肝硬変(LC) – 消化器の疾患

肝硬変(LC)とは、肝臓の細胞が長期間にわたって損傷を受け続けることにより破壊され、その修復過程で形成される線維組織によって肝臓全体が硬化してしまう深刻な疾患です。

この進行性の病気により、肝臓内部の正常な構造が徐々に失われていき、その結果として体にとって必要不可欠な解毒作用や栄養素の代謝、さらにはタンパク質の合成といった重要な肝機能が損なわれていきます。

この記事を書いた人
丸岡 悠(まるおか ゆう)
丸岡 悠(まるおか ゆう)
外科医

1988年山形県酒田市生まれ。酒田南高校卒業後、獨協医科大学(栃木)にて医師免許取得。沖縄県立北部病院、独立行政法人日本海総合病院を経て現職(医療法人丸岡医院)。

目次[

肝硬変の種類(病型)

肝硬変(LC)は4つの主要な病型に分類され、それぞれ独自の発症メカニズムと進行パターンを示します。

本稿では、ウイルス性、アルコール性、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、自己免疫性の各病型について、最新の医学的知見に基づいた詳細な分類と特徴を説明します。

ウイルス性肝硬変の特徴と分類

ウイルス性肝硬変は、B型肝炎ウイルス(HBV)やC型肝炎ウイルス(HCV)の持続感染によって引き起こされる進行性の肝疾患です。

日本における肝硬変患者の約65%がウイルス性であり、その内訳はB型が約15%、C型が約50%を占めています。

肝臓内でのウイルスの増殖は、肝細胞の破壊と再生のサイクルを引き起こし、このプロセスは通常10年から30年かけて進行します。

B型肝炎ウイルスはDNA型で、直接肝細胞のDNAに組み込まれる特徴を持ちます。一方、C型肝炎ウイルスはRNA型で、持続的な炎症反応を引き起こすことで肝臓の線維化を促進します。

