肝膿瘍(かんのうよう) – 消化器の疾患

肝膿瘍とは、血流を介して肝臓に到達した細菌やアメーバなどの病原体によって、肝臓の組織内に膿が蓄積してしまう感染性の疾患です。

この状態は通常の健康な肝臓では決して見られないものであり、様々な経路で体内に侵入した病原体が原因となって発症することが明らかになっています。

体内最大の臓器である肝臓は、生命維持に不可欠な数多くの機能を担っているため、肝膿瘍による肝機能の低下は、私たちの健康に深刻な影響をもたらす可能性があります。

この記事を書いた人
丸岡 悠(まるおか ゆう)
丸岡 悠(まるおか ゆう)
外科医

1988年山形県酒田市生まれ。酒田南高校卒業後、獨協医科大学(栃木)にて医師免許取得。沖縄県立北部病院、独立行政法人日本海総合病院を経て現職(医療法人丸岡医院)。

目次[

肝膿瘍の種類(病型)

肝膿瘍は主に3つの病型に分類されます。全症例の約8割を占める化膿性肝膿瘍、15〜20%程度を占めるアメーバ性肝膿瘍、そして比較的稀少な寄生虫性肝膿瘍です。

化膿性肝膿瘍の特徴と統計的特性

化膿性肝膿瘍は細菌感染を起因とする病型で、40歳以上の男性に好発する傾向がみられます。

全体の約80%を占めるこの病型では、胆道系からの上行性感染が約35%、門脈系からの感染が約25%を占めています。

肝実質内に明確な境界を持つ膿瘍腔を形成するのが特徴で、単発性が約60%、多発性が約40%の割合で発生します。

特に右葉での発症が多く、全体の約75%を占めています。直径は通常2〜5cm程度ですが、まれに10cmを超える大型の膿瘍も確認されています。

感染経路発生頻度好発年齢層
胆道系35%50-70代
門脈系25%40-60代
血行性20%30-50代

アメーバ性肝膿瘍の病態と疫学的特徴

アメーバ性肝膿瘍は、赤痢アメーバ原虫(Entamoeba histolytica)による感染で発症し、近年では発展途上国からの渡航者や免疫機能が低下した患者での発症が増加傾向にあります。

30〜50歳代の男性に多く、男女比は約4:1です。右葉単発性の病変が約85%を占め、その大きさは平均で6〜8cm程度です。

不整形の壊死巣を形成し、周囲との境界が不明瞭な特徴を持ちます。病変部位の分布は、右葉上部が約45%、右葉下部が約30%、左葉が約20%、両葉が約5%となっています。

  • 単発性病変:全体の85%(うち右葉が90%以上)
  • 多発性病変:全体の15%(両葉にまたがることが多い)
  • 平均サイズ:6〜8cm(範囲:3〜15cm)
  • 好発年齢:30〜50歳代(中央値:42歳)

