バッド・キアリ症候群(Budd-Chiari症候群)とは、肝臓から心臓へと血液を運ぶ重要な血管である肝静脈や下大静脈が閉塞あるいは狭窄することによって発症する稀少な血管疾患でございます。
この病気により肝臓からの血液の流れが妨げられることで、肝臓内に血液が貯留し、それに伴って門脈圧が上昇することとなります。
こうした血行動態の変化により、腹水の貯留や脾臓の腫大、さらには食道静脈瘤などの深刻な症状が引き起こされ、患者様の日常生活に著しい支障をきたす可能性がございます。
バッド・キアリ症候群の主な症状
バッド・キアリ症候群は肝静脈や下大静脈の閉塞によって引き起こされ、患者さんの約80%で多彩な症状が出現する疾患です。
腹痛や腹水貯留などの消化器症状から、全身倦怠感や黄疸といった全身症状まで、患者さんの生活の質を著しく低下させる症状が現れます。
症状の種類や程度には個人差があり、経過に応じて変化する特徴を持っています。
初期に見られる一般的な症状
肝静脈の閉塞により、患者さんの約90%が右上腹部の不快感や痛みを自覚します。
この痛みの性質は、鈍痛から強い痛みまでさまざまで、特に食後30分から2時間程度で増強する傾向にあります。
全身倦怠感は患者さんの75%以上に認められ、日常生活に支障をきたすほどの強さになることも珍しくありません。食欲不振は約60%の患者さんに見られ、その結果として1か月で平均3-5kgの体重減少を伴うことも報告されています。
初期症状として悪心・嘔吐を訴える患者さんも40%程度存在し、特に朝食後に症状が強くなる傾向があります。
症状 | 発症頻度 | 特徴的な症状の強さ |
---|---|---|
右上腹部痛 | 90% | 中等度~重度 |
全身倦怠感 | 75% | 中等度~重度 |
食欲不振 | 60% | 軽度~中等度 |
悪心・嘔吐 | 40% | 軽度~中等度 |
腹部症状の特徴と進行
腹水貯留は発症から平均して2~3週間で認められ、進行すると1週間で2~3kgの体重増加を引き起こします。
腹囲は通常の状態と比べて5~10cm以上増加することが多く、立位での腹部膨満感として自覚されます。
腹水貯留量は少ない場合で500ml程度から、重症例では3000mlを超えることもあります。
腹水による腹部圧迫は、横隔膜を上方に圧迫するため、呼吸困難感を引き起こすこともあります。
- 1週間での体重増加:2~3kg
- 腹囲増加:通常の状態から5~10cm以上
- 腹水貯留量:500ml~3000ml以上
- 呼吸数増加:安静時16~20回/分
全身性の症状と兆候
肝機能障害の進行に伴い、患者さんの約65%で黄疸が出現します。
血清総ビリルビン値は通常2.0mg/dL以上に上昇し、重症例では15.0mg/dLを超えることもあります。
発熱は38度前後の微熱が特徴的で、約30%の患者さんに認められます。
全身症状 | 発症頻度 | 重症度の指標 |
---|---|---|
黄疸 | 65% | 総ビリルビン2.0-15.0mg/dL |
発熱 | 30% | 37.5-38.5℃ |
倦怠感 | 75% | 日常生活に支障あり |
体重減少 | 45% | 1か月で3-5kg |
進行期に特徴的な症状
進行期には、下肢浮腫が約70%の患者さんに出現します。両側の足首周囲径が通常より2~3cm増加し、夕方には4~5cmまで悪化します。
門脈圧亢進症の所見として、食道静脈瘤は約50%の患者さんに認められ、その径は通常3~7mm程度です。
進行期症状 | 発症頻度 | 測定可能な変化 |
---|---|---|
下肢浮腫 | 70% | 足首周囲径2-5cm増加 |
腹壁静脈怒張 | 55% | 静脈径3-6mm |
脾腫 | 45% | 脾臓長径13-18cm |
日常生活における症状の影響
日常生活への影響は患者さんによって大きく異なりますが、約80%の方が何らかの生活制限を経験しています。
6分間歩行試験では、健常者と比較して歩行距離が20~30%減少することが報告されています。
食事摂取量は通常の60~80%程度まで減少し、睡眠時間は平均して6時間未満になることも多いです。
- 6分間歩行距離:健常者の70-80%
- 1日の食事摂取量:通常の60-80%
- 平均睡眠時間:6時間未満
- 社会活動制限:80%の患者さんが経験
バッド・キアリ症候群の症状は、患者さんの生活の質に重大な影響を及ぼします。症状の早期発見と専門医への相談が、より良い生活の維持につながります。