ウイルスの種類感染経路進行期間
B型肝炎血液・体液15-25年
C型肝炎血液20-30年

アルコール性肝硬変の発症機序

アルコール性肝硬変は、慢性的な過剰飲酒により発症する深刻な肝疾患です。

純アルコール換算で1日80g以上(日本酒なら4合、ビールなら中ジョッキ5杯相当)を5年以上継続して摂取すると、肝硬変を引き起こす危険性が顕著に上昇します。

男性の場合、20年以上の飲酒歴がある患者の約30%が肝硬変へ進行するとされています。

アルコールの代謝過程で生成されるアセトアルデヒドは、肝細胞に直接的な障害を与え、酸化ストレスを増大させます。

この過程で、肝細胞の脂肪化、炎症、そして線維化が段階的に進行していきます。

飲酒量(純アルコール/日)肝硬変発症リスク
40g未満低リスク
40-80g中等度リスク
80g以上高リスク

非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)による肝硬変

非アルコール性脂肪肝疾患による肝硬変は、過度な飲酒歴がないにもかかわらず発症する肝疾患です。

日本人の成人における有病率は約30%とされ、そのうち約10%がNASH(非アルコール性脂肪肝炎)へ進行し、さらにその10-20%が肝硬変へ進展します。

内臓脂肪型肥満、2型糖尿病、高血圧症、脂質異常症などのメタボリックシンドロームとの関連が強く、特にBMI25以上の肥満者では発症リスクが2-3倍に上昇します。

危険因子リスク上昇率
肥満(BMI≥25)2-3倍
2型糖尿病3-4倍
メタボリックシンドローム4-5倍

自己免疫性肝疾患による肝硬変

自己免疫性肝疾患による肝硬変は、自己免疫性肝炎や原発性胆汁性胆管炎などの基礎疾患から進行します。

自己免疫性肝炎の患者の約25-30%が診断時にすでに肝硬変を発症しており、10年以内に40-50%の患者が肝硬変へ進行します。

原発性胆汁性胆管炎は、主に閉経後の女性に多く見られ、診断から10年以内に約27%の患者が肝硬変へ進行するとされています。

この結果、各病型の特徴を理解し、早期発見と適切な対応が重要となります。

肝硬変(LC)の主な症状

肝硬変(LC)の症状は、病態の進行度と密接に関連して変化します。

初期から末期まで、症状の種類や強さは段階的に変化し、全身の様々な部位に多様な症状として表れます。。

初期症状と全身症状の詳細な特徴

初期の全身症状は非常に多岐にわたり、その発現パターンには個人差があります。疲労感や倦怠感は、患者さんの約70-80%が経験する最も一般的な症状です。

特に午後2時から夕方6時頃にかけて症状が増強し、十分な睡眠を取っても改善しにくい特徴があります。

食欲不振は、約50-60%の患者さんに認められ、6ヶ月以内に平均3-5kg、重症例では10kg以上の体重減少を伴います。

栄養状態の指標となる血清アルブミン値は、正常値の3.8-5.3g/dLから徐々に低下し、2.8g/dL未満になると重度の栄養障害を示します。

皮膚症状では、掻痒感(かゆみ)が40-50%の患者さんに発生し、特に夜間の就寝前後に増強します。

血中胆汁酸値が正常上限(10μmol/L)の2-3倍に上昇すると、掻痒感が顕著になります。

手掌紅斑は30-40%の患者さんに見られ、特に両手の小指球部(手のひらの小指側の膨らみ)に強く現れる傾向があります。

初期症状発現頻度特徴的な指標値
疲労感70-80%活動量30-50%低下
食欲不振50-60%アルブミン<3.0g/dL
掻痒感40-50%胆汁酸>20μmol/L

門脈圧亢進に伴う症状の詳細

門脈圧亢進症は、正常値である5-10mmHgから上昇し、12mmHg以上で臨床症状が出現し始めます。

食道静脈瘤は門脈圧が16mmHg以上になると形成され、患者さんの50-60%で認められます。

静脈瘤の大きさはF1(軽度)からF3(重度)まで分類され、F2以上かつ赤色徴候陽性の場合、破裂リスクは年間15-20%に上昇します。

腹水は門脈圧が20mmHg以上で出現しやすく、40-50%の患者さんに認められます。

軽度では1-2Lの貯留ですが、重症例では5-10L以上に及ぶこともあります。

腹囲は通常の状態と比較して平均5-15cm増加し、1日あたり100-500mlの速度で貯留が進行します。

門脈圧症状臨界圧 (mmHg)合併率
食道静脈瘤>1650-60%
腹水>2040-50%
側副血行路形成>1260-70%

肝機能低下による症状の進行パターン

肝機能低下は、様々な臨床検査値の異常として捉えることができます。

黄疸は総ビリルビン値が2.0mg/dL以上で視認可能となり、5.0mg/dL以上で濃い黄色に変化します。

皮膚や眼球結膜の黄染は、ビリルビン値の上昇に比例して進行し、15.0mg/dL以上では緑がかった色調を呈します。

出血傾向は血小板数が5万/μL未満で顕著となり、2万/μL未満では自然出血のリスクが高まります。プロトロンビン時間(PT)の延長も特徴的で、正常の70%以下になると出血傾向が強まります。

肝性脳症は血中アンモニア値が150μg/dL以上で発症リスクが高まり、意識レベルの変化は数時間から数日間持続します。肝性脳症の重症度は4段階(Ⅰ度~Ⅳ度)で評価され、Ⅲ度以上では入院管理が必要となります。

これらの症状を総合的に評価することで、肝硬変の進行度をより正確に把握することができます。

肝硬変の原因

肝硬変(LC)は、多様な要因が複雑に関連して発症する進行性の肝疾患です。

日本における肝硬変患者の65%はウイルス性、25%はアルコール性、残り10%はその他の原因によるものとされています。

ウイルス性肝硬変の原因と発症機序について

ウイルス性肝硬変は、B型肝炎ウイルス(HBV)とC型肝炎ウイルス(HCV)の持続感染によって引き起こされる病態です。

慢性肝炎から肝硬変への進行率は、B型で年間2-5%、C型で年間3-7%とされ、感染から肝硬変発症までの期間は平均して15-30年です。

HBVは感染力が非常に強く、血液1mlあたり108個ものウイルス粒子を含むことがあり、わずか0.0001mlの血液でも感染する危険性があります。

母子感染の場合、適切な予防措置がないと90%以上の確率で感染します。

HCVは主に血液を介して感染し、感染者の70-80%が慢性化します。慢性肝炎から肝硬変への進行には、ウイルス量(高ウイルス量:5.0 LogIU/ml以上)や炎症の持続期間が関与します。

