Klinefelter(クラインフェルター)症候群 – 婦人科

Klinefelter(クラインフェルター)症候群(Klinefelter syndrome)とは、染色体の異常によって引き起こされる遺伝的な症候群です。

通常男性にはXY染色体がありますが、クラインフェルター症候群では余分なX染色体があり、さまざま症状の原因となっています。

この症候群は身体的特徴や発達に影響を与えることがあり、不妊や学習障害、ホルモンバランスの乱れなどが起こることもあります。

この記事を書いた人
丸岡 悠(まるおか ゆう)
丸岡 悠(まるおか ゆう)
外科医

1988年山形県酒田市生まれ。酒田南高校卒業後、獨協医科大学(栃木)にて医師免許取得。沖縄県立北部病院、独立行政法人日本海総合病院を経て現職(医療法人丸岡医院)。

Klinefelter(クラインフェルター)症候群の種類(病型)

クラインフェルター症候群には、典型的Klinefelter症候群、モザイク型、変異型の病型があります。

典型的Klinefelter症候群(47,XXY)

典型的Klinefelter症候群は最も一般的な病型で、男性の性染色体が通常のXYではなくXXYとなっています。

クラインフェルター症候群全体の約80〜90%を占めており、染色体検査により確定診断が可能です。

染色体構成発生頻度
47,XXY80〜90%

モザイク型(46,XY/47,XXY)

モザイク型は、体細胞の一部が通常の46,XYで、他の細胞が47,XXYとなっている状態です。

クラインフェルター症候群全体の約10〜20%を占め、症状の程度は47,XXY細胞の割合によって異なります。

病型発生頻度特徴
モザイク型10〜20%症状の程度が47,XXY細胞の割合で変化

変異型(48,XXXY)

変異型はX染色体が3本以上あり、48,XXXYの他にも、49,XXXXYなどのさらにまれなパターンもあります。

クラインフェルター症候群全体の約1%未満で、X染色体の数が増えるほど症状が重度化する傾向があります。

染色体構成発生頻度
48,XXXY1%未満
49,XXXXYさらに稀

Klinefelter(クラインフェルター)症候群の主な症状

Klinefelter症候群は染色体異常による男性の遺伝性疾患で、症状は多岐にわたり、患者さんの生活に影響を与える可能性があります。

典型的Klinefelter症候群(47,XXY)の症状

典型的Klinefelter症候群の身体的特徴には、高身長、長い四肢、女性化乳房、筋力低下などが挙げられます。

精巣が小さくテストステロンの産生が少ないため、二次性徴の発現が遅れたり、不完全になったりし、不妊症は特徴的な症状の一つです。

身体的特徴頻度影響
高身長高い外見、服選び
長い四肢中程度体型バランス
女性化乳房中程度自己イメージ
筋力低下高い日常生活、運動能力

認知面では、言語処理や学習に関する軽度の困難を経験することがあります。

モザイク型(46,XY/47,XXY)の症状

モザイク型は典型的Klinefelter症候群と比べて軽度であることが多く、患者さんによっては日常生活への影響が比較的少ないです。

身体的特徴や二次性徴の遅れは典型的な型ほど顕著でないことがあり、外見上の違いが目立たない場合もあります。

不妊症のリスクは依然として高いですが、精子形成が部分的に保たれていることもあります。

認知機能も典型的な型と比べて軽度です。

症状の比較典型的型モザイク型生活への影響
身体的特徴顕著軽度自己イメージ、社会生活
不妊症のリスク高いやや高い家族計画、精神的ストレス
認知機能の課題中程度軽度学業、職業生活

変異型(48,XXXY)の症状

変異型の身体的特徴としては典型的な型と同様の特徴が見られますが、より顕著になることがあります。

知的障害のリスクが高く言語発達の遅れや学習の困難さがより顕著で、性腺機能低下症もより重度です。

二次性徴の発現が著しく遅れたり不完全になったりし、身体的・心理的発達に大きな影響を与える場合があります。

筋緊張低下や関節の過伸展など、運動機能に関する症状も現れやすいです。

Klinefelter(クラインフェルター)症候群の原因

クラインフェルター症候群は、染色体の数的異常によって引き起こされる遺伝子疾患です。

クラインフェルター症候群における染色体異常

クラインフェルター症候群は、男性の性染色体に余分なX染色体が加わることで発生します。

最も一般的な型では47,XXYの染色体構成となり、通常の46本の染色体に加えて余分なX染色体が1本存在する状態です。

染色体構成説明
47,XXY通常の46本+余分なX染色体1本
48,XXXYさらに稀な変異型(X染色体が3本)