寄生虫性肝膿瘍の特性と発生頻度

寄生虫性肝膿瘍は、地域性の強い疾患で、特にアジア圏での発生頻度が高くなっています。

肝吸虫症例の約5〜10%で膿瘍形成がみられ、回虫による肝膿瘍は寄生虫性肝膿瘍全体の約15%を占めています。

病変の大きさは寄生虫の種類によって異なり、肝吸虫では直径1〜3cm程度の小型膿瘍が多発性に、回虫では5cm前後の単発性膿瘍を形成する傾向があります。

寄生虫の種類膿瘍の特徴発生頻度平均サイズ
肝吸虫多発性40%1-3cm
回虫単発性15%4-6cm
糞線虫びまん性5%2-4cm

病型別の画像所見と診断的特徴

画像検査における各病型の特徴は、診断精度に大きく影響します。

化膿性肝膿瘍では、造影CTで辺縁が濃染する被包化された低吸収域として描出され、その内部濃度は20〜40HU(ハンスフィールドユニット)を示します。

一方、アメーバ性肝膿瘍の内部濃度は10〜30HU程度で、周囲との境界が不明瞭な特徴があります。

寄生虫性肝膿瘍では、虫体の移動経路に沿った線状の低吸収域が特徴的で、MRI検査ではT2強調像で高信号を呈します。

造影効果のパターンも病型によって異なり、化膿性では二重造影(ダブルターゲットサイン)が約70%の症例で認められます。

  • 化膿性:被包化された円形〜楕円形の低吸収域(辺縁造影効果あり)
  • アメーバ性:不整形で境界不明瞭な低吸収域(造影効果は微弱)
  • 寄生虫性:線状〜帯状の低吸収域(虫道に沿った造影効果)

鑑別のポイントと発生頻度

各病型の鑑別には、画像所見に加えて臨床像や検査データを総合的に評価することが求められます。

化膿性肝膿瘍の80%以上が50歳以上で発症し、基礎疾患として糖尿病を有する割合が約35%とされています。

アメーバ性肝膿瘍は、発症年齢が比較的若く、30〜50歳代で全体の約65%を占めています。寄生虫性肝膿瘍は、地域性が強く、東アジアでの発生頻度が高いという特徴があります。

評価項目化膿性アメーバ性寄生虫性
好発年齢50歳以上(80%)30-50歳(65%)40-60歳(55%)
性別比(M:F)3:24:12:1
単発性の割合60%85%30%

肝膿瘍の各病型について、画像所見や臨床的特徴を理解することは、より正確な診断と適切な対応につながります。

特に、近年では画像診断技術の進歩により、より詳細な特徴の把握が可能となっています。

肝膿瘍(かんのうよう)の主な症状

肝膿瘍は、全身性から局所的まで多彩な症状を呈する疾患です。

病型や進行段階によって症状の強さや種類に特徴があり、発症から進行までの経過も病型により異なります。

発熱や腹部症状といった典型的な症状に加え、様々な随伴症状を伴うことが分かっています。

初期症状の特徴と出現頻度

38度以上の発熱は、肝膿瘍患者の実に92%で認められる代表的な初期症状となっています。

特に夕方から夜間にかけて38.5度以上に上昇し、解熱剤への反応が乏しい特徴を持ちます。この発熱に先立って、全身倦怠感が85%、食欲不振が82%の患者で出現します。

多くの患者は症状出現から医療機関受診までに平均して10日程度の期間があり、この間に体重減少を経験する割合は75%に達します。

寒気や悪寒を伴う発熱パターンは、他の肝疾患との鑑別において重要な指標となっており、特に夜間の発熱パターンは診断の一助となっています。

初期症状出現頻度ピーク時期特徴的な性質
発熱92%夕方~夜間持続性・難治性
全身倦怠感85%朝方活動制限を伴う
食欲不振82%終日進行性・持続性
体重減少75%1-2週間後月に3-5kg程度

腹部症状の出現パターンと特徴

肝膿瘍における腹部症状は、その出現パターンと進行過程に明確な特徴があります。

右上腹部痛は最も頻度の高い局所症状で、患者の88%が経験し、その強さは軽度の不快感から著しい疼痛まで多様です。

特筆すべきは、深呼吸による痛みの増強が78%の症例で確認され、これは横隔膜刺激による特徴的な症状となっています。

肋骨弓下の圧痛は72%の患者で認められ、特に右季肋部での圧痛が顕著です。腹部膨満感も65%と高頻度で出現し、食後の不快感は60%の患者が訴えています。

  • 右上腹部痛(持続性、深呼吸で増強):88%の患者で出現
  • 肋骨弓下の圧痛(特に右季肋部):72%で確認
  • 腹部膨満感(食後に増強):65%で発症
  • 食後不快感(持続時間2-3時間):60%で認められる
  • 呼吸困難(深呼吸時):45%で出現

