋腫、子宮内膜ポリープ、子宮内膜症、子宮頸がんなどが鑑別の対象です。
鑑別疾患 | 主な特徴 |
機能性子宮出血 | ホルモンバランスの乱れによる不規則な出血 |
子宮筋腫 | 子宮筋層の良性腫瘍による出血 |
子宮内膜ポリープ | 子宮内膜の局所的な過形成による出血 |
破綻出血の治療法と処方薬、治療期間
破綻出血では、主な治療法としてホルモン療法があり、処方薬や治療期間は症状の程度や患者さんの背景によって異なります。
ホルモン療法による治療
破綻出血の治療において、ホルモン療法は中心的な役割を果たし、多くの患者さんにとって効果的な選択肢です。
体内のホルモンバランスを調整することで、不規則な出血を制御することが目標となります。
ホルモン療法で使われるのは、経口避妊薬(ピル)やプロゲステロン製剤などです。
よく使用される処方薬
破綻出血の治療に用いられる主な処方薬
薬剤の種類 | 主な効果 |
経口避妊薬 | ホルモンバランスの調整 |
プロゲステロン製剤 | 子宮内膜の安定化 |
漢方薬 | 体質改善、症状緩和 |
薬剤は、患者さんの年齢、全身状態、他の疾患の有無などを考慮して選択されます。
治療期間について
破綻出血の治療期間は、症状の改善具合や原因によって大きく異なり、患者さんごとに期間が設定されます。
治療期間 | 特徴 |
短期(1〜3ヶ月) | 急性症状の改善 |
中期(3〜6ヶ月) | 周期の安定化 |
長期(6ヶ月以上) | 継続的な管理 |
予後と再発可能性および予防
破綻出血は治療により多くの場合改善が見込まれますが、再発の可能性もあります。
破綻出血の予後
対応を行うことで、症状の改善や出血パターンの正常化が期待でき、多くの患者さんが日常生活への支障を軽減することが可能です。
ただし、予後は個人によって大きく異なり、背景にある要因や生活習慣によっても変わってきます。
予後の傾向 | 特徴 |
良好 | 症状の完全な消失 |
中程度 | 症状の部分的改善 |
要注意 | 症状の再燃や悪化 |
再発のリスク因子
破綻出血の再発リスクは、いくつかの要因によって高まります。
- ストレスの蓄積
- 不規則な生活リズム
- 極端な体重変動
- ホルモンバランスの乱れ
また、年齢や既往歴などの個人的な背景も再発リスクに影響を与えることがあります。
再発時の対応
再発が起きた場合、速やかに医療機関を受診し早期の対応をすることが、症状の悪化を防ぐ鍵です。
再発時の対応 | 内容 |
医師との相談 | 症状の詳細な報告 |
生活習慣の見直し | 再発要因の特定と改善 |
継続的なモニタリング | 症状の変化の観察 |
予防法
規則正しい生活リズムの維持や、バランスの取れた食事、適度な運動など、健康的な生活習慣を心がけることが効果的で、全身の健康維持にも寄与します。
また、定期的な婦人科検診を受け、早期に異常を発見し対処することが大切です。
破綻出血の治療における副作用やリスク
破綻出血の治療には、ホルモン療法や手術的介入などの方法がありますが、それぞれに副作用やリスクが伴います。
ホルモン療法による副作用
エストロゲン-プロゲステロン配合剤や黄体ホルモン単独療法などが代表的な治療法で、共通の副作用があります。
悪心や嘔吐、頭痛、乳房の張りなどがよく見られる症状です。また、体重増加や浮腫も起こることがあります。
副作用は通常一時的なものですが、患者さんの生活の質に影響を与えることがあります。
副作用 | 頻度 |
悪心・嘔吐 | 比較的多い |
頭痛 | 比較的多い |
乳房の張り | しばしば見られる |
体重増加 | ときに見られる |
ホルモン療法のリスク
ホルモン療法には、より深刻なリスクもあります。
特に、エストロゲンを含む治療法では、血栓症のリスクが高まるので、注意が必要です。
深部静脈血栓症や肺塞栓症などの血栓塞栓症は、重篤な合併症につながる可能性があります。
また、長期的なホルモン療法は、乳がんや子宮内膜がんのリスクを僅かに上昇させる可能性があることも報告されており、既往歴や家族歴のある患者さんでは慎重な経過観察が不可欠です。
手術的介入に伴うリスク
破綻出血の原因によっては、手術的介入が選択されることがあります。
子宮内膜掻爬術や子宮鏡下手術などが代表的で、これらの処置にもリスクが伴います。
感染症や出血、子宮穿孔などが主なリスクです。
子宮穿孔はまれですが、重大な合併症につながることがあり、また、全身麻酔を伴う手術の場合は、麻酔に関連するリスクも考慮しなければなりません。
手術的介入 | 主なリスク |
子宮内膜掻爬術 | 感染、出血、子宮穿孔 |
子宮鏡下手術 | 感染、出血、子宮穿孔 |
薬物療法に伴う副作用
ホルモン療法以外の薬物療法にも、さまざまな副作用が報告されています。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を使用する場合、以下のような副作用に注意が必要です。
- 胃腸障害(胃痛、消化不良など)
- 腎機能障害
- 出血傾向の増加
- アレルギー反応
副作用は、使用量や使用期間、患者さんの体質によって発現リスクが変わってきます。
治療費について
実際の治療費(医療費)が以下説明より高額になるケースが多々ございます。以下記載内容について当院では一切の責任を負いかねます事を予めご了承下さい。
診察・検査費用
破綻出血の診断には、問診と内診が基本で、必要に応じて超音波検査や血液検査が追加されます。
項目 | 費用(保険適用時) |
超音波検査 | 2,500円〜4,000円 |
血液検査 | 1,500円〜3,000円 |
薬剤費用
破綻出血の治療には、主にホルモン剤が使用されます。
- 経口避妊薬(1ヶ月分)1,500円〜2,500円
- プロゲステロン製剤(1ヶ月分)2,500円〜4,000円
- 漢方薬(1ヶ月分)3,000円〜5,000円
薬剤の種類や量により、費用は変動します。
長期的な管理費用
症状の改善後も、定期的な通院が必要な場合があります。
期間 | 概算費用 |
3ヶ月 | 10,000円〜20,000円 |
6ヶ月 | 20,000円〜40,000円 |
以上
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