白衣高血圧(White Coat Hypertension)とは、医療機関で血圧を測定した際には高血圧を示すものの、自宅など日常生活の環境下では正常血圧を示す状態です。
病院や診療所などの医療機関で血圧測定を行うとき、精神的な緊張から一時的に血圧が上昇する方がいます。
測定する医師や看護師の白衣を目にすることで生じる現象であるため、白衣高血圧と呼ばれます。
高血圧の初期症状である可能性も考えられるほか、持続性高血圧へ移行するリスクが高いため注意が必要です。
白衣高血圧の主な症状
白衣高血圧は、医療機関で血圧を測る際に血圧が顕著に高くなるのが特徴的です。
診察室での血圧が高い以外には、症状は特にありません。
ただし、一部の方では一時的な心拍数の増加がみられる場合があり、それが血圧の上昇につながっている場合もあります。
血圧が高くなったときに考えられる症状
無症状のケースが多い白衣高血圧ですが、以下のような症状が現れる可能性もあります。
- 頭痛や頭重感
- めまいや立ちくらみ
- 動悸や息切れ
- 胸の痛みや圧迫感
白衣高血圧の原因
白衣高血圧は、ストレスや不安、緊張による精神的ストレスが原因です。
ストレスや不安による交感神経の活性化
病院や診療所で血圧を測定する際、緊張や不安を感じることで交感神経が活性化し、一時的に血圧が上昇する場合があります。
医療従事者の白衣を見ただけで血圧が上昇する人もいれば、血圧測定自体に対する恐怖心から血圧が上昇する人もいます。
高齢者で頻度が高い
白衣高血圧は高齢者で頻度が高く、加齢に伴って血管の柔軟性が低下し、血圧が上昇しやすくなっていることが原因だと考えられています。
また、高齢者は若年者に比べてストレスに対する血圧の反応性が高くなる傾向があるため、医療環境でより顕著な血圧上昇を示す場合があります。
診察(検査)と診断
医療機関の血圧が140/90mmHg以上、家庭血圧が135/85mmHg未満であれば、白衣高血圧と臨床診断されます。
診断基準 | 医療機関血圧 | 家庭血圧 |
白衣高血圧 | ≧140/90mmHg | <135/85mmHg |
白衣高血圧を診断するためには、医療機関と家庭の両方で血圧測定を行う必要があります。
医療機関で数回測定して高血圧だと判定された場合は、家庭でも血圧測定をするように指示があります。
医療機関での血圧測定
測定回数 | 測定間隔 |
2回以上 | 1〜2分 |
医療機関では、安静にした状態で2回以上血圧を測ります。
この測定で白衣高血圧の可能性が疑われる場合は、自宅での血圧測定が必要になります。
家庭血圧測定
家庭血圧測定は、一般的に次のような手順で測定します。
- 起床後1時間以内、排尿後、服薬前に測定
- 安静座位で5分以上休憩した後に測定
- 1〜2分間隔で2回測定し、2回目の値を記録
確定診断
臨床診断の後、24時間血圧測定を行って白衣高血圧かどうかを確定します。
この検査では、日中の平均血圧が135/85mmHg未満であれば、白衣高血圧と確定診断されます。
白衣高血圧の心血管リスクは持続性高血圧よりは低いものの、将来的に持続性高血圧や心血管疾患を発症するリスクがあります。
そのため、定期的な血圧測定と生活習慣の見直しが必要です。
白衣高血圧の治療法と処方薬
白衣高血圧がみられる場合、家庭での血圧測定と生活習慣の改善指導を行い、経過観察を行います。
白衣高血圧の治療におけるポイント
- 生活習慣の改善(減塩、運動、禁煙など)
- ストレス管理
- 定期的な血圧測定と経過観察
- 必要に応じた薬物療法
生活習慣の改善
生活習慣の改善 | 具体的内容 |
減塩 | 1日6g未満 |
肥満の改善 | 適正体重の維持 |
運動療法 | 有酸素運動を1日30分以上、週5日以上 |
生活習慣の改善において、重要なのは減塩です。1日あたりの食塩摂取量が6g未満を目標に掲げましょう。
加えて、肥満の解消も重要な課題の一つです。また、運動療法ではウォーキングやジョギングといった有酸素運動が推奨されています。
