2023年に発表されたピコ秒レーザーに関するメタ分析[1]を読んでいて、改めて感じたことがあります。「ピコトーニング」の有効性と安全性に関するエビデンスが、ここ数年で本当に厚くなってきているということです。美容医療に関心のある方なら、この施術名を一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
みなさんこんにちは、丸岡悠です。今日は「ピコトーニング」について、美容医療に携わる医師の視点からできるだけ正直にお話しさせていただきます。シミや肝斑に悩んでいる方、レーザー治療を検討しているけれど「本当に効果があるのか」「自分に合っているのか」と迷っている方に、正しい判断材料を届けたい。そんな思いで書いています。
この治療が選ばれる理由
肝斑やくすみ、シミの治療を考えたとき、選択肢は実はかなり多いのです。外用薬のハイドロキノン、内服のトラネキサム酸、レーザートーニング、フォトフェイシャル。ではなぜ、その中で「ピコトーニング」を選ぶ方が増えているのか?
それは「従来のレーザートーニングでは改善しきれなかった色素」にアプローチできる可能性があるからです。特に肝斑は厄介で、強いレーザーを当てると逆に悪化するリスクがあります。ピコトーニングは照射時間がピコ秒(1兆分の1秒)と極めて短いため、周囲の組織へのダメージを最小限に抑えながらメラニンを細かく砕くことができるのです[2]。
僕のもとにも「レーザートーニングを何回か受けたけど、肝斑がなかなか良くならない」という相談が増えてきました。2022年に発表されたスプリットフェイス比較試験でも、Qスイッチレーザーで効果が出にくかった肝斑に対してピコ秒レーザーが有効だったと報告されています[3]。「今までの治療で満足できなかった」という方にとって、ピコトーニングは次の一手になりうる治療です。
もう一つ、ピコトーニングが選ばれる理由として「ダウンタイムの短さ」があります。仕事を何日も休めない、施術後にすぐメイクしたい。そういった日常生活との両立を重視する方にとって、ピコトーニングは非常に取り入れやすい治療なのです。
施術の仕組みとメカニズム
ピコトーニングの「ピコ」は、ピコ秒を意味します。1ピコ秒は10の-12乗秒。想像もつかないほど短い照射時間です。従来のQスイッチレーザーがナノ秒(10の-9乗秒)で照射するのに対し、ピコ秒レーザーはその1000分の1の時間でエネルギーを届けます。
ではなぜ照射時間が短いと良いのか?それは「光熱作用」と「光音響作用」の違いにあります。ナノ秒レーザーは主に熱でメラニンを破壊しますが、この熱が周囲に広がることで炎症や色素沈着のリスクが生じます。一方、ピコ秒レーザーは照射時間が短すぎて熱がほとんど発生せず、代わりに衝撃波(光音響効果)でメラニンを物理的に粉砕するのです[2]。
イメージとしては、ナノ秒レーザーが「熱で溶かす」のに対して、ピコ秒レーザーは「振動で砕く」感覚です。砕かれたメラニンは非常に細かい粒子になるため、体の免疫細胞(マクロファージ)が回収しやすくなります。だからこそ「従来のレーザーで取れなかったシミ」にも効果が期待できるわけです。
ピコトーニングでは、このピコ秒レーザーを低出力で顔全体に均一に照射していきます。ポイントは「低出力で広範囲」という点です。特定のシミをピンポイントで狙うのではなく、顔全体のトーンを徐々に均一にしていく。だから「トーニング」と呼ばれているのです。2024年に発表された研究では、ピコ秒レーザー照射後にメラノサイトの活動が調整されることが示されており[5]、単にメラニンを壊すだけでなく、色素を作る細胞そのものに働きかけている可能性も注目されています。
期待できる効果
ピコトーニングに期待できる効果は、大きく分けて3つあります。
①肝斑の改善。これが最も注目されている適応です。2023年のランダム化比較試験では、ピコ秒Nd:YAGレーザーによるトーニングが肝斑治療において、2%ハイドロキノンクリームと比較しても同等以上の効果を示しています[4]。従来のQスイッチレーザートーニングと比べ、より少ない回数で改善が得られる可能性も報告されています[3]。
②くすみや色ムラの改善。顔全体のメラニン量を徐々に減らしていくことで、肌のトーンが明るくなります。「なんとなく顔色が暗い」「ファンデーションの色が合わなくなってきた」という悩みに対して、じわじわと効果を発揮します。
③炎症後色素沈着への効果。ニキビ跡や虫刺されの跡など、炎症の後に残った色素沈着にも効果が期待できます[3]。ただ、炎症が完全に落ち着いてからの施術が基本です。赤みが残っている状態でレーザーを当てるのは逆効果になりかねません。