バッド・キアリ症候群の原因
バッド・キアリ症候群は、肝臓から心臓へ血液を運ぶ肝静脈や下大静脈の閉塞によって引き起こされる疾患です。
研究によると、血栓形成が原因となる割合が全体の約60%を占め、血管の構造異常が約20%、外部からの圧迫が約15%、その他の要因が約5%となっています。
遺伝的素因や生活環境の影響も発症に深く関与しており、複数の要因が重なって発症するケースが全体の約70%を占めています。
血栓による閉塞のメカニズム
血液凝固異常は、バッド・キアリ症候群の主要な原因として知られており、全症例の約60%で血栓形成が確認されます。
先天性の血液凝固因子異常では、アンチトロンビンⅢ欠損症(血液が固まりにくくする物質の不足)が15-20%、プロテインC欠損症が10-15%、プロテインS欠損症が8-12%の割合で認められます。
これらの異常では、血液凝固因子の活性値が正常値の50-70%以下に低下しています。血流速度が通常の30%以下に低下すると、血栓形成のリスクが約3倍に上昇するとのデータも報告されています。
血栓形成要因 | 発生頻度 | 関連する異常値 |
---|---|---|
アンチトロンビンⅢ欠損 | 15-20% | 活性値50%以下 |
プロテインC欠損 | 10-15% | 活性値60%以下 |
プロテインS欠損 | 8-12% | 活性値70%以下 |
血流速度低下 | 25-30% | 通常の30%以下 |
血管構造の異常による発症
血管構造の異常は、全症例の約20%を占める重要な発症要因です。先天的な血管形成異常では、肝静脈の狭窄が8-12%、走行異常が5-7%の頻度で認められます。
血管内腔の直径が正常値の50%以下になると、血流障害が顕著となり、圧較差が通常の2-3倍に上昇します。
血管壁の厚さが正常値の1.5倍以上に肥厚している症例も、全体の約15%で確認されています。
血管異常の種類 | 発生頻度 | 異常の程度 |
---|---|---|
肝静脈狭窄 | 8-12% | 内腔50%以下 |
走行異常 | 5-7% | 圧較差2-3倍 |
血管壁肥厚 | 約15% | 正常の1.5倍以上 |
外部からの圧迫要因
腫瘍性病変や炎症性疾患による静脈圧迫は、全症例の15%程度を占めます。
腫瘍のサイズが3cm以上になると、静脈圧迫のリスクが著しく上昇し、5cm以上の腫瘍では、80%以上の確率で静脈圧迫が生じます。
炎症性疾患による圧迫では、病変部の厚さが2cm以上の場合に、静脈流の障害が顕著となります。
遺伝的要因と体質的背景
遺伝子変異や多型性は、バッド・キアリ症候群の発症リスクを2-5倍に上昇させます。
第Ⅴ因子ライデン変異は欧米人の5-8%で認められ、日本人では0.5%未満とされています。
プロトロンビン遺伝子変異は、欧米人の2-3%、アジア人の0.1%未満に認められます。
遺伝的要因 | 人種差 | リスク上昇倍率 |
---|---|---|
第Ⅴ因子ライデン変異 | 欧米5-8%/日本0.5%未満 | 3-5倍 |
プロトロンビン変異 | 欧米2-3%/アジア0.1%未満 | 2-4倍 |
その他の遺伝子多型 | 人種により異なる | 1.5-3倍 |
環境因子と生活習慣の影響
生活環境や習慣的要因は、発症リスクを1.5-3倍に上昇させます。6時間以上の座位姿勢の継続や、1日30分未満の運動習慣は、血流うっ滞のリスクを約2倍に増加させます。
喫煙者では非喫煙者と比較して発症リスクが約1.8倍となり、アルコール多飲(1日3単位以上)では約1.5倍となることが報告されています。
- 長時間の座位(6時間以上/日):リスク2倍
- 運動不足(30分未満/日):リスク1.8倍
- 喫煙:リスク1.8倍
- アルコール多飲:リスク1.5倍
バッド・キアリ症候群は複数の要因が組み合わさって発症する特徴を持つ疾患であり、医学的な評価と継続的な観察が必要となる病態です。
診察(検査)と診断
バッド・キアリ症候群の診断では、問診と身体診察を基本として、血液検査や画像検査などを組み合わせた総合的な評価を行います。
研究によると、初期診断の段階で約85%の症例で特徴的な検査所見が得られ、複数の検査を組み合わせることで診断精度は95%以上に達します。
特に肝静脈や下大静脈の血流評価が診断の鍵となり、画像診断の感度は90%を超えることが報告されています。
初診時の問診と身体診察