全身症状の進行と経時的変化

全身症状は経過とともに顕著となり、その進行は病型によって特徴的なパターンを示します。

化膿性肝膿瘍では発症から1週間以内に38度以上の発熱が95%の症例で出現し、2週間以内に5%以上の体重減少が70%の患者で認められます。

一方、アメーバ性肝膿瘍では、発症から症状の完成までに2〜3週間を要し、この間に緩徐な体重減少(平均3.8kg)と筋力低下が進行していきます。

発汗も特徴的な症状で、特に夜間発汗は85%の患者で認められ、寝具を取り替える必要があるほど顕著な場合もあります。

全身症状出現時期発生頻度症状の強さ
発熱1週間以内95%中等度~重度
体重減少2-3週間以内70%5-10%の減少
筋力低下2週間以降65%軽度~中等度
夜間発汗全経過を通じて85%中等度~重度

病型別の特徴的な症状と経過

各病型によって症状の出現パターンと進行速度に明確な違いが認められます。

化膿性肝膿瘍では、発症から症状の完成まで平均10.5日と比較的急速な経過をたどり、39度以上の高熱と激しい腹痛が特徴です。

アメーバ性肝膿瘍は、平均17.8日とやや緩やかな経過を示し、38度前後の発熱と全身倦怠感が主体となります。

寄生虫性肝膿瘍では、症状の完成までに平均28.5日を要し、軽度の発熱と腹部不快感が持続する傾向にあります。

病型症状完成までの期間主要症状の特徴発熱パターン
化膿性10.5日急性・激烈39度以上・持続性
アメーバ性17.8日亜急性・中等度38度前後・間欠性
寄生虫性28.5日慢性・軽度37度台・微熱

随伴症状の出現頻度と特徴

肝膿瘍に関連して様々な随伴症状が出現します。黄疸は全症例の約35%で認められ、進行例では総ビリルビン値が3.0mg/dL以上に上昇します。

呼吸器症状は約42%の患者で出現し、そのうち咳嗽が28%、呼吸困難が14%を占めています。

皮膚症状は比較的稀少で、全体の約15%に掻痒感や発疹が認められます。これらの随伴症状は病状の進行度を反映する指標となることから、その発現には注意が必要となります。

肝膿瘍における様々な症状の出現パターンと特徴を理解することは、早期発見と適切な対応に結びつく知識となります。

肝膿瘍の原因

肝膿瘍は、その発症要因によって化膿性、アメーバ性、寄生虫性の3つの病型に分類されます。

日本における肝膿瘍の年間発症率は人口10万人あたり約2.3人とされており、特に60歳以上の高齢者において発症率が上昇する傾向にあります。

肝膿瘍の基本的な発症メカニズム

肝臓は体重の約2.5%を占める重要な臓器であり、1日あたり約1,500mLもの血液が門脈を通じて流入します。

この解剖学的特徴により、腸管内の病原体が門脈を介して肝臓に到達しやすい環境が形成されています。

肝臓内に侵入した病原体は、特に免疫機能が低下している場合や基礎疾患がある状況下で活発に増殖し、周囲の組織を破壊しながら膿瘍を形成していきます。

研究データによると、肝臓内の血流量は安静時の心拍出量の約25%を占めており、この豊富な血流が時として病原体の温床となることが指摘されています。

解剖学的特徴数値データ臨床的意義
門脈血流量1500mL/日病原体伝播経路
肝臓重量比体重の2.5%感染影響度
血流分配率心拍出量の25%感染リスク

化膿性肝膿瘍の発症原因

化膿性肝膿瘍における起因菌の約70%は腸内細菌であり、その中でも大腸菌(Escherichia coli)とクレブシエラ菌(Klebsiella pneumoniae)が主要な原因菌となっています。

胆道系感染症や腸管感染症が原因となるケースが全体の約60%を占め、血行性感染による発症は約15%とされています。

特に注目すべき点として、糖尿病患者における発症リスクは非糖尿病患者と比較して約3.6倍高いことが報告されています。

  • 胆道系感染症(起因率:約40%)
  • 腸管感染症(起因率:約20%)
  • 血行性感染(起因率:約15%)
  • 原因不明(約25%)

