消化管神経内分泌腫瘍 – 消化器の疾患

消化管神経内分泌腫瘍(Gastrointestinal neuroendocrine neoplasms)とは、消化管の壁に存在する特殊な細胞、神経内分泌細胞から発生する独特な性質を持つ腫瘍です。

この腫瘍の大きな特徴は、一般的な消化管がんとは異なり、体内でホルモンを分泌する機能を持っているという点にあります。

胃や小腸、大腸など、消化管のあらゆる場所での発生が確認されており、多くの場合、進行の速度が比較的緩やかであることが知られていますが、早期発見の重要性が指摘されている疾患です。

この記事を書いた人
丸岡 悠(まるおか ゆう)
丸岡 悠(まるおか ゆう)
外科医

1988年山形県酒田市生まれ。酒田南高校卒業後、獨協医科大学(栃木)にて医師免許取得。沖縄県立北部病院、独立行政法人日本海総合病院を経て現職(医療法人丸岡医院)。

消化管神経内分泌腫瘍の種類(病型)

消化管神経内分泌腫瘍は、その発生メカニズムや細胞特性により、複数の分類体系が確立されています。本稿では、2019年にWHOが改訂した分類基準を中心に、各種類の特徴と分類方法について詳述します。

WHO分類による消化管神経内分泌腫瘍の基本分類

消化管神経内分泌腫瘍のWHO分類は、腫瘍細胞の分化度と増殖能を主要な指標として体系化されています。特に注目すべき点として、Ki-67指数(細胞増殖マーカー)による客観的な評価基準があり、これにより腫瘍の悪性度を正確に判定できます。

分化度の高いNET G1型はKi-67指数が3%未満で、細胞形態が整っており、比較的緩やかな増殖を示します。

NET G2型は、Ki-67指数が3-20%の範囲内で、G1型より若干増殖速度が速く、細胞異型もやや目立ちます。

NET G3型は、Ki-67指数が20%を超えるものの、依然として高分化型の形態を保持しています。一方、NECは同じくKi-67指数が20%を超えますが、低分化型の形態を示し、より攻撃的な性質を持ちます。

分類Ki-67指数分化度核分裂像数
NET G13%未満高分化型2個未満/10HPF
NET G23-20%高分化型2-20個/10HPF
NET G320%超高分化型20個超/10HPF
NEC20%超低分化型20個超/10HPF

発生部位による分類と特性

消化管神経内分泌腫瘍の発生部位は、食道から直腸まで広範囲に及びます。各部位における腫瘍は、その解剖学的位置や周囲の微小環境により、独特の特徴を示します。

胃型神経内分泌腫瘍は、胃粘膜の内分泌細胞から発生し、A型(自己免疫性胃炎関連)、B型(散発性)、C型(胃炎非関連)の3つのサブタイプに分類されます。十二指腸型は、ガストリン産生細胞由来のものが多く、Zollinger-Ellison症候群との関連が指摘されています。

小腸型は、特にセロトニン産生能を有するものが多く、回腸末端部に好発します。大腸型は、直腸に発生頻度が高く、非機能性腫瘍が大半を占めます。

発生部位主な特徴好発年齢
3つのサブタイプ存在50-60代
十二指腸ガストリン産生能40-50代
小腸セロトニン産生能60-70代
大腸非機能性が多い50-60代

機能性による分類

神経内分泌腫瘍の機能性分類は、ホルモンやその他の生理活性物質の産生能に基づいています。機能性腫瘍は、特定のホルモンを過剰産生することで、特徴的な臨床症状を引き起こします。

セロトニン産生腫瘍はカルチノイド症候群との関連が深く、特に小腸原発の腫瘍に多く認められます。ガストリン産生腫瘍は、十二指腸や膵臓に好発し、胃酸分泌亢進を特徴とします。

非機能性腫瘍は、特定のホルモン産生を認めないか、産生しても臨床症状を引き起こさない腫瘍を指します。これらは偶然の画像検査で発見されることが多く、直腸原発のものが代表的です。

腫瘍型主な産生物質発生好発部位
セロトニン産生型セロトニン小腸
ガストリン産生型ガストリン十二指腸
非機能性型なし直腸

消化管神経内分泌腫瘍の主な症状

消化管神経内分泌腫瘍(GI-NET)における症状は、腫瘍の発生部位や大きさ、ホルモン産生能によって、一般的な消化器症状からホルモン過剰による特異的な症状まで広範囲に及びます。

