子宮頸管ポリープ – 婦人科

子宮頸管ポリープ(cervical polyps)とは、子宮の入り口付近に生じる良性の小さな組織の塊のことです。

柔らかく赤みを帯びた色合いをしており、微小なものから1センチを超えるものまであります。

多くのケースでは目立った兆候が見られないため、気づかれずに経過することが少なくありません。

この記事を書いた人
丸岡 悠(まるおか ゆう)
丸岡 悠(まるおか ゆう)
外科医

1988年山形県酒田市生まれ。酒田南高校卒業後、獨協医科大学(栃木)にて医師免許取得。沖縄県立北部病院、独立行政法人日本海総合病院を経て現職(医療法人丸岡医院)。

子宮頸管ポリープの主な症状

子宮頸管ポリープはほとんど症状がないものの、時として不規則な出血や、おりものの量が増えるといった変化が現れます。

思わぬときの出血

子宮頸管ポリープができると、月経とは関係なく少量の出血が見られることがあります。

出血は軽いものであまり長く続きませんが、出血量が多かったり長期間続いたりするときは、医療機関で検査を受けてください。

出血の特徴対処法
少量様子を見る
短期間経過を観察
親密な行為後頻度が増えたら受診

おりものの変化

おりもの(帯下)の量が増えたり性質が変わったりすることも、子宮頸管ポリープの症状の一つです。

子宮頸管ポリープが原因のおりものは、粘り気があり、時に血液が混ざります。

ただし、いつもと違う臭いがしたり色が明らかに異常だったりするときは、他の病気の可能性も考えられるので、早めに婦人科を受診することが大切です。

腹部の不快感

子宮頸管ポリープがある方の中には、お腹の下の方に軽い痛みを感じる人がいますが、痛みは鈍くてずっと続くものではありません。

痛みの特徴対応方法
軽度経過観察
一時的様子を見守る
長引く医師に相談

子宮頸管ポリープの原因

子宮頸管ポリープは女性ホルモンのバランスが崩れることや、長期間続く炎症が原因です。

女性ホルモンのバランスの崩れ

子宮頸管ポリープの発生には、エストロゲンが深く関わっていることが分かっています。

エストロゲンの量が多くなりすぎると、子宮の入り口付近の細胞が必要以上に増えポリープができてしまいます。

妊娠中や閉経の前後など女性ホルモンの量が大きく変わる時期に子宮頸管ポリープが見つかることが多いのは、このためです。

長く続く炎症との関係

子宮の入り口付近で長い間炎症が続くことも、ポリープができる原因です。

炎症が長く続くとその部分の組織が刺激され続け、細胞が必要以上に増えやすくなります。

炎症が起こる原因具体的な例
細菌やウイルスの感染性感染症など
外からの刺激性行為、避妊リング

生活環境

生活習慣や周りの環境も、子宮頸管ポリープができることに関係しています。

ポリープができるリスクを高める要因

  • たばこを吸う
  • 体重が多すぎる
  • 強いストレス
  • 環境中のホルモンのような物質にさらされる
生活環境の要素ポリープができることへの影響
たばこを吸う炎症を悪化させ、体の抵抗力を下げる
体重が多すぎる女性ホルモンのバランスを崩す