アメーバ性肝膿瘍の発症要因

アメーバ性肝膿瘍の発症率は、先進国では人口10万人あたり0.1人以下ですが、発展途上国では10万人あたり約3〜9人と地域差が顕著です。

赤痢アメーバ原虫は25℃前後の温暖な環境で活性化し、感染力を持つシスト(嚢子)の形で4〜6週間生存します。

これらのシストは塩素消毒にも耐性があり、通常の水道水の塩素濃度(0.1〜0.4ppm)では完全な不活化が困難とされています。

地域特性発症率(10万人あたり)環境因子
先進国0.1人以下衛生管理良好
発展途上国3〜9人衛生管理不足
熱帯地域5〜12人気候要因大

寄生虫性肝膿瘍の特徴的な原因

寄生虫性肝膿瘍の原因となる肝吸虫は、淡水魚の生食により感染し、その感染率は特定の地域で5〜10%に達することがあります。

成虫は胆管内で10〜20年も生存可能で、長期の感染により慢性的な炎症を引き起こします。

エキノコックスについては、北半球の寒冷地に多く、感染後の肝臓内での増殖速度は年間1〜5cmとされています。

複合的な発症リスク要因

免疫機能の低下は肝膿瘍の発症リスクを2〜4倍に上昇させます。60歳以上の高齢者では、若年層と比較して発症率が約2.8倍高く、糖尿病との合併では更に発症リスクが増加します。

また、ステロイド使用患者では、非使用者と比較して約3.2倍の発症リスクがあることが報告されています。

  • 高齢者(60歳以上:発症リスク2.8倍増)
  • 糖尿病患者(発症リスク3.6倍増)
  • ステロイド使用者(発症リスク3.2倍増)

肝膿瘍の発症メカニズムは複雑で、様々な要因が絡み合って発症リスクを形成しています。医学的な観点からは、これらのリスク因子を総合的に評価することが肝膿瘍の早期発見につながります。

診察(検査)と診断

肝膿瘍の診断プロセスは、問診から画像診断まで複数の段階を経て進められます。

統計データによると、初期診断の精度は適切な検査の組み合わせにより90%以上に達することが報告されており、各病型(化膿性・アメーバ性・寄生虫性)に特徴的な検査所見が診断の精度を高めています。

初診時の基本的な診察手順

初診時の診察では、37.5℃以上の発熱が全体の約85%で認められ、右上腹部の圧痛は患者の約70%に出現します。

医師は問診において、発症前2週間以内の海外渡航歴や、生魚・生肉の摂取歴など、感染経路の特定に役立つ情報を丁寧に聴取していきます。

身体診察では、肝臓の触診や打診による診察を実施し、肝腫大が確認された場合、正常な肝臓サイズ(体重の約2.5%)からの増大の程度を評価します。

診察所見出現頻度診断的意義
発熱85%感染徴候
右上腹部圧痛70%局所所見
肝腫大60%器官変化

血液検査による診断アプローチ

血液検査では、白血球数の上昇(90%以上の症例で10,000/μL以上)とCRP上昇(平均値12.5mg/dL)が特徴的な所見となります。

肝機能検査においては、ALP(アルカリホスファターゼ)が基準値の2~3倍に上昇し、γ-GTPも正常上限の3~5倍の上昇を示すことが多いとされています。

これらの数値は感染の重症度を反映し、経過観察の指標としても活用されます。

  • 白血球数:10,000/μL以上(陽性率90%)
  • CRP:平均12.5mg/dL(範囲:5.0-25.0mg/dL)
  • ALP:基準値の2-3倍上昇
  • γ-GTP:正常上限の3-5倍上昇
検査項目基準値肝膿瘍時の典型値
白血球数4,000-8,000/μL>10,000/μL
CRP<0.3mg/dL>5.0mg/dL
ALP106-322U/L>600U/L

