新型インフルエンザ – 感染症

新型インフルエンザは感染症の一種で、過去に流行したことのないタイプのインフルエンザウイルスが原因で発症します。

新型インフルエンザウイルスは人から人への感染力が非常に強く、急速に広がる恐れがあります。
この感染症の症状は季節性インフルエンザと酷似していますが、重症化するリスクが高いことが特徴的です。

この記事を書いた人
丸岡 悠(まるおか ゆう)
丸岡 悠(まるおか ゆう)
外科医

1988年山形県酒田市生まれ。酒田南高校卒業後、獨協医科大学(栃木)にて医師免許取得。沖縄県立北部病院、独立行政法人日本海総合病院を経て現職(医療法人丸岡医院)。

新型インフルエンザの種類(病型)

新型インフルエンザの病型は、無症候性感染から致死性感染まで広範囲に及びます。

感染者の年齢や基礎疾患の有無などによって、重症化のリスクに差があることが明らかになっています。

無症候性感染

新型インフルエンザウイルスに感染したにもかかわらず、一切症状が出ないことがあります。 このような感染状態を無症候性感染と呼称します。

病型症状の有無
無症候性感染なし
軽症あり

軽症

新型インフルエンザに罹患した大多数の人は、発熱や咳などの特徴的なインフルエンザ症状を呈しますが、重篤化せずに回復するでしょう。

こうした症例は軽症として分類されます。

  • 発熱
  • 倦怠感
  • 頭痛

重症

感染者の一部においては、肺炎や呼吸不全などの合併症を発症し、入院加療が必要となることがあります。

このような症例は重症として分類されます。

病型入院の必要性
軽症なし
重症あり

致死性感染

重篤化した患者の中には、集中治療を実施しても救命し得ない場合があります。

新型インフルエンザが原因で死亡に至った感染は、致死性感染と称されます。

新型インフルエンザの主な症状

新型インフルエンザの症状は、感染から1~3日程度で発現し始めます。

症状の強度には個人差が認められますが、重症化すると生命に関わるリスクを伴うため、十分な注意が求められます。

全身症状

新型インフルエンザに罹患すると、以下のような全身症状が出現します。

症状頻度
発熱高い
倦怠感高い
頭痛中程度
筋肉痛中程度

呼吸器症状

新型インフルエンザでは、呼吸器系の症状も顕著に現れます。

  • 咳嗽(せき)
  • 鼻汁
  • 咽頭痛
  • 呼吸困難(重症例)

消化器症状

患者の一部では、消化器系の症状を伴うことがあります。

症状頻度
嘔吐低い
下痢低い

重症化の兆候

新型インフルエンザにおいては、以下のような症状が現れた際、重症化している可能性が示唆されます。

  • 呼吸困難
  • 血痰
  • 意識障害
  • 高熱が持続する

新型インフルエンザの原因・感染経路

新型インフルエンザは、変異したインフルエンザウイルスに起因し、主として飛沫感染と接触感染によって拡大する感染症です。

ウイルスの変異に伴う新しい亜型や変異株の出現が、新型インフルエンザのパンデミック発生に関与する重大な要因となっています。

原因ウイルス

新型インフルエンザの原因となるのは、インフルエンザAウイルスの新しい亜型や変異株です。

ウイルス型新型インフルエンザの原因となる可能性
インフルエンザAウイルス高い
インフルエンザBウイルス低い

ウイルスの変異

インフルエンザウイルスは、抗原変異を起こしやすい特徴があります。

この変異により、ヒトの免疫では認識されにくくなった新しいウイルスが出現し、新型インフルエンザが発生します。

飛沫感染

新型インフルエンザは、主に感染者の咳やくしゃみに含まれるウイルスを含む飛沫を吸入することで感染します。

  • 感染者との近距離での会話
  • 感染者と同じ空間での長時間の滞在
感染経路リスクの高さ
飛沫感染高い
接触感染中程度

接触感染

ウイルスに汚染された物品や手に触れた後、手を介して目や鼻、口の粘膜に付着することでも感染が成立します。

診察(検査)と診断

新型インフルエンザの診察では、臨床症状と流行状況から臨床診断を下し、検査によって確定診断を行います。

迅速診断キットやウイルス分離・同定、血清学的検査、PCR法などの検査を組み合わせることで、正確な診断が可能となります。

臨床診断

新型インフルエンザの臨床診断は、以下の基準に基づいて行われます。

  • 突然の高熱(38度以上)
  • 呼吸器症状(咳、鼻汁、咽頭痛など)
  • 全身症状(倦怠感、頭痛、筋肉痛など)
  • 新型インフルエンザの流行状況
臨床診断の条件必要性
臨床症状必須
流行状況の考慮重要

検査による確定診断

臨床診断に加えて、以下の検査を行うことで確定診断が可能です。

  • 迅速診断キット
  • ウイルス分離・同定
  • 血清学的検査(ペア血清での抗体価の上昇)
  • PCR法
検査方法結果判明までの時間
迅速診断キット10~30分
ウイルス分離・同定数日~1週間

検体採取

検査のために、以下の検体を採取します。

  • 鼻咽頭拭い液
  • 鼻腔吸引液
  • 咽頭拭い液
  • 血液(血清学的検査用)

診断のタイミング

新型インフルエンザが疑われる際は、早期の診断が肝要です。 発症から48時間以内に診断し、治療を開始することが望ましいとされています。

新型インフルエンザの治療法と処方薬

新型インフルエンザの治療では、抗インフルエンザ薬の早期投与が重要であり、合併症の予防と対症療法を適切に行うことが求められます。

また、重症化リスクの高い患者においては、入院治療も検討する必要があります。

抗インフルエンザ薬

新型インフルエンザの治療に用いられる主な抗インフルエンザ薬は以下の通りです。

  • オセルタミビル(タミフル)
  • ザナミビル(リレンザ)
  • ペラミビル(ラピアクタ)
  • バロキサビル(ゾフルーザ)
薬剤名投与経路
オセルタミビル経口
ザナミビル吸入