ウイルス慢性化率年間進行率
HBV5-10%2-5%
HCV70-80%3-7%

アルコール性肝硬変の原因について

アルコール性肝硬変は、純アルコール換算で男性60g/日以上、女性20g/日以上の飲酒を5-10年以上継続することで発症するリスクが高まります。

日本酒1合は純アルコール23g、ビール中瓶1本は約20gに相当します。

アルコールの代謝過程では、アセトアルデヒドが産生され、この物質は通常の100-1000倍もの細胞毒性を持ちます。

肝細胞内のミトコンドリア機能は、慢性的なアルコール摂取により40-60%低下します。

飲酒量(純アルコール/日)発症リスク平均発症年数
20-40g低リスク20年以上
40-60g中リスク15-20年
60g以上高リスク10-15年

非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)による肝硬変について

NAFLDは、肝臓の重量の5%以上に脂肪が蓄積した状態と定義され、日本の成人の約30%が該当します。

このうち10-20%がNASH(非アルコール性脂肪肝炎)へ進行し、さらにその15-20%が肝硬変へ進展します。

BMI25以上の肥満者では発症リスクが2-3倍に上昇し、特に内臓脂肪面積が100cm²以上の場合、インスリン抵抗性が顕著となり、肝臓への脂肪蓄積が加速します。

危険因子リスク上昇率関連指標
肥満2-3倍BMI≥25
糖尿病3-4倍HbA1c≥6.5%
メタボリックシンドローム4-5倍腹囲≥85cm(男性)

自己免疫性肝疾患による肝硬変について

自己免疫性肝疾患による肝硬変は、自己免疫性肝炎(AIH)と原発性胆汁性胆管炎(PBC)が主な原因となります。

自己免疫性肝炎の患者の約25-30%は診断時にすでに肝硬変を発症しており、未治療の場合、10年以内に40-50%が肝硬変へ進行します。

自己免疫性肝炎では、血清IgG値が正常上限(1,700mg/dl)の1.5倍以上に上昇し、抗核抗体(ANA)は80倍以上の高値を示すことが特徴です。

女性の発症率は男性の6-7倍高く、30-50歳代での発症が多く見られます。

原発性胆汁性胆管炎は、90%以上が女性に発症し、診断時の平均年齢は50-60歳です。抗ミトコンドリア抗体(AMA)が95%以上の患者で陽性となり、早期診断の重要な指標となります。

疾患名女性比率診断時肝硬変率
自己免疫性肝炎85-90%25-30%
原発性胆汁性胆管炎90-95%15-20%

遺伝性・代謝性疾患による肝硬変について

ウィルソン病は、ATP7B遺伝子の変異により、銅の代謝異常を引き起こす遺伝性疾患です。

発症頻度は出生3万人に1人程度で、肝臓内の銅濃度は正常の5-10倍(250μg/g乾燥重量以上)に上昇します。

診断時の年齢は平均して10-30歳で、早期発見が極めて重要です。

遺伝性ヘモクロマトーシスは、HFE遺伝子の変異により、鉄の過剰蓄積を引き起こします。

肝臓内の鉄濃度は正常の20-50倍(正常値の上限は2,000μg/g乾燥重量)にまで上昇し、40-50歳代で症状が顕在化します。

疾患名発症頻度蓄積物質の倍率
ウィルソン病1/30,0005-10倍
ヘモクロマトーシス1/200-30020-50倍

肝硬変の原因を正確に把握することは、その後の経過を予測し、適切な対応を行う上で非常に重要な要素となります。

各原因に特有の数値や指標を理解することで、より精密な病態の評価が実現できます。

診察(検査)と診断

肝硬変(LC)の診断は、複数の検査を組み合わせた総合的な評価により行われます。

一般的に、初診時の血液検査で異常が見られた患者の約15-20%が精密検査へと進み、そのうち約30%で肝硬変が確認されるとされています。

問診・身体診察における具体的な評価ポイント

問診では、飲酒歴(純アルコール換算での1日摂取量と飲酒期間)、既往歴、家族歴などを詳細に聴取します。

身体診察では、腹部の触診による肝臓や脾臓の腫大の確認(正常な肝臓は右肋骨弓下1-2cm程度)、黄疸の有無(血清総ビリルビン値2.0mg/dL以上で視認可能)、下肢浮腫の程度などを確認します。

肝臓の触診では、正常な肝臓の硬度は約5kPa(キロパスカル)ですが、肝硬変では20-75kPaまで上昇します。

脾臓の触診では、正常の1.5-2倍以上の腫大がないかを確認します。

診察所見正常値異常値
肝臓硬度5kPa以下20kPa以上
脾臓サイズ10cm以下15cm以上
肝臓辺縁鋭・波打状

血液検査による詳細な機能評価

血液検査では、肝機能を示す各種マーカーを測定します。

AST(基準値30U/L以下)、ALT(基準値30U/L以下)、γ-GTP(基準値50U/L以下)などの肝酵素、アルブミン(基準値3.8-5.3g/dL)、総ビリルビン(基準値1.2mg/dL以下)などの合成・代謝機能、さらにプロトロンビン時間(基準値70%以上)や血小板数(基準値15-35万/μL)なども重要な指標となります。

