緊張型頭痛(tension-type headache)とは、頭部全体や後頭部、こめかみなどに圧迫感や締め付けられるような痛みを感じる頭痛のことです。
日常生活でのストレスや疲労、長時間のデスクワークによる姿勢の悪さなどが要因となって発症します。
軽度から中程度の痛みを伴うこの頭痛は、最も一般的な頭痛の一つです。
症状は数時間から数日間持続し、場合によっては慢性化して長期間にわたり続くこともあり、頭痛とともに首や肩のこりを伴うこともあります。
緊張型頭痛の主な症状
緊張型頭痛の症状は、頭部全体や特定の部位に圧迫感や締め付けられるような痛みが生じ、持続的に続くことです。
痛みの特徴と部位
緊張型頭痛の痛みは軽度から中程度の強さで、頭部全体に広がることもあれば、特定の部位に集中することもあります。
部位 | 特徴 |
前頭部 | 額や目の周りの圧迫感 |
側頭部 | こめかみの締め付けられる感覚 |
後頭部 | 首から頭にかけての重苦しさ |
頭頂部 | 頭の上部の鈍い痛み |
痛みはズキズキとした拍動性のものではなく、持続的で鈍く、頭を締め付けられるようなバンドや帽子をきつく被っているような感覚です。
痛みの持続時間と頻度
緊張型頭痛の症状は、持続時間と頻度によって分類されます。
急性(単発性)の緊張型頭痛は30分から数日間続き、慢性の緊張型頭痛は1ヶ月に15日以上、少なくとも3ヶ月間続く状態です。
頻度の分類
- 稀発性:1ヶ月に1日未満の頭痛発生
- 頻発性:1ヶ月に1~14日の頭痛発生
- 慢性型:1ヶ月に15日以上の頭痛発生
随伴症状
緊張型頭痛には頭痛以外にもいくつかの随伴症状が見られ、患者さんの不快感を増強させます。
症状 | 詳細 |
筋肉の緊張 | 首や肩の凝り、背中の張り |
感覚異常 | 頭皮の過敏さ、光や音に対する敏感さ |
疲労感 | 全身的な倦怠感、集中力の低下 |
睡眠障害 | 不眠や浅い睡眠、起床時の疲労感 |
症状の変動と増悪因子
緊張型頭痛の症状は日内や気候によって変動し、朝方よりも夕方から夜にかけて症状が悪化し、これは日中の疲労やストレスの蓄積が原因です。
症状を悪化させる要因
- 長時間のデスクワークや同じ姿勢の維持による筋肉の緊張
- 睡眠不足や不規則な睡眠パターン
- ストレスや精神的緊張の増大による自律神経系の乱れ
- バランスが偏った食事や水分摂取による体内環境の変化
- 気象条件の急激な変化による体調の乱れ
他の頭痛との鑑別
緊張型頭痛の症状は、他の種類の頭痛と似ていることがあり、特に片頭痛との鑑別が重要です。
緊張型頭痛と片頭痛の特徴
特徴 | 緊張型頭痛 | 片頭痛 |
痛みの質 | 圧迫感、締め付け感 | 拍動性、ズキズキする痛み |
痛みの強さ | 軽度から中程度 | 中程度から重度 |
部位 | 両側性が多い | 片側性が多い |
随伴症状 | 比較的少ない | 吐き気、光過敏など多い |
緊張型頭痛の原因
緊張型頭痛の原因は、ストレスや筋肉の過度な緊張です。
ストレスと頭痛
ストレスは、緊張型頭痛の最もよくある引き金です。
長期的なストレスにさらされると、ストレスホルモンのコルチゾールが過剰に分泌され、頭部や首の筋肉の緊張を起こし、頭痛につながります。
ストレス要因 | 影響 |
仕事のプレッシャー | 筋肉の緊張増加 |
人間関係の問題 | ストレスホルモン分泌 |
経済的不安 | 睡眠障害 |
筋肉の緊張と頭痛
頭部や首の筋肉の過度な緊張は、緊張型頭痛を起こす重要な要因です。
長時間のデスクワークや不適切な姿勢、睡眠不足などによって、頭部や首の筋肉が慢性的に緊張状態になり、この状態が続くと頭痛の原因になります。
持続的な筋肉の緊張は血流を阻害し、痛みを感じる神経終末を刺激することで頭痛を誘発します。
特に後頭部や側頭部、前頭部の筋肉の緊張が顕著な場合、痛みを感じやすいです。
生活習慣と環境要因の影響
生活習慣や環境要因も、緊張型頭痛の発症に関与します。
不規則な食事や睡眠、水分摂取不足、アルコールの過剰摂取などの生活習慣の乱れは、体内のホルモンバランスを崩し、頭痛を起こす一因です。