染色体異常の発生メカニズム

染色体異常は主に次の2つのメカニズムによって発生します。

  1. 減数分裂時の不分離 減数分裂は、生殖細胞を形成する過程です。この過程で染色体の不分離が起こると、余分なX染色体を持つ精子や卵子が形成される可能性があります。
  2. 受精後の体細胞分裂異常 受精直後の初期胚の段階で、体細胞分裂の異常が起こることがあります。このような際に、一部の細胞が余分なX染色体を獲得することがあります。

診察(検査)と診断

Klinefelter症候群の診断は、身体的特徴の観察、染色体検査、ホルモン検査などを組み合わせて行われ、患者さんの状態を総合的に評価することで正確な診断が可能となります。

診察の流れ

Klinefelter症候群の診察ではまず問診が行われ、患者さんの身体的特徴や発達の経過、家族歴などについて詳しく聞き取りが行われ、症状の発現時期や程度、家族内での遺伝的傾向などが確認されます。

次に身体診察が行われ、特徴的な身体的特徴の有無を調べます。

診察項目内容評価ポイント
問診身体的特徴、発達経過、家族歴症状の発現時期、程度
身体診察身長、体型、二次性徴の状態特徴的な身体的特徴の有無

臨床診断の方法

身体的特徴は、高身長、長い四肢、女性化乳房、小さな精巣などです。

二次性徴の遅れや不完全な発現も重要な診断の手がかりとなり、思春期以降の身体的変化の経過が詳しく確認されます。

臨床的特徴診断上の重要度評価方法
高身長身長測定、成長曲線の確認
長い四肢体型の観察、四肢長の測定
女性化乳房視診、触診
小さな精巣触診、超音波検査

また、不妊症や精子形成の問題もKlinefelter症候群を疑う重要な兆候です。

確定診断のための検査

Klinefelter症候群の確定診断には染色体検査が不可欠です。

検査では細胞の染色体数と構造が分析され、Klinefelter症候群の型が特定されます。

染色体型特徴頻度
47,XXY典型的なKlinefelter症候群高い
46,XY/47,XXYモザイク型Klinefelter症候群中程度
48,XXXY変異型Klinefelter症候群低い

染色体検査に加えてホルモン検査も重要です。

以下のホルモンレベルが測定されることがあり、それぞれのホルモンの異常値が診断の補助となります。

  • テストステロン 男性ホルモンの主要な形態で、通常低値
  • 卵胞刺激ホルモン(FSH) 精巣機能を反映し、通常高値
  • 黄体形成ホルモン(LH) 精巣刺激ホルモンで、通常高値
  • エストラジオール 女性ホルモンの一種で、通常やや高値

Klinefelter(クラインフェルター)症候群の治療法と処方薬、治療期間

クラインフェルター症候群の治療は主にホルモン補充療法を中心に行われ、テストステロン補充療法や心理的サポート、不妊治療などが組み合わされます。

ホルモン補充療法

クラインフェルター症候群の主要な治療法は、テストステロン補充療法です。

男性ホルモンであるテストステロンを外部から補充することで、体内のホルモンバランスを整えることを目的としています。

投与方法特徴使用頻度
注射効果が速い、定期的な通院が必要1〜2週間ごと
ゲル毎日の使用が可能、皮膚への塗布毎日

テストステロン補充療法は通常思春期から開始されます。

不妊治療

クラインフェルター症候群の患者さんの多くは不妊の問題を抱えていますが、生殖医療の進歩により、一部の患者さんでは子どもを持つことが可能です。

顕微授精や精巣内精子回収法(TESE)などの技術が用いられることがあります。

治療法特徴成功率
顕微授精精子を直接卵子に注入症例により異なる
TESE精巣から直接精子を採取30〜50%

治療期間と経過観察

クラインフェルター症候群の治療は多くの場合生涯にわたって継続され、定期的な経過観察が不可欠です。

検査項目頻度目的
ホルモン値3〜6ヶ月ごと治療効果の確認
骨密度1〜2年ごと骨粗鬆症のリスク評価
血液検査6ヶ月〜1年ごと全身状態の確認

予後と長期的管理

Klinefelter症候群は遺伝的な疾患で完治することはありませんが、管理により多くの患者さんが充実した生活を送れます。

予後

早期発見と対応が行われた場合、多くの患者さんは健康的な生活が可能です。

予後に影響する要因影響度具体例
発見の時期高い早期発見による効果的な介入
管理の質高い定期的な医療チェックと治療
患者の意欲中程度自己管理への積極的な取り組み
周囲のサポート中程度家族や友人からの理解と支援