肝硬変では、これらの値が特徴的な変化を示し、AST/ALT比が1以上、血小板数10万/μL未満、アルブミン3.5g/dL未満などの所見が診断の手がかりとなります。

検査項目基準値肝硬変での典型値
AST/ALT比1未満1以上
血小板数15-35万/μL10万/μL未満
アルブミン3.8-5.3g/dL3.5g/dL未満

画像診断による形態・機能評価

画像診断では、腹部超音波検査、CT検査、MRI検査などを用いて、肝臓の形態や内部構造を詳細に評価します。

超音波検査では、正常な肝臓エコーパターンが均一な中等度輝度を示すのに対し、肝硬変では粗造な高輝度パターンを呈します。

肝臓の辺縁は正常では滑らかですが、肝硬変では凹凸不整となり、表面の波打ち像が特徴的です。

CT検査では、造影剤を用いた三相性撮影(動脈相・門脈相・平衡相)により、肝臓の血流動態を評価します。

正常な肝臓では門脈相で最も強く造影されますが、肝硬変では動脈血流優位となり、造影パターンが変化します。

画像上の肝臓容積は、正常では体重の2.5%程度(約1000-1500ml)ですが、肝硬変では20-30%の萎縮を認めます。

画像所見正常肝肝硬変
肝表面性状平滑細顆粒状~結節状
肝実質輝度均一中等度不均一高輝度
肝容積変化1000-1500ml20-30%減少

肝硬度測定と組織学的評価

非侵襲的な肝硬度測定法として、超音波エラストグラフィやMRエラストグラフィがあり、これらは従来の肝生検と高い相関(相関係数r=0.85-0.90)を示します。

正常な肝臓の硬度が2.5-6.5kPaであるのに対し、肝硬変では12.5kPa以上を示します。

肝生検は、直径1.2-1.4mmの生検針を用いて、長さ15-25mmの肝組織を採取します。組織学的には、線維性隔壁による偽小葉の形成が特徴的で、METAVIR分類のF4に相当します。

線維化の定量的評価では、正常の肝臓が2-3%の線維化面積率であるのに対し、肝硬変では15-35%に上昇します。

評価方法測定範囲カットオフ値
エラストグラフィ2.5-75kPa12.5kPa
線維化面積率2-35%15%

病期・重症度の客観的評価

Child-Pugh分類では、5つの指標(血清アルブミン、総ビリルビン、プロトロンビン時間、腹水、肝性脳症)を点数化し、A(5-6点)、B(7-9点)、C(10-15点)の3段階で評価します。

MELDスコアは、総ビリルビン値、PT-INR、血清クレアチニン値から算出され、6-40点のスコアで重症度を判定します。

各評価指標は定期的に測定し、スコアの変動から病態の進行度を判断します。

肝臓の機能評価と形態評価を組み合わせることで、より正確な診断と経過観察が達成できます。

肝硬変(LC)の治療法と処方薬、治療期間

肝硬変(LC)の治療は、病型や進行度に応じて様々な方法を組み合わせます。

日本における肝硬変患者の5年生存率は約70%であり、早期からの適切な治療介入により、この数値は80-85%まで改善することが示されています。

ウイルス性肝硬変の治療内容

ウイルス性肝硬変の治療では、B型肝炎ウイルスに対して核酸アナログ製剤を使用し、HBV-DNA量を2.1 Log copies/mL未満に抑制することを目標とします。

治療開始後12週で約80%の患者でウイルス量が検出限界以下となり、1年継続することで95%以上の患者で持続的なウイルス抑制が達成されます。

C型肝炎ウイルスに対しては、直接作用型抗ウイルス薬(DAA)による治療を実施し、12週間の治療で95%以上のウイルス排除率(SVR)を達成できます。

血中のHCV-RNA量は治療開始4週目で検出限界以下となることが多く、治療終了24週後のSVR判定で治癒を確認します。

治療薬投与期間治療成功率
核酸アナログ製剤継続95%以上
DAA薬12週間95%以上

アルコール性肝硬変の具体的な治療方針

アルコール性肝硬変では、完全な禁酒が治療の基本となり、禁酒後6ヶ月で約40%の患者に肝機能の改善が認められます。

肝機能改善を目的とした薬物療法では、分岐鎖アミノ酸製剤(BCAA)を1日あたり12g(分3)投与し、血清アルブミン値を3.5g/dL以上に維持することを目指します。