基本的な症状と特徴

消化管神経内分泌腫瘍における症状の特徴は、腫瘍の発生部位や進行度によって大きく異なります。初期段階では無症状のまま経過することも多く、定期健康診断で偶然発見されるケースも珍しくありません。

発生部位初期症状進行期症状
心窩部痛、食欲低下貧血、体重減少
小腸軽度の腹痛、下痢腸閉塞、カルチノイド症候群
大腸便通異常、血便腹部膨満感、腸閉塞

腫瘍からのホルモン分泌量が増加すると、カルチノイド症候群(顔面紅潮や下痢などの症状群)が出現します。この症候群は患者さんの約40%で認められ、生活の質に重大な影響を及ぼします。

ホルモン関連症状

消化管神経内分泌腫瘍から分泌される様々なホルモンは、全身に多様な影響を及ぼします。セロトニンやヒスタミンなどの生理活性物質の過剰分泌により、特徴的な症状が引き起こされます。

  • 顔面紅潮(特に食事や運動後に増強)
  • 持続性の下痢(1日4回以上の水様性下痢)
  • 喘息様症状(呼吸困難、喘鳴)
  • 心臓弁膜症(右心系を中心とした弁膜の線維化)
  • 腹部痛(間欠的な疝痛性疼痛)
ホルモン種類主な症状発現頻度
セロトニン下痢、顔面紅潮約60%
ヒスタミン気管支収縮、潮紅約30%
ガストリン消化性潰瘍約15%

消化器系の症状

消化管神経内分泌腫瘍における消化器症状は、腫瘍の物理的な影響と、分泌されるホルモンの作用による二つの要因で生じます。腫瘍の大きさや位置によって、腸管の狭窄や閉塞が起こることもあります。

症状発現機序特徴的な所見
腹痛腫瘍による圧迫持続性、局在性
下痢ホルモン作用水様性、頻回
腸閉塞腫瘍による狭窄嘔吐、腹部膨満

非特異的な全身症状

全身症状は、腫瘍による代謝変化や炎症反応の結果として現れます。体重減少は患者さんの約30%で認められ、6ヶ月間で5%以上の減少を示すことが特徴的です。

  • 慢性的な疲労感(日常生活に支障をきたすレベル)
  • 発熱(37.5度前後の微熱が持続)
  • 食欲不振(早期満腹感を伴う)
  • 体重減少(非意図的な減少)

症状の進行と変化

症状の進行パターンは、腫瘍の増大速度や転移の有無によって個人差が大きく現れます。初期症状が軽微であっても、時間経過とともに症状が複合的に出現することがあります。

体調の変化を感じた際は、速やかに医療機関を受診するようにしてください。

消化管神経内分泌腫瘍の原因

消化管神経内分泌腫瘍は、消化管に点在する特殊な神経内分泌細胞から発生する腫瘍性病変です。近年の分子生物学的研究により、この疾患の発生には複数の遺伝子変異や環境要因が密接に関連していることが判明してきました。

遺伝的要因と家族性症候群

遺伝的要因は消化管神経内分泌腫瘍の発生において中核的な役割を担っています。特に注目すべきは、多発性内分泌腫瘍症候群(MEN1)における11番染色体上のMEN1遺伝子の変異で、この変異により腫瘍抑制機能が著しく低下することが判明しています。

神経線維腫症1型(NF1)における17番染色体上のNF1遺伝子の変異も、十二指腸や小腸の神経内分泌腫瘍発生との関連が強く示唆されており、特に40歳以上の患者での発生率が顕著に上昇します。

遺伝性症候群関連する遺伝子変異好発部位発症年齢
MEN1症候群MEN1遺伝子十二指腸・膵臓30-50歳
NF1症候群NF1遺伝子小腸・虫垂40-60歳
VHL症候群VHL遺伝子膵臓35-45歳
TSC症候群TSC1/TSC2遺伝子膵臓・直腸25-45歳

環境因子と生活習慣

環境因子による影響は、特に胃型の神経内分泌腫瘍において顕著です。長期的な胃酸分泌亢進状態は、胃粘膜内の神経内分泌細胞(ECL細胞)の過形成を誘導し、最終的に腫瘍化へと進展することが複数の大規模臨床研究で実証されています。

