突発性発疹(exanthem subitum)とは、主に乳幼児が罹患するウイルス性疾患です。
ヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)やヒトヘルペスウイルス7型(HHV-7)への初感染により発症します。
特徴的な症状は、39度を超える高熱が3日から4日ほど続いた後に熱が下がり、それと同時に全身に発疹が現れることです。
突発性発疹の種類(病型)
突発性発疹は、定型例、非定型例、合併症を伴う例の3つの病型に分類することができます。
定型例
定型例は、突発性発疹の最も一般的な病型です。
特徴 | 説明 |
発熱 | 39〜40℃の高熱が3〜4日続く |
発疹 | 解熱後に全身に小さな紅色の発疹が出現 |
定型例の特徴は、高熱と発疹が順番に現れることです。
非定型例
非定型例は、定型例とは異なる症状の組み合わせを示す病型です。
- 発熱のみで発疹が出現しないパターン
- 発疹が先行し、その後に発熱するパターン
- 発熱と発疹が同時に出現するパターン
非定型例では、症状の現れ方が定型例と異なることがあります。
合併症を伴う例
合併症を伴う例は、突発性発疹に他の疾患が併発する病型です。
合併症 | 説明 |
熱性けいれん | 発熱に伴ってけいれんを起こす |
脳炎・髄膜炎 | 脳や髄膜に炎症が生じる |
突発性発疹の主な症状
突発性発疹は乳幼児期によく見られるウイルス感染症で、高熱と発疹が主な症状として現れます。
高熱
突発性発疹では初期症状として、39度以上の高熱が3日から4日程度持続するのが特徴です。
この高熱は解熱剤を使っても下がりづらいことがあり、高熱が続いている間は、機嫌が悪くなったり食事の量が減ったりする症状が見られることがあります。
発疹
高熱が落ち着いた後に、体に発疹が出現します。
発疹は最初、胸や腹部、背中にあらわれ、その後、顔や手足に広がっていきます。
発疹の色は薄いピンク色で、直径2〜3ミリメートルほどの小さな斑点状です。
発疹の特徴 | 詳細 |
色 | 薄いピンク色 |
大きさ | 直径2〜3ミリメートルの小さな斑点状 |
広がり方 | 胸や腹部、背中から顔や手足に広がる |
その他の症状
- 高熱時の機嫌の悪さ、食欲不振
- 発疹出現時の軽度のかゆみ
- まれにけいれん
突発性発疹の症状は、通常1週間ほどで自然に回復します。
しかし、高熱が5日以上続いたり、けいれんが起きたりした際は、医療機関を受診することが大切です。
症状 | 対応 |
高熱が5日以上続く | 医療機関を受診する |
けいれんを起こした | 医療機関を受診する |
突発性発疹の原因・感染経路
突発性発疹は、ヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)とヒトヘルペスウイルス7型(HHV-7)の感染によって発症する、小児期の代表的な急性熱性疾患です。
突発性発疹の主な原因ウイルス
ウイルス | 感染時期 |
HHV-6 | 生後6ヶ月~2歳 |
HHV-7 | 乳幼児期 |
HHV-6とHHV-7への初感染は、ともに乳幼児期に集中して見られます。
HHV-6は主に生後6ヶ月から2歳の間に感染し、特に生後9ヶ月から1歳にかけての感染が多いです。
HHV-7の初感染は乳幼児期全般で起こりますが、HHV-6と比べるとやや遅い時期に感染する傾向があります。
ウイルスの感染経路
突発性発疹の原因となるHHV-6とHHV-7は、次のような経路で感染が拡大します。
- 感染者との直接的な接触(唾液や体液を介した感染)
- 空気感染(くしゃみや咳などによる飛沫感染)
- 母子感染(母親から子どもへの垂直感染)
乳幼児は免疫機能が未熟であるため、感染のリスクが高く、また、保育園や幼稚園などの集団生活の場では、感染が広がりやすい環境にあります。