ウルソデオキシコール酸製剤は1日600-900mgを投与し、肝機能障害の指標となるAST・ALT値を正常上限の2倍以下に抑制することを目標とします。

利尿薬による治療では、スピロノラクトンを25-50mg/日から開始し、最大200mg/日まで漸増することで、80%以上の患者で腹水のコントロールが可能となります。

薬剤名投与量投与期間
BCAA製剤12g/日継続
ウルソデオキシコール酸600-900mg/日継続
スピロノラクトン25-200mg/日症状に応じて

非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)による肝硬変の治療戦略

NAFLDによる肝硬変では、インスリン抵抗性改善薬としてピオグリタゾンを15-30mg/日投与し、6ヶ月の治療で約50%の患者にトランスアミナーゼ値の改善が認められます。

体重減少を3-5%達成することで肝酵素値が正常化し、7-10%の減量で肝線維化の改善が期待できます。

ビタミンE製剤は1日400-800IUの投与で、酸化ストレスの軽減と肝機能の改善に寄与します。

亜鉛製剤の投与(1日50-100mg)により、約60%の患者で肝機能の改善が認められます。

治療内容目標値改善率
体重減少7-10%60-70%
インスリン抵抗性改善HbA1c 1%低下50%
肝機能改善AST/ALT半減70%

自己免疫性肝疾患による肝硬変への対応

自己免疫性肝疾患による肝硬変では、プレドニゾロン(PSL)を0.5-1.0mg/kg/日で開始し、80%の患者で4週間以内にトランスアミナーゼ値が正常化します。

その後、維持量(5-10mg/日)まで漸減し、約70%の患者で寛解を維持できます。

アザチオプリンは1-1.5mg/kg/日を併用し、ステロイドの減量と長期寛解維持に貢献します。

ウルソデオキシコール酸(UDCA)は13-15mg/kg/日の投与で、胆汁うっ滞の改善と肝機能の安定化をもたらします。

治療薬初期投与量維持量
PSL30-60mg/日5-10mg/日
アザチオプリン50-100mg/日25-75mg/日

合併症に対する具体的な治療方法

門脈圧亢進症に対するβ遮断薬(プロプラノロール)は、20-60mg/日の投与で門脈圧を20-25%低下させ、食道静脈瘤の出血リスクを60%低減させます。

利尿薬による腹水治療では、90%以上の患者で体重が1日0.5-1.0kg程度減少し、2週間で腹水の50%以上の減少が期待できます。

肝硬変の治療における副作用やリスク

肝硬変(LC)の治療に伴う副作用やリスクは、投与される薬剤や処置の種類によって多岐にわたります。

統計データによると、患者の約60-70%が何らかの副作用を経験し、そのうち約15-20%で投薬の調整や変更が必要となります。

抗ウイルス薬による副作用とリスクの詳細

核酸アナログ製剤による治療では、約5-10%の患者で腎機能障害(血清クレアチニン値が0.5mg/dL以上上昇)が発生します。

特に投与開始後3-6ヶ月の期間に注意が必要で、eGFR(推定糸球体濾過量)が30%以上低下する症例も確認されています。

乳酸アシドーシスは稀な副作用(0.1%未満)ですが、血中乳酸値が正常上限(2.0mmol/L)の2倍以上に上昇すると重篤化します。

骨密度低下は長期投与(2年以上)の患者の10-15%で認められ、特に閉経後女性では骨密度が年間3-5%減少するケースもあります。

DAA薬では、15-20%の患者で消化器症状(悪心・食欲不振)が出現し、約5%で貧血(ヘモグロビン値が2g/dL以上低下)を認めます。

副作用発現時期発現頻度
腎機能障害3-6ヶ月5-10%
乳酸アシドーシス不定0.1%未満
骨密度低下2年以上10-15%

利尿薬・降圧薬関連の副作用の実態

利尿薬による治療では、約30%の患者で低カリウム血症(血清K値3.5mEq/L未満)が発生し、うち5-10%で重症化(K値3.0mEq/L未満)します。

腎機能障害は投与患者の20-25%で認められ、血清クレアチニン値が投与前の1.5倍以上に上昇するケースが報告されています。

β遮断薬による血圧低下は投与患者の40-50%で認められ、約15%で心拍数が50回/分未満の徐脈を呈します。

投与開始時の血圧が収縮期120mmHg未満の患者では、副作用の発現率が1.5-2倍に上昇します。

