水痘(水ぼうそう) – 感染症

水痘(水ぼうそう)(varicella)とは、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)によって引き起こされる感染症のことです。

水痘は主に小児期に罹患することが多く、高熱や特徴的な発疹、強い掻痒感などの症状が現れます。

水痘に対してはワクチンによる予防が可能で、世界の多くの国々で定期接種が行われています。

この記事を書いた人
丸岡 悠(まるおか ゆう)
丸岡 悠(まるおか ゆう)
外科医

1988年山形県酒田市生まれ。酒田南高校卒業後、獨協医科大学(栃木)にて医師免許取得。沖縄県立北部病院、独立行政法人日本海総合病院を経て現職(医療法人丸岡医院)。

水痘(水ぼうそう)の種類(病型)

水痘には、軽症、中等症、重症、合併症を伴う水痘の4つの病型があり、それぞれ症状や治療方針が異なります。

水痘の4つの病型

水痘の病型

病型特徴
軽症発疹が少なく、全身症状も軽微であることが特徴
中等症発疹が多く、発熱や倦怠感などの全身症状を伴うことが特徴

軽症の水痘では、発疹の数が少なく、全身症状も軽微です。

対して、中等症の水痘では、発疹の数が多く、発熱や倦怠感などの全身症状を伴います。

重症と合併症を伴う水痘

重症の水痘では、高熱が持続し、全身に多数の発疹が現れ、また、肺炎や脳炎などの重篤な合併症を引き起こす危険性があります。

合併症を伴う水痘は、重症の水痘から進展することがあるので、注意が必要です。

  • 肺炎
  • 脳炎
  • 肝炎
  • 血小板減少性紫斑病
病型治療方針
軽症・中等症対症療法が中心となる
重症・合併症あり抗ウイルス薬の投与が必要となる

水痘(水ぼうそう)の主な症状

水痘の代表的な症状としては、発熱と全身に広がる発疹が挙げられ、これらの症状は通常、ウイルスに感染してから10日から21日の間に現れます。

発疹は、最初は赤い発赤として現れ、その後、水疱へと変化し、最終的には痂皮(かさぶた)を形成するという過程をたどります。

発熱

水痘の症状として、最初に現れるのが発熱です。 体温は通常、38度から39度程度まで上昇し、この発熱は発疹が出現する1日から2日前から始まります。

発熱の程度持続期間
38度から39度2日から4日程度
39度以上1日から2日程度

全身の発疹

発熱に引き続いて現れるのが、全身に広がる発疹で、次のような経過をたどって変化していきます。

  1. 赤い発赤として現れる
  2. 水疱へと変化する
  3. 痂皮(かさぶた)を形成する

発疹は、最初は体幹部に現れ、徐々に顔面や四肢へと拡大。

発疹の数には個人差があり、数個から数百個程度まで幅がありますが、多くのケースでは100個以上の発疹が確認されます。

部位発疹の特徴
体幹部発疹が最初に現れる
顔面発疹が多く現れる
四肢発疹は比較的少ない

水疱の特徴

発疹が水疱へと変化する際の特徴

  • 水疱の直径は、通常2mmから5mm程度である
  • 水疱の周囲には発赤が伴う
  • 水疱は数日で自然に破れ、痂皮を形成する

痂皮(かさぶた)の形成

水疱が破れた部分は、痂皮(かさぶた)を形成します。 痂皮は約1週間程度で自然に剥がれ落ち、場合によっては色素沈着を残すことがあります。

水痘の症状は一般的には良性であり、多くのケースでは後遺症を残さずに治癒しますが、まれに重症化するケースもあり、肺炎や脳炎などの合併症を引き起こす可能性があることに注意が必要です。

水痘(水ぼうそう)の原因・感染経路

水痘は水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)が引き起こす感染症であり、飛沫感染や接触感染によって拡大します。

水痘の原因

水痘の原因となるのは水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)で、このウイルスはヘルペスウイルス科に属するDNAウイルスの一種であり、ヒトが唯一の宿主です。

VZVは感染力が非常に強く、感受性のある人が感染者と接触すると、90%以上の確率で感染すると言われています。

初回感染では水痘を発症し、ウイルスは神経節に潜伏した状態で生涯にわたって体内に残存します。

ウイルス名属するウイルス科感染力
水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)ヘルペスウイルス科非常に強い