医師による初診時の問診では、症状の発現時期や進行状況について、時系列に沿って15-20分程度の詳細な聴取を実施します。
体重変化については、発症前の3-6ヶ月間の推移を記録し、5%以上の変動を重視します。
身体診察では、腹囲測定(通常の状態と比較して5-10cm以上の増加に注目)や、肝臓の触診(正常な位置から2-3cm以上の腫大)などを行い、全身状態を系統的に評価していきます。
問診・診察項目 | 基準値からの変化 | 診断的意義 |
---|---|---|
体重変化 | 3-6ヶ月で±5%以上 | 中等度 |
腹囲増加 | 5-10cm以上 | 高度 |
肝臓腫大 | 2-3cm以上 | 高度 |
脾臓触知 | 2cm以上 | 中等度 |
血液検査による評価
血液検査では、肝機能を示すAST(基準値30-40 IU/L以下)、ALT(基準値30-40 IU/L以下)、γ-GTP(基準値50 IU/L以下)などの指標が、多くの場合で基準値の2-3倍に上昇します。
血液凝固能を示すPT活性(基準値70-130%)は60%以下に低下し、D-dimer(基準値1.0 μg/mL以下)は2-5倍に上昇することが特徴的です。
検査項目 | 基準値 | 典型的な異常値 |
---|---|---|
AST/ALT | 30-40 IU/L | 80-120 IU/L |
PT活性 | 70-130% | 40-60% |
D-dimer | 1.0 μg/mL以下 | 2.0-5.0 μg/mL |
画像診断による血管評価
超音波検査では、肝静脈の血流速度(正常値15-20 cm/秒)が7-10 cm/秒以下に低下し、造影CTでは造影剤の肝静脈通過時間が正常の4-5秒から10-15秒に延長します。
MRIでは、T1強調画像で肝実質の信号変化を90%以上の症例で確認でき、特に造影MRIでは血管内腔の狭窄部位を明瞭に描出します。
画像検査法 | 正常値 | 異常所見の診断基準 |
---|---|---|
超音波血流速度 | 15-20 cm/秒 | 7-10 cm/秒以下 |
CT造影時間 | 4-5秒 | 10-15秒以上 |
MRI信号変化 | 均一 | 90%以上で不均一化 |
肝生検による組織診断
肝生検では、組織標本の20-30%以上に類洞拡張や中心静脈周囲の線維化を認めた場合に診断的価値が高いとされます。
組織学的な変化の程度は、病期分類(Grade 1-4)に反映され、Grade 3以上では類洞拡張が組織面積の50%以上に及びます。
確定診断のための総合評価
診断基準では、主要所見2項目以上と補助所見1項目以上を満たした場合に確定診断となります。
画像診断の感度は90-95%、特異度は85-90%とされ、血液検査所見と組み合わせることで診断精度は98%に達します。
- 主要所見(2項目以上必要):画像診断での血流異常、肝機能異常、門脈圧亢進所見
- 補助所見(1項目以上必要):組織所見、血液凝固異常、特異的自己抗体
- 除外診断:他の肝疾患との鑑別(感度85%以上)
バッド・キアリ症候群の診断において、各種検査データの総合的な解析と評価が鍵となります。
早期発見・早期診断のためには、医師による適切な検査選択と専門的な判断が必要となることを強調したいと思います。
バッド・キアリ症候群の治療法と処方薬、治療期間
バッド・キアリ症候群の治療実績では、抗凝固療法による治療開始後3か月以内に約70%の患者さんで症状の改善が認められます。
血管内治療と外科的治療を組み合わせた場合の5年生存率は85%を超え、早期診断・早期治療が予後を大きく左右する疾患です。
治療期間は個人差がありますが、多くの場合6か月から数年にわたる継続的な治療を必要とします。
抗凝固療法による基本治療
抗凝固療法は全症例の約95%で第一選択として実施され、治療開始後24-48時間以内に80%の患者さんで血液凝固能の改善を認めます。
初期治療では、未分画ヘパリン(10,000-20,000単位/日)を5-7日間投与し、APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)を正常値の1.5-2.5倍に維持します。
その後、ワルファリンの内服(3-5mg/日)に切り替え、PT-INR(プロトロンビン時間国際標準比)を2.0-3.0の範囲内にコントロールします。
抗凝固薬 | 1日投与量 | 目標治療値 | 初期改善率 |