正直に言わせてもらうと、ピコトーニングは1回で劇的に変わるような治療ではありません。5回から10回程度の施術を重ねることで、徐々に効果を実感できるものです。「魔法のような即効性」を期待されている方には合わないかもしれない。でも、だからこそ肌への負担が少なく、安全性が高いとも言えるのです。
施術の一般的な流れ
ピコトーニングの施術は、一般的に以下のような流れで行われます。
まずカウンセリングと診察です。医師が肌の状態を直接確認し、シミの種類を見極めます。老人性色素斑なのか、肝斑なのか、そばかすなのか、炎症後色素沈着なのか。ここが実はとても大切で、シミの種類によって最適な治療法が異なるからです。「ピコトーニングが最善か、それとも別のアプローチが良いか」を判断するのが医師の仕事です。診断を間違えると、効果が出ないどころか悪化するリスクもあります。
診察の後、洗顔をしてメイクや日焼け止めを完全に落とします。レーザーの照射自体は15分から20分程度で完了することが多いです。顔全体にレーザーを均一に照射していきます。照射後は保湿と日焼け止めを塗布して終了です。施術当日からメイクも可能な場合がほとんどで、特別な保護テープを貼る必要もありません。
施術後に特に大切なのが「紫外線対策」です。レーザー照射後の肌は紫外線に敏感になっていますから、日焼け止めはしっかり塗っていただきたい。酒田のような日本海側の地域でも、曇りの日に紫外線量が意外と多いことがあるのです。「曇りだから大丈夫」は禁物です。SPF30以上の日焼け止めを日常的に使うことが、ピコトーニングの効果を最大限に引き出す鍵になります。
痛みとダウンタイム
「レーザーって痛いですよね?」というのは、美容レーザーについて最も多い質問の一つです。
ピコトーニングの痛みは、よく「輪ゴムで軽くパチパチ弾かれるような感覚」と表現されます。ピコ秒レーザーは照射時間が極めて短いため、従来のナノ秒レーザーによるトーニングと比べても痛みは軽い傾向にあります。もちろん感じ方には個人差がありますし、鼻の周りや額など骨に近い部分はやや刺激を感じやすいです。でも「我慢できないほどの痛み」ではないと思っていただいて大丈夫です。実際に、初めて受けた方の多くが「思ったより全然平気だった」とおっしゃいます。
ダウンタイムの短さは、ピコトーニングの大きなメリットの一つです。施術直後に多少の赤みやほてりが出ることがありますが、多くの場合数時間から翌日には落ち着きます。かさぶたになったり、皮がむけたりすることはほとんどありません。仕事帰りに受けて翌朝普通にメイクして出勤する、という方も珍しくないのです。
ただ、ごくまれに照射部位に一時的な色素沈着(いわゆる「戻りジミ」)が出ることがあります。これは時間とともに改善しますが、施術後の紫外線対策を怠ると起きやすくなります。ここは正直にお伝えしておきたいところです。
推奨される回数と間隔
ピコトーニングは「1回で完結する治療」ではなく、回数を重ねることで効果を発揮する治療です。
一般的に推奨されているのは5回から10回の施術で、1クール10回というのが標準的な設定です。施術間隔は2週間から4週間。つまり1クール完了するのに約3か月から10か月かかる計算になります。
ではなぜこれだけの回数が必要なのか?それは、ピコトーニングが「低出力で少しずつメラニンを減らしていく」治療だからです。1回の照射で全てのメラニンを砕くのではなく、毎回少しずつ。肌への負担を最小限にしながら、安全に色素を減らしていく設計になっています。
効果を実感し始めるのは3回目から5回目あたりが多いです。「あれ、なんか肌のトーンが明るくなった気がする」という声が出てくるのがこのあたり。劇的な変化ではなく、周囲の人から「最近なんか肌きれいだね」と言われるような、自然な改善です。僕はこの「自然さ」こそが、ピコトーニングの良いところだと思っています。無理に一気に変えるのではなく、自分のペースで肌を整えていける。忙しい日常の中でも続けられる治療だからこそ、長く支持されているのです。
リスクと注意点
美容医療において「リスクがゼロ」の治療は存在しません。ピコトーニングも例外ではないです。医師として、ここは正直にお伝えする責任があると思っています。
①炎症後色素沈着(PIH)。施術後に一時的にシミが濃くなったように見えることがあります。特に紫外線対策が不十分だった場合や、肌が炎症を起こしやすい体質の方に生じやすい傾向があります。通常は数週間から数か月で改善しますが、焦って追加照射をすると悪化する可能性もあるので、医師の判断に従ってください。②白斑のリスク。非常にまれですが、過度な照射を繰り返すと色素が抜けすぎて白斑になるケースが報告されています。適切な出力設定と照射間隔を守ることが大切です。③肝斑の悪化。肝斑は刺激に対して敏感です。出力設定が不適切だったり、照射間隔が短すぎたりすると、改善どころか悪化することがあるのです。肝斑の診断と治療には経験が必要で、ここは施術者の技量に大きく左右される部分です。
