大腸憩室(Colonic diverticulum)とは、大腸の壁の一部が袋状に飛び出した状態を指し、主に大腸の壁の筋肉層の弱体化によって起こります。
高齢者に多く、便秘や低繊維食といった生活習慣がリスク因子として知られています。
憩室自体は自覚症状を伴わず発見される場合が多いですが、憩室に炎症が起こり憩室炎になると、腹痛や発熱といった症状が現れ、場合によっては重症化する可能性もあります。
大腸憩室の種類(病型)
大腸憩室は、消化管の一部である大腸壁に生じる袋状の突出物です。その形態や発生機序によって、主に真性憩室と仮性憩室の2つの病型に分類されます。
真性憩室の基本的特徴
真性憩室は、大腸壁のすべての層(粘膜、粘膜下層、筋層、漿膜)が外側に突出する形態を特徴とします。この全層性の突出は、腸管壁の構造的完全性を保ちつつ、外側に膨らむ独特の形状を形成します。
真性憩室の発生には先天的な要因が大きく関与しているとされ。特に、腸管壁の発生過程における異常や、遺伝的な要因が背景にあると考えられています。
解剖学的には、真性憩室は主に右側結腸に発生する傾向があります。具体的には、盲腸や上行結腸に好発し、これらの部位で全大腸憩室の約70%を占めるとされています。
構成要素 | 特徴 | 臨床的意義 |
---|---|---|
粘膜層 | 完全に保持 | 内視鏡検査で観察可能 |
筋層 | 連続性あり | CT検査で確認可能 |
漿膜 | 外側に突出 | 腹腔鏡検査で確認可能 |
真性憩室の形態は、一般的に円形または楕円形を呈し、その大きさは通常5mm〜2cm程度とされています。ただし、稀に3cm以上の大型のものも報告されており、特に注意が必要です。
仮性憩室の基本的特徴
仮性憩室は、大腸壁の一部(主に粘膜層と粘膜下層)のみが突出する形態を持ちます。真性憩室とは対照的な特徴を示し、腸管壁の構造的完全性が損なわれている点が特徴です。
仮性憩室の発生には、後天的な要因が主体となります。特に、長期にわたる腸管内圧の上昇や、慢性的な便秘、加齢に伴う腸管壁の脆弱化などが主な要因として挙げられます。
50歳以上の人口の約30%に仮性憩室が見られるという統計があり、年齢との相関関係が強く示されています。
仮性憩室の年齢別発生頻度
年齢層 | 発生頻度 | 男女比 |
---|---|---|
40-49歳 | 約15% | 1:1.2 |
50-59歳 | 約30% | 1:1.3 |
60歳以上 | 約45% | 1:1.5 |
仮性憩室は壁が薄いため、真性憩室と比較して破裂のリスクが高く、憩室炎や憩室出血などの合併症を引き起こす可能性が高いとされています。
病型による分布と好発部位の特徴
真性憩室は右側結腸に優位な分布を示し、特に盲腸から上行結腸にかけての領域に集中します。
これに対し、仮性憩室は左側結腸、特にS状結腸に好発する傾向があります。
部位 | 真性憩室の割合 | 仮性憩室の割合 | 臨床的特徴 |
---|---|---|---|
盲腸 | 40% | 5% | 急性症状が多い |
上行結腸 | 30% | 10% | 慢性症状が多い |
横行結腸 | 15% | 15% | 両型が混在 |
下行結腸 | 10% | 30% | 狭窄傾向 |
S状結腸 | 5% | 40% | 炎症が多い |
形態学的特徴の比較
真性憩室は円形で比較的大きく、その直径は平均して8〜15mm程度です。一方、仮性憩室は不整形で小さく、通常3〜7mm程度の大きさにとどまります。
真性憩室の形態
- 壁の厚さが均一
- 辺縁が滑らか
- 深部への進展が明確
仮性憩室の形態
- 壁の厚さが不均一
- 辺縁が不整
- 表層に留まる傾向
大腸憩室の主な症状
大腸憩室の主な症状には、憩室炎による腹痛や発熱、憩室出血による血便などがあげられますが、無症状の場合も多く、自覚症状がないまま進行することもあります。
真性憩室の症状
真性憩室では、左下腹部を中心とした持続的な痛みが特徴的です。食事や腸の蠕動運動と関連しており、食後に増強することがあります。
症状分類 | 具体的な特徴 | 発生頻度 |
---|---|---|
腹痛 | 左下腹部に集中し、食事と連動して変化する | 高 |
腸管運動異常 | 便秘または下痢の反復的な出現 | 中 |
腹部膨満感 | 腸内圧の変化による不快感 | 低 |
仮性憩室の症状