また、オフィスや自宅の照明、騒音、温度、湿度などの環境要因も、知らず知らずのうちに身体に負担をかけ、頭痛の発症リスクを高めます。
生活習慣 | 頭痛への影響 |
不規則な食事 | 血糖値の乱れ |
睡眠不足 | 疲労蓄積 |
水分不足 | 脱水症状 |
遺伝的要因
家族歴のある人は、そうでない人と比べて緊張型頭痛を発症するリスクが高いことが分かってきました。
そして、遺伝的要因だけでなく、性格や心理状態も頭痛の発症に影響を与えることが明らかになっています。
完璧主義の方や不安傾向の強い人は、ストレスに対して敏感に反応し、筋肉の緊張が起こりやすいため、頭痛を経験する頻度が高いです。
緊張型頭痛の原因
- 慢性的なストレス
- 頭部・首の筋肉の過度な緊張
- 不適切な姿勢や長時間のデスクワーク
- 睡眠不足や不規則な生活リズム
- 脱水や不適切な食生活
- 遺伝的要因
- 性格特性(完璧主義、不安傾向など)
診察(検査)と診断
緊張型頭痛の診察と診断は問診、身体診察、そして必要に応じて行う各種検査を組み合わせ、他の頭痛の可能性を除外しながら、判断していきます。
問診の重要性
緊張型頭痛の診断において、問診は最も重要な要素です。
頭痛の特徴、いつから始まったか、どのくらい続くか、どのくらいの頻度で起こるか、頭痛以外の症状はないかについて、聞き取りを行います。
問診で確認する項目
- 頭痛の性質(頭が締め付けられるような感じ、重い感じ)
- 痛みを感じる部位と範囲(頭全体、後頭部、こめかみ)
- 痛みの強さ(0〜10の数字で表現してもらう)
- 発症の時期と頻度
- 一日の中での変化
- 痛みが悪くなる要因や和らぐ要因
- 頭痛に伴う他の症状の有無(吐き気、光や音に敏感になる)
- 日常生活にどの程度影響があるか
身体診察
問診に続いて、実際に患者さんの体を診察します。
診察項目 | 確認ポイント |
頭部診察 | 頭を軽く押したときに痛む場所があるか、頭皮が普段より敏感になっていないか |
頸部診察 | 首の筋肉が硬くなっていないか、首の動きに制限がないか |
神経学的診察 | 脳や神経の働きに問題がないか(顔の動き、手足の力や感覚など) |
血圧測定 | 血圧が高くなっていないか |
身体診察では、緊張型頭痛に特徴的な所見を確認するとともに、他の病気を疑わせる異常な所見がないかを評価します。
補助的検査の役割
緊張型頭痛の診断では、レントゲンやMRIなどの画像検査は必須ではありませんが、緊張型頭痛以外の原因で起こる頭痛の可能性を除外するために、行われることがあります。
状況 | 推奨される検査 |
神経の働きに異常が見られる | 頭部MRIまたはCT(頭の中の詳しい画像を撮影する検査) |
今までに経験したことのない激しい頭痛 | 頭部CT、髄液検査(脳脊髄液の検査) |
50歳以上で初めて頭痛が起きた | 頭部MRI、血液検査 |
いつもと違う頭痛のパターン | 状況に応じた検査 |
臨床診断と国際頭痛分類
緊張型頭痛の臨床診断は、「国際頭痛分類第3版(ICHD-3)」に基づいて行われます。
診断の注目点
- 頭の両側に痛みがある
- 締め付けられるような、または押されるような感じ(ズキズキする痛みではない)
- 軽度から中程度の痛み
- 歩いたり階段を上ったりする程度の普段の動作で悪化しない
緊張型頭痛の治療法と処方薬、治療期間
緊張型頭痛の治療には、薬物療法と非薬物療法を組み合わせたアプローチが効果的であり、数週間から数ヶ月の治療期間が必要です。
薬物療法の基本
緊張型頭痛の薬物療法では鎮痛剤が用いられ、急性期の治療には、アセトアミノフェンやイブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が第一選択薬です。
鎮痛剤は頭痛の痛みを緩和し炎症を抑制する効果があるため、多くの患者さんに効果を発揮します。
重症度がたかかったり通常の鎮痛剤が効果を示さない際には、トリプタン系薬剤(セロトニン受容体作動薬で)が処方される場合もあります。
薬剤名 | 効果 |
アセトアミノフェン | 鎮痛作用 |
イブプロフェン | 鎮痛・抗炎症作用 |