投与のタイミング

抗インフルエンザ薬は、発症から48時間以内に投与開始することが望ましいとされています。

早期の投与開始により、症状の軽減と罹病期間の短縮が期待できます。

投与開始時期効果
48時間以内高い
48時間以降限定的

合併症の予防と治療

新型インフルエンザでは、肺炎などの合併症を予防するために、必要に応じて抗菌薬が投与されます。

また、合併症が発生した際は、適切な治療を施すことが肝要です。

対症療法

新型インフルエンザの症状に対しては、以下のような対症療法が行われます。

  • 解熱鎮痛薬の投与
  • 十分な休養と水分補給
  • 咳嗽に対する鎮咳薬の投与

治療に必要な期間と予後について

新型インフルエンザの治療期間は患者の状態によって異なりますが、多くの場合、適切な治療を行うことで1週間程度で回復に至ります。

ただし、重症化した際や合併症を伴う際は、治療期間が長引く可能性が示唆されています。

一般的な経過

新型インフルエンザに感染した場合、以下のような経過をたどることが多いです。

期間経過
発症から2~3日症状のピーク
発症から5~7日症状の改善

抗インフルエンザ薬の効果

抗インフルエンザ薬を早期に投与することで、以下のような効果が期待できます。

  • 症状の軽減
  • 罹病期間の短縮
  • 合併症の予防
投与開始時期効果
48時間以内高い
48時間以降限定的

重症化リスク

以下のような要因がある患者では、重症化のリスクが高くなります。

  • 高齢者
  • 基礎疾患を有する患者
  • 妊婦
  • 乳幼児

重症化した場合、治療期間が長期化し、予後不良となる可能性が危惧されます。

後遺症

新型インフルエンザでは、以下のような後遺症が報告されています。

  • 脳症
  • 心筋炎
  • 急性呼吸窮迫症候群(ARDS)

新型インフルエンザの治療における副作用やリスク

新型インフルエンザの治療に用いられる抗インフルエンザ薬は、一般的に安全性が高いと言われていますが、副作用やリスクが全くないというわけではありません。

抗インフルエンザ薬の副作用

抗インフルエンザ薬の主な副作用は以下の通りです。

  • 消化器症状(悪心、嘔吐、下痢など)
  • 精神神経症状(異常行動、意識障害など)
  • アレルギー反応(発疹、掻痒感など)
薬剤名主な副作用
オセルタミビル消化器症状、精神神経症状
ザナミビル消化器症状、アレルギー反応

異常行動のリスク

オセルタミビル(タミフル)については、特に10代の患者で異常行動のリスクが報告されています。

年齢層異常行動のリスク
10代高い
その他の年齢層比較的低い

合併症のリスク

新型インフルエンザの治療において、以下のような合併症のリスクがあります。

  • 二次性細菌感染症
  • ウイルス性肺炎
  • 脳症
  • 心筋炎

重症化リスクの高い患者では、これらの合併症の発生に注意が必要不可欠です。

薬剤耐性ウイルスの出現

抗インフルエンザ薬の不適切な使用により、薬剤耐性ウイルスが出現する可能性が示唆されています。

耐性ウイルスの出現は、治療効果の低下につながるため、注意が求められます。

予防方法

新型インフルエンザの予防には、ワクチン接種と日常生活における感染予防対策の両方が必要不可欠です。

一人ひとりが予防対策を徹底することで、感染拡大を防止することが可能となります。

ワクチン接種

新型インフルエンザに対するワクチン接種は、感染予防と重症化予防に有効です。

ワクチンの種類接種対象
不活化ワクチン全年齢
生ワクチン2歳以上

感染予防対策

日常生活における感染予防対策として、以下のような取り組みが推奨されています。

  • 手洗いとアルコールによる手指消毒
  • マスクの着用
  • 人混みを避ける
  • 十分な睡眠と栄養バランスのとれた食事
予防対策効果
手洗い・手指消毒高い
マスクの着用中程度

咳エチケット

感染拡大を防ぐために、咳エチケットを実践することが大切です。

  • 咳やくしゃみをする際は、ティッシュペーパーで口と鼻を覆う
  • 使用したティッシュペーパーはすぐにゴミ箱に捨てる
  • 咳やくしゃみ後は、手洗いまたは手指消毒を行う

高リスク者への対応

高齢者や基礎疾患を有する人など、重症化リスクの高い人への感染予防対策は特に重要です。

  • 不要不急の外出を控える
  • 定期的なワクチン接種
  • 体調管理と早期受診

治療費について

治療費についての留意点

実際の治療費(医療費)が以下説明より高額になるケースが多々ございます。以下記載内容について当院では一切の責任を負いかねます事を予めご了承下さい。

新型インフルエンザの治療費は高額になりやすい傾向にありますが、公的医療保険の適用により、自己負担額を抑えることが可能です。

ただし、重症化や合併症の発症により、入院治療が必要となった場合は、高額な医療費が発生する可能性があります。

診察・検査費用

新型インフルエンザの診断には、以下のような費用がかかります。

  • 初診料
  • 再診料
  • インフルエンザ検査費用(迅速検査、PCR検査など)
検査方法費用
迅速検査3,000円~5,000円
PCR検査10,000円~20,000円

投薬費用

新型インフルエンザの治療に用いられる抗インフルエンザ薬の費用は、以下の通りです。

薬剤名費用
オセルタミビル(タミフル)5,000円~8,000円
ザナミビル(リレンザ)5,000円~8,000円

以上

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