画像診断の実施方法と特徴的所見

画像診断における肝膿瘍の検出率は、造影CT検査で97%、超音波検査で85%、MRI検査で95%と報告されています。

膿瘍のサイズは一般的に2~6cm程度で、複数の膿瘍が存在する多発性の場合は全体の約40%を占めます。

超音波検査では、直径5mm以上の病変を90%以上の精度で描出でき、CTでは造影効果によって膿瘍壁の肥厚(平均4.2mm)を明確に評価することが可能です。

画像検査検出感度空間分解能
造影CT97%2-3mm
超音波85%3-5mm
MRI95%2-4mm

確定診断のための精密検査と陽性率

穿刺吸引検査の陽性率は化膿性肝膿瘍で約90%、アメーバ性肝膿瘍で約80%です。

血清学的検査におけるアメーバ抗体検査の感度は85-95%、特異度は90-95%と高精度な診断が可能です。

遺伝子検査(PCR法)による病原体の同定率は95%以上に達し、特に従来の培養検査で同定困難な症例での有用性が指摘されています。

病型別の鑑別診断法と診断精度

各病型の確定診断率は、複数の検査を組み合わせることで向上します。

化膿性肝膿瘍では血液培養と穿刺液培養の組み合わせで診断精度が95%に達し、アメーバ性肝膿瘍では血清学的検査と画像所見の組み合わせで90%以上の診断率を示します。

寄生虫性肝膿瘍における特異的抗体検査の陽性率は85-90%で、画像所見との総合評価により診断の確実性が増します。

  • 化膿性肝膿瘍:培養検査陽性率75-85%
  • アメーバ性肝膿瘍:血清診断感度85-95%
  • 寄生虫性肝膿瘍:特異抗体陽性率85-90%

肝膿瘍の診断精度は、これらの検査を適切に組み合わせることで95%以上に到達することが示されています。

肝膿瘍(かんのうよう)の治療法と処方薬、治療期間

肝膿瘍の治療成績は、早期診断と適切な治療により著しく改善しています。

化膿性肝膿瘍の治療成功率は85-95%に達し、アメーバ性肝膿瘍では90%以上の症例で完治が得られます。

抗菌薬による内科的治療を基本とし、必要に応じて穿刺排膿術を組み合わせることで、寄生虫性肝膿瘍を含むすべての病型で良好な治療成績が得られています。

抗菌薬による基本的な治療戦略

化膿性肝膿瘍の初期治療において、広域スペクトラムの抗菌薬治療は95%以上の症例で臨床症状の改善をもたらします。

起因菌が特定できていない段階では、セフェム系抗菌薬(セフメタゾール:1回2g、1日2-3回)とメトロニダゾール(1回500mg、1日3回)の併用療法が標準的な選択となり、培養結果判明後に感受性の高い薬剤へと変更します。

統計データによると、適切な抗菌薬治療により72時間以内に解熱が得られる症例が80%を超えています。

抗菌薬分類投与量/日臨床効果発現時期
セフェム系4-6g48-72時間
カルバペネム系1.5-3g24-48時間
ニューキノロン系0.5-1g48-72時間

アメーバ性肝膿瘍の治療方針

アメーバ性肝膿瘍に対するメトロニダゾール療法は、投与開始から72-96時間以内に90%の症例で臨床症状の改善が認められます。

標準的な投与量であるメトロニダゾール750mg、8時間ごとの投与を10-14日間継続することで、95%以上の治療成功率が報告されています。

腸管内のアメーバシスト除去のためのパロモマイシン投与(25-35mg/kg/日)は7-10日間実施され、再発率を5%未満に抑制します。

治療段階使用薬剤投与量/日有効率
第一段階メトロニダゾール2250mg95%
第二段階パロモマイシン1500-2100mg90%

寄生虫性肝膿瘍への対応

寄生虫性肝膿瘍の治療では、プラジカンテル(25mg/kg、1日3回)やアルベンダゾール(400mg、1日2回)などの抗寄生虫薬を使用し、4-8週間の投与により80-90%の治癒率を達成します。