1日30分以上、週5日以上の頻度で運動を継続するのが理想です。
ストレス管理
白衣高血圧がみられる方は、病院で血圧を測定する際に緊張から血圧値が上昇します。
十分な睡眠をとって軽い運動を心がけ、趣味の時間をもつなど、普段の生活においてストレスの上手な管理も治療の一環です。
定期的な血圧測定
白衣高血圧と診断された方は、ご自宅で血圧測定を日課として取り入れましょう。
血圧手帳などを活用し、毎日決まった時刻に測定すると体調の変化に気付きやすくなります。
また、病院だけでなく、薬局などでも測定してもらうのも良い方法です。
薬物療法
白衣高血圧においては薬を使用しない治療が第一に選択されます。
薬物療法はあくまでも補助的な立場であり、生活習慣の改善が最優先されています。
薬物療法を行う場合は、以下のようなお薬が一般的です。
薬剤名 | 作用機序 |
カルシウム拮抗薬 | 血管を拡張して血圧を下げる |
ARB | 血管を拡張して血圧を下げる |
利尿薬 | 体内の余分な水分を排出して血圧を下げる |
治療に必要な期間と予後について
衣高血圧の管理は「完治」するものではなく、慢性的な状態です。
そのため、治療期間を定めることは難しく、長期的な健康習慣の改善とストレス管理が必要です。
食生活や運動習慣の変更は数週間から数ヶ月で効果が現れ始めるのが一般的ですが、継続が大切です。
予後
また、長期的に見ると、白衣高血圧は持続性高血圧へ移行するリスクが高いと知られています。
持続性高血圧では、以下のような合併症を引き起こす恐れがあります。
- 心血管疾患
- 脳血管疾患
- 腎臓病
持続性高血圧へ移行させないためにも、白衣高血圧と指摘されたら、すぐに生活習慣の改善を心がけましょう。
白衣高血圧の治療における副作用やリスク
白衣高血圧の治療において薬物療法を行う場合は、服用による副作用があります。
薬物療法の副作用
高血圧の治療に用いられる降圧薬には、以下のような副作用が報告されています。
薬剤名 | 主な副作用 |
ACE阻害薬 | 空咳、血管浮腫、高カリウム血症 |
アンジオテンシンII受容体拮抗薬 | めまい、低血圧、高カリウム血症 |
生活習慣の修正に伴うリスク
急に生活習慣を改善しようとすると、以下のようなリスクを伴う可能性があります。
- 過度の運動による心血管系への負担
- 極端な食事制限による栄養不足
- 生活習慣の修正でストレスがたまり、さらなる血圧上昇を引き起こす
生活習慣の修正は、医療専門家の指導のもとで段階的に行うようにしてください。
予防方法
高血圧を予防するには、健康的な生活を送り、ストレスをうまくコントロールすることが大切です。
規則正しい生活リズムを保つ
毎日決まった時間に寝て、決まった時間に起きるようにし、十分な睡眠時間を確保するようにしましょう。また、朝食は必ず食べるようにしてください。
生活習慣 | 内容 |
睡眠時間 | 7〜8時間 |
朝食 | 毎日欠かさず食べる |
バランスの取れた食事を心がける
- 塩分の取りすぎに注意する
- 野菜や果物を積極的に取り入れる
- 飽和脂肪酸の多い食品は控えめにする
適度な運動を習慣づける
高血圧の予防には、適度な運動を習慣づけるのが効果的です。
ウォーキングやジョギングなど自分に合った運動を見つけ、無理なく続けましょう。
運動の種類 | 頻度 | 時間 |
ウォーキング | 週3〜5回 | 30分〜1時間 |
ジョギング | 週2〜3回 | 20〜30分 |
治療費について
実際の治療費(医療費)が以下説明より高額になるケースが多々ございます。以下記載内容について当院では一切の責任を負いかねます事を予めご了承下さい。
白衣高血圧は経過観察を行いますので、受診にかかる費用は再診料と検査料が基本となります。
薬物療法を取り入れる場合は、お薬代がかかります。
治療費の目安
- 経過観察の場合は月1000~2000円程度
- 薬物療法を用いる場合は月2000~3000円程度
以上
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