子宮頸管炎 – 感染症

子宮頸管炎(cervicitis)とは、主に細菌やウイルスの感染により子宮頸部の粘膜に炎症が生じる病気です。

女性特有の症状を伴うことが多く、おりものの増加や異常な色、性行為の際の出血、骨盤部の痛みなどが見られることがあります。

子宮頸管炎は正確な診断と対応が不可欠で、放置すると重大な合併症につながる可能性があるため、早めに医療機関を受診することが大切です。

この記事を書いた人
丸岡 悠(まるおか ゆう)
丸岡 悠(まるおか ゆう)
外科医

1988年山形県酒田市生まれ。酒田南高校卒業後、獨協医科大学(栃木)にて医師免許取得。沖縄県立北部病院、独立行政法人日本海総合病院を経て現職(医療法人丸岡医院)。

子宮頸管炎の種類(病型)

子宮頸管炎には急性と慢性という2つの主要な病型があり、それぞれ異なる特徴と経過を示します。

急性子宮頸管炎

急性子宮頸管炎は、突然の発症と比較的短期間で進行する病型です。

炎症反応が急速に進行し、子宮頸管の組織に顕著な変化が現れることがあります。

急性子宮頸管炎の主な特徴

  • 急激な炎症の進行
  • 短期間での症状の出現
  • 強い免疫反応

急性期の炎症では、子宮頸管の組織に顕著な変化が現れ、細胞レベルでの反応が活発化します。

慢性子宮頸管炎

慢性子宮頸管炎は、長期間にわたって持続する炎症状態です。

炎症が緩やかに進行し、症状が比較的穏やかであることが多いですが、長期間持続することでさまざまな問題が起こります。

慢性子宮頸管炎の主な特徴

特徴説明
持続期間数ヶ月から数年
炎症の程度比較的穏やか
症状の変動緩やかな増減

慢性子宮頸管炎では、炎症が長期間持続することで、子宮頸管の組織に徐々に変化(組織の肥厚や線維化)が生じることがあります。

急性と慢性の違い

急性子宮頸管炎と慢性子宮頸管炎の主な違いは、進行速度と持続期間です。

特徴急性子宮頸管炎慢性子宮頸管炎
発症速度急速緩やか
持続期間短期(数日~数週間)長期(数ヶ月~数年)
症状の強さ強い比較的穏やか
組織変化急激徐々に進行

急性子宮頸管炎では、炎症反応が急速に進行し、短期間で顕著な症状が現れることが多いです。

一方、慢性子宮頸管炎では、炎症が緩やかに進行し、長期間にわたって持続します。

子宮頸管炎の主な症状

子宮頸管炎の急性と慢性では、それぞれ特有の症状が現れます。

急性子宮頸管炎の症状

急性子宮頸管炎の主な症状は、膣からの異常な分泌物の増加や変化、下腹部の痛み、性行為時の痛みや出血などです。

これらの症状は急激に始まることが多く、日常生活に影響を与える場合があるため、速やかな対応が求められます。

症状特徴
分泌物の変化量の増加、色や臭いの変化
下腹部の痛み鈍痛や刺すような痛み
性行為時の不快感痛みや出血

慢性子宮頸管炎の症状

慢性子宮頸管炎の症状は、急性の場合と比較して穏やかなことが多く、気づかないうちに進行していることもあります。

主な症状は、持続的な腰痛や下腹部の不快感、性行為後の出血、不規則な月経などです。

また、慢性的な炎症により子宮頸部の粘膜が変化し、診察や検査の際に異常が発見されることもあります。

共通する症状と注意点

急性・慢性どちらの場合でも見られる症状があります。

  • 頻尿や排尿時の痛み
  • 腰痛や下腹部の不快感
  • 性行為時の痛みや出血
  • 不規則な出血(月経時以外の出血)
症状の種類急性子宮頸管炎慢性子宮頸管炎
発症の仕方突然徐々に
痛みの程度強い軽度~中程度
持続期間短期間長期間
日常生活への影響大きい比較的小さい