仮性憩室の症状は、軽度の腹部不快感として現れます。排便時の違和感や、間欠的な腹部圧迫感が主な症状となり、長期間にわたって持続する場合もあります。
症状分類 | 詳細な臨床像 | 持続期間 |
---|---|---|
腹部不快感 | 断続的で鈍い痛みや圧迫感 | 長期 |
排便パターン | 便秘や排便困難の周期的な発生 | 中期 |
消化管機能 | 腸管蠕動の微細な変化 | 短期 |
大腸憩室の共通症状
大腸憩室に共通する症状は、発熱、血便、腹部圧痛などが代表的です。
微熱や38度前後の発熱が続き、血便は比較的まれですが、深刻な兆候として捉える必要があります。
症状の重症度
重症度 | 症状の特徴 | 対応レベル |
---|---|---|
軽度 | 間欠的な腹部不快感 | 経過観察 |
中等度 | 持続的な痛みと排便異常 | 医療相談 |
重度 | 激しい腹痛、発熱、血便 | 即時治療 |
大腸憩室の原因
大腸憩室の発症には、食生活、加齢、遺伝的要因など、複数の要素が複雑に絡み合っています。
食生活の変化
特に、低繊維食の継続的な摂取は、大腸憩室の発症リスクを著しく高めることが多くの疫学研究で明らかになっています。
1日の食物繊維摂取量が15g未満の人は、25g以上摂取している人と比較して、大腸憩室の発症リスクが約30%高いことが報告されています。
加齢
40歳を過ぎると腸管壁のコラーゲン線維の配列が乱れ始め、60歳を超えるとその変化が顕著になります。この弾力性の低下により、腸管壁が内圧に耐える力が弱まり、憩室形成のリスクが高まります。
実際、50歳以上の方では大腸憩室の発症率が急激に上昇し、80歳以上では約70%の方に何らかの大腸憩室が見られるという統計もあります。
遺伝的要因
家族歴のある方は、そうでない方と比べて大腸憩室のリスクが約2倍高いことが分かっています。
腸内圧の上昇
慢性便秘の患者さんでは、健常者と比べて大腸憩室の発症リスクが約1.5倍高いという研究結果があります。
また、排便時に過度に力むと一時的に腸内圧が通常の5倍以上に上昇するとも言われており、これが憩室形成を加速させる可能性があります。
腸管壁の脆弱性
先天的または後天的な要因により、腸管壁が脆弱化することがあります。
例えば、エーラス・ダンロス症候群(結合組織の遺伝性疾患)の患者さんでは、大腸憩室の発症率が一般人口の約3倍高いことが報告されています。
大腸憩室の主な原因 | リスク増加の程度 | 関連する統計データ |
---|---|---|
低繊維食 | 約30% | 1日15g未満の摂取で発症リスク上昇 |
加齢 | 年齢とともに上昇 | 80歳以上で約70%に憩室あり |
遺伝的要因 | 約2倍 | 家族歴のある人でリスク上昇 |
慢性便秘 | 約1.5倍 | 便秘患者で発症リスク上昇 |
結合組織疾患 | 約3倍 | エーラス・ダンロス症候群患者でリスク上昇 |
真性憩室と仮性憩室の原因の違い
真性憩室は主に先天的な要因によって発生し、大腸の発生過程における異常が原因とされています。
仮性憩室は大腸憩室の大多数(約98~99%)を占め、主に後天的な要因によって発生します。
仮性憩室の特徴として、多発性であることが挙げられます。1人の患者さんに10個以上の憩室が見られるようなケースも珍しくありません。
特徴 | 真性憩室 | 仮性憩室 |
---|---|---|
発生頻度 | 全大腸憩室の1~2% | 全大腸憩室の98~99% |
好発部位 | 右側結腸(特に盲腸) | 左側結腸(特にS状結腸) |
発生原因 | 主に先天的 | 主に後天的 |
構造 | 腸管壁の全層を含む | 粘膜と粘膜下層のみ |
発生数 | 通常単発性 | 多発性が多い |
サイズ | 比較的大きい(2cm以上も) | 小さい(5mm~1cm程度) |
破裂リスク | 比較的低い | 比較的高い |
診察(検査)と診断
大腸憩室の診断では、画像診断や内視鏡検査など複数の検査を実施して、大腸憩室の存在や状態を評価します。
初診時の問診と身体診察
問診では、主訴、症状の経過、既往歴、家族歴などを聴取します。特に、腹痛や便通の変化、血便の有無などに注目します。
左下腹部の間欠的な痛みや、便秘と下痢の交代、少量の鮮血便などは、大腸憩室を示唆する重要な手がかりとなります。
腹部の触診では、圧痛の有無や位置、腹部の膨満感などを確認します。大腸憩室の合併症である憩室炎が疑われる場合、左下腹部に限局した圧痛を認めることがあります。
