類白血病反応 – 血液疾患

類白血病反応(leukemoid reaction)とは、白血病と似た症状を示す血液の異常な反応のことです。

この状態では血液中の白血球の数が急激に増加し、一般的な感染症による反応をはるかに上回る数値に達します。

白血病とは異なり、血液細胞に癌化は認められません。

類白血病反応は、重度の感染症や炎症、悪性腫瘍、あるいは特定の薬剤に対する生体の反応として発生します。

この記事を書いた人
丸岡 悠(まるおか ゆう)
丸岡 悠(まるおか ゆう)
外科医

1988年山形県酒田市生まれ。酒田南高校卒業後、獨協医科大学(栃木)にて医師免許取得。沖縄県立北部病院、独立行政法人日本海総合病院を経て現職(医療法人丸岡医院)。

類白血病反応の主な症状

類白血病反応は白血球数が著しく増加し、発熱や倦怠感、貧血などの多様な症状を起こします。

白血球数の異常増加

類白血病反応の最も顕著な特徴は、白血球数の急激な上昇です。

健康な成人の白血球数は4,000〜9,000/μL(マイクロリットル)の範囲内ですが、類白血病反応では50,000/μLを超えることもあります。

発熱と倦怠感

類白血病反応の患者さんの多くは持続的な発熱があり、体温は38度以上に上昇し、解熱剤への反応が悪いです。

発熱に伴い、全身の倦怠感や脱力感が現れます。

症状特徴
発熱38度以上の持続的な高熱
倦怠感全身のだるさ、日常生活への影響

貧血症状

類白血病反応では、赤血球の産生が抑制されることで貧血が生じます。

貧血に伴う症状

  • 顔色の悪化(蒼白)
  • 息切れや動悸
  • めまいや立ちくらみ
  • 疲労感の増強

高齢者や基礎疾患のある方では、貧血症状がよりはっきりと現れがちです。

その他の身体症状

類白血病反応では、主要な症状以外にもさまざまな身体症状が見られます。

症状説明
体重減少食欲不振や代謝(体内の化学反応)が活発になることによる
リンパ節腫脹首や脇の下、鼠径部(そけいぶ:足の付け根)のリンパ節が腫れる
易感染性感染症にかかりやすくなる

類白血病反応の原因

類白血病反応の原因は、感染症、悪性腫瘍、重度の出血や溶血などの全身性疾患による骨髄刺激が引き金です。

感染症による骨髄刺激

感染症は類白血病反応を起こす原因の一つです。

細菌、ウイルス、真菌などの病原体が体内に侵入すると、免疫系が活性化され、白血球の産生が急激に増加します。

この過程で骨髄が過剰に刺激されることにより、末梢血中に未熟な白血球が大量に放出される現象が起こります。

特に重症感染症や敗血症(血液中に細菌が侵入し全身に広がった状態)の患者さんでは、顕著に見られることが多いです。

感染原因類白血病反応の特徴
細菌性感染好中球(細菌を攻撃する白血球)優位の増加
ウイルス性感染リンパ球(ウイルスを攻撃する白血球)優位の増加
寄生虫感染好酸球(寄生虫を攻撃する白血球)優位の増加

悪性腫瘍と類白血病反応

悪性腫瘍もまた、類白血病反応を起こす要因です。

腫瘍細胞が産生するサイトカイン(細胞から分泌されるタンパク質で、他の細胞に情報を伝達する物質)や成長因子が骨髄を刺激し、白血球の過剰産生を促します。

影響のある悪性腫瘍は、固形腫瘍の肺癌、腎癌、胃癌、血液腫瘍のホジキンリンパ腫です。

炎症性疾患と類白血病反応

慢性炎症性疾患も、類白血病反応を生じさせます。

持続的な炎症反応により骨髄が刺激され続けることで、白血球の産生が亢進するのです。

関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患患者さんでは、疾患活動性が高まったときに類白血病反応が見られます。

炎症性疾患関連する類白血病反応
関節リウマチ好中球増加
全身性エリテマトーデスリンパ球増加
クローン病(慢性炎症性腸疾患の一種)好中球・単球増加

薬剤性の類白血病反応

一部の薬剤も類白血病反応の原因です。

顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)や顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)などの造血因子製剤は、直接骨髄を刺激し、白血球産生を促進します。

また、コルチコステロイド(副腎皮質ホルモン製剤)や一部の抗てんかん薬も、類白血病反応を起こす可能性があります。

類白血病反応を起こす薬剤

  • G-CSF(フィルグラスチムなど)
  • GM-CSF(サルグラモスチムなど)
  • コルチコステロイド(プレドニゾロンなど)
  • 抗てんかん薬(カルバマゼピンなど)
  • リチウム(双極性障害の治療薬)