  • 喫煙(一日20本以上)による酸化ストレスの蓄積
  • 過度のアルコール摂取(純アルコール換算で60g/日以上)
  • 高脂肪・高タンパク食の継続的摂取
  • 慢性的な胃食道逆流症の放置
環境因子リスク上昇率影響を受けやすい部位
重度喫煙2.4倍小腸・直腸
過度飲酒1.8倍胃・十二指腸
不規則な食生活1.6倍全消化管

細胞増殖メカニズム

神経内分泌細胞の腫瘍化過程では、複数の細胞内シグナル伝達経路が関与しています。PI3K/AKT経路の異常活性化は、細胞の生存シグナルを持続的に亢進させ、アポトーシス(細胞死)を回避させる結果、腫瘍形成を促進します。

mTOR経路の活性化はタンパク質合成を促進し、細胞増殖を加速させることで、腫瘍の進展に寄与します。この経路の異常は、特に高分化型の神経内分泌腫瘍で高頻度に認められます。

シグナル経路活性化率主な作用関連薬剤
PI3K/AKT65%細胞生存促進エベロリムス
mTOR70%タンパク合成亢進ラパマイシン
MAPK45%細胞増殖制御スニチニブ

消化管神経内分泌腫瘍の発生メカニズムは複雑で多岐にわたりますが、遺伝子変異と環境因子の相互作用が重要な役割を果たしています。

診察(検査)と診断

消化管神経内分泌腫瘍の診断過程では、初期段階での血液検査から画像診断技術、病理組織学的検査まで、段階的な検査と診断手順を踏みます。

初診時の診察と基本検査

初診時の診察では、問診を通じて症状の経過や既往歴、家族歴などを聴取していきます。特に、遺伝性の内分泌腫瘍症候群の家族歴については診断の重要な手がかりとなることから、特に注意深く確認を行います。

血液検査では、一般的な項目に加えて、神経内分泌腫瘍に特異的な腫瘍マーカーの測定を実施します。クロモグラニンA値は、腫瘍の存在を示す指標として広く活用されており、基準値(正常値:100ng/mL未満)を超えた場合には、さらなる精密検査へと進みます。

検査項目基準値臨床的意義
クロモグラニンA100ng/mL未満腫瘍マーカー
NSE16.3ng/mL未満腫瘍活性の指標
5-HIAA(尿中)1.0-6.0mg/日セロトニン代謝産物

身体診察においては、腹部の視診、触診、聴診を通じて、腫瘤の有無や腸蠕動音の異常などを確認します。

画像診断による腫瘍の特定

画像診断技術の進歩により、消化管神経内分泌腫瘍の検出精度は飛躍的に向上しています。マルチスライスCT検査では、1mm未満の微細な病変まで描出することが可能となり、造影剤を用いることで腫瘍への血流動態も詳細に評価できます。

MRI検査においては、特にT1強調像とT2強調像の組み合わせにより、腫瘍の性状や周囲組織との関係性を明確に把握できます。拡散強調像では、腫瘍細胞の密度に応じたシグナル変化を捉えることが可能です。

画像検査の種類空間分解能検出可能な最小病変
CT0.5-1.0mm2-3mm
MRI1.0-2.0mm3-4mm
超音波1.0-2.0mm2-3mm

核医学検査では、ソマトスタチン受容体シンチグラフィを用いることで、全身の腫瘍分布を一度に評価できます。この検査は、特に小さな転移巣の検出に優れた感度を示します。

内視鏡検査と生検

内視鏡検査は、消化管神経内分泌腫瘍の直接的な観察と組織採取を可能にする重要な検査です。通常の白色光観察に加え、狭帯域光観察(NBI)や拡大内視鏡観察を併用することで、粘膜表面の微細な血管構築や腫瘍の表面パターンを詳細に観察できます。

内視鏡検査法観察深度特徴的所見
通常観察表層〜粘膜下層黄色調の粘膜下腫瘍
NBI粘膜表層異常血管像
拡大観察粘膜表層微細構造変化

生検時には、腫瘍の中心部と辺縁部から複数個所の組織を採取し、より正確な病理診断につなげます。特に、深部浸潤を疑う場合には、超音波内視鏡下穿刺吸引生検(EUS-FNA)を実施することでより確実な組織診断が可能となります。

病理診断と免疫組織化学検査

病理診断では、HE染色による基本的な形態観察に加え、複数の免疫組織化学染色を実施します。クロモグラニンAやシナプトフィジンなどの神経内分泌マーカーの発現パターンを詳細に評価し、腫瘍の性質を明らかにしていきます。

