外陰膣炎 – 感染症

外陰膣炎(vulvovaginitis)とは、外陰部と膣に炎症が起こる状態です。

外陰膣炎の主な原因は、細菌や真菌、ウイルスなどの病原体による感染、またはアレルギー反応、ホルモンバランスの乱れなどです。

典型的な症状には、かゆみや発赤、腫れ、異常な分泌物、排尿時の痛みなどがあります。

この記事を書いた人
丸岡 悠(まるおか ゆう)
丸岡 悠(まるおか ゆう)
外科医

1988年山形県酒田市生まれ。酒田南高校卒業後、獨協医科大学(栃木)にて医師免許取得。沖縄県立北部病院、独立行政法人日本海総合病院を経て現職(医療法人丸岡医院)。

外陰膣炎の種類(病型)

外陰膣炎には細菌性膣症、カンジダ膣炎、トリコモナス膣炎、非特異的膣炎、萎縮性膣炎という5つの主な種類があります。

細菌性膣症

細菌性膣症は、膣内の正常な細菌叢のバランスが乱れることで生じる炎症で、外陰膣炎の中でも最も一般的なものの一つです。

通常存在する乳酸菌の数が減少し、嫌気性菌が過剰に増殖することで引き起こされます。

カンジダ膣炎

カンジダ膣炎は、カンジダ属の真菌、特にカンジダ・アルビカンスによって引き起こされる炎症です。

膣内の環境変化や免疫機能の低下によって発症し、再発しやすい特徴を持っています。

種類主な原因
細菌性膣症膣内細菌叢のバランス崩壊
カンジダ膣炎カンジダ属真菌の増殖

トリコモナス膣炎

トリコモナス膣炎は、トリコモナス・バギナリスという原虫によるもので、性行為によって感染することが多く、パートナーの同時治療が必要です。

トリコモナス膣炎は他の性感染症のリスクを高める可能性があるため、早期発見と対応が求められます。

非特異的膣炎

非特異的膣炎は、特定の病原体が同定されない炎症状態のことです。

この種類の外陰膣炎は、さまざまな要因が複合的に作用して発症します。

非特異的膣炎の診断は他の種類の外陰膣炎を除外することで行われることが多く、個別の状況に応じた対応が必要です。

萎縮性膣炎

萎縮性膣炎は、主に閉経後の女性に見られる炎症状態です。

エストロゲンの減少によって膣粘膜が薄くなり、炎症を起こしやすくなることで発生します。

萎縮性膣炎は長期的な影響を与える可能性があるため、定期的な検診が必要です。

種類特徴
トリコモナス膣炎性感染症の一種
非特異的膣炎特定の病原体が不明
萎縮性膣炎主に閉経後に発症

外陰膣炎の主な症状

外陰膣炎は、種類に応じてさまざまな特徴的な症状を引き起こします。

細菌性膣症の症状

細菌性膣症の主な症状

  • 灰白色や薄黄色の水っぽい分泌物が増える
  • 魚臭さを伴う不快な臭いがする(特に性行為後に強くなる傾向がある)
  • 軽い痒みや不快感を感じる

症状には個人差があり、全く症状が出ない方もいます。

カンジダ膣炎の症状

カンジダ膣炎の特徴的な症状

症状特徴
分泌物白色で粘り気が強く、カッテージチーズのような状態
痒み外陰部がひどく痒くなる
発赤・腫脹外陰部や膣が赤くなったり、腫れたりする
排尿時の痛みおしっこが外陰部に触れると痛みを感じる

こうした症状は、月経の前や抗生物質を使用した後に悪化することが多いです。

トリコモナス膣炎の症状

トリコモナス膣炎の症状

  • 泡状の黄緑色の分泌物が出る(最も特徴的な症状)
  • 強い悪臭のする分泌物が出る
  • 外陰部に痒みや灼けるような感覚がある
  • 排尿する時に痛みを感じたり、頻繁に排尿したくなる
  • 性行為の際に痛みを感じる

これらの症状は、月経中や月経の後に悪化することがあります。

非特異的膣炎の症状

非特異的膣炎の症状

症状特徴
分泌物量が増え、色や臭いは様々
不快感軽い痒みや灼けるような感覚
発赤外陰部や膣が少し赤くなる

これらの症状は、他の種類の膣炎と比べると軽いことが多いです。

萎縮性膣炎の症状

萎縮性膣炎の主な症状

  • 膣が乾燥している感覚がある
  • 性行為の際に痛みを感じる
  • 排尿時に痛みを感じたり、頻繁に排尿したくなる
  • 出血する(特に性行為の後に起こりやすい)
  • 尿路感染症を繰り返し起こす