その他の原因

上記以外にも、重度の出血や溶血性貧血などの急性ストレス状態、重度の火傷、妊娠中毒症も類白血病反応の要因です。

このような状況下では、体が急激なストレスに対応するために骨髄を過剰に刺激し、末梢血中に大量の白血球が放出されます。

また、一部の遺伝性疾患でも類白血病反応が見られます。

原因機序
重度の出血急性ストレス反応による骨髄刺激
溶血性貧血骨髄の代償性反応による過剰な血球産生
重度の火傷炎症反応と潜在的な感染に対する免疫応答

診察(検査)と診断

類白血病反応の診断は問診と身体診察から始まり、血液検査や骨髄検査を経て、他の血液疾患との鑑別を行いながら確定診断に至ります。

問診と身体診察

類白血病反応の問診では患者さんの症状の経過、既往歴、家族歴、生活環境を聞き取ります。

続いて全身の身体診察を実施し、リンパ節の腫脹、肝臓や脾臓の腫大、皮膚の異常などに注目して診察を進めます。

問診項目確認内容
症状の経過発症時期、進行の速度
既往歴過去の疾患歴、現在治療中の疾患
家族歴血液疾患の家族歴
生活環境職業、居住環境、動物との接触

血液検査

類白血病反応の特徴である白血球の異常増加を確認するため、末梢血液検査が必要です。

血液検査では、白血球数、白血球分画、赤血球数、血小板数を調べ、さらに炎症マーカーであるCRPや、各種腫瘍マーカーの検査も行います。

検査結果は、類白血病反応の診断だけでなく、原因疾患を推測することにも有用です。

骨髄検査

血液検査で異常が認められると、骨髄穿刺や骨髄生検を通じて骨髄中の細胞の種類や割合、形態異常の有無などを調べます。

検査項目観察内容
骨髄穿刺骨髄液の細胞成分、形態
骨髄生検骨髄組織の構造、細胞密度

画像診断

類白血病反応の原因疾患を特定するため、画像診断も実施します。

  • 胸部X線検査:肺炎や肺癌の検出
  • 腹部超音波検査:肝臓、脾臓、リンパ節の異常確認
  • CT検査:全身の詳細な画像評価
  • PET-CT検査:悪性腫瘍の検出と進行度評価

画像検査により、感染症や悪性腫瘍など、類白血病反応の背景にある疾患を特定することが可能です。

特殊検査と鑑別診断

類白血病反応の確定診断には、他の血液疾患との鑑別が不可欠です。

特に慢性骨髄性白血病(CML)との鑑別は重要で、フィラデルフィア染色体の有無を確認するための染色体検査やBCR-ABL遺伝子検査を実施します。

また、感染症が疑われる場合は、血液培養や各種ウイルス抗体検査も行います。

特殊検査目的
染色体検査遺伝子の構造異常を検出
BCR-ABL遺伝子検査特定の白血病に特徴的な遺伝子を同定
血液培養血中の病原微生物を検出

類白血病反応の治療法と処方薬、治療期間

類白血病反応の治療法は原因疾患の治療を中心とし、支持療法を併用しながら数週間から数ヶ月の経過観察を行います。

原因疾患への対応

類白血病反応の治療において最も重要なのは、原因疾患に対処することです。

原因が特定されれば治療を行うことで、類白血病反応も自然と改善していきます。

感染症が原因のときは抗生物質や抗ウイルス薬を使用し、悪性腫瘍が原因の場合は化学療法や放射線療法を実施します。

炎症性疾患が原因であれば、抗炎症薬や免疫抑制剤を用いて炎症を抑制することが必要です。

原因疾患治療法
細菌感染症抗生物質
ウイルス感染症抗ウイルス薬
悪性腫瘍化学療法、放射線療法
自己免疫疾患免疫抑制剤

支持療法

原因疾患の治療と並行して、患者さんの全身状態を安定させるための支持療法も大切です。

高熱や脱水がある場合は、解熱剤の投与や輸液療法(点滴で水分や電解質を補給)を行い、体調の改善を図ります。

また、白血球数が極端に高いときには、血液の粘稠度(粘り気)を下げ、血液の循環を改善する効果のある白血球除去療法を検討します。

薬物療法

類白血病反応自体に対する特別な薬物療法はありませんが、症状や合併症に応じて薬剤を使用し、患者さんの体調管理を行います。

よく用いられる薬剤

  • 解熱鎮痛剤(アセトアミノフェン、イブプロフェンなど)熱や痛みをやわらげる薬
  • 抗炎症薬(ステロイド剤など)炎症を抑える薬
  • 抗凝固薬(ヘパリンなど)血液が固まりにくくする薬
  • 利尿剤(フロセミドなど)尿の量を増やし、むくみを取る薬
  • 制吐剤(オンダンセトロンなど)吐き気を抑える薬