---|---|---|---|
未分画ヘパリン | 10,000-20,000単位 | APTT 1.5-2.5倍 | 80% |
ワルファリン | 3-5mg | PT-INR 2.0-3.0 | 75% |
DOAC | 体重により調整 | 薬剤により異なる | 70% |
血管内治療の実施
血管内治療は、抗凝固療法開始後2-4週間で効果が不十分な患者さん(全体の約30%)に対して検討されます。
バルーン血管形成術では、狭窄部位を直径6-8mmまで拡張し、技術的成功率は85-90%に達します。
ステント留置術の5年開存率は70-75%で、再狭窄を認めた場合は再度の血管形成術を実施します。
血管内治療法 | 所要時間 | 技術的成功率 | 再治療率 |
---|---|---|---|
バルーン拡張術 | 60-90分 | 85-90% | 20-25% |
ステント留置術 | 90-120分 | 80-85% | 15-20% |
血栓溶解療法 | 24-48時間 | 70-75% | 30-35% |
外科的治療の選択
外科的治療は、血管内治療が困難な患者さん(全体の約20%)に対して実施され、手術時間は通常4-6時間を要します。
肝移植の5年生存率は80-85%で、35歳未満の患者さんでは90%を超えます。
シャント手術後の門脈圧は平均30%低下し、腹水の改善率は60-70%に達します。
手術方式 | 手術時間 | 入院期間 | 術後5年生存率 |
---|---|---|---|
肝移植 | 6-8時間 | 3-4週間 | 80-85% |
バイパス手術 | 4-6時間 | 2-3週間 | 70-75% |
シャント手術 | 3-4時間 | 2週間 | 65-70% |
薬物療法の継続
薬物療法の継続期間は、血管の開存状態や臨床症状の改善度によって個別に判断されます。
利尿薬の投与により、腹水量は2-3週間で30-50%減少し、体重は平均して3-5kg減少します。
肝機能改善薬の投与により、肝機能検査値は3-6か月で40-60%改善します。
経過観察と治療調整
定期的な経過観察では、血液検査でPT-INRを2週間ごとに測定し、目標値からの逸脱が15%を超えた場合に投与量を調整します。
画像検査では、超音波検査を1-2か月ごと、造影CTを6か月ごとに実施し、血管開存率を評価します。
外来での経過観察期間は、病状が安定した後も最低3-5年は継続し、多くの場合10年以上にわたって定期的な観察を行います。
バッド・キアリ症候群の治療においては、個々の患者さんの病態に応じた治療法の選択と、長期的な経過観察による継続的な治療管理が鍵となるでしょう。
バッド・キアリ症候群の治療における副作用やリスク
バッド・キアリ症候群の治療における副作用やリスクは、各治療法によって異なる発生率を示します。
抗凝固薬による出血性合併症は約15-20%で発生し、血管内治療での合併症発生率は8-12%となっています。
外科的治療では、術後合併症が25-30%の頻度で観察されます。
これらのリスクは患者さんの年齢や基礎疾患によって変動し、65歳以上の高齢者では合併症の発生率が1.5-2倍に上昇します。
抗凝固薬による副作用
抗凝固薬の使用中、重大な出血性合併症は全体の15-20%で発生し、その中でも消化管出血が最も多く8-10%を占めています。
皮下出血や歯肉出血などの軽度の出血は30-40%の患者さんで認められ、特に治療開始から2週間以内に多く発生します。
PT-INR(プロトロンビン時間国際標準比)が4.0を超えると、重篤な出血のリスクは5倍以上に上昇するとの報告があり、慎重な経過観察が必要とされます。
副作用 | 発生率 | 重症度別頻度 |
---|---|---|
消化管出血 | 8-10% | 軽症60%/中等症30%/重症10% |
皮下出血 | 15-20% | 軽症80%/中等症15%/重症5% |
アレルギー反応 | 5-7% | 軽症85%/中等症12%/重症3% |
血管内治療に伴うリスク
血管内治療での合併症全体の発生率は8-12%で、そのうち血管損傷が3-4%、造影剤関連の有害事象が2-3%を占めています。
造影剤腎症(造影剤による一時的な腎機能障害)は血清クレアチニン値が基準値の1.5倍以上に上昇する症例が4-6%で認められ、特に腎機能低下者では発生率が15-20%まで上昇します。
合併症 | 発生率 | リスク上昇因子 |