長期的な管理

Klinefelter症候群は遺伝的な疾患であるため、長期的な管理が大切です。

長期管理のポイント頻度目的
ホルモン検査年1-2回ホルモンバランスの維持
骨密度検査1-2年に1回骨粗鬆症の予防
心血管系検査年1回心血管疾患リスクの管理
心理評価必要に応じてメンタルヘルスの維持

Klinefelter(クラインフェルター)症候群の治療における副作用やリスク

クラインフェルター症候群の治療には主にホルモン補充療法が用いられますが、さまざまな副作用やリスクが伴う可能性があります。

ホルモン補充療法の副作用

テストステロン補充療法ではいくつかの副作用が報告されており、投与量や投与方法によって異なります。

副作用発生頻度管理方法
にきび比較的高い皮膚ケア、投与量調整
体毛増加中程度脱毛処置、投与量調整
脱毛低い頭皮ケア、専門医相談

多くの副作用は軽度で、投与量の調整や生活習慣の改善によって管理できます。

心血管系へのリスク

テストステロン補充療法は心血管系に影響を与える可能性があり、高齢の患者さんや既存の心血管疾患を持つ方では、注意が必要です。

  • 血栓症のリスク増加 定期的な血液検査や運動療法が推奨される
  • 高血圧の悪化 血圧管理と生活習慣の改善が重要
  • 心筋梗塞や脳卒中のリスク上昇 定期的な心臓検査と生活習慣の改善が必要

肝機能への影響

テストステロン補充療法は肝機能に影響を与える可能性があり、特に経口投与の場合肝臓への負担が大きいです。

検査項目異常値の意味モニタリング頻度
AST/ALT肝細胞障害3〜6ヶ月ごと
γ-GTP胆道系障害3〜6ヶ月ごと
総ビリルビン肝機能全般6ヶ月〜1年ごと

肝機能障害のリスクを最小限に抑えるため定期的な肝機能検査が実施され、異常が見られた場合は投与方法の変更や休薬が検討されます。

前立腺への影響

テストステロン補充療法は前立腺に影響を与える可能性があり、注意が必要です。

検査項目目的実施頻度
PSA検査前立腺がんのスクリーニング6ヶ月〜1年ごと
直腸診前立腺の触診1年ごと

定期的な前立腺特異抗原(PSA)検査や直腸診が推奨され、異常が見られた場合は専門医による精密検査が行われます。

不妊治療に関連するリスク

クラインフェルター症候群の患者さんに対する不妊治療で行われる精巣内精子回収法(TESE)などの手術的処置には、以下のようなリスクがあります。

  • 出血 
  • 感染 
  • 精巣の損傷 

治療費について

治療費についての留意点

実際の治療費(医療費)が以下説明より高額になるケースが多々ございます。以下記載内容について当院では一切の責任を負いかねます事を予めご了承下さい。

診断時の検査費用

Klinefelter症候群の診断には染色体検査が不可欠で、保険適用で約30,000円から50,000円程度です。

ホルモン検査も必要で、一般的に1項目あたり2,000円から5,000円程度かかります。

検査項目費用(保険適用)
染色体検査30,000円~50,000円
ホルモン検査(1項目)2,000円~5,000円

ホルモン補充療法の費用

Klinefelter(クラインフェルター)では、テストステロン補充療法が主な治療法です。

注射剤の場合1回あたり3,000円から8,000円程度で、通常月1回から2回の頻度で行われます。

ゲル剤を使用する場合、月額8,000円から15,000円程度です。

関連する治療の費用

不妊治療を行う場合は、別途費用が発生します。

  • 精巣内精子採取術(TESE) 1回あたり30万円から50万円
  • 顕微授精(ICSI) 1回あたり40万円から60万円
  • 配偶者間人工授精(AIH) 1回あたり2万円から5万円

以上

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