経過観察と治療期間

類白血病反応では数週間から数ヶ月の経過観察が必要で、その間、定期的な血液検査を行い、白血球数や白血球分画(白血球の種類ごとの割合)の推移を観察します。

検査項目正常値
白血球数3,500-9,000/μL
好中球比率40-70%
リンパ球比率20-50%

治療の終了判断

治療の終了を判断する際は、以下の点を総合的に評価します。

  1. 白血球数が正常範囲内に戻る
  2. 白血球分画(白血球の種類ごとの割合)が正常化する
  3. 原因疾患の症状が消失または安定化する
  4. 全身状態が改善し、日常生活に支障がなくなる
治療終了の条件目安
白血球数正常範囲内(3,500-9,000/μL)
原因疾患症状の消失または安定化
全身状態日常生活に支障なし

類白血病反応の治療における副作用やリスク

類白血病反応の治療で使用される薬や治療法によっては骨髄抑制、感染症にかかりやすくなること、臓器の機能低下などの副作用やリスクが生じます。

骨髄抑制

類白血病反応の治療で最も注意すべき副作用の一つが骨髄抑制です。

骨髄抑制は血液を作る機能の低下を起こし、血液中の細胞の減少につながります。

特に、がんの治療でよく使われる化学療法や放射線療法を受ける際にリスクが高いです。

骨髄抑制の影響結果
白血球減少感染症にかかりやすくなる
赤血球減少貧血が進む
血小板減少出血しやすくなる

感染症リスク

類白血病反応の治療中は体を守る免疫の働きが弱くなるため、感染症にかかるリスクが高まります。

注意が必要な感染症

  • 細菌性肺炎(細菌が原因で起こる肺の炎症)
  • 真菌感染症(カビのような微生物による感染)
  • ウイルス性感染症(帯状疱疹など)
  • 日和見感染症(普段は病気を起こさない弱い微生物による感染)

臓器障害

類白血病反応の治療に用いる薬によっては、臓器に悪影響を及ぼすことがあります。

臓器起こりうる障害
肝臓肝機能の低下、皮膚や白目が黄色くなる(黄疸)
腎臓腎機能の低下、体内の塩分バランスの乱れ
心臓不整脈(心臓の拍動が乱れること)、心不全
間質性肺炎(肺の組織が硬くなる病気)、肺線維症

臓器の機能低下を早期に発見し対処するため、定期的な血液検査や画像検査が必要です。

薬剤性副作用

類白血病反応の治療に使用される薬には、副作用が伴い、よく見られるのは、吐き気・嘔吐、下痢、脱毛、皮膚の発疹です。

二次性悪性腫瘍

長期的なリスクとして、二次性悪性腫瘍(新たながん)の発生が挙げられます。

化学療法や放射線療法を受けた患者さんでは、数年から数十年後に別のタイプのがんが発生するリスクが高まることがあるので、定期的に経過を観察し検査を受けることが大切です。

リスク要因注意すべき点
化学療法使用した薬の種類と量
放射線療法照射部位と線量

治療費について

治療費についての留意点

実際の治療費(医療費)が以下説明より高額になるケースが多々ございます。以下記載内容について当院では一切の責任を負いかねます事を予めご了承下さい。

入院費用

類白血病反応の治療では、原因疾患の重症度に応じて入院が必要になります。

病院種別1日あたりの入院費用
一般病院15,000円〜20,000円
特定機能病院20,000円〜30,000円

検査費用

類白血病反応の診断と経過観察には、血液検査が必須です。

  • 一般血液検査(血球計数、白血球分画)5000円〜7000円
  • 生化学検査 6000円〜8000円
  • 凝固系検査 3000円〜5000円
  • 骨髄検査 3万円〜5万円

薬剤費

類白血病反応の治療に使用される薬剤の費用は、原因疾患や症状によって異なります。

薬剤種類1日あたりの費用
抗生物質500円〜3000円
解熱鎮痛剤100円〜500円
免疫抑制剤1000円〜10000円

以上

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