これらの症状は、閉経を迎えた女性に多く見られますが、他の理由でエストロゲンが低下した際にも起こることがあります。

外陰膣炎の原因・感染経路

外陰膣炎の発症の要因は大きく分けて、微生物による感染、非感染性の刺激、そしてホルモンバランスの変化です。

微生物による感染

微生物による感染は、外陰膣炎の最も代表的な原因の一つです。

細菌、真菌、ウイルス、原虫などの病原体が膣内の環境バランスを乱すことで炎症が起きます。

これらの微生物は、通常は膣内に存在する常在菌によって抑えられていますが、何らかの理由でバランスが崩れると増殖します。

病原体代表的な種類
細菌ガードネレラ・バギナリス
真菌カンジダ・アルビカンス
原虫トリコモナス・バギナリス

非感染性の刺激による炎症

外陰膣炎は、必ずしも感染症のみが原因ではありません。

化学物質やアレルゲンなどの外的刺激も、外陰部や膣の粘膜を刺激し、炎症を引き起こす場合があります。

非感染性の刺激は、強力な洗剤、香料入りの衛生用品、締め付けの強い下着、特定の薬剤などです。

ホルモンバランスの変化

ホルモンバランスの変化も、外陰膣炎の重要な原因の一つです。

女性のライフステージに応じて、エストロゲンなどの性ホルモンレベルが変動することで、膣内環境が変化し、炎症が生じやすくなることがあります。

リスクが高いのは、エストロゲンの減少により膣粘膜が薄くなる、閉経期や閉経後の女性です。

ライフステージホルモン変化
思春期エストロゲン増加
妊娠期プロゲステロン増加
閉経期エストロゲン減少

外陰膣炎の感染経路

外陰膣炎の感染経路は、原因となる病原体によって異なります。

主な感染経路

  • 性行為による感染
  • 不適切な衛生習慣
  • 抗生物質の過剰使用
  • 免疫機能の低下
  • 膣内環境の変化

外陰膣炎のリスク要因

外陰膣炎の発症リスクを高める要因は、頻繁な性交渉、糖尿病、ストレス、不適切な衛生習慣、免疫系の疾患、特定の薬剤の使用などです。

また、妊娠中や閉経期などのホルモンバランスが大きく変化する時期も、外陰膣炎のリスクが高まる可能性があります。

診察(検査)と診断

外陰膣炎を正確に診断するには、問診と検査を組み合わせます。

問診の重要性

問診での質問内容は、症状の種類と程度(分泌物の特徴、痒み、痛み)、どのくらい続いているか、月経周期や妊娠の状況、薬の使用歴(抗生物質や避妊薬)、過去の病歴や現在抱えている病気などです。

これらの情報は、診断の方向性を定めるうえで重要な役割があります。

外陰部の視診と触診

問診の後、視診と触診を行います。

観察項目チェックポイント
発赤炎症の程度
腫脹炎症の広がり
分泌物色、量、性状
潰瘍有無と特徴

膣鏡診

膣鏡を使った診察では、膣壁や子宮頸部の状態を直接観察します。

この検査では、膣壁の炎症や発赤の程度、分泌物の特徴(色、量、粘り気)、異常な出血がないか、子宮頸部の状態はどうかといった点に注目します。

微生物学的検査

診断の精度を高めるために実施されるのが、微生物学的検査です。

膣分泌物の顕微鏡検査では細菌、真菌、原虫の有無を直接確認し、培養検査では病原体の特定と薬剤感受性を調べ、また、PCR検査では特定の病原体の遺伝子を検出します。

その他の補助的検査

状況に応じて、補助的検査も行われることがあります。

検査名目的
pH測定膣内環境の評価
KOH試験カンジダ菌の確認
ホルモン検査萎縮性膣炎の可能性評価
血液検査全身状態や炎症の程度の評価

これらの検査は、診断の確実性を高め、他の病気との見分けに役立ちます。

外陰膣炎の治療法と処方薬、治療期間

外陰膣炎の治療は、原因となる病原体や要因に基づいて選ばれ、多くの場合、薬による治療と日常生活の見直しを組み合わせて行われます。

薬物療法による治療

外陰膣炎の治療において使用される薬は、主に抗菌薬、抗真菌薬、抗原虫薬です。

これらの薬は、飲み薬や塗り薬など、症状の程度や原因に応じて使い方が選ばれます。

病原体主な処方薬
細菌メトロニダゾール
真菌フルコナゾール
原虫メトロニダゾール

局所療法

局所療法は、外陰膣炎の症状を直接的にやわらげるために用いられます。

クリームや軟膏、膣に入れる薬などの局所用薬を使用することで、炎症や痛みを軽くし、病原体の増殖を抑えることが可能です。

生活習慣の改善

外陰膣炎の治療において、生活習慣の改善は薬による治療と同じくらい大切です。

衛生管理、刺激の少ない下着の選択、ストレスへの対処などの日常生活の見直しは、症状をやわらげ、再び発症するのを防ぐのに役立ちます。

生活習慣改善項目効果
衛生管理病原体の繁殖抑制
通気性の良い下着湿度管理による症状緩和
ストレス管理免疫機能の維持

治療期間と経過観察

外陰膣炎の治療期間の一般的な目安

  • 細菌性膣症:7-14日間の抗生物質治療
  • カンジダ膣炎:1-3日間の抗真菌薬治療
  • トリコモナス膣炎:5-7日間の抗原虫薬治療
  • 非特異的膣炎:原因に応じて1-2週間の治療
  • 萎縮性膣炎:長期的なホルモン補充療法が必要な場合あり

