潜在性二分脊椎(にぶんせきつい)(spina bifida occulta)は、胎児期の脊椎形成過程において、背骨の一部が完全に閉じずに小さな隙間が残ってしまう先天性の脊椎異常です。
多くの患者さんで無症状か軽度の症状にとどまり、日々の生活に大きな影響を及ぼすことはあまりありません。
ただし、患者さんによっては、腰部の痛みや下肢のしびれ感、排尿に関する問題などの症状が現れることがあります。
潜在性二分脊椎の主な症状
脳・神経疾患の一種である潜在性二分脊椎は、多くの場合無症状ですが、一部の患者さんでは神経学的症状や身体的問題が現れます。
神経学的症状
潜在性二分脊椎の神経学的症状は、脊髄や神経根(脊髄から分岐する神経)の圧迫によって起きます。
症状 | 特徴 |
下肢の痛み | 神経根の圧迫による持続的または間欠的な痛み |
感覚異常 | 下肢のしびれや知覚鈍麻(感覚が鈍くなること) |
筋力低下 | 下肢の筋力が低下し、歩行困難や転倒リスクが増加 |
排尿・排便障害
潜在性二分脊椎の患者さんでは、脊髄の機能障害によって、排尿・排便に関する問題が生じます。
- 尿失禁
- 頻尿
- 尿閉(尿が出にくくなる)
- 便秘
- 便失禁
整形外科的症状
潜在性二分脊椎では脊椎や下肢の変形など、整形外科的な症状が現れ、神経学的な問題と関連していることが多いです。
症状 | 説明 |
脊柱側弯症 | 脊椎が横方向に異常に湾曲する変形 |
足の変形 | 内反足(足の内側が曲がる)や外反足(足の外側が曲がる)など |
下肢の長さの差 | 片方の脚が他方より短くなる症状 |
皮膚症状
潜在性二分脊椎の患者さんでは、腰背部の皮膚に特徴的な変化が見られます。
皮膚症状は、潜在性二分脊椎の存在を示唆する重要な手がかりです。
皮膚症状 | 特徴 |
脂肪腫 | 腰背部に見られる軟らかい腫瘤状の組織 |
色素斑 | 皮膚の一部に見られる色素沈着 |
多毛 | 腰背部に見られる過剰な体毛 |
潜在性二分脊椎の原因
潜在性二分脊椎は、胎児期における脊椎の形成過程での異常が原因です。
遺伝的要因と環境因子
潜在性二分脊椎の発症には、遺伝的な背景と周囲の環境要因が絡み合っており、単一の原因ではなく多角的な要素が影響しています。
胎児の発達初期段階において、将来脳と脊髄になる神経管と呼ばれる構造が形成されていきます。
従来、神経管は妊娠4週目までに完全に閉じるのですが、この過程に支障が生じると、脊椎の一部が閉じきらずに小さな隙間が残るのです。
遺伝子変異の影響
様々な遺伝子の変異が潜在性二分脊椎の発症に関与していて、特に注目されているのが、体内での葉酸の代謝に関わる遺伝子の変異です。
遺伝子 | 機能 |
MTHFR | 葉酸の代謝を制御 |
VANGL1 | 細胞の極性(方向性)を制御 |
CELSR1 | 細胞同士の接着を調整 |
環境要因がもたらす影響
妊娠初期における母体の栄養状態や生活環境が、胎児の脊椎形成に大きな影響を与えることが分かっています。
発症リスクを高める環境要因
- 葉酸の摂取不足
- 妊娠中の高熱状態
- 糖尿病の合併
- 肥満
- 特定の薬物の摂取
葉酸摂取の重要性
葉酸は、神経管が正常に閉じるために欠かせないビタミンB群の一種で、十分な摂取が極めて重要です。
妊娠前や妊娠初期に十分な葉酸を摂取できていないと、潜在性二分脊椎を含む神経管閉鎖障害のリスクが高まります。
食品名 | 葉酸含有量(100g当たり) |
ほうれん草 | 210μg(マイクログラム) |
ブロッコリー | 110μg(マイクログラム) |
レバー | 200μg(マイクログラム) |
その他の影響要因
高齢での出産や、てんかんの治療に用いられる特定の薬物の使用、妊娠初期に高熱を発症することも、神経管閉鎖障害のリスクを上昇させる要因です。
要因 | リスク上昇の程度 |
高齢出産 | 中程度 |
抗てんかん薬の使用 | 中程度から高度 |
診察(検査)と診断
潜在性二分脊椎の診断は問診から始まり、身体の診察、画像技術を用いた検査を組み合わせて行われます。
初期評価
潜在性二分脊椎の診断では、患者さんのこれまでの病歴や、ご家族の方の病歴についても質問し、潜在性二分脊椎に関連する可能性のある兆候や症状がないかを確認していきます。
身体診察では、背骨の形や皮膚の状態を入念に観察します。
特に腰と仙骨(せんこつ)の周辺の皮膚に、普通ではない毛髪の生え方や凹み、色素が沈着しているところがないかを確認することが大切です。
神経学的検査
神経学的検査は、潜在性二分脊椎を正確に診断する上で欠かせません。
- 筋力を測定するテスト
- 体の感覚を確認する検査
- 体の反射を見るテスト
- 歩き方のパターンを注意深く観察
- 膀胱の働きを評価
画像診断
潜在性二分脊椎を確実に診断するためには、画像診断が必要です。
検査方法 | 特徴と役割 |
X線検査 | 骨の形や構造の異常を確認 |
MRI | 脊髄や神経、周囲の軟らかい組織を詳しく観察 |
CT | 骨の構造を立体的に詳細に画像化 |
X線検査は、脊椎の骨の構造に異常がないかを目で見て確認するのに役立ちます。