診察(検査)と診断

子宮頸管ポリープの診断はまず問診と内診による初期の判断が行われ、その後、より詳しい検査によって診断を下します。

問診と内診

問診で日頃気になっている症状や、過去に経験した病気、普段の生活習慣を聞き取ります。

その後内診を行い、子宮の入り口付近の状態を直接観察します。

お話の内容具体例
気になる症状予期せぬ出血の有無
過去の病歴以前の婦人科の病気
日々の習慣ストレス、たばこなど

内診では腟鏡を使って子宮の入り口付近を調べ、ポリープがあるかどうか、あればどのくらいの大きさか、どのような様子であるかを確認します。

細胞を調べる検査と組織を採取する検査

最初の診察の次の段階は、細胞を調べる検査と組織の一部を採取する検査です。

細胞を調べる検査では子宮の入り口付近から細胞を少量採取し、顕微鏡で詳しく観察し、ポリープの性質を判断するうえで役に立ちます。

組織を採取する検査はポリープの一部または全体を採取して、より詳しく調べるものです。

画像で見る検査方法

超音波検査やMRI検査を通じて、ポリープの大きさや位置、周りの組織との関係が分かります。

腟の中から行う超音波検査は、体に負担をかけずにすぐに結果が分かるという点で、とても便利な検査方法です。

画像検査の種類特徴
超音波検査すぐに結果が分かる、体への負担が少ない
MRI詳しい画像が得られる

コルポスコピー

コルポスコピー検査は特殊な拡大鏡を使い、目では見えにくい子宮の入り口付近の小さな変化を細かく観察する方法です。

お酢の薄い液や特殊な薬を塗り、気になる部分をよりはっきり見分けられるようにします。

最終的な診断と他の病気との見分け方

子宮頸管ポリープの診断では、似たような症状を示す他の病気との鑑別も大切です。

子宮頸がんや子宮の中にできるポリープとの違いをしっかりと見極める必要があります。

見分けが必要な病気特徴
子宮頸がん悪性の可能性がある
子宮体部ポリープ子宮の中にできる
子宮筋腫子宮の筋肉にできる良性腫瘍
子宮内膜症子宮内膜が子宮外で増殖する

子宮頸管ポリープの治療法と処方薬、治療期間

子宮頸管ポリープの治療は、様子を見守る経過観察や、薬による治療、手術で取り除く方法があります。

経過を観察する

症状がなくて小さなポリープの場合、しばらく様子を見守る経過観察を選ぶことが多いです。

定期的に病院に来てもらい、ポリープの状態を確認していきます。

病院に来てもらう頻度確認する内容
3-6ヶ月に1回ポリープの大きさ
1年に1-2回症状に変化がないか

経過観察は6ヶ月から1年くらいです。

薬を使って治療する方法

女性ホルモンのバランスが崩れていることがポリープの原因のときは、薬剤治療を選びます。

使われる薬は、女性ホルモンを調整する薬や炎症を抑える薬です。

薬による治療は3〜6ヶ月くらい続けます。

手術で取り除く

症状がひどい方や、薬による治療があまり効果的でない方には、手術でポリープを取り除きます。

ポリープを取り除く方法

  • 特殊なピンセットで摘み取る方法
  • 電気を使って切り取る方法(ループ電気手術的切除術)
  • 子宮の中を見ながら切除する方法(子宮鏡下切除術)

手術による治療は日帰りか1泊2日の短い入院で行われ、手術後の回復期間は1〜2週間です。

手術の方法手術にかかる時間入院期間
ピンセットで摘む15-30分日帰り可能
電気で切除30分-1時間日帰りか1泊
子宮鏡で切除1-2時間1-2泊

手術後の経過観察

手術から1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後、1年後に定期的に病院に来てもらい、症状が再び出てきていないか、新しいポリープができていないかを確認します。

手術後の経過観察確認する内容
1ヶ月後傷の回復状態
3ヶ月後症状の改善
6ヶ月後ポリープの再発
1年後全体的な健康状態

子宮頸管ポリープの治療における副作用やリスク

子宮頸管ポリープの治療は安全に行われますが、他の医療行為と同じように副作用やリスクが全くないわけではありません。

ポリープを取り除く手術に伴うリスク

最もよく行われる治療法であるポリープを取り除く手術には、いくつかの注意点があります。

出血は最も頻繁に見られる副作用です。普通は軽い出血で済みますがまれに大量の出血になったり、手術後に感染するリスクもあります。

起こりうることどのくらいの頻度か
軽い出血比較的よく見られる
感染あまり多くない

麻酔に関係するリスク

局所麻酔(部分的に痛みを感じなくする方法)や全身麻酔(体全体を眠らせる方法)には、それぞれにリスクがあります。

気を付けなければいけない点は、局所麻酔ではアレルギー反応やしびれで、全身麻酔は呼吸や血液の循環に関する問題です。

手術後に起こりうること

手術の後には、一時的に不快な感じや痛みを感じます。

時には子宮の入り口が狭くなったり癒着し、生理痛がひどくなり、不妊の原因になることもあります。

また、ポリープを完全に取りきれず再び出てくることもあるので、注意が必要です。

手術後に起こりうることどう対処するか
手術後の痛み痛み止めのお薬を使う
子宮口が狭くなる・くっつくさらに治療が必要になる

妊娠への影響

子宮頸管ポリープの治療が妊娠に与える影響は、ごく小さいです。

ただし、手術の範囲が広かったり何度も手術を受けたりした方には、将来の妊娠や出産に影響が出ることがあり、子宮の入り口の組織を多く取り過ぎると、妊娠中に子宮の入り口が胎児を支えきれなくなります。

長く続けることが大切な経過観察

治療が終わった後も、定期的に様子を見ていくことが重要です。

  • 定期的に婦人科の検診を受ける
  • いつもと違う出血や分泌物が出ないか観察する
  • 生理の周期が変わっていないか注意する
  • セックスの時に痛みや出血がないか確認する
経過観察のポイントなぜ大切か
定期検診早期発見・早期対応のため
異常な症状の確認再発や合併症の兆候を見逃さないため

治療費について

治療費についての留意点

実際の治療費(医療費)が以下説明より高額になるケースが多々ございます。以下記載内容について当院では一切の責任を負いかねます事を予めご了承下さい。

経過観察にかかる費用

経過観察を選択した際は、定期的な診察や検査に費用がかかります。

項目概算費用(円)
超音波検査5,000-8,000
細胞診3,000-5,000

検査は3〜6ヶ月ごとに行われ、年間の総費用は2〜3万円程度です。

薬物療法の費用

子宮頚管ポリープでは、ホルモン剤や抗炎症薬を使用することが多いです。

薬剤タイプ月額概算(円)
ホルモン剤3,000-10,000
抗炎症薬2,000-5,000

治療期間は3〜6ヶ月程度で、総額で1〜5万円ほどになります。

手術療法にかかる費用

手術療法を選択した場合、費用は大幅に上がります。

手術療法の費用に含まれる項目

  • 手術費用
  • 入院費用
  • 麻酔費用
  • 術後の投薬費用

日帰り手術は10〜20万円程度で、入院を伴う手術の場合は約20〜40万円です。

以上

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