放散痛(Irradiating pain)とは、体のある部分で発生した痛みが、その周辺や離れた箇所にまで広がって感じられる不快な感覚のことです。
たとえば、心臓に異常がある際に左腕や背中に痛みが走ったり、腰部の痛みが脚部全体に広がったりするケースがよく見られます。
放散痛の主な症状
放散痛は、神経の走行に沿って痛みが広がる現象です。痛みの原因となる部位から離れた場所に痛みを感じます。
放散痛の主な症状
放散痛の症状は、原因となる病気や影響を受ける神経によって異なります。代表的な症状には以下のようなものがあります。
原因となる病気 | 主な症状 |
腰椎椎間板ヘルニア | 下肢への痛みやしびれ |
狭心症 | 左腕や顎への痛み |
胆石症 | 右肩への痛み |
- 痛みの感じ方:鋭い、刺すような、焼けるような、電気が走るような感覚
- 痛みの範囲:一部分だけに限局したものから、広い範囲に及ぶものまでさまざま
- 一緒に起こる症状:しびれ、筋力が弱くなる、感覚が変わる
放散痛の場所で病気がわかることも
放散痛には特徴的なパターンがあり、どんな病気が起きているかを知る手がかりとなります。
放散痛のパターン | 関係している可能性のある病気 |
胸から左腕への痛み | 心筋梗塞 |
腰から足にかけての痛み | 坐骨神経痛 |
右上腹部から右肩への痛み | 胆嚢の病気 |
放散痛の原因
放散痛が起こる主な理由として、神経への圧迫や炎症、内臓の問題、骨や筋肉の異常などが考えられます。
神経系が関係する放散痛
放散痛の多くは、神経系の問題が原因です。神経が何かに押されたり、炎症を起こしたりすると、その神経が関係している範囲に痛みが広がります。
たとえば、腰の骨と骨の間にあるクッションが飛び出す腰椎椎間板ヘルニアという病気では、飛び出したクッションが神経を押してしまい、お尻から足にかけて痛みが広がります。
神経が押される原因 | 痛みが広がる場所 |
首の骨のヘルニア | 腕や手 |
腰の骨のヘルニア | 脚や足 |
内臓から広がる痛み
内臓に問題があるのに、体の表面に痛みを感じることがあります。これは、内臓の痛みが体の特定の部分と結びついているからです。
心臓発作のときに左腕が痛くなるのは、その代表的な例です。
骨や筋肉の異常による痛み
筋肉や骨、関節に問題があると、それも放散痛の原因になります。
特に、筋肉が緊張したり痙攣したりすると周りの組織に負担がかかり、広い範囲で痛みを感じることがあります。
肩こりがひどくなって頭痛が起こるのは、このしくみによるものです。
筋肉の緊張が長く続くと周りの神経を圧迫し、痛みが頭まで広がっていくのです。
血管が関係する痛み
動脈瘤という血管が膨らむ病気や、血管が炎症を起こす病気などは、神経を圧迫し痛みを引き起こします。
血管の病気 | 主な症状 |
大動脈解離 | 背中から腹にかけての激しい痛み |
こめかみの動脈の炎症 | こめかみから頭にかけての痛み |
心の状態が影響する痛み
心理的なストレスや不安、落ち込んだ気分なども、放散痛を引き起こしたり、痛みを悪化させたりする原因となる場合があります。
診察(検査)と診断
放散痛の診察では、どんな痛みがどのくらい続くのか、どんな時に起こるのかなどを調べて原因を突き止めていきます。
診察の手順
診察手順 | 具体的な内容 |
問診 | 痛みの特徴、場所、継続時間、きっかけなどをお聞きします |
視診 | 皮膚の色の変化や腫れがないかを確認します |
触診 | 痛む場所を軽く押して、筋肉の硬さなどを調べます |
運動試験 | 関節の動きを見て、痛みが出るかどうかを確認します |
問診では、普段の生活習慣や過去にかかった病気についてもお聞きします。
身体診察では、痛みの元になっている部分だけでなく、痛みが広がっている範囲全体を調べていきます。
臨床診断のポイント
- 痛みの感じ方(チクチクする、ズキズキするなど)
- 痛みの強さとどのくらい続くか
- 痛みが悪くなる原因や楽になる方法
- 他の症状(しびれや力が入りにくいなど)はないか
このような情報をもとにして、どんな病気の可能性があるかを考えていきます。
確定診断のための検査
はっきりとした診断をつけるためには、検査が必要です。放散痛の原因となる病気によって、どの検査を行うべきかは変わってきます。
検査方法 | 何を調べるのか |