ウイルスの潜伏期間と感染力
ウイルス | 潜伏期間 | 感染力 |
HHV-6 | 5~15日 | 発疹出現前後に最大 |
HHV-7 | 7~14日 | 発疹出現前後に最大 |
HHV-6とHHV-7の潜伏期間は、それぞれ5~15日、7~14日程度と考えられています。
この期間中感染者は症状がなくてもウイルスを排出し、他者へ感染させる可能性があります。
発疹が出現する前後の時期に感染力が最も高まるため、この時期の感染対策が特に大切です。
感染予防のポイント
突発性発疹の予防対策
- 手洗いの徹底
- 咳エチケットの実践
- 人混みや感染リスクの高い場所を避ける
- 体調管理と十分な休養
診察(検査)と診断
突発性発疹は、特徴的な症状や身体所見から臨床診断することができ、確定診断のためには血液検査などの検査が実施されます。
突発性発疹の臨床診断
突発性発疹の臨床診断は、発熱と発疹の時間的な関係や発疹の特徴的な分布などから行うことが可能です。
突発性発疹の特徴として、通常3〜4日間の高熱が続いた後に解熱し、解熱と同時あるいは解熱後24時間以内に発疹が現れることが挙げられます。
発熱期間 | 3〜4日間 |
解熱後発疹出現までの時間 | 24時間以内 |
発疹は体幹部から始まり、四肢へと広がっていきます。
発疹の特徴
- 淡紅色の斑状丘疹が融合し、地図状に分布する
- 掻痒感を伴わない
- 数日で消退する
突発性発疹の確定診断
突発性発疹の確定診断のためには、血液検査などが行われ、血液検査では、白血球数の増加やリンパ球の増加、CRP値の上昇などが見られることがあります。
検査項目 | 所見 |
白血球数 | 増加 |
リンパ球 | 増加 |
CRP値 | 上昇 |
診察時の注意点
突発性発疹の診察の際には、麻疹や風疹、伝染性紅斑などとの鑑別が必要です。
突発性発疹の治療法と処方薬、治療期間
突発性発疹の治療は、症状をやわらげ合併症を防ぐための対症療法が中心で、ウイルスを直接攻撃する特効薬はありません。
発熱などの不快な症状を緩和し、体への負担を最小限に抑えることが治療の目的です。
解熱鎮痛薬の使用
突発性発疹では、高熱に対処するために解熱鎮痛薬が処方されます。
アセトアミノフェンやイブプロフェンといった薬が代表的です。熱を下げるとともに頭痛や関節痛などもやわらげてくれます。
補液療法の実施
高熱により体内の水分が失われやすくなるため、突発性発疹の患者さんには補液療法が行われることがあります。
経口摂取や点滴で水分や電解質を補給し、脱水を防ぎ体内環境を整えるのが目的です。
乳幼児や高齢者など脱水リスクの高い方には、積極的な補液が必要になるケースもあります。
治療法 | 目的 |
解熱鎮痛薬 | 発熱・痛みの緩和 |
補液療法 | 脱水予防・体内バランス維持 |
安静と休養の確保
突発性発疹の治癒には、安静と休養が非常に大切で、発熱や発疹が出ている間は、自宅や入院先で十分な休息を取ります。
一般的に発熱は3〜4日ほど続くことが多く、この期間の安静は欠かせません。
医療機関への相談
次のような状況では、すぐに医療機関に相談してください。
的確な診断と治療方針の選択は、合併症の予防や早期回復に直結します。
要相談の症状 | 理由 |
遷延する高熱 | 合併症リスクの上昇 |
重篤な症状 | 早期の医療介入の必要性 |
脱水症状 | 体内バランス崩れの防止 |
突発性発疹の治癒までの期間は患者さんの状態によりますが、普通は1週間から10日程度です。
発疹出現後数日で解熱に向かい、その後も安静を保ちつつ回復が進みます。
ただし合併症の発症や免疫力低下により、治療期間が延びることも。
予後と再発可能性および予防
突発性発疹は治療を受ければ予後は良好で、再発の可能性も低い感染症です。