だからこそ「安いから」「通いやすいから」だけで選ばないでほしいのです。自分の肌の状態をきちんと診断してくれて、適切な出力で照射してくれる医師のもとで受けること。これが安全なピコトーニングの大前提です。「何となく良さそうだから」ではなく、きちんとカウンセリングを受けて、自分の肌の状態とリスクを理解した上で始めてほしいと思います。
費用の目安
ピコトーニングの費用は、クリニックや地域によってかなり幅があります。
全顔1回あたりの相場は、おおよそ1万円台から5万円程度です。初回限定の体験価格を設定しているクリニックもあれば、5回コースや10回コースでまとめて契約すると1回あたりの単価が安くなるケースも多いです。5回コースで8万円台、10回コースで15万円台といった価格帯もよく見かけます。
ピコ秒レーザーの機器は非常に高額です。だからこそ、あまりに安い価格設定のクリニックでは、使用している機器のスペックや施術者の経験を確認しておいたほうが良いかもしれません。「ピコトーニング」と表記していても、実際にはピコ秒レーザーではなくナノ秒レーザーを使用しているケースもゼロではないからです。
費用は施術回数分かかるので、1クール(5回から10回)のトータルコストで考えることをお勧めします。初回だけ安くて2回目以降が高くなるパターンもありますから、契約前に必ずトータル費用と追加費用の有無を確認してください。
他の治療との比較
シミや肝斑の治療には、ピコトーニング以外にもいくつかの選択肢があります。「自分にはどれが合っているのか」を判断するために、それぞれの特徴を整理してみます。
従来の「レーザートーニング」は、Qスイッチ Nd:YAGレーザーを低出力で照射する治療法です。ピコトーニングの前身とも言える治療で、肝斑に対して広く使われてきました。効果はある程度実証されていますが、2022年のスプリットフェイス比較研究では、ピコ秒レーザーのほうがより効率的に改善が得られたという結果が出ています[3]。ただ、レーザートーニングのほうが費用が抑えられるケースが多く、「コストパフォーマンス」という観点では依然として十分な選択肢です。
「フォトフェイシャル(IPL)」は光治療で、シミだけでなく赤み、毛穴、ハリなど複数の肌悩みに同時にアプローチできるのが強みです。「顔全体の肌質を改善したい」「シミだけじゃなくて肌の質感も良くしたい」という方にはIPLが向いています。ただ、肝斑に対してはIPL単独では難しいことが多いです。
外用薬の「ハイドロキノン」は美白の定番です。2023年のランダム化比較試験では、ピコ秒Nd:YAGレーザーが2%ハイドロキノンクリームと比較して同等以上の効果を示しました[4]。ただ、外用薬は自宅でできるという手軽さがあります。トラネキサム酸の内服と組み合わせて使う方も多いです。
正直なところ、「これ一つで全部解決」という治療はありません。患者さんの肌の状態やシミの種類、ライフスタイル、予算を総合的に考えて最適な治療を選ぶことが大切です。ピコトーニングとトラネキサム酸の内服を組み合わせたり、コース終了後にスキンケアで維持したりと、複合的なアプローチが効果を最大化するケースも多いのです。
当院のレーザー治療について
庄内プライベートクリニックでは、YAGレーザーをはじめとしたレーザー治療でシミや肌質改善のご相談に対応しています。ゼオスキンによるスキンケアプログラムや、ケミカルピーリングなど、肌の状態に合わせた選択肢も用意しています。
僕が診察で大切にしているのは「その方にとって本当に最適な治療は何か」を一緒に考えることです。「ピコトーニングが気になっている」とご相談いただいた場合でも、実際に肌を拝見した上で、YAGレーザーでのレーザートーニングのほうが向いているかもしれないし、ゼオスキンから始めたほうが良い場合もあるかもしれない。逆に、内服薬や外用薬の併用を提案することもあります。大切なのは「施術名」にこだわることではなく、「あなたの肌にとって何が最善か」を見極めることだと思っています。
庄内地方で美容医療に通うことに「選択肢が少ないのでは」と不安を感じている方もいるかもしれません。でも、地方だからこそ一人ひとりの患者さんとじっくり向き合えるという良さがあるのです。都内の大手クリニックのように流れ作業になることはありません。診察の中で「あなたの肌にはこのアプローチが合う」とその理由も含めてきちんと説明させていただきます。
シミや肝斑、くすみの治療について少しでも気になることがあれば、まずはLINEでお気軽にご相談ください。「こんな些細なことを聞いていいのかな」と思わず、どんなことでもお聞きいただければと思います。
よくある質問(FAQ)