子宮頸管炎の原因・感染経路

子宮頸管炎はさまざまな要因によって発生し、その原因と感染経路を正しく理解することが予防と早期発見につながります。

主な原因と感染経路

子宮頸管炎の主な原因は、病原体の感染と非感染性の要因に大きく分けられます。

感染性の原因は、細菌、ウイルス、真菌などの微生物で、性行為や医療処置を通じて体内に入ることがあります。

非感染性の要因は、化学物質への接触、アレルギー反応、物理的刺激などです。

感染性の原因と経路

感染性の子宮頸管炎の主な原因となる病原体と感染経路

病原体主な感染経路
クラミジア性行為
淋菌性行為
トリコモナス性行為
カンジダ菌性行為、自己感染
ヘルペスウイルス性行為、垂直感染

これらの病原体は主に性行為を通じて感染しますが、他の経路での感染も起こることがあります。

カンジダ菌による感染は、腸内や皮膚に常在する菌が何らかの要因で増殖することで発生する自己感染です。

また、ヘルペスウイルスは妊娠中や出産時に母子間で感染する垂直感染のリスクもあります。

非感染性の原因と誘因

非感染性の子宮頸管炎の原因

  • 化学物質への接触(強力な洗浄剤や殺精子剤など)
  • アレルギー反応(ラテックスアレルギーなど)
  • 物理的刺激(不適切な衛生用品の使用など)
  • ホルモンバランスの乱れ
  • 放射線治療の影響

これらの要因は、直接的に子宮頸管の粘膜を刺激したり、局所的な免疫機能を低下させたりすることで、炎症を起こすことがあります。

リスク要因と潜在的な感染経路

子宮頸管炎のリスクを高める要因と、潜在的な感染経路には以下のようなものがあります。

リスク要因潜在的な感染経路
複数の性的パートナー性行為を通じた感染機会の増加
不適切な衛生習慣自己感染や細菌の増殖
免疫機能の低下日和見感染の増加
喫煙局所免疫の低下による感染リスクの上昇

診察(検査)と診断

子宮頸管炎の診断には、詳細な問診と検査の組み合わせが必要です。

問診

診察の最初は、医師による丁寧な問診です。

患者さんの症状、その持続期間、生活習慣、性行為の頻度、既往歴などについて詳しく聞き取りを行います。

内診と視診

問診の後は、内診と視診です。

内診では、膣鏡を使用して子宮頸部の状態を直接観察し、炎症の有無や程度を確認し、同時に、子宮頸部からの分泌物の量や性状、出血の有無なども調べます。

観察項目正常異常の可能性
分泌物の量少量~中等量多量
分泌物の色透明~白色黄色、緑色、茶色
子宮頸部の状態滑らか、均一発赤、腫れ、びらん

検体採取と検査

診断の精度を高めるため、いくつかの検査が行われることがあります。

  • 細胞診(パップスメア)
  • 微生物培養検査
  • PCR検査(特定の病原体の検出)
  • コルポスコピー(拡大鏡を使用した詳細な観察)

これらの検査により、炎症の原因となっている病原体の特定や、他の疾患を除外することが可能になります。

血液検査と画像診断

状況に応じて、血液検査や画像診断が追加されることもあります。

  • 血液検査:炎症マーカーの上昇や感染症の有無を確認し、全身状態を評価します。
  • 超音波検査やMRIなどの画像診断:子宮や卵巣の状態を詳しく観察する際に用いられます。
検査項目目的
血液検査炎症マーカー、感染症の確認
超音波検査子宮・卵巣の状態確認
MRI骨盤内臓器の詳細な観察

