急性心筋炎(Acute myocarditis)とは、心臓の筋肉に炎症が起きてしまう病気を指します。
原因としてはウイルスや最近などの感染が多く、胸に痛みを感じたり、息切れや動悸といった症状があらわれるのが特徴です。
重症化した際には心不全や不整脈といった合併症を引き起こす可能性があり、最悪の場合は命に関わるリスクもあるため、できるだけ早い段階での発見と対処が重要です。
急性心筋炎の主な症状
急性心筋炎は、風邪のような症状の後に、胸痛、息切れ、動悸などの心臓に関連する症状が現れます。
感冒(かぜ)様症状
急性心筋炎は、発熱、咳、喉の痛み、鼻水、倦怠感などの風邪によく似た症状から始まる場合が多いです。
- 発熱
- 倦怠感
- 筋肉痛
- 関節痛
この後、数日~数週間を経て、胸痛、息切れ、動悸などの心臓に関連する症状が現れてきます。
消化器系の症状
心臓の機能低下が腸管の血流を減少させるため、消化器症状も引き起こします。
- 悪心・嘔吐
- 食欲不振
- 腹部膨満感
胸部の症状
急性心筋炎の代表的な症状の一つが胸部の不快感や痛みで、心臓の炎症によって引き起こります。
安静時や深呼吸時に増悪するのが特徴です。
症状 | 詳細 |
胸痛 | 心臓の炎症により生じる鈍痛や圧迫感 |
胸部不快感 | 息苦しさや胸部のもやもや感 |
循環器系の症状
心筋の炎症は心臓の機能低下を引き起こし、様々な循環器系の症状を生じさせます。
症状 | 詳細 |
動悸 | 心拍数の増加や不整脈による動悸 |
失神 | 心拍出量低下による一過性の意識消失 |
浮腫 | 心不全による体液貯留 |
急性心筋炎の原因
急性心筋炎は様々な要因によって引き起こされますが、中でも感染症やアレルギー反応の関与が大きいとされています。
ウイルス感染
急性心筋炎の最も一般的な原因はウイルス感染です。
コクサッキーウイルス、アデノウイルス、エコーウイルス、インフルエンザウイルス、ヒトヘルペスウイルス6型などのウイルスが心筋に感染し、炎症を引き起こします。
細菌感染
細菌感染によっても急性心筋炎が発症する可能性があります。
連鎖球菌、淋菌、クラミジア、マイコプラズマなどの細菌が心筋に感染し、炎症を引き起こします。
自己免疫反応
全身性エリテマトーデス、川崎病、サルコイドーシスなどの自己免疫疾患では、自己抗体や免疫複合体が心筋に沈着し、炎症を引き起こす場合があります。
自己免疫疾患名 | 発症メカニズム |
全身性エリテマトーデス | 自己抗体や免疫複合体の沈着 |
川崎病 | 冠動脈の炎症 |
薬剤性
稀ではありますが、特定の薬剤の使用によって急性心筋炎が引き起こされるケースがあります。
- ドキソルビシン
- シクロフォスファミド
- フェニトイン など
診察(検査)と診断
急性心筋炎が疑われる場合には、心電図や血液検査、画像検査などを組み合わせ診断を行っていきます。
- 心電図検査
- 血液検査(トロポニン、CK-MB、CRP、ESRなど)
- 心エコー検査
- 心臓MRI検査
心電図検査
心電図検査では、 ST上昇やT波の変化、異常Q波などの所見が見られます。
また、不整脈や伝導障害を示唆する所見も認められる場合があります。
血液検査
急性心筋炎では、心筋逸脱酵素の上昇が見られます。 特に、トロポニンやCK-MBの上昇は診断に重要な手がかりとなります。
また、炎症反応を示すCRPやESRの上昇も参考になります。
検査項目 | 意義 |
トロポニン | 心筋障害の指標 |
CK-MB | 心筋障害の指標 |
CRP | 炎症反応の指標 |
ESR | 炎症反応の指標 |
画像検査
心エコー検査では、心機能の評価や心筋の肥厚、心嚢液貯留などを検出できます。また、心臓MRI検査では心筋の浮腫や線維化、壊死などを評価します。
生検
確定診断のために心筋生検が必要となるケースもありますが、侵襲的な検査であるため、適応は慎重に判断されます。
急性心筋炎の治療法と処方薬、治療期間
急性心筋炎の治療法は、原因除去、安静、対症療法が基本となり、いかに急性期を乗り越えるかが重要です。
安静・対症療法
心臓への負担を減らすため、入院してBed rest(ベッドレスト=安静臥床のこと)が必要です。
また、症状に応じて以下のような対症療法が行われます。
症状 | 治療法 |
胸痛 | 鎮痛薬の投与 |
不整脈 | 抗不整脈薬の投与 |
心不全 | 利尿薬、血管拡張薬の投与 |
薬物療法
急性心筋炎の治療に用いられる主な薬剤は以下の通りです。
- 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs):炎症を抑え、胸痛を和らげる効果があります。
- 抗ウイルス薬:ウイルス性心筋炎の際に抗ウイルス薬が投与されることがあります。