Q. ピコトーニングは何回で効果が出ますか?
個人差はありますが、3回目から5回目あたりで「肌のトーンが明るくなった」と感じ始める方が多いです。1クール10回が標準的な設定で、しっかり効果を実感したい場合は最後まで通うことをお勧めします。1回で劇的な変化を期待するよりも、回数を重ねて自然に改善していく治療だと考えてください。
Q. ピコトーニングとレーザートーニングはどう違いますか?
最大の違いはレーザーの照射時間です。レーザートーニング(Qスイッチ)はナノ秒(10億分の1秒)、ピコトーニングはピコ秒(1兆分の1秒)で照射します。ピコ秒のほうが熱ダメージが少なく、メラニンをより細かく砕けるため、治療回数が少なくて済む可能性が報告されています。ただ、費用はピコトーニングのほうが高い傾向にあります。
Q. 肝斑があっても受けられますか?
はい、ピコトーニングは肝斑治療の有力な選択肢の一つです。ただし、肝斑の診断には経験が必要で、老人性色素斑やそばかすとの見極めが重要になります。肝斑の場合は出力設定に特に慎重さが求められるため、肝斑治療の経験が豊富な医師のもとで受けることをお勧めします。
Q. 施術後にメイクはできますか?
多くの場合、施術当日からメイクが可能です。照射直後に多少の赤みが出ることがありますが、通常は数時間で落ち着きます。仕事帰りに施術を受けて翌朝普通にメイクして出勤される方もいます。ただし、刺激の強いスクラブやピーリング系の化粧品は数日間控えてください。
Q. ピコトーニングの効果はどのくらい持続しますか?
1クール完了後の持続期間は個人差がありますが、紫外線対策や適切なスキンケアを続ければ半年から1年程度は効果を維持できることが多いです。ただ、肝斑はホルモンバランスや紫外線の影響で再発しやすい性質がありますから、定期的なメンテナンス照射を受ける方もいます。トラネキサム酸の内服や外用薬と併用することで維持効果を高めるアプローチも一般的です。
Q. 敏感肌でも受けられますか?
敏感肌の方でも受けられるケースは多いです。ただ、肌の状態によっては照射出力を調整したり、施術間隔を通常より長めに設定する場合があります。アトピー性皮膚炎がある方や、施術部位に活動性の炎症がある場合は、まず炎症のコントロールが優先です。事前の診察で肌の状態をしっかり確認してもらってください。
Q. 妊娠中や授乳中でも受けられますか?
一般的に、妊娠中のレーザー治療は推奨されていません。授乳中については医師によって判断が分かれるところですが、急いで受ける必要がなければ授乳終了後まで待つことをお勧めしています。妊娠中に肝斑が出現したり悪化したりするケースは多いですが、その場合はまず外用薬やスキンケアでの対応を検討します。
Q. 男性でもピコトーニングは受けられますか?
もちろんです。シミや肝斑は性別に関係なく生じますし、最近は男性で美容レーザーを受ける方が増えています。「ビジネスの場で清潔感のある印象にしたい」という理由で相談に来られる方も珍しくありません。施術内容や流れは女性と全く同じです。
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参考文献
- Feng S, et al. Efficacy and safety of picosecond laser for the treatment of melasma: a systematic review and meta-analysis. Lasers Med Sci. 2023;38(1):83.
- Pimentel B, et al. Use of Picosecond Laser for Melasma Treatment: A Narrative Review. Photobiomodul Photomed Laser Surg. 2023;41(12):575-582.
- Wong Y, et al. A prospective, split-face study comparing 1,064-nm picosecond Nd:YAG laser toning with 1,064-nm Q-switched Nd:YAG laser toning in the treatment of melasma. J Cosmet Dermatol. 2022;21(10):4580-4588.
- Liang Y, et al. Comparison of the efficacy and safety of picosecond Nd:YAG laser (1,064 nm), picosecond alexandrite laser (755 nm) and 2% hydroquinone cream in the treatment of melasma: A randomized, controlled, assessor-blinded trial. Front Med. 2023;10:1132823.
- Chen Y, et al. Modulation of Melanocyte in Melasma Patients After Picosecond Laser Treatment. Dermatol Surg. 2024;50(12):1154-1159.