トリプタン系薬剤 | 血管収縮作用 |
予防的薬物療法
慢性的な緊張型頭痛の患者さんには、予防的な薬物療法が検討されることがあります。
三環系抗うつ薬(うつ病治療薬の一種で、鎮痛効果も持つ)やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRIs:神経伝達物質の働きを調整する薬剤)などが使用され、薬剤の使用には専門医の判断が必要です。
予防的薬剤は、神経伝達物質のバランスを調整し、頭痛の発生頻度を減少させます。
非薬物療法のアプローチ
薬物療法と並行して、リラクセーション技法や認知行動療法などの心理療法を行うと、ストレス管理や筋緊張の緩和に効果があります。
また、理学療法や鍼治療なども、頭痛の緩和に役立ちます。
非薬物療法は、薬物療法と組み合わせることで相乗効果が期待できるため、総合的な治療アプローチの一環として考慮されることが多いです。
非薬物療法 | 期待される効果 |
リラクセーション技法 | ストレス軽減 |
認知行動療法 | 思考パターンの改善 |
理学療法 | 筋緊張の緩和 |
治療期間と経過観察
緊張型頭痛の治療期間は、数週間から数ヶ月です。
急性期の治療では、数日から1週間程度で症状の改善が見られることが多く、予防的治療や慢性的な頭痛の場合は、3ヶ月から6ヶ月以上の長期的な治療が必要となります。
緊張型頭痛の治療における副作用やリスク
緊張型頭痛の治療で行われる薬物療法と非薬物療法はともに、特有の副作用やリスクがあります。
薬物療法の副作用
緊張型頭痛の薬物療法で用いられる鎮痛薬は、いくつかの副作用が報告されています。
薬剤分類 | 副作用 |
アセトアミノフェン(カロナールなど) | 肝機能障害、皮膚の掻痒感や発疹 |
非ステロイド性抗炎症薬(ロキソニンなど) | 胃腸障害、腎機能障害 |
トリプタン系薬剤(イミグランなど) | 胸部圧迫感、めまい |
副作用は一過性で軽度ですが、長期使用や過量投与により、重篤化する可能性があります。
薬物乱用頭痛のリスク
緊張型頭痛の治療で最も注意すべきリスクの一つが、「薬物乱用頭痛」です。
鎮痛薬を頻繁に使用することで起こり、原発性頭痛がかえって悪化します。
薬物乱用頭痛のリスク因子
- 月に15日以上の頭痛発作
- 鎮痛薬の定期的な使用(月に10日以上)
- 頭痛発作の予防的な薬物使用
- 複数の鎮痛薬の併用
薬物乱用頭痛に陥ると原発性頭痛が増悪し、治療が困難になります。
非薬物療法のリスク
非薬物療法には、物理療法やリラクセーション技法などがありますが、完全に安全ではありません。
治療法 | リスク |
マッサージ療法 | 筋肉や神経の損傷 |
鍼治療 | 感染症、出血 |
バイオフィードバック(生体情報を患者にフィードバックしながら行うリラクセーション法) | 一過性の不安感増強 |
治療費について
実際の治療費(医療費)が以下説明より高額になるケースが多々ございます。以下記載内容について当院では一切の責任を負いかねます事を予めご了承下さい。
外来診療の費用
緊張型頭痛の診療は外来で行われ、保険適用後の負担額は1,000円から2,000円です。
薬物療法の費用
一般的な鎮痛剤の場合、1回の処方で500円から1,500円になります。
薬剤タイプ | 患者負担額(概算) |
一般的な鎮痛剤 | 500円~1,500円 |
特殊な薬剤 | 1,000円~3,000円 |
非薬物療法の費用
理学療法や鍼治療などの非薬物療法の費用
- 理学療法:1回あたり1,500円~3,000円
- 鍼治療:1回あたり3,000円~5,000円
- リラクセーション指導:1回あたり2,000円~4,000円
総合的な治療費の目安
緊張型頭痛の治療は複数の方法を組み合わせることが多いです。
治療内容 | 月間費用(概算) |
外来+薬物療法 | 10,000円~20,000円 |
外来+薬物+非薬物 | 20,000円~40,000円 |
以上
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