Ki-67指数の測定は、腫瘍の増殖能を評価する上で特に重要です。WHO分類では、Ki-67指数に基づいてGrade分類を行い、予後予測の指標としています。

免疫染色マーカー陽性率診断的意義
クロモグラニンA80-90%神経内分泌分化
シナプトフィジン90-95%神経内分泌分化
Ki-67Grade依存増殖能評価

確定診断と病期分類

確定診断においては、これまでの全ての検査結果を統合的に評価します。WHO分類(2019年版)に基づいてGrade分類を行い、TNM分類(UICC第8版)により病期を決定します。

消化管神経内分泌腫瘍の治療法と処方薬、治療期間

消化管神経内分泌腫瘍の治療においては、手術療法を主軸としながら、薬物療法や放射線療法を組み合わせた包括的な治療を行います。

手術療法による根治的治療

消化管神経内分泌腫瘍に対する手術療法は、腫瘍の完全な切除を目指す根治的な治療方法として第一選択となっています。腫瘍の進展度や局在部位によって、内視鏡的切除から開腹手術まで、様々な術式が選択されます。

内視鏡的粘膜切除術(EMR)では、2cm未満の早期腫瘍に対して95%以上の治癒率を達成しています。

内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は、より大きな腫瘍や粘膜下層への浸潤が疑われる症例に対して実施され、一括切除率は90%を超えています。

腹腔鏡下手術は従来の開腹手術と比較して術後の回復が早く、在院日数が平均で7日間短縮される方式となります。

手術方法手術時間入院期間治癒率
EMR30-60分3-5日95%以上
ESD60-120分5-7日90%以上
腹腔鏡手術2-4時間7-10日85%以上

薬物療法の種類と特徴

薬物療法では、腫瘍の増殖抑制効果が実証されているソマトスタチンアナログ製剤を中心に治療を進めます。オクトレオチドやランレオチドといった薬剤は、月1回の投与で腫瘍の進行を24ヶ月以上抑制することが臨床試験で確認されています。

分子標的薬のエベロリムスは、mTOR経路(細胞増殖に関わる重要な経路)を阻害することで腫瘍の増殖を抑制し、無増悪生存期間を平均11.4ヶ月延長させる効果が示されています。スニチニブは、血管新生を阻害することで腫瘍の成長を抑制し、進行例における治療効果が認められています。

  • 第一選択薬:ソマトスタチンアナログ製剤(月1回投与)
  • 第二選択薬:分子標的薬(連日経口投与)
  • 第三選択薬:抗がん剤(3週間サイクルで投与)

放射線療法と核医学治療

ペプチド受容体放射性核種療法(PRRT)は、放射性同位元素を標識したソマトスタチン類似体を用いる先進的な治療法です。この治療法では、腫瘍細胞に特異的に発現するソマトスタチン受容体を標的とし、放射線による治療効果を全身に散在する転移巣にまで届けることが可能です。

治療法投与回数治療間隔奏効率
PRRT4回8週間30-40%
外部照射25-30回毎日60-70%

治療効果のモニタリングと経過観察

治療効果の評価には、クロモグラニンA(腫瘍マーカー)の測定や、RECIST基準(固形がんの治療効果判定のための国際基準)に基づく画像評価を定期的に実施します。

治療開始後3年間は3ヶ月ごと、その後は6ヶ月ごとの経過観察を行い、再発や転移の早期発見に努めます。

評価項目測定頻度基準値
クロモグラニンA3ヶ月毎100ng/mL未満
画像評価6ヶ月毎RECIST基準
内分泌機能検査12ヶ月毎各検査項目による

長期的な治療計画

治療計画は、WHO分類(2019年版)に基づく腫瘍の分化度と、TNM分類による病期分類を考慮して立案します。Grade 1(Ki-67指数が3%未満)の症例では、5年生存率が90%を超えることが報告されており、定期的な経過観察を含めた長期的な治療戦略が求められます。

  • 初期治療期(6ヶ月):根治的治療の実施
  • 安定期(2年):定期的な効果判定と治療調整
  • 維持期(5年以上):再発予防と QOL維持

消化管神経内分泌腫瘍の治療における副作用やリスク

消化管神経内分泌腫瘍(GI-NET)の治療において、各種治療法には固有の副作用とリスクが伴います。

手術療法における副作用とリスク

手術療法は消化管神経内分泌腫瘍に対する根治的治療として第一選択となりますが、術後の経過において様々な生理学的変化が生じます。手術直後から回復期にかけては、創部周辺の疼痛や違和感に加え、腸管蠕動運動の低下による腹部膨満感や便通異常が出現します。

