猩紅熱(しょうこうねつ)(scarlet fever)とは、A群溶血性連鎖球菌が原因となって引き起こされる急性の感染症のことです。
主に5歳から15歳までの小児に多く見られ、38度以上の高熱や咽頭痛、頸部リンパ節の腫れなどの症状とともに、体全体に広がる紅色の発疹が現れます。
この発疹は温かみを帯びており、ざらざらとした手触りが特徴的で、また、舌が赤く腫れ上がる「いちご舌」と呼ばれる所見も見られることがあります。
急性糸球体腎炎やリウマチ熱などの合併症を引き起こす危険性もあるため、早期の発見と迅速な対応が必要です。
猩紅熱(しょうこうねつ)の主な症状
猩紅熱は、高熱や喉の痛み、特徴的な発疹など、多彩な症状を引き起こす感染症です。
典型的な猩紅熱の症状
典型的な猩紅熱では、38度以上の高熱と咽頭痛が突然出現し、数日間持続すると同時に、舌は白苔に覆われ、いちご舌と呼ばれる赤く腫れた状態になります。
発症から1~2日後には、全身に発疹が現れます。
症状 | 特徴 |
発熱 | 38度以上の高熱が突然出現 |
咽頭痛 | 強い痛みを伴う |
舌苔 | 舌が白苔に覆われる |
いちご舌 | 舌が赤く腫れた状態 |
特徴的な発疹
猩紅熱の発疹は、全身に広がる鮮紅色の小丘疹が特徴です。
発疹は温かく、ざらざらとした手触りで、擦ると色が濃くなり、体の襞の部分では、線状の発赤(パスチア線条)がみられることもあります。
発疹は数日から1週間程度で消え、その後、皮膚の落屑が生じます。
発疹の特徴 | 詳細 |
色調 | 鮮紅色 |
形態 | 小丘疹 |
手触り | 温かく、ざらざらとした感触 |
経過 | 数日から1週間程度で消退し、落屑を伴う |
非典型的な猩紅熱の症状
一方で、非典型的な猩紅熱の場合は、症状が軽度であったり、発疹が目立たなかったりすることがあります。
発熱や咽頭痛が軽微で済むこともあれば、発疹が局所的で色調が淡いといったケースも見られます。
非典型例では、猩紅熱の診断が遅れ、治療が行われないリスクがあるため注意が必要です。
その他の症状
猩紅熱で現れる全身症状
- 頭痛
- 倦怠感
- 食欲不振
- 嘔吐
- 腹痛
- リンパ節腫脹
これらの症状は、人によって大きく異なり、その程度もさまざまです。
特に小児の場合は、症状が非特異的であるために、診断が難しいことも少なくありません。
猩紅熱(しょうこうねつ)の原因・感染経路
猩紅熱は、A群溶血性レンサ球菌による感染が原因で発症し、主に飛沫感染や接触感染によって伝播します。
猩紅熱の原因菌
猩紅熱の原因菌であるA群溶血性レンサ球菌は、グラム陽性の球菌です。
ヒトの上気道や皮膚に常在しており、このうち、特定の菌株が産生する外毒素が猩紅熱の発症に関与しています。
原因菌 | 特徴 |
A群溶血性レンサ球菌 | グラム陽性の球菌 |
特定の菌株が産生する外毒素が関与 | 発熱、咽頭痛、舌苔、特徴的な発疹を引き起こす |
A群溶血性レンサ球菌は、健康な人の咽頭にも存在することがあり、何らかの理由で菌が増殖し、外毒素を産生すると、猩紅熱を発症します。
猩紅熱の感染経路
猩紅熱の感染経路経路
- 飛沫感染:咳やくしゃみなどによる飛沫を吸入することで感染
- 接触感染:患者さんの咽頭分泌物や皮膚の傷から菌が侵入し感染
学校や保育施設など、集団生活を送る場では、感染が拡大しやすく、また、猩紅熱は家族内感染を起こすこともあります。
感染経路 | 感染源 |
飛沫感染 | 咳やくしゃみなどによる飛沫 |
接触感染 | 患者の咽頭分泌物や皮膚の傷 |
猩紅熱の患者さんは、発症前数日から発症後数週間までが感染力を持つ期間です。
この期間中は、他者への感染リスクが高いため、感染対策を講じる必要があります。
診察(検査)と診断
猩紅熱の正確な診断を下すためには、患者さんの臨床症状や身体所見、各種検査結果を総合的に評価し、判断することが何より大切です。
臨床症状と身体所見
猩紅熱が疑われるケースでは、高熱、喉の痛み、舌の白苔、特徴的な発疹などの有無をチェックします。
発疹は、全身に広がる鮮紅色の小さな丘疹で、ざらざらとした手触りが特徴的です。
また、いちご舌と呼ばれる舌の発赤も重要な手がかりになります。