免疫抑制薬・ステロイド薬の副作用の詳細データ

免疫抑制療法における感染症の発現率は年間15-20%で、特に投与開始3ヶ月以内が高リスク期となります。

日和見感染症は全体の5-8%を占め、ニューモシスチス肺炎の発症リスクは非投与群の10倍以上に上昇します。

ステロイド薬の長期使用(6ヶ月以上)では、骨密度が年間4-6%減少し、約30%の患者で骨粗鬆症が進行します。

血糖値の上昇は投与患者の40-50%で認められ、空腹時血糖値が126mg/dL以上となる糖尿病の発症率は15-20%です。

副腎機能低下は漸減期に約25%の患者で発生し、血中コルチゾール値が5μg/dL未満まで低下するケースもあります。

副作用発現率重症化率
感染症15-20%/年5-8%
骨粗鬆症30%10%
糖尿病15-20%5%

栄養療法関連の副作用とその頻度

分岐鎖アミノ酸製剤の投与では、約25-30%の患者で消化器症状(悪心・腹部膨満感)が出現し、そのうち5-10%で服薬継続が困難となります。

電解質バランスの異常は15-20%で発生し、特に血清ナトリウム値が135mEq/L未満の低ナトリウム血症が問題となります。

代謝負荷の増大による肝機能の悪化は全体の3-5%で認められ、トランスアミナーゼ値が投与前の2倍以上に上昇するケースが報告されています。

アレルギー反応は比較的稀少(1%未満)ですが、重症例では血圧低下や呼吸困難を伴います。

副作用発現頻度中止率
消化器症状25-30%5-10%
電解質異常15-20%3-5%
アレルギー反応1%未満0.3%

肝性脳症治療薬の副作用の具体的数値

非吸収性抗菌薬による治療では、電解質異常が20-25%で発生し、特にカリウムとマグネシウムの低下が顕著です。

重症の下痢(1日5回以上の水様便)は投与患者の10-15%で認められ、約3%で脱水症状(体重の3%以上の減少)を伴います。

腸内細菌叢の変化による消化管症状は全体の30-35%で発現し、うち約10%でクロストリジウム・ディフィシル感染症を併発します。この場合、腸内細菌叢の回復には通常2-3週間を要します。

副作用の早期発見と適切な対応により、約80%のケースで重症化を防ぐことが可能です。

治療費について

治療費についての留意点

実際の治療費(医療費)が以下説明より高額になるケースが多々ございます。以下記載内容について当院では一切の責任を負いかねます事を予めご了承下さい。

処方薬の薬価と実質負担額

処方される医薬品は病状によって組み合わせが異なり、それに応じて費用も変化します。

核酸アナログ製剤(B型肝炎ウイルスに対する抗ウイルス薬)は1錠600-800円と比較的高額で、1日1回の服用が基本となります。

一方、利尿薬は1錠100-300円と手頃な価格帯ですが、症状に応じて1日2-3回の服用が必要となるため、月額では相応の費用となります。

栄養状態を改善する分岐鎖アミノ酸製剤は1包200-400円で、通常1日3回の服用が推奨されています。

医薬品分類1日の服用回数1日あたりの薬価
抗ウイルス薬1回600-800円
利尿薬2-3回300-900円

1週間の診療における実費用

外来診療では、基本的な診察に加え、各種検査や処方箋発行などを含めると、週あたり15,000-25,000円程度の費用が発生します。

この金額は一般的な治療内容を想定したものであり、追加の検査や処置が必要な場合は別途費用が加算されます。

  • 診察基本料と処方箋料:2,000-3,000円
  • 各種処方薬:10,000-15,000円
  • 血液検査等:3,000-7,000円

1か月の総合的な医療費

月単位での治療費は、通院頻度や処方される薬剤の種類、必要な検査項目によって60,000-100,000円の範囲で推移します。

医師の判断により治療内容は個別に設定されるため、この金額は一般的な目安として捉えることが望ましいでしょう。

定期的な通院と継続的な服薬が必要なため, 長期的な視点での経済的な準備が大切です。

医療費の内訳月額費用備考
外来診療費8,000-12,000円診察・検査含む
処方薬剤費40,000-60,000円薬剤調剤料含む

以上

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