---|---|---|
血管損傷 | 3-4% | 高齢・動脈硬化 |
造影剤腎症 | 4-6% | 腎機能障害・糖尿病 |
再狭窄 | 15-20% | 血管径・凝固能亢進 |
外科手術に関連する合併症
手術関連の合併症は全体で25-30%の発生率を示し、そのうち術後早期(術後30日以内)の合併症が15-20%、晩期合併症が10-15%となっています。
手術部位感染は7-9%で発生し、手術時間が4時間を超える症例では感染リスクが2倍に上昇します。
長期的な薬物療法のリスク
長期薬物療法によるリスクは、投与期間が1年を超えると顕著になり、肝機能異常が10-15%、腎機能低下が8-12%で認められます。
骨密度低下は3年以上の継続投与で20-25%の患者さんに発生し、特に50歳以上の女性で顕著となります。
長期合併症 | 発生率 | 発現時期 |
---|---|---|
肝機能異常 | 10-15% | 6-12か月 |
腎機能低下 | 8-12% | 12-18か月 |
骨密度低下 | 20-25% | 36か月以上 |
合併症への対応と予防
合併症予防のための定期検査では、血液検査を2-4週間ごと、画像検査を3-6か月ごとに実施し、異常の早期発見に努めています。
予防的介入により、合併症発生率を30-40%低下させることが可能です。
- 定期検査:血液検査(2-4週間間隔)、画像検査(3-6か月間隔)
- 予防的投薬:胃粘膜保護剤(出血リスク低減:40-50%)
- 生活指導:転倒予防(出血性合併症低減:20-30%)
- 運動療法:筋力維持(骨密度低下予防:15-20%)
バッド・キアリ症候群の治療における副作用とリスクを理解し、定期的な経過観察を継続することで、より安全な治療継続を実現できると考えられます。
治療費について
実際の治療費(医療費)が以下説明より高額になるケースが多々ございます。以下記載内容について当院では一切の責任を負いかねます事を予めご了承下さい。
バッド・キアリ症候群の治療費について
バッド・キアリ症候群の治療には多岐にわたる医療費が発生します。
2024年4月時点での一般的な治療費用は、外来診療から入院治療まで含めると月額25,000円から40,000円程度となっています。
個々の患者さんの症状や治療内容によって費用は大きく変動するため、医療費の試算を事前に確認することをお勧めいたします。
処方薬の薬価
現在、主な治療薬の薬価は世代や種類によって大きな幅があります。従来から使用されているワルファリン(血液凝固を抑える薬)は1錠30-50円と比較的安価である一方、新世代の抗凝固薬は1錠250-450円と高額となります。
加えて、肝機能改善薬は1錠80-120円、利尿薬(むくみを改善する薬)は1錠15-30円となっており、通常これらを組み合わせて服用することから、日々の投薬費用は決して低額とは言えない状況です。
薬剤種類 | 1日あたりの薬価 | 患者負担(3割の場合) |
---|---|---|
抗凝固薬 | 250-900円 | 75-270円 |
利尿薬 | 45-90円 | 14-27円 |
肝機能改善薬 | 240-360円 | 72-108円 |
1週間の治療費
外来での週間治療費は、基本的な診療内容と検査を含めると6,000円から12,000円程度になります。この費用には以下の項目が含まれています。
- 診察基本料:3,000円(再診の場合)
- 血液検査料:4,000-5,000円
- 処方薬剤料:3,000-4,000円
- 画像診断料:5,000-7,000円(超音波検査実施時)
1か月の治療費
月間の医療費総額は、定期的な外来受診と検査、継続的な投薬を合わせると25,000円から40,000円の範囲となります。
疾患の進行度や合併症の有無によって、この金額は上下に変動する点に留意が必要です。
診療内容 | 月間費用 | 備考 |
---|---|---|
外来診療 | 12,000-18,000円 | 週1回の診察 |
検査費用 | 8,000-12,000円 | 血液・画像検査込み |
投薬費用 | 5,000-10,000円 | 処方日数により変動 |
医療費の実質負担額は、加入している健康保険の種類や自己負担割合によって異なりますので、医事課での事前相談をご検討ください。
以上
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