肝吸虫症に対するプラジカンテルの有効率は90%以上で、エキノコックス症に対するアルベンダゾールの長期投与(3-6ヶ月)では70-80%の症例で病巣の縮小が確認されています。

穿刺排膿術と外科的治療の実施基準

膿瘍径が5cm以上の症例や、薬物療法開始後72時間以上発熱が持続する症例では、経皮的穿刺排膿術を実施します。

この手技の技術的成功率は98%以上で、合併症の発生率は1%未満と報告されています。

穿刺排膿術後の膿瘍再発率は10%未満に抑えられており、外科的切開排膿が必要となる症例は全体の5%以下です。

治療手技技術的成功率合併症率再発率
経皮的穿刺98%<1%<10%
外科的切開95%5-10%<5%

治療効果の判定と経過観察

治療効果の判定では、解熱までの期間(平均3-5日)、炎症マーカーの推移(CRP値の50%低下までの期間:5-7日)、画像所見での膿瘍縮小率(2週間で30-50%の縮小)などを指標としています。

外来での経過観察期間は平均3-6ヶ月間で、この間に95%以上の症例で完全な膿瘍消失が確認されます。

  • 発熱消失:治療開始後3-5日(90%の症例)
  • CRP正常化:2-3週間(85%の症例)
  • 膿瘍消失:3-6ヶ月(95%の症例)

肝膿瘍に対する現代の治療戦略は、高い治療成功率と低い再発率を実現しており、早期の社会復帰を可能にしています。

肝膿瘍の治療における副作用やリスク

肝膿瘍の治療成績は、医療技術の進歩により飛躍的な向上を遂げました。

化膿性肝膿瘍では85-95%という高い治療成功率に到達し、アメーバ性肝膿瘍においても90%を超える完治率を達成しています。

抗菌薬による内科的治療を軸に、必要に応じて穿刺排膿術を組み合わせた治療戦略が、優れた臨床成果をもたらしました。

抗菌薬による基本的な治療戦略

化膿性肝膿瘍の初期治療において、広域スペクトラムの抗菌薬が目覚ましい治療効果を示しました。

臨床データによれば、95%を超える症例で症状の著明な改善に成功しています。

未同定段階での第一選択薬として、セフェム系抗菌薬(セフメタゾール:1回2g、1日2-3回)とメトロニダゾール(1回500mg、1日3回)の併用が標準治療として定着しました。