また、必要に応じて腸蠕動音の聴診や直腸診も行います。直腸診では、直腸周囲の圧痛や腫瘤の有無、便の性状などを評価します。
初診時の問診で確認すべき主な項目
- 腹痛の有無、部位、性質、持続時間(例:左下腹部の鈍痛が2日間持続)
- 便通の変化(例:3日間便秘後に下痢が続く)
- 血便の有無(例:排便時に少量の鮮血が混じる)
- 発熱の有無(例:38.5度の発熱が2日間続く)
- 食事歴や生活習慣(例:低繊維食が続いている、運動不足)
- 既往歴(特に消化器疾患)(例:過去に大腸ポリープ切除の経験あり)
- 家族歴(大腸憩室や大腸癌など)(例:父親が大腸癌)
画像診断による大腸憩室の評価
画像診断では、憩室の存在、位置、数、大きさ、合併症の有無などを評価していきます。
腹部CT検査
大腸憩室の診断に最も広く用いられる画像診断法です。CTでは、大腸壁の外側に突出する小さな嚢状構造物として憩室を確認できます。
通常、憩室は直径5mm未満の小さな突出として観察されますが、時に1cm以上の大きな憩室も見られることがあります。また、憩室炎や穿孔などの合併症の評価にも有用です。
注腸造影検査
かつては大腸憩室の診断に頻繁に用いられていましたが、現在ではCTや内視鏡検査の普及により、その使用頻度は減少しています。しかし、大腸全体の憩室の分布や数を評価する上では依然として有用な検査法です。
この検査では、バリウム造影剤を注入し、X線透視下で大腸の形態を観察します。例えば、S状結腸に多発する憩室が見られる場合、典型的な大腸憩室症の所見と言えます。
腹部超音波検査
簡便な検査法ですが、大腸憩室の診断における感度は比較的低いです。ただし、急性憩室炎の診断や経過観察には役立つことがあります。
超音波検査では、腸管壁の肥厚や周囲の脂肪織輝度上昇、膿瘍形成などの所見が観察されます。
MRI(磁気共鳴画像)
MRIでは、T2強調画像で憩室内の液体貯留や周囲の炎症性変化を鮮明に描出することができます。
放射線被曝がないという利点がありますが、大腸憩室の診断に日常的に用いられることは少ないです。しかし、CTが禁忌の患者や、より詳細な軟部組織の評価が必要な場合に選択される場合があります。
各画像診断法の特徴
検査法 | 長所 | 短所 | 典型的な所見例 |
---|---|---|---|
CT | 高い感度と特異度、合併症の評価に有用 | 放射線被曝 | 大腸壁外に突出する小嚢状構造、憩室炎では周囲脂肪織濃度上昇 |
注腸造影 | 憩室の分布と数の評価に優れる | 侵襲性、被曝 | バリウムで充満された多発小突出像 |
超音波 | 非侵襲的、簡便 | 感度が低い | 急性憩室炎では腸管壁肥厚、周囲脂肪織輝度上昇 |
MRI | 放射線被曝なし、軟部組織の評価に優れる | 高コスト、時間がかかる | T2強調画像で憩室内液体貯留、周囲炎症性変化を鮮明に描出 |
内視鏡検査
大腸内視鏡検査では、大腸の内腔を直接観察することができ、憩室の存在、数、分布、大きさを評価できます。
典型的には、直径2〜10mm程度の半円形または円形の開口部として観察されます。憩室の数は患者によって大きく異なり、数個から数十個、時には100個以上認められるケースもあります。
また、憩室からの出血や炎症の有無、さらには大腸癌などの他の疾患の併存の有無も確認できます。
日本人の場合、憩室は右側結腸(上行結腸や盲腸)に多く見られる傾向がありますが、欧米人では左側結腸(S状結腸や下行結腸)に多いとされています。
憩室からの出血が疑われる場合、内視鏡検査で直接出血部位を同定し、止血処置を行うこともあります。
内視鏡検査で観察される大腸憩室の特徴
観察項目 | 典型的な所見 |
---|---|
憩室の大きさ | 2〜10mm程度 |
憩室の数 | 数個〜100個以上 |
分布 | 右側結腸優位(日本人) |
周囲粘膜の状態 | 発赤、浮腫 |
出血の有無 | 活動性出血、血餅付着 |
内視鏡検査は、大腸憩室の診断だけでなく、他の消化管疾患の鑑別にも重要な検査となります。炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)、大腸ポリープ、大腸癌などの存在も同時に評価できるため、症状の原因が大腸憩室なのか、それとも他の疾患なのかを判断できます。