水痘の主な感染経路

水痘の主な感染経路

  1. 飛沫感染
  2. 接触感染

飛沫感染は感染者のくしゃみや咳などによって放出された飛沫に含まれるウイルスを吸入することで起こり、一方、接触感染は水疱内容物や水疱痂皮に直接触れることで感染が成立します。

感染経路概要
飛沫感染感染者の飛沫に含まれるウイルスの吸入
接触感染水疱内容物や水疱痂皮への直接接触

感染が成立するタイミング

水痘の感染が成立するのは発症1〜2日前から発疹出現後5日目頃までだと考えられていて、この時期は患者さんの飛沫や水疱内容物中にウイルスが大量に含まれているため、感染リスクが特に高くなります。

発疹が痂皮化して乾燥すれば感染力は失われますが、水疱液が完全に乾燥するまでは感染源になる可能性に注意が必要です。

潜伏期間と感染可能期間

水痘の潜伏期間は通常10日から21日で、平均14日程度です。

この間、感染者は無症状だとしても発症の1〜2日前から他者へのウイルス伝播が始まっている恐れがあります。

  • – 潜伏期間:10〜21日(平均14日程度)
  • – 発症1〜2日前から発疹出現後5日目頃まで:感染リスクが高い時期

診察(検査)と診断

水痘が疑われる患者さんの診察と診断には、特徴的な臨床所見を把握することとウイルス学的検査を行います。

水痘の可能性がある場合は、早めに受診して的確な診察・検査を受けることが大切です。

水痘の診察(検査)の方法

水痘の診察では、まず患者さんの症状や発疹の特徴を詳しく観察します。

発疹の分布や形状、色などを確かめ、水痘に特有の所見がないかチェックします。

また、発症前の接触歴や予防接種歴なども大切な情報です。 必要な場合は血液検査を行って、水痘ウイルスに対する抗体価を測ります。

検査項目目的
血液検査水痘ウイルスに対する抗体価の測定
ウイルス分離・同定水痘ウイルスの確認

臨床診断

水痘の臨床診断は、特徴的な皮疹の存在と発症前の接触歴などから総合的に判断します。

診断の根拠になる点

  • – 発疹が体幹部から手足へと広がっていく
  • – 発疹が紅斑、丘疹、水疱、痂皮と時間とともに変化する
  • – 発疹が多数出現し、同時に色々な段階の病変が混ざり合う
  • – 発症1〜2週間前に水痘の患者さんと接触した

これらの所見から、水痘の可能性が高いと考えられますが、確定診断を下すにはウイルス学的検査が必要になることがあります。

確定診断

水痘の確定診断には、水疱の中身や咽頭ぬぐい液からウイルスを分離・同定するウイルス学的検査が用いられます。

検体検査方法
水疱内容液ウイルス分離・同定
咽頭ぬぐい液ウイルス分離・同定

また、血清学的検査として、ペア血清で抗体価が有意に上昇することを確認する方法もあり、水痘ウイルスに対するIgM抗体を検出することも補助的に用いられます。

水痘(水ぼうそう)の治療法と処方薬、治療期間

水痘は自然治癒する疾患であるため、対症療法が中心ですが、重症化のリスクがある患者さんには抗ウイルス薬が処方されます。

治療期間は通常1〜2週間ほどです。

対症療法

水痘の治療は主に対症療法が中心です。

治療法内容
安静体調を整えるため、安静にすることが大切です。
清潔保持皮膚の清潔を保ち、二次感染を防ぐことが重要です。

かゆみに対しての治療

  • かゆみ止めの塗り薬や内服薬の使用
  • 冷却シートや冷却ジェルの使用
  • 入浴時には重曹などを入れる

抗ウイルス薬の使用

重症化リスクのある患者さんには、抗ウイルス薬が処方されることがあります。

薬剤名効果
アシクロビルウイルスの増殖を抑制し、症状を緩和する
バラシクロビルアシクロビルのプロドラッグで、同様の効果がある

これらの薬剤は、発症後できるだけ早期に投与開始することが望ましいです。

治療期間

水痘の治療期間は、通常1〜2週間程度です。

ただし、合併症を併発した際や免疫力が低下している患者さんでは、治療期間が長引くことがあります。

注意点

水痘の治療において、注意が必要な点もあります。

  • 感染拡大を防ぐため、発症者は他者との接触を避ける
  • 妊婦が感染した場合は、胎児への影響があるため注意が必要
  • ワクチン未接種者は、可能な限りワクチンを接種することが望ましい