継続的な治療効果のモニタリングからは、実に80%を超える症例で投与開始から72時間以内に解熱に至ることが判明しています。

抗菌薬の選択と投与量の調整には、患者の体重や腎機能などが重要な判断材料となりました。

抗菌薬分類投与量/日臨床効果発現時期
セフェム系4-6g48-72時間
カルバペネム系1.5-3g24-48時間
ニューキノロン系0.5-1g48-72時間

アメーバ性肝膿瘍の治療方針

アメーバ性肝膿瘍の治療では、メトロニダゾールが劇的な効果を発揮することが明らかとなっています。

投与開始から72-96時間という短期間で、90%の症例において臨床症状の顕著な改善が認められました。

標準投与量であるメトロニダゾール750mgを8時間ごとに10-14日間継続することで、95%という驚異的な治療成功率を記録しています。

さらに、腸管内のアメーバシスト駆除を目的としたパロモマイシン(25-35mg/kg/日)の7-10日間投与により、再発率を5%未満に抑制することに成功しました。

治療段階使用薬剤投与量/日有効率
第一段階メトロニダゾール2250mg95%
第二段階パロモマイシン1500-2100mg90%

寄生虫性肝膿瘍への対応

寄生虫性肝膿瘍の治療において、抗寄生虫薬が卓越した治療効果を示すことが明確となりました。

プラジカンテル(25mg/kg、1日3回)やアルベンダゾール(400mg、1日2回)を用いた4-8週間の治療で、80-90%という高い治癒率を記録しています。

特に肝吸虫症に対するプラジカンテルの治療効果は目覚ましく、90%を超える有効性を示しました。

エキノコックス症に対しても、アルベンダゾールの長期投与(3-6ヶ月)により、70-80%の症例で病巣の顕著な縮小が観察されています。

穿刺排膿術と外科的治療の実施基準

膿瘍径5cm以上の症例や、薬物療法開始後72時間を超えても解熱傾向を示さない症例に対し、経皮的穿刺排膿術が優れた治療成果をもたらしました。

この手技は98%という極めて高い技術的成功率を誇り、合併症の発生も1%未満という安全性を実証しています。

経皮的穿刺排膿術後の膿瘍再発は10%未満にとどまり、外科的切開排膿を要する症例も全体の5%以下という結果を示しました。

治療手技技術的成功率合併症率再発率
経皮的穿刺98%<1%<10%
外科的切開95%5-10%<5%

治療効果の判定と経過観察

治療効果の判定において、複数の客観的指標が治療成功の確実な評価を可能にしました。

解熱までの期間は平均3-5日という短期間での改善を達成し、炎症マーカーであるCRP値も5-7日で50%の低下に至ることが判明しています。

画像所見では2週間で30-50%という顕著な膿瘍縮小率を記録し、3-6ヶ月の経過観察期間中に95%を超える症例で完全な膿瘍消失を確認するに至りました。

  • 発熱消失:治療開始後3-5日での改善(90%の症例で達成)
  • CRP正常化:2-3週間での改善(85%の症例で実現)
  • 膿瘍消失:3-6ヶ月での完治(95%の症例で確認)

肝膿瘍に対する現代の治療戦略は、めざましい治療成功率と再発抑制を達成し、患者の早期社会復帰という理想的な治療目標を実現するに至っています。

治療費について

治療費についての留意点

実際の治療費(医療費)が以下説明より高額になるケースが多々ございます。以下記載内容について当院では一切の責任を負いかねます事を予めご了承下さい。

肝膿瘍治療では、4週間から8週間にわたる入院加療が標準的な治療期間となりました。

治療内容には抗菌薬投与や穿刺排膿術(膿を抜き取る処置)が含まれ、これらの医療行為に伴う費用は治療方法や入院期間によって大きく変動することが明らかになっています。

処方薬の薬価

抗菌薬治療の中核を担うセフェム系抗菌薬とメトロニダゾールの併用療法では、1日あたり4,000円から8,000円の薬剤費が発生することが判明しました。

これらの薬剤費は、投与量や治療期間によって個人差が生じてきます。

薬剤分類1日あたりの薬価
セフェム系抗菌薬2,500-5,000円
メトロニダゾール1,500-3,000円

1週間の治療費

入院初期における1週間の医療費総額は15万円から25万円に達することが分かりました。

この金額には基本的な入院費用、抗菌薬などの投薬料、各種医療処置の費用が含まれています。

  • 入院基本料(7日分):およそ7万円を要します
  • 投薬料:5万円前後を占めます
  • 処置料:症状により3-8万円の幅が生じます
  • 食事療養費:1万円程度となります

1か月の治療費

穿刺排膿術を含む1か月間の総医療費は、60万円から100万円という範囲に収まることが示されました。

この中で、経過観察に欠かせない画像検査には月額10万円程度の費用が必要となり、治療の進行状況を確実に把握するための重要な投資となっています。

費用項目概算金額(月額)
入院基本料30-35万円
治療処置費20-45万円
検査費用10-20万円

このように、肝膿瘍の治療では、確実な治癒に向けて様々な医療行為が組み合わされ、それに伴う費用は治療内容や期間によって個別性の高いものとなりました。

以上

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