MRIは、脊髄や神経の根っこ、そしてその周りの軟らかい組織を詳しく観察することができ、潜在性二分脊椎を診断する上で最も役立つ検査方法です。
CTは、骨の構造を立体的な画像として表示することができ、複雑な症状を示す患者さんの状態を評価する際に役立ちます。
類似疾患との鑑別
潜在性二分脊椎の診断を進める過程では、似たような症状を示す他の疾患との鑑別が大切です。
脊髄係留症候群や脊髄空洞症など、神経系に関連する他の異常について評価します。
鑑別すべき疾患 | 特徴 |
脊髄係留症候群 | 脊髄が異常に引っ張られた状態 |
脊髄空洞症 | 脊髄内に異常な空洞ができる病気 |
潜在性二分脊椎の治療法と処方薬、治療期間
潜在性二分脊椎の治療方法は、症状を和らげる保存的な方法や手術を行う外科的な方法があります。
保存的治療
多くの潜在性二分脊椎の患者さんは症状がないか、あっても軽い症状しか示さないため、まずは手術をせずに症状を和らげる保存的治療が第一の選択肢です。
保存的治療の方法
- 理学療法
- 運動療法姿勢矯正 生活習慣の見直し
- 痛みのコントロール
薬剤治療の役割
薬による治療は、潜在性二分脊椎に伴うさまざまな症状をコントロールします。
薬の種類 | 効果 |
痛み止め | 痛みを和らげる |
筋肉の緊張をほぐす薬 | 筋肉の張りを和らげる |
けいれんを抑える薬 | 神経の異常な興奮を抑える |
痛み止めは、腰の痛みや足の痛みを和らげるために使用され、筋肉の緊張をほぐす薬は、筋肉の張りを和らげ、体を動かしやすくする効果があります。
一部の患者さんでは、神経の症状をコントロールするために、けいれんを抑える薬が処方されることも。
手術治療の必要性
症状が重いかったり、保存的な治療では十分な効果が得られない場合には、手術による治療が検討されます。
手術による治療の目的は、神経への圧迫を取り除き、脊髄の働きを改善することです。
手術の方法 | 適応 |
椎弓切除術(ついきゅうせつじょじゅつ) | 脊柱管が狭くなっている場合 |
脊髄係留解除術(せきずいけいていかいじょじゅつ) | 脊髄が引っ張られている状態を解消する場合 |
脂肪腫摘出術 | 脊髄を圧迫している脂肪のかたまりを取り除く場合 |
どの手術方法を選ぶかは、患者さんの状態や画像検査の結果を検討して決められます。
リハビリテーション
手術を受けた後のリハビリテーションは、体の機能を回復させ、普段の生活に戻るために欠かせません。
リハビリテーションの内容
- 筋肉を強くする訓練
- 歩き方を改善する練習
- バランスを取る練習
- 日常生活でのさまざまな動作の練習
リハビリテーション期間は、数週間から数ヶ月です。
リハビリの種類 | 目的 |
筋力強化訓練 | 弱った筋肉を強くする |
歩行訓練 | 安定した歩き方を身につける |
バランス訓練 | 転倒を防ぎ、姿勢を安定させる |
潜在性二分脊椎の治療における副作用やリスク
潜在性二分脊椎の治療には手術や薬物療法があり、それぞれに特有の副作用やリスクが伴います。
手術療法のリスク
手術療法にはいくつかのリスクがあり、麻酔関連の合併症や感染症、出血などです。
リスク | 説明 |
神経損傷 | 手術中の操作による脊髄や神経根への障害 |
髄液漏 | 脊髄を包む膜の損傷による脳脊髄液の漏出 |
感染 | 手術部位の細菌感染による炎症や膿瘍の形成 |
薬物療法の副作用
潜在性二分脊椎の症状管理に用いられる薬物療法の副作用は、投与量や患者さんの体質、併用薬の有無によります。
- 消化器症状(吐き気、胃部不快感、食欲不振)
- 眠気や倦怠感
- アレルギー反応(皮疹、かゆみ、まれに重篤な症状)
- 肝機能障害(肝臓の働きが低下)
副作用は一時的なものですが、中には重篤な場合もあります。
長期的な合併症リスク
潜在性二分脊椎の治療には、長期的な合併症リスクも考慮する必要があります。
治療を受けていても、時間の経過とともに新たな問題が生じることがあり、継続的な管理が大切です。
- 脊柱変形の進行(側弯症や後弯症の悪化)
- 慢性痛の発症(神経痛や筋肉痛の持続)
- 神経機能の悪化(感覚異常や運動機能の低下)
治療費について
実際の治療費(医療費)が以下説明より高額になるケースが多々ございます。以下記載内容について当院では一切の責任を負いかねます事を予めご了承下さい。
外来診療にかかる費用
潜在性二分脊椎の多くは外来診療で管理されます。
項目 | 概算費用(3割負担) |
MRI検査 | 5,000円~10,000円 |
CT検査 | 3,000円~8,000円 |
理学療法・運動療法の費用
症状緩和のための理学療法や運動療法も大切な治療です。
治療法 | 概算費用(3割負担) |
理学療法 | 1回あたり1,500円~3,000円 |
運動療法 | 1回あたり1,000円~2,500円 |
手術治療にかかる費用
症状が重度な場合、手術治療が必要になることがあります。
- 椎弓切除術 約30万円~50万円
- 脊髄係留解除術 約40万円~70万円
- 脂肪腫摘出術 約20万円~40万円
以上
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