臨床症状 | 身体所見 |
発熱 | 特徴的な発疹 |
咽頭痛 | いちご舌 |
舌苔 | リンパ節腫脹 |
迅速診断キット
迅速診断キットは、喉の奥から採取した分泌物を用いてA群溶血性連鎖球菌の抗原を検出する検査法の一つです。
感度・特異度ともに高く、短時間で結果が得られるため、外来診療では広く活用されています。
ただし、偽陰性・偽陽性の可能性もゼロではないため、結果の解釈には細心の注意が必要です。
培養検査
A群溶血性連鎖球菌の分離・同定を行うには、培養検査が欠かせません。
喉の分泌物を血液寒天培地に植え付けて、β溶血を示すコロニーが存在するかどうかを確認します。
さらに、生化学的性状やラテックス凝集反応などを用いて、菌の群別を行います。
培養検査は感度・特異度ともに高く、確定診断には非常に有用ですが、結果が出るまでには一定の時間がかかります。
検査法 | 特徴 |
培養検査 | 感度・特異度が高い |
ラテックス凝集反応 | 群別に用いる |
血清学的検査
血清学的検査は、A群溶血性連鎖球菌感染に伴う抗体価の上昇を測定する検査法の一種です。
ASO価やADNase B価などの抗体価を測定し、急性期と回復期の2回の血液検査で有意な上昇が見られるかどうかを確認します。
ただし、抗体価が上がるまでには時間がかかるため、急性期の診断には適していません。
主に、猩紅熱の合併症であるリウマチ熱や急性糸球体腎炎の診断に用いられるのが一般的です。
猩紅熱の診断に用いられる方法
- 臨床症状と身体所見の評価
- 迅速診断キットによるスクリーニング
- 培養検査による確定診断
- 血清学的検査による合併症の評価
猩紅熱(しょうこうねつ)の治療法と処方薬、治療期間
猩紅熱の治療は、主に抗菌薬の投与によって行われ、通常は10日間程度の治療期間を要します。
猩紅熱の治療の基本
猩紅熱の治療の中心は、原因菌であるA群溶血性レンサ球菌に対する抗菌薬の投与です。
早期に抗菌薬治療を開始することで、症状の改善と合併症の予防が可能となります。
治療法 | 内容 |
抗菌薬療法 | ペニシリン系、セフェム系、マクロライド系などの抗菌薬を使用 |
対症療法 | 解熱鎮痛薬、うがい薬などを使用し、症状を緩和 |
抗菌薬の選択は、患者さんの年齢、重症度、アレルギー歴などを考慮して行われます。
ペニシリン系抗菌薬が第一選択とされますが、アレルギーがある場合はセフェム系やマクロライド系の抗菌薬が使用されます。
処方される抗菌薬
猩紅熱の治療に使用される主な抗菌薬
- ペニシリン系:アモキシシリン、アンピシリンなど
- セフェム系:セファクロル、セフジニルなど
- マクロライド系:エリスロマイシン、クラリスロマイシンなど
これらの抗菌薬は、経口薬または注射薬として投与されます。 重症例や合併症を有する際は、入院治療が必要です。
抗菌薬の種類 | 代表的な薬剤 |
ペニシリン系 | アモキシシリン、アンピシリンなど |
セフェム系 | セファクロル、セフジニルなど |
マクロライド系 | エリスロマイシン、クラリスロマイシンなど |
症状が改善しても再発や合併症を防ぐために、指示された期間は服用を継続します。
治療期間と注意点
猩紅熱の治療期間は、抗菌薬の投与開始から10日間程度が目安です。 ただし、症状や検査結果によっては、医師の判断で投与期間が調整されることがあります。
治療中は、以下の点に注意が必要です。
- 抗菌薬は指示通りに服用し、自己判断で中止しない
- 十分な休養とバランスの取れた食事を心がける
- 手洗いや咳エチケットを徹底し、二次感染を予防する
治療を受けることで、猩紅熱は通常1~2週間で改善しますが、まれに合併症を引き起こすことがあるため、症状が遷延する場合は速やかに医師に相談してください。
予後と再発可能性および予防
猩紅熱は、治療を施せば概ね良好な経過をたどりますが、患者さんによっては再発や合併症を起こすリスクがあるため、十分な注意が必要です。
治療予後
猩紅熱の大半は、抗菌薬による治療で数日から1週間程度で改善に向かいます。 中でも早期に発見し、抗菌薬を用いた場合は、予後は非常に良好です。
しかし、治療が遅れたり、十分でなかったりすると、合併症を引き起こす危険性が高まります。