ただし、急性憩室炎の症状がある場合や、憩室穿孔が疑われる場合には内視鏡検査は禁忌となります。これは、内視鏡操作により炎症を悪化させたり、穿孔を拡大させたりするリスクがあるためです。
このような場合は、まずCT検査などの非侵襲的な検査を行い、炎症が沈静化してから内視鏡検査を実施します。
大腸憩室の治療法と処方薬、治療期間
大腸憩室に対する治療は、内科的治療と外科的治療を軸として、状態を総合的に評価しながら方針を選択します。
多くはまず内科的アプローチから開始し、症状の推移を観察しつつ、必要に応じて外科的介入へと移行する段階的な治療を行います。
内科的治療の基本方針
内科的治療では、食事療法と薬物療法を組み合わせ、腸管内環境の最適化と炎症抑制を図ります。特に急性期における抗生物質療法は、炎症のコントロールに効果を発揮します。
食事療法では、全粒穀物、果物、野菜などを積極的に取り入れ、1日あたり25-30グラムの食物繊維摂取を目標とします。これにより、腸内容物の軟化と腸管運動の促進が期待できます。
薬物療法においては、非吸収性抗菌薬であるリファキシミンが1日800mg、7日間の投与で症状の改善が認められ、再発予防にも効果があるとされています。
治療法 | 主な目的 | 具体的な方法 |
---|---|---|
食事療法 | 腸管負担の軽減 | 高繊維食の摂取(25-30g/日) |
薬物療法 | 炎症抑制・症状緩和 | リファキシミン(800mg/日、7日間) |
抗生物質治療 | 感染制御・炎症改善 | セフトリアキソン(1-2g/日、静脈内投与) |
処方薬の種類と使用方法
大腸憩室の第一選択薬として広く使用されるセフメタゾールは、1回1-2g、1日2-4回の投与が標準的です。
重症例に対しては、より広域スペクトルを持つカルバペネム系抗生物質が選択されます。メロペネムを1回0.5-1g、1日3回投与するケースが多く見られます。
- 第一選択薬:セフメタゾール(1-2g、1日2-4回)
- 重症例向け:メロペネム(0.5-1g、1日3回)
- 補助的薬剤:ビフィズス菌製剤(1日3回、食前)
投与期間は通常5-7日間ですが、症状の改善が見られない場合は、10-14日間に延長する場合もあります。
外科的治療の適応と方法
手術療法は、保存的治療で十分な改善が得られない場合や、深刻な合併症を伴う症例に対して実施を検討します。
腹腔鏡手術では3-4カ所の小切開(各5-12mm)を通して手術が行われ、術後の痛みが少なく、入院期間も短縮されます。一方、開腹手術は、より広い視野が得られ、複雑な処置や緊急時の対応に適した方法です。
手術方法 | 特徴 | 回復期間 | 適応 |
---|---|---|---|
腹腔鏡手術 | 低侵襲・傷跡が小さい | 1-2週間 | 単発性憩室炎、軽度の穿孔 |
開腹手術 | 広い視野・確実な処置 | 2-4週間 | 多発性憩室、重度の穿孔、瘻孔形成 |
手術の具体的な方法としては、憩室切除術や腸管切除術があります。
憩室切除術
単発性の憩室に対して行い、病変部のみを切除します。
腸管切除術
多発性憩室や広範囲の炎症が見られる場合に選択し、病変部を含む腸管の一部を切除します。
手術後の回復期間は、術式や患者の全身状態によって異なりますが、腹腔鏡手術の場合は通常1-2週間、開腹手術では2-4週間程度の入院が必要となります。
術後は、段階的に食事を再開し、腸管機能の回復を見守ります。
治療期間
真性憩室の場合、腸管壁の全層が関与しているため、より慎重な管理が求められます。標準的な治療期間は4-6週間程度で、この間に内科的治療を中心とした保存的アプローチを行い。
一方、仮性憩室は粘膜と粘膜下層のみが関与しているため、比較的短期間での改善が期待できます。通常、2-4週間の治療期間で症状の緩和が見られます。
病型 | 標準的な治療期間 | フォローアップ間隔 | 主な治療方針 |
---|---|---|---|
真性憩室 | 4-6週間 | 3-6ヶ月 | 長期的な内科的管理、必要に応じて手術 |
仮性憩室 | 2-4週間 | 2-3ヶ月 | 短期的な保存的治療、再発予防に注力 |
大腸憩室の治療における副作用やリスク
大腸憩室の治療において、各治療法には特有の副作用やリスクが伴います。
薬物療法における副作用とリスク