水痘は多くの場合、自然治癒する疾患ですが、治療を行うことで症状をやわらげ、合併症のリスクを減らすことができます。

予後と再発可能性および予防

水痘は、大半の患者が後遺症なく回復しますが、再感染の危険性はゼロではありません。

予後について

水痘の予後は患者さんの年齢に左右されます。

年齢層回復の見通し
乳幼児期良好
成人期症状が重くなる恐れ

ただし、合併症の発症がなければ、ほとんどの場合後遺症を残さずに治ります。

再発可能性について

通常、水痘に1度かかると生涯にわたる免疫を獲得するので、再発はまれです。

しかし、次のような特殊なケースでは再感染のリスクが高まります。

  • – 初回感染後の免疫獲得が不完全だったとき
  • – 免疫機能が衰えたとき(高齢者、免疫抑制療法を受けている患者など)
再感染リスク当てはまる人
低い健康状態の良い成人
高い免疫力の弱い人

再発時の症状は、初回感染時と変わりません。

予防について

水痘の予防に最も効果的なのはワクチン接種です。

予防接種法で定められた定期接種スケジュールでは、生後12〜15ヶ月に1度目、その6〜12ヶ月後に2度目の接種を受けることが推奨されています。

2回の接種を完了すれば、90%以上の予防効果が期待できます。

免疫獲得と予防接種の重要性

水痘に感染すると、数日間は発熱や水疱の形成などの症状が持続し、日常の活動が制限されますが、ワクチン接種を受けておけば、感染や重症化を防げます。

成人では合併症を引き起こしやすいため、未接種の人は早めにワクチンを接種してください。

水痘(水ぼうそう)の治療における副作用やリスク

水痘の治療に用いられる抗ウイルス薬には、副作用やリスクが伴います。

抗ウイルス薬の副作用

抗ウイルス薬の副作用

副作用症状
消化器症状悪心、嘔吐、下痢など
肝機能障害肝酵素値の上昇

副作用が現れたときは、投与量の調整や投与中止を検討する必要があります。

副作用の発現には個人差があり、すべての患者さんに現れるわけではありませんが、注意が必要です。

免疫抑制状態の患者さんへの投与

免疫抑制状態の患者さんに抗ウイルス薬を投与するときは、副作用のリスクがより高くなります。

免疫抑制状態の患者さんでは、感染症のリスクが高いため、治療の必要性とリスクを十分に検討する必要があります。

また、免疫抑制状態の患者さんでは、以下のような点にも注意が必要です。

  • 感染症の合併症のリスク
  • 抗ウイルス薬の効果が十分に得られない可能性
  • 副作用の発現頻度が高くなる可能性

妊婦・授乳婦への投与

妊婦・授乳婦への抗ウイルス薬の投与は、慎重に検討する必要があります。

対象注意点
妊婦抗ウイルス薬の胎児への影響は十分に解明されていない
授乳婦抗ウイルス薬が乳汁中に移行する可能性がある

妊婦・授乳婦への投与は、治療上の有益性と危険性を考慮し、投与するときは、十分なインフォームドコンセントを得ることが大切です。

その他の注意点

水痘の治療における副作用やリスクを最小限に抑えるための注意点

  • – 投与量・投与期間を遵守する
  • – 定期的な検査を行い、副作用の早期発見に努める
  • – 患者さんの状態を十分に観察し、副作用が疑われるときは速やかに対応する

治療費について

治療費についての留意点

実際の治療費(医療費)が以下説明より高額になるケースが多々ございます。以下記載内容について当院では一切の責任を負いかねます事を予めご了承下さい。

治療費の内訳

治療費の内訳は以下の通りです。

項目費用
初診料2,820円
再診料720円
処方箋料1,500円
投薬料5,000円~10,000円
検査料3,000円~5,000円

公的医療保険の適用

水ぼうそうの治療には公的医療保険が適用されるため、実際の自己負担額は3割程度になります。

入院が必要な場合の費用

重症化して入院が必要になった場合、治療費はさらに高額になります。

項目費用
入院基本料1日につき約5,000円
食事療養費1日につき約1,500円
投薬・注射・処置等症状に応じて変動

入院期間が長引けば、数十万円から100万円以上の費用がかかることもあります。

以上

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