治療を始めた後は、症状がよくなっているか注意深く観察し、必要があれば治療法を調整します。

予後と再発可能性および予防

外陰膣炎からの回復見込みはおおむね良好ですが、再び発症する可能性があるため、予防策を継続的に実施することが欠かせません。

外陰膣炎の予後

外陰膣炎の症状は、通常数日から数週間で良くなりますが、完全に治るまでの期間は、外陰膣炎の種類や個人の体調によって差があります。

外陰膣炎の種類一般的な回復期間
細菌性膣症2-3日
カンジダ膣炎1-2週間
トリコモナス膣炎1週間

再発のリスク

外陰膣炎は再び発症するリスクが比較的高いです。

再発の頻度は外陰膣炎の種類によって異なります。

  • 細菌性膣症:約半数の女性が3-12ヶ月以内に再発
  • カンジダ膣炎:約75%の女性が生涯に少なくとも1回は再発
  • トリコモナス膣炎:治療を受けた場合の再発率は比較的低い

再発を防ぐための生活習慣

外陰膣炎の再発を防ぐには、日々の生活での心がけが大切です。

再発予防に効果的な生活習慣

  • 清潔な綿の下着を身につける
  • 体にぴったりとした服や濡れた水着を長時間着ない
  • トイレの後は前から後ろに拭く
  • 必要以上に膣を洗わない

予防のための健康管理

外陰膣炎の予防には、体全体の健康管理も大切です。

健康管理の項目具体的な方法
免疫力の維持バランスの良い食事、十分な睡眠
ストレス管理適度な運動、リラックス法の実践
糖尿病のコントロール定期的な血糖値チェック、食事管理

パートナーとの協力

外陰膣炎の中には、性行為を通じて移るものもあるため、パートナーと協力して予防することが重要です。

  • コンドームを使う
  • パートナーも同時に治療を受ける(医師の指示に従う)
  • 症状がある時は性行為を控える

外陰膣炎の治療における副作用やリスク

外陰膣炎の治療にはさまざまな副作用やリスクが付きものです。

薬物療法に伴う副作用

外陰膣炎の治療で使われる薬によく見られる副作用は、胃腸の不快感、頭痛、めまい、皮膚の反応などです。

抗生物質や抗真菌薬を使うと、体の中にいる良い菌にも影響を与えてしまい、新たな感染症にかかりやすくなることがあります。

薬剤主な副作用
抗生物質胃腸の不快感、アレルギー反応
抗真菌薬肝臓への負担、頭痛

局所療法のリスク

局所で使うクリームや軟膏、膣に入れる薬なども、ある程度のリスクがあります。

使った部分に刺激や炎症を引き起こすことがあり、特に肌が敏感な人は注意が必要です。

また、一部の局所で使う薬は、コンドームやペッサリーなどの避妊具の効き目を弱めてしまう可能性があるので、十分に気をつけてください。

ホルモン療法のリスク

萎縮性膣炎の治療などで使われるホルモン療法には、特有のリスクがあります。

エストロゲンを使うと、乳がんや子宮内膜がんになるリスクが高くなる可能性があるので、使う前に十分な検討が必要です。

また、ホルモン療法は血液が固まりやすくなるリスクも高めるので、特にタバコを吸う人や太っている方は注意してください。

ホルモン療法主なリスク
エストロゲン乳がん、子宮内膜がん
複合ホルモン血液が固まりやすくなる、心臓や血管の病気

耐性菌の出現リスク

抗生物質を正しく使わなかったり、長い間使い続けたりすると、薬が効かない菌(耐性菌)が出てくるリスクが高まります。

耐性菌ができると、今後、病気を治すのが難しくなる可能性があり、社会全体の健康にとっても大きな問題です。

アレルギー反応のリスク

外陰膣炎の治療に使う薬で、アレルギー反応が起きることがあります。

アレルギー反応の症状

  • 皮膚が赤くなったり、発疹が出たりする
  • かゆくなる
  • 息が苦しくなる
  • 顔や喉が腫れる
  • アナフィラキシーショック(重い場合)

相互作用のリスク

外陰膣炎の治療薬は、特に、飲む避妊薬や血液をサラサラにする薬との相互作用には気をつける必要があります。

相互作用により、薬の効き目が弱くなったり、副作用のリスクが高くなったりすることがあるので、今飲んでいる薬を全て医師に伝えることが大切です。

治療費について

治療費についての留意点

実際の治療費(医療費)が以下説明より高額になるケースが多々ございます。以下記載内容について当院では一切の責任を負いかねます事を予めご了承下さい。

外陰膣炎は、一般的に外来診療で対応可能な場合が多く、比較的低コストです。

初診料と再診料

初診料は2,000~3,000円程度、再診料は600~700円程度です。

検査費用

検査項目費用
膣分泌物顕微鏡検査500~1,000円
培養検査1,000~2,000円

処置費用

外陰部の洗浄や軟膏塗布などの処置費用は500~1,000円程度です。

薬剤費

抗真菌薬や抗生物質の費用は1,000~3,000円程度です。

以上

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