メトロニダゾールやシプロフロキサシンなどの抗生物質投与後24時間以内に、約15%の方に軽度から中等度の消化器症状がみられます。
水様性下痢(発生率約20%)、持続的な吐き気(発生率約12%)、間欠的な腹痛(発生率約8%)などが代表的な副作用症状です。
また、長期の抗生物質投与では、腸内細菌叢の著しい変化により、Clostridioides difficile感染症(CDI)の発症リスクが通常の3.2倍に上昇します。特に65歳以上の高齢者や免疫機能が低下している場合では、このリスクが5.8倍まで上昇するというデータが報告されています。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の使用に関しては、2週間以上の継続投与で胃粘膜障害のリスクが約2.5倍増加します。特に75歳以上の高齢者では、消化管出血のリスクは健常者の約4.3倍に達するため、注意が必要です。
年齢層 | CDI発症リスク倍率 | 消化管出血リスク倍率 |
---|---|---|
65歳未満 | 3.2倍 | 2.5倍 |
65-74歳 | 4.5倍 | 3.8倍 |
75歳以上 | 5.8倍 | 4.3倍 |
外科的治療に伴うリスクと合併症
手術部位感染(SSI)の発生率は、清潔手術で2.5%、準清潔手術で約5.8%、汚染手術では15%以上に上昇します。特に緊急手術における感染リスクは、予定手術の約2.3倍となります。
手術種類 | SSI発生率 | 平均入院期間 |
---|---|---|
腹腔鏡下手術 | 2.5-5.8% | 7-10日 |
開腹手術 | 5.8-15% | 14-21日 |
緊急手術 | 15-25% | 21-30日 |
術後の縫合不全は、大腸手術後の最も深刻な合併症の一つです。その発生率は全体で約3.8%ですが、直腸低位前方切除術では7.5%まで上昇します。
また、術後1年以内の腸閉塞の発生率は約8.2%で、そのうち約30%が再入院を要します。特に開腹手術後は腹腔鏡手術と比較して、腸閉塞のリスクが1.7倍高いことが分かっています。
内視鏡的処置における偶発症
内視鏡的処置は比較的低侵襲ですが、まれに偶発症が起こるリスクがあります。大腸内視鏡検査における穿孔の発生率は約0.05%と低いですが、ポリープ切除を伴う場合は0.2%まで上昇します。
特に、径2cm以上の大きなポリープ切除時には、穿孔リスクが0.8%に達するという報告があります。
出血は内視鏡的処置後の最も一般的な偶発症で、その発生率は約0.1-0.6%です。ただし、抗凝固薬を服用中の患者さまでは、このリスクが2.5倍に増加します。
75歳以上の高齢者では、出血リスクがさらに1.8倍上昇することも判明しています。
鎮静に関連する呼吸器系のリスクは、全体で約0.1%ですが、肥満(BMI 30以上)の患者さまでは0.3%、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を有する患者さまでは0.5%まで上昇します。
偶発症 | 通常の発生率 | 高リスク群での発生率 |
---|---|---|
穿孔 | 0.05-0.2% | 0.8% (大型ポリープ切除時) |
出血 | 0.1-0.6% | 1.5% (抗凝固薬服用中) |
呼吸器系リスク | 0.1% | 0.5% (COPD患者) |
治療費について
実際の治療費(医療費)が以下説明より高額になるケースが多々ございます。以下記載内容について当院では一切の責任を負いかねます事を予めご了承下さい。
処方薬の薬価
大腸憩室の治療に用いられる抗生物質や消炎鎮痛剤などの薬価は、おおよそ1種類につき2,000円から8,000円程度の範囲で設定されています。
複数の薬剤が処方される場合もあるため、総合的な薬剤費用は増加する可能性があります。
1週間の治療費の目安
治療内容 | 概算費用 |
---|---|
外来診療 | 5,000円〜15,000円 |
処方薬 | 3,000円〜10,000円 |
1か月の治療費の目安
治療内容 | 概算費用 |
---|---|
外来診療 | 15,000円〜45,000円 |
処方薬 | 10,000円〜30,000円 |
追加的な医療費用
- 初診料
- 再診料
- 検査費用
- 画像診断料
以上
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