突発性発疹の治療と予後
突発性発疹の治療では、主に症状をやわらげるための対症療法が行われます。
解熱剤や保湿剤などを使って、患者さんの不快感を軽減することが大切です。
具体例 | |
解熱剤 | アセトアミノフェンなど |
保湿剤 | ワセリンなど |
治療を受ければ、通常は1週間程度で症状が改善し、予後は良好で、突発性発疹が合併症を引き起こしたり、後遺症を残したりすることはまれです。
再発の可能性
突発性発疹にかかると、多くの場合は終生免疫を獲得し、再発することはほとんどないと考えられています。
ただし、以下のようなケースでは再発する可能性があります。
- 免疫が不完全だった場合
- 別のウイルスが原因で感染した場合
突発性発疹の予防
突発性発疹を予防するのに注意する点
予防法 | ポイント |
手洗い | 石けんを使い、30秒以上かけて丁寧に洗うこと |
うがい | ぬるま湯で口をすすぎ、のどの奥まで洗うこと |
人混みを避ける | 感染リスクが高まるため、できるだけ避けること |
体調管理 | 十分な休養と栄養バランスの取れた食事を心がけること |
突発性発疹の治療における副作用やリスク
突発性発疹の治療において、主な副作用やリスクには解熱剤の使用による副作用、脱水症状、合併症の悪化などがあげられます。
解熱剤の副作用
突発性発疹の治療では高熱を下げるために解熱剤が使われることが、解熱剤の使用にはさまざまな副作用のリスクが伴います。
アセトアミノフェンの過剰使用は肝機能障害を引き起こすおそれがあります。
またイブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬は、胃腸障害や腎機能障害のリスクを高める可能性も。
解熱剤の種類 | 主な副作用 |
アセトアミノフェン | 肝機能障害 |
イブプロフェン | 胃腸障害、腎機能障害 |
脱水症状のリスク
突発性発疹では高熱や発疹によって体液が失われ、脱水症状を引き起こすリスクがあり、特に乳幼児は脱水症状になりやすく重症化するおそれがあります。
脱水症状を予防するには十分な水分補給が大切です。
合併症の悪化リスク
突発性発疹ではさまざまな合併症を伴うことがあります。
可能性のある合併症は、熱性けいれんや脳炎・脳症などの神経学的なものです。
また突発性発疹の治療中に細菌性の二次感染を引き起こすリスクもあります。
合併症の種類 | リスク |
熱性けいれん | 発熱に伴うけいれん発作 |
脳炎・脳症 | 意識障害、けいれん、麻痺などの神経症状 |
細菌性二次感染 | 肺炎、中耳炎、皮膚感染症など |
治療費について
実際の治療費(医療費)が以下説明より高額になるケースが多々ございます。以下記載内容について当院では一切の責任を負いかねます事を予めご了承下さい。
突発性発疹の初診時の費用
突発性発疹の初診時には、診察料や検査費用などがかかります。
項目 | 費用 |
診察料 | 3,000円〜5,000円 |
血液検査 | 5,000円〜10,000円 |
突発性発疹の治療費の内訳
突発性発疹の治療費の項目
- 診察料
- 検査費用(血液検査など)
- 投薬費用(解熱鎮痛剤など)
- 点滴費用(重症例の場合)
これらの費用は症状や重症度によって異なりますが、一般的には以下のとおりです。
項目 | 費用 |
診察料 | 3,000円〜5,000円 |
検査費用 | 5,000円〜10,000円 |
投薬費用 | 2,000円〜5,000円 |
点滴費用 | 10,000円〜20,000円 |
突発性発疹の治療費に関する注意点
突発性発疹の治療費についての注意点
以上
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