血液検査 | 体の中で炎症が起きていないか、代謝に異常がないかを調べます |
画像検査 | レントゲンやMRIで骨や筋肉の状態を見ます |
神経の検査 | 神経の働きや筋肉の動きを電気を使って調べます |
神経ブロック | 痛みの原因となる神経を特定するために行います |
以前、胸が痛いと病院に来られた患者さんがいて、最初は心臓の病気を疑いました。ところが詳しくお話を聞いて体を診察したところ、実は首の骨の異常が原因で、肋骨の間を通る神経に沿って痛みが広がっていたことがわかりました。
このように、放散痛の診断では、最初に思い浮かんだ病気だけにとらわれず、様々な可能性を考えながら症状を調べることが大切です。
放散痛の治療法と処方薬、治療期間
薬による治療では、炎症を抑える薬や痛みを和らげる薬が中心となります。
一方、薬を使わない治療には、体を温めたり、特殊な器具で刺激を与えたりする方法やリハビリなどがあります。
また、何よりも放散痛の原因となっている病気を治療することが大切です。
お薬による治療
放散痛に対する薬の治療では、つらい症状を和らげるとともに、痛みの根本的な原因に対処することを目指します。
よく使われるお薬には、以下のようなものがあります。
お薬の種類 | 主な働き |
炎症を抑える薬 | 炎症を抑え、痛みを軽くする |
痛み止め | 痛みを和らげる |
筋肉の緊張をほぐす薬 | 硬くなった筋肉をリラックスさせる |
神経の痛みを抑える薬 | 神経が原因の痛みを軽くする |
お薬を使わない治療法
- 体を温めたり、特殊な器具で刺激を与えたりする方法
- ストレッチや筋力トレーニングなどのリハビリ
- マッサージによる治療
- 東洋医学の考え方を取り入れた鍼やお灸による治療
痛みを和らげるだけでなく、体の動きを良くしたり、日常生活をより快適に過ごせるようにするために行います。
治療にかかる期間
突然起こった痛みの場合は数週間で良くなることもありますが、長く続いている痛みの場合は、長期的な対応が必要な場合が多くなります。
症状の種類 | 一般的な治療期間 |
突然起こった痛み | 2〜6週間くらい |
しばらく続いている痛み | 6〜12週間くらい |
長期間続いている痛み | 3か月以上 |
放散痛の治療における副作用やリスク
放散痛の治療方法によっては、副作用やリスクが伴います。
薬物療法に伴う副作用
放散痛の治療で使う、鎮痛薬や抗炎症薬の代表的な副作用は次の通りです。
- 胃腸障害(胃潰瘍、消化不良など)
- 腎機能障害
- 肝機能障害
- めまいや眠気
- アレルギー反応
神経ブロック療法のリスク
リスク | 発生頻度 |
出血 | 低 |
感染 | 低 |
神経損傷 | 非常に低 |
アレルギー反応 | 稀 |
治療費について
実際の治療費(医療費)が以下説明より高額になるケースが多々ございます。以下記載内容について当院では一切の責任を負いかねます事を予めご了承下さい。
放散痛の治療費は、原因疾患や症状の重症度により大きく変動します。手術が必要な場合は、治療費が高額になります。
診断に関わる費用
放散痛の診断には、複数の検査が必要です。検査費用は、患者の症状や疑われる原因疾患に応じて変わります。
検査項目 | 概算費用 (円) |
MRI検査 | 20,000-35,000 |
CT検査 | 15,000-25,000 |
X線検査 | 4,000-6,000 |
神経伝導検査 | 8,000-12,000 |
薬物療法の費用の目安
- 非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs): 1,500-3,000円/月
- 筋弛緩薬: 2,000-4,000円/月
- 神経障害性疼痛治療薬: 5,000-10,000円/月
- オピオイド鎮痛薬: 8,000-15,000円/月
薬剤費用はお薬の種類や量、治療期間により変わりますが、1ヶ月あたりの総薬剤費は8,000円から25,000円程度が目安です。
理学療法と運動療法の費用目安
治療法 | 1回あたりの費用 (円) |
理学療法 | 3,000-6,000 |
運動療法 | 4,000-7,000 |
牽引療法 | 2,500-5,000 |
以上
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