- 免疫抑制薬:自己免疫性心筋炎の際に免疫抑制薬が使用される場合があります。
薬剤名 | 作用 |
アスピリン | 非ステロイド性抗炎症薬 |
アシクロビル | 抗ウイルス薬 |
プレドニゾロン | 免疫抑制薬 |
補助的治療
- 酸素療法:呼吸困難がある際には酸素投与が行われます。
- 機械的補助:重度の心不全がある際には、一時的に心臓の機能を補助するために大動脈内バルーンパンピング(IABP)や経皮的心肺補助装置(PCPS)が使用されることがあります。
治療期間
急性心筋炎の治療期間は症状の重症度や原因によって異なり、軽症の場合は数週間程度、重症例では数ヶ月以上の治療を要する場合もあります。
予後と再発可能性および予防
急性心筋炎の予後は、急性期を乗り越えさえすれば一般的には良好です。
ただし、重症例では心不全や不整脈などの後遺症を残す場合もあります。
急性心筋炎の予後
早期の治療開始により、心機能の回復が期待できます。
治療が遅れた場合や重症例では、心不全や致死性不整脈などの合併症を引き起こすリスクが高まります。
予後良好因子 | 予後不良因子 |
早期治療開始 | 治療開始の遅れ |
軽症例 | 重症例 |
合併症なし | 心不全、不整脈の合併 |
再発の可能性
急性心筋炎は、一度治癒しても再発する可能性があります。
再発率は10~20%程度とされており、特に発症後数年以内の再発が多いとされています。
- ウイルス感染
- ストレス
- 過労
- 飲酒、喫煙
急性心筋炎の予防
- ウイルス感染予防(手洗い、マスク着用など)
- ストレス管理
- 適度な運動と休養
- 禁煙、節酒
急性心筋炎の多くはウイルス感染が原因であるため、ウイルス感染予防が重要です。
また、生活習慣の改善により心臓への負担を軽減することも予防につながります。
急性心筋炎の治療における副作用やリスク
急性心筋炎の治療で使用する薬剤によっては、重篤な副作用が発生するリスクがあります。
抗炎症薬の副作用
アスピリンやイブプロフェンといった非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、胃腸障害や腎機能障害などの副作用を引き起こす可能性があり、特に高用量や長期間の使用では注意が必要です。
副作用 | 症状 |
胃腸障害 | 胃痛、胃潰瘍、消化管出血 |
腎機能障害 | 尿量減少、浮腫、腎不全 |
ステロイド薬も強力な抗炎症作用を発揮する一方、免疫抑制作用による感染症リスクの増大や、長期使用に伴う骨粗鬆症、糖尿病などの副作用があります。
抗ウイルス薬の副作用
アシクロビルやガンシクロビルなどの抗ウイルス薬は、腎機能障害や肝機能障害、血液障害などの副作用を引き起こすリスクがあります。
- 腎機能障害:血中クレアチニン値の上昇、尿量減少など
- 肝機能障害:AST・ALT値の上昇、黄疸など
- 血液障害:貧血、白血球減少、血小板減少など
免疫抑制薬の副作用
シクロスポリンやタクロリムスなどの免疫抑制薬は、感染症リスクの増大や腎毒性、高血圧、脂質異常症などの副作用があります。
副作用 | 症状 |
感染症リスク増大 | 日和見感染症、重症感染症 |
腎毒性 | 血中クレアチニン値上昇、尿量減少 |
高血圧 | 血圧上昇 |
脂質異常症 | コレステロール値上昇、中性脂肪値上昇 |
侵襲的治療のリスク
重症の急性心筋炎では、大動脈内バルーンパンピング(IABP)や経皮的心肺補助装置(PCPS)などの侵襲的治療が必要となる場合があります。
これらの治療は、出血、感染、血栓形成などのリスクを伴います。
治療費について
実際の治療費(医療費)が以下説明より高額になるケースが多々ございます。以下記載内容について当院では一切の責任を負いかねます事を予めご了承下さい。
急性心筋炎の治療費は、症状の重さや治療にかかる期間によって変動します。
初診料・再診料の目安
項目 | 費用 |
初診料 | 2,000円~5,000円 |
再診料 | 1,000円~3,000円 |
検査費の目安
- 心電図検査:3,000円~5,000円
- 心エコー検査:10,000円~20,000円
- 血液検査:5,000円~10,000円
- 心臓MRI検査:50,000円~100,000円
入院費
急性心筋炎の治療のために入院が必要になると、入院費が発生します。入院費は1日あたり10,000円から30,000円程度が一般的です。
入院期間は症状の重さによって違いますが、通常は2週間から4週間程度です。
項目 | 費用 |
入院費(1日あたり) | 10,000円~30,000円 |
入院期間 | 2週間~4週間 |
以上
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