子宮頸管炎の治療法と処方薬、治療期間

子宮頸管炎の治療では、原因となる病原体や要因に基づいてた方法を選び、処方薬と治療期間を決める必要があります。

治療法の概要

子宮頸管炎の治療法は、主に感染性と非感染性の原因によって異なります。

感染性の子宮頸管炎の場合、抗生物質や抗真菌薬などの薬物療法が主な治療法となり、非感染性の場合は原因となる要因の除去や対症療法が中心です。

治療の選択には、患者さんの年齢、妊娠の有無、症状の重症度、既往歴などを考慮します。

感染性子宮頸管炎の治療法

感染性子宮頸管炎の治療は、原因となる病原体に応じて抗菌薬や抗真菌薬を選択します。

主な病原体と対応する治療薬

病原体主な治療薬
クラミジアアジスロマイシン、ドキシサイクリン
淋菌セフトリアキソン、スペクチノマイシン
トリコモナスメトロニダゾール
カンジダフルコナゾール、ミコナゾール

これらの薬物は、主に経口投与や局所投与の形で処方され、症状の改善がみられるのは、多くの場合1〜2週間後です。

非感染性子宮頸管炎の治療法

非感染性の子宮頸管炎の治療は、原因となる要因の特定と除去が中心です。

主な治療アプローチ

  • 刺激物の除去(化学物質、アレルゲンなど)
  • ホルモンバランスの調整
  • 局所的な抗炎症治療
  • 生活習慣の改善

非感染性の子宮頸管炎の治療期間は、原因や症状の程度によって大きく異なり、数週間から数か月に及ぶこともあります。

治療薬の種類と特徴

子宮頸管炎の治療に使用される主な薬剤と特徴

薬剤分類主な薬剤名特徴
マクロライド系抗生物質アジスロマイシン単回投与が可能、副作用が少ない
テトラサイクリン系抗生物質ドキシサイクリン広域スペクトル、妊婦には禁忌
セフェム系抗生物質セフトリアキソン注射薬、耐性菌にも有効
抗原虫薬メトロニダゾールトリコモナス感染に有効、経口・局所投与可能
抗真菌薬フルコナゾールカンジダ感染に有効、経口投与

これらの薬剤は、それぞれ特有の作用機序と副作用があるため、患者さんの状態に応じて選択することが必要です。

治療期間と経過観察

子宮頸管炎の治療期間の目安

  • 細菌性感染症:7〜14日間
  • ウイルス性感染症:5〜10日間(症状に応じて)
  • 真菌感染症:3〜7日間
  • 非感染性炎症:2週間〜数か月(原因に応じて)