特に腹腔鏡下手術では、二酸化炭素による気腹操作に起因する横隔膜刺激症状として、術後24〜48時間程度持続する肩痛(関連痛)を経験する患者さんが全体の約30%を占めています。

手術後の合併症発生率回復までの期間
創部感染5-10%1-2週間
腸閉塞3-7%2-4週間
縫合不全1-3%4-8週間
術後出血1-2%数日-1週間

術後の回復過程における免疫機能の一時的な低下は、日和見感染症のリスクを高めます。特に高齢者や糖尿病などの基礎疾患を有する患者さんでは、術後感染症の発症率が1.5〜2倍に上昇するというデータが報告されています。

薬物療法に伴う副作用

分子標的薬や化学療法剤による治療では、骨髄抑制に伴う血液学的副作用が高頻度で出現します。具体的には、白血球減少(Grade 3以上:15-20%)、血小板減少(Grade 3以上:10-15%)、貧血(Grade 3以上:8-12%)などが認められます。

副作用の種類発現頻度重症度分類
好中球減少症40-60%Grade 1-4
血小板減少症30-50%Grade 1-4
貧血20-40%Grade 1-4

ソマトスタチンアナログ製剤による治療では、投与初期に一過性の血糖値上昇(投与後2-6時間)が認められ、糖尿病患者さんでは血糖コントロールの調整が必要となります。また、長期投与に伴う胆石形成のリスクは約20-30%と報告されています。

放射線療法における副作用とリスク管理

放射線療法では、照射野に含まれる正常組織への影響として、急性期副作用と晩期副作用が区別されます。急性期副作用は照射開始から2-3週間後に出現し、照射終了後4-6週間で改善する傾向にあります。

照射部位主な急性期副作用発現率
腹部悪心・嘔吐40-60%
骨盤部下痢30-50%
胸部食道炎20-40%

晩期副作用として最も注意を要するのは、照射野内の組織線維化です。これは照射終了後6ヶ月以降に徐々に進行し、腸管狭窄や瘻孔形成などの重篤な合併症を引き起こす要因となります。

免疫療法に関連する副作用

免疫チェックポイント阻害薬による治療では、過剰な免疫反応に起因する自己免疫現象が特徴的です。皮膚障害(発現率:40-50%)、消化器障害(発現率:20-30%)、内分泌障害(発現率:10-20%)などが主な副作用として挙げられます。

これらの免疫関連有害事象(irAE)は、投与開始後数週間から数ヶ月の間に発現し、重症例では治療の一時中断や副腎皮質ステロイドによる免疫抑制療法が必要となります。

長期的な経過観察におけるリスク管理

治療後5年間の再発率は、病期や治療内容によって10-40%と幅広く分布しています。特に肝転移を有する症例では、10年生存率が約40%まで低下するため、より慎重な経過観察が求められます。

医療スタッフとの継続的な連携のもと、定期的な画像検査やホルモン値測定を実施し、再発・転移の早期発見に努めることで、長期的な予後の改善が期待できます。

治療費について

治療費についての留意点

実際の治療費(医療費)が以下説明より高額になるケースが多々ございます。以下記載内容について当院では一切の責任を負いかねます事を予めご了承下さい。

処方薬の薬価

分子標的薬や抗がん剤による治療では、治療費が高額になる傾向です。特にエベロリムス(細胞増殖を抑制する薬剤)やスニチニブ(がん細胞の増殖を阻害する薬剤)といった先進的な分子標的薬においては、月額30万円から50万円程度の支出を見込む必要があります。

薬剤名1か月あたりの薬価
エベロリムス35万円
スニチニブ45万円
オクトレオチド25万円

1週間の治療費

入院加療における費用内訳として、以下の項目が含まれます。

  • 入院基本料(診療や看護にかかる基本費用):3〜5万円
  • 投薬・注射代(治療薬の費用):10〜15万円
  • 検査費用(血液検査やCT検査など):5〜8万円
  • 食事療養費(入院中の食事代):1万円程度

1か月の治療費

治療内容概算費用
外来治療40〜60万円
入院治療80〜120万円
手術治療150〜200万円

治療方針や入院期間によって医療費は大きく異なりますが、特に手術を選択した場合、術式の複雑さや入院日数に応じて追加費用が発生するため、治療費が高額となります。

以上

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