予後 | 条件 |
良好 | 早期診断・適切な治療 |
合併症リスク | 治療の遅れ・不十分な治療 |
再発リスク
猩紅熱の患者さんの中には、治療後も再発を繰り返してしまうケースがあります。
特に免疫力の低下した人や、慢性疾患を抱えている人は、再発リスクが高いです。
再発を防ぐために注意する点
- 抗菌薬の正しい使用と服用期間の遵守
- 感染源となる病巣の除去(扁桃腺摘出術など)
- 免疫力を高める生活習慣の実践
合併症リスク
猩紅熱では、たとえ治療を行っても、一定の割合で合併症を発症してしまう可能性があります。
中でもリウマチ熱や急性糸球体腎炎などの合併症は、重い後遺症を残すこともあるため、細心の注意が必要です。
合併症 | リスク因子 |
リウマチ熱 | 遅れた治療、不十分な治療 |
急性糸球体腎炎 | 遅れた治療、不十分な治療 |
予防法
猩紅熱を予防するために効果的な方法
- 手洗いやうがいなどの基本的な感染予防対策の実践
- 感染者との接触を避ける
- ワクチン接種(肺炎球菌ワクチンなど)
- 健康的な生活習慣の実践による免疫力の維持
特に集団生活を送る環境下では、感染予防対策を徹底することが何よりも大切です。
猩紅熱(しょうこうねつ)の治療における副作用やリスク
猩紅熱の治療に用いられる抗菌薬は、一般的に安全性が高いですが、副作用やリスクを完全に排は除できません。
抗菌薬の副作用
猩紅熱の治療に使用されるペニシリン系、セフェム系、マクロライド系などの抗菌薬は、副作用を引き起こす可能性があります。
副作用の種類 | 具体的な症状 |
消化器症状 | 悪心、嘔吐、下痢、腹痛など |
皮膚症状 | 発疹、かゆみ、蕁麻疹など |
肝機能障害 | 肝酵素値の上昇、黄疸など |
血液障害 | 貧血、白血球減少、血小板減少など |
副作用は、多くの場合、軽度で一過性ですが、重篤な症状を呈することもあります。
特に、アレルギー反応や偽膜性大腸炎などの重篤な副作用には注意が必要です。
アレルギー反応のリスク
抗菌薬の使用に際しては、アレルギー反応のリスクを考慮する必要があり、ペニシリン系抗菌薬によるアレルギー反応は、時に生命を脅かす可能性があります。
アレルギー反応の症状
- 皮疹、蕁麻疹、かゆみ
- 呼吸困難、喘鳴、咳
- 血圧低下、ショック症状
抗菌薬の投与前には、必ず患者さんのアレルギー歴を確認し、リスクを評価したうえで、アレルギーが疑われる際は、代替薬を選択するなどの対応が必要です。
アレルギーのリスク因子 | 対応策 |
ペニシリンアレルギーの既往 | セフェム系やマクロライド系の抗菌薬を選択 |
重篤なアレルギー反応の既往 | 十分な注意のもと、代替薬を選択 |
耐性菌出現のリスク
抗菌薬の乱用は、耐性菌の出現を促進する可能性があり、 耐性菌が出現すると、治療効果が低下し、重症化のリスクが高まります。
耐性菌出現のリスクを最小限に抑えるために注意する点
- 抗菌薬は必要な場合にのみ使用する
- 決められた用量と期間で投与する
- 耐性菌のサーベイランスを行う
治療費について
実際の治療費(医療費)が以下説明より高額になるケースが多々ございます。以下記載内容について当院では一切の責任を負いかねます事を予めご了承下さい。
初診料・再診料
初診料は、医療機関を初めて受診する際に必要な費用で、再診料は、同じ医療機関を2回目以降に受診する際の費用です。
費用項目 | 金額 |
初診料 | 3,000円~5,000円 |
再診料 | 500円~1,500円 |
検査費
猩紅熱の診断には、血液検査や培養検査などが行われ、検査費用は、1回あたり数千円から1万円程度が一般的です。
処置費・投薬料
猩紅熱の治療では、抗菌薬の投与が中心で、また、点滴治療などの処置が必要な場合は、別途処置費が発生します。
費用項目 | 金額 |
抗菌薬(1週間分) | 数千円~1万円 |
点滴治療(1回) | 5,000円~1万円 |
入院費
重症の猩紅熱では、入院治療が必要となることがあり、入院費は、1日あたり1万円から3万円程度です。
以上
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