治療開始後、通常1〜2週間程度で症状の改善が見られますが、完全に治るまでには時間がかかることがあります。

治療が終了しても、再発のリスクを考慮して、数か月にわたって定期的な検査や経過観察を行うことが大切です。

予後と再発可能性および予防

子宮頸管炎の予後は概ね良好ですが、再発防止のために、予防策の実践が欠かせません。

予後の見通し

子宮頸管炎の予後は、多くの場合良好で、早期発見と対応により、症状の改善や完治が見込めます。

予後に影響する要因影響の度合い
早期発見・早期対応
原因となる病原体中~高
患者さんの全身状態
生活習慣の改善

再発のリスクと要因

子宮頸管炎は、完治後も再発のリスクがあります。

再発のリスク要因

  • 不適切な生活習慣の継続
  • パートナーの未治療
  • 免疫力の低下
  • 不十分な衛生管理

再発予防のための生活習慣

再発を予防するためには、日々の生活習慣の見直しが大切です。

予防策効果
適度な運動免疫力向上
バランスの取れた食事全身状態の改善
十分な睡眠ストレス軽減
禁煙粘膜の健康維持

パートナーとの協力

子宮頸管炎の再発予防には、パートナーの協力も不可欠です。

性感染症が原因の場合、パートナーも同時に治療を受ける必要があり、また、性行為の際にはコンドームを使用するなど、感染予防に努めることが求められます。

定期的な検診の重要性

子宮頸管炎の再発を早期に発見するためには、定期的な婦人科検診が必要です。

検診では、子宮頸部の状態や分泌物の性状などを確認し、異常の有無をチェックします。

子宮頸管炎の治療における副作用やリスク

子宮頸管炎の治療は効果が高い反面、患者さんの体質や使用する薬剤によってはさまざまな副作用やリスクが生じる可能性があります。

抗生物質による副作用

子宮頸管炎の治療で最も一般的に使用される抗生物質は、さまざまな副作用を起こす可能性があります。

主な副作用

副作用頻度
消化器症状(下痢、腹痛)
アレルギー反応
光線過敏症
肝機能障害

副作用の中でも、消化器症状は最も頻繁に見られるもので、特に広域スペクトル抗生物質を使用した際に発生しやすいです。

例えば、テトラサイクリン系抗生物質であるドキシサイクリンを服用した患者さんの約10〜25%が軽度から中等度の消化器症状を経験するという報告があります。

アレルギー反応は頻度は低いものの、重篤な場合はアナフィラキシーショックを引き起こすことがあるため、特に注意が必要です。

抗真菌薬の副作用とリスク

カンジダ感染症による子宮頸管炎の治療に使用される抗真菌薬も、副作用やリスクを伴います。

主な副作用とリスク

  • 消化器症状(悪心、嘔吐、腹痛)
  • 頭痛
  • 皮膚反応(発疹、かゆみ)
  • 肝機能への影響
  • 薬物相互作用のリスク

特に、経口抗真菌薬であるフルコナゾールは、他の薬剤との相互作用に注意が必要です。

ワーファリンなどの抗凝固薬と併用すると、出血のリスクが高まる可能性があります。

また、妊娠中の使用については、胎児への影響のリスクがあるため、慎重に検討することが必要です。

局所治療薬のリスク

子宮頸管炎の治療では、膣座薬や膣クリームなどの局所治療薬が使用されることがあり、特有のリスクがあります。

局所治療薬のリスクと注意点

リスク注意点
局所刺激使用前にパッチテストを行う
アレルギー反応過去の使用歴を確認する
腟内環境の変化pH値の変動に注意する
薬剤耐性菌の出現長期使用を避ける

局所治療薬の使用により、膣内の正常な細菌叢のバランスが崩れ、別の感染症を引き起こす可能性もあります。

ホルモン療法のリスクと注意点

非感染性の子宮頸管炎の治療では、ホルモン療法が選択されることがありますが、これにも特有のリスクと副作用があります。

主なリスクと注意点

  • 血栓症のリスク増加
  • 乳房の張りや痛み
  • 不正出血
  • 気分の変動
  • 長期使用による骨密度低下

特に、エストロゲン製剤の使用は、血栓症のリスクを高める可能性があるため、喫煙者や肥満の方、高血圧の方などでは注意が必要です。

また、ホルモン療法は長期的な影響を及ぼす可能性があるため、定期的な経過観察と副作用のモニタリングが欠かせません。

副作用とリスクへの対処

子宮頸管炎の治療に伴う副作用やリスクに対処するためには、以下の点に注意してください。

  • 治療開始前に医師と詳細な相談を行う
  • 既往歴や服用中の薬剤について正確に情報を提供する
  • 副作用の初期症状を理解し、発現時には速やかに報告する
  • 定期的な経過観察を欠かさない
  • 自己判断で治療を中断しない

治療費について

治療費についての留意点

実際の治療費(医療費)が以下説明より高額になるケースが多々ございます。以下記載内容について当院では一切の責任を負いかねます事を予めご了承下さい。

子宮頸管炎の治療費は症状の重さや必要となる検査の種類によって変わりますが、多くの場合は外来診療で対応できます。

初診料と再診料

初診料は約2,800円、再診料は約730円です。

検査費用

細菌培養検査は約1,500円、超音波検査は約3,000円程度です。

検査項目費用
細菌培養検査約1,500円
超音波検査約3,000円

処置費用

抗生物質の処方や局所治療にかかる費用は約2